『チェインクロニクル』×『ぷよぷよ』クリエイター対談。10年間運営を続ける秘訣とは?

まり蔵
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 セガの『チェインクロニクル』総合ディレクター 松永純氏と、『ぷよぷよ』シリーズ総合プロデューサー 細山田水紀氏の対談をお届けします。

 スマートフォン用RPG『チェインクロニクル』のスピンオフタイトルで、『Mirrativ(ミラティブ)』のライブゲーム『ちぇいんくろにくるローグ』において、2月29日まで『ぷよぷよ』コラボが開催中です。

 このコラボを記念して、『チェンクロ』×『ぷよぷよ』のクリエイター対談を実施。『チェンクロ』総合ディレクター 松永氏と、『ぷよぷよ』シリーズ総合プロデューサー 細山田氏にお話を伺いました。

 コラボの経緯をはじめ、『チェンクロ』や『ぷよぷよ』の今後について、そして同期入社のおふたりの仲よし(?)エピソードについて語っていただきました。両作品のファンはぜひご覧ください!

  • ▲細山田水紀氏(左)と松永純氏(右)。

『チェインクロニクル』&『ぷよぷよ!!クエスト』10周年について

――松永さんと細山田さんは同期入社ということですが、そもそもおふたりの出会いは?

細山田:同期ではあるのですが、当時は分社化時代。僕がソニックチームで、松永がオーバーワークス(編注:過去に存在したセガの開発子会社)と同じセガでも会社は違ったんですよ。

松永:ビルも違ってて、当時セガは1号館と2号館が隣り合ってたんですが、ソニックチームの1号館のほうが新しくてピカピカなんですよね。うらやましかったことを覚えていますね。顔もなんか向こうのほうがイキイキとしているなあとか……(笑)。

細山田:当時の仕事については今では書けないことだらけなので、振り返れないですね(笑)。

――実はこんな交流があるといったエピソードがありましたらぜひ!

松永:20年来の同期だから、なんだかんだありますね。ただ、新人の頃が一番濃かったですが、やっぱりそれは書けないことが多い(笑)。逆にここ最近はあんまりないかも?

細山田:企画としての方向性や生き方がいい意味で違うので、それぞれでさまざまな経験やキャリアを積んで、違う道を歩いてきて活動している感じです。ただ、以前の生放送であったように『ぷよぷよ』で対決して食堂でご飯を食べるなど、企画などで気軽に使われるくらいには普通の仲です(笑)。

松永:ありましたね。『ぷよぷよ』対決して、僕が一方的にボコボコにされたやつですね(笑)。で、ご飯をおごらされるという。それこそ何か相談がある時は、フランクですよね。

細山田:あと、困った時には「そっちのタイトルではどうやっているの?」と聞くとか。『チェンクロ』チームにいた人が『ぷよクエ』チームに来たり、逆もあったりとか。

松永:確かに。かかわっている人がかぶっているとか……。ここ数年はお互いに忙しいこともあって、そういうチームとしての関りが多いですかね。

細山田:あと、ぷよぷよPR担当が行っている同期会に声をかけられるので、そこで会った時には話します。当時は同期入社88人という末広がりの数で、今は1/3くらいになっているんですが。

松永:ですね。同期会ではセガを出て他社で活躍しているメンバーふくめて、ワイワイやってますね。僕や細山田ふくめて、みんなだいたい忙しい忙しいって話ばかりですが(笑)。

――『チェンクロ』、『ぷよクエ』ともに昨年10周年を迎えましたが、この10年を振り返っていかがでしたか?

松永:正直、長くて振り返るのが難しいです。我々はセガに入っておおよそ20年なので、経歴の半分が両コンテンツに携わっているんです。それもあって、総括って感じで振り返るということができないですね。

細山田:どこ切り取るのかでも違いますからね。実はアプリとしても変わった経歴で、当初の運営はセガネットワークスでしたが、『チェンクロ』はセガ・インタラクティブ開発、『ぷよクエ』はセガ開発がチームの主メンバーとなって開発を行っていました。

松永:なつかしい。セガグループの中で運営も開発も別々だったんですよね。当時のセガ・インタラクティブは運営したこともなかったし、プロモーション計画はゼロで、「オリジナルのモバイルゲームなんて売れるのか?」という状態。でも、おもしろいタイトルにはなっていたので、なんとかならないかなと四苦八苦してました。

――『チェンクロ』は石田彰さんの兼任キャスティングも含め、ゲームとしてのインパクトは配信当初からかなりありましたよね。

松永:あれも今から考えたら無茶苦茶で、よく許してもらったと思います。ただ、そこには出自が関係していて、僕はアプリの前にアーケードゲームを経験しました。以前やっていた『三国志大戦』などでは、1人に20キャラをお願いするとか普通のことだったんです。その流れでお願いしたら、いろいろな方から「普通はこんなお願いはしないです」と言われて……「え? そうなんですか?」って。でも……楽しんでいただけましたよね?

細山田:クリエイティブゴリ押しですよ(笑)。

松永:結果的に、話題のひとつになったのでありがたかったです。当時、プロモーション担当の方には「このアプリはどう売ればいいかわからないです」と言われてたので。

細山田:どのマーケチームにもアプリのノウハウがなかったんですが、たまたま当時の『ぷよぷよ』のマーケ担当が『サムライ&ドラゴンズ』の担当もやっていたので、開発運営タイトルに関係する情報やマーケ施策などの情報は全部もらったり相談したりしていました。でも、セガにいる全員が開発運営ノウハウや情報を理解しているわけではなかったので、いわゆるソーシャルゲームの宣伝手法をベースに、ぷよぷよでいつも行っているTV-CMを中心とした広告やオフラインでのタッチポイントを増やすなど、わかりやすいことを実施しましたね。

松永:まさに“けものみち”を進んでいく感じでしたよね。

――なるほど。ちなみに10年続く長期運営の秘訣はありますか?

松永:秘訣ですか……秘訣と呼べるものはないと思っています。とにかく飽きないようにネタを出して、ユーザーの気持ちに沿えるストーリーを用意して、反応もらったら次のネタを考えて……ほんとその繰り返しです。『チェンクロ』はもう10年になって、なかなか新規の方が入りにくくなっていますが、そのぶん長く遊んでくださっている方とのキャッチボールになっていますね。

 『ぷよクエ』がうらやましいのは新規ユーザーが多くいることですね。『ぷよぷよ』というコンシューマでの歴史もあって、そこから入ってこられる方もいる。そこのステータスは大きく違いますね。

細山田:『チェンクロ』は新規IPなので、全員が新規ユーザー。一方の『ぷよクエ』は『ぷよぷよ』から知っている方を含めてユーザーがいます。入口が少し違うので、タイトルの立ち位置も違うのだと思います。

松永:だから『チェンクロ』は遊び続けている方と、行けるところまで一緒に歩いていくぞという気概を持ってやっています。強いて言えばそれが秘訣です。

細山田:でも、『チェンクロ』という新規IPにハマってくれた人なので、「自分たちがタイトルを支えたい」という熱いファンが多いと感じますね。『ぷよクエ』にもタイトルを支えてくださる方はもちろん大勢いますが、親子2世代でハマっている人や、『ぷよクエ』からぷよぷよを始めた人などさまざまな属性の方がいらっしゃいます。結果として10年続いた理由を考えると、ファンのみなさんや歴代の開発運営メンバーのみんなが一緒に“頑張ったから”になっちゃうんですが(笑)。

松永:つまるところはそうですよね(笑)。

細山田:個人やチームでロジックを積み上げて狙った部分もあるんですが、チームが一丸となって必死で作った部分や、勘や直感で入れた部分も多いかなと。あと、長期運営を支えてくれるファンがいることも大きいです。積極的に課金して遊んでくださる方がいれば、無課金でも知り合いと長く一緒に楽しんでくださる方もいる。ゲーム内にあるギルドを盛り立ててくれる人が長年一定数いることにも助けられています。

 とはいえ、新規ファンを獲得する必要があるので、アニメやゲームなどのいろいろなIPコラボを仕込んでいます。でも、コラボを先にやったのは『チェンクロ』なんですよね。

松永:ああ、そうですね。社内の『シャイニング』シリーズといきなりコラボを展開したんです。社内に味方になってくれるIPがいろいろあるのはとにかくありがたいですね。

細山田:『ぷよクエ』はしばらくキャラクターボイスなどの音声が入っていなかったですし、コラボをやったのも2年以上経ってからでした。絶対にヒットさせるつもりで作ってはいたんですが、やはり今では当たり前のことが当時はできていなかった……でも始まったら反響が大きくて予算を追加でもらえたため、さまざまな要素を加えていきました。もちろん、社内外の他のタイトルの運営は見ているので、ソーシャルゲームだけではなく、Webブラウザゲームを含めて、先行タイトルを参考にぷよぷよらしくアレンジしていました。

 話は戻るんですが、人が少しずつ入れ替わっている中で、10年間、関わってきた人みんなが必死でやってきたことはタイトルにとって大事だったと感じています。ロジックでやっている部分ももちろんありますが、おもしろい内容にするという根本は家庭用ゲームでもスマホゲームでも変わらない気がするので結果的には精神論になります!

松永:『ぷよクエ』のローンチ時のオリジナルメンバーってまだ残っています? ちなみに『チェンクロ』はもはや僕しかいないんですが……。

細山田:『ぷよぷよ』チームはアプリだけではなく他の家庭用ゲーム機等のタイトルをやっている“マルチタスクメンバー”が多いんです。『ぷよクエ』は元々社内開発メンバーは少人数でプロトタイプを作って、その後、大阪のオーツー社と協力して11年以上制作していますが、社内開発のアプリローンチメンバーは自分とアートディレクターの三瓶(三瓶映さん)、サウンドディレクターの安倍(安倍栄基さん)、くらいですかね。

参考:https://dengekionline.com/articles/102057/

松永:10年振り返ると、そこは一抹の寂しさあるなと。ただ、立ち上げ期のメンバーはもういないんですが、うちも運営初期から参加してくれてるメンバーの中には、チームのトップになってくれた人もいます。当時アルバイトで入ってきた子が、今は現場でディレクターをやってくれてたり。

 10年近く作っているメンバーは“自分のタイトル”だと思ってくれていて、こうすべきということを自分たちで考えてくれるし、提案してくれる。そういうメンバーがいるからやってこられたっていうのはありますよね。

細山田:メンバーの入れ替わりがあっても、チームに入る方のスキルが高かったり、アプリのノウハウがあったり、『ぷよぷよ』や『ぷよクエ』に愛があったりするという人が多かった。運はいいですね。

 あとはファンの声を取り入れる“ぷよクエ応援会議”をやっているんですが、遊んでいる方の声を直接聞けるというのは大変わかりやすいので、いただいた意見は大事に開発運営チーム全員で協議しています。

――両方のタイトルがユーザーの意見を聞いているイメージがあります。

松永:開発の序盤の『チェンクロ』は新しいものを作る意識や「どんどん新しいキャラを出していこう」という気持ちが強かったのですが、途中からユーザーと向き合う運営のほうがいいと気がつきました。そこから、ユーザーに人気のキャラや、支えてくれている人の意見を取り入れるように変わっていきました。ストーリーにも意見を取り入れることをやっています。

 ユーザーはうれしいし、開発はやりがいがあるので両者にとっていいこと。ただ、いつごろにそういう考えになったのかは覚えていませんが(笑)。

――必死でやっていると細かいことは覚えていないですよね。

松永:個人的に節目だったと感じているのは電撃さんの人気投票ランキングなんです! 参加してくれた方からの膨大なメッセージを受け取った時に、熱量をすごく感じて「これはもはや我々のタイトルではなくて、ファンのタイトルなんだ」ということを実感しました。

――『チェンクロ』の人気投票は、毎年テキスト量が本当に多くて、コメントをすべて読み切るには時間がいくらあっても足りないです。

松永:本当にそうで、一度には読み切れないので「つらい時に100件ずつ読もう」と決めていたんですが、読み切るのにすごく時間がかかる。そうしているうちに次の年の人気投票が始まって……と。

 でも、本当にコメントやご意見には救われました。いただいたコメントはすべて取ってあるので、いつか引退したら、いただいたコメントを毎日読み返して過ごそうと思っています(笑)。

細山田:『ぷよクエ』でも定期的にアンケートを実施しているのですが、その時に「やってほしいこと」や「コラボしてほしいIP」などをヒアリングしています。その結果をもとに、企業とのコラボを実現したり、マンガやアニメの版元と交渉したりすることも多いのですが、ファンの声というものは大きな力があり、お声掛けしてから数年後に先方からお声掛けいただいて、大きなIPコラボが決まったりすることもあります。なので、アンケートを行う際は、ぜひご協力いただけると、開発運営チームとしては大変ありがたいと思っています。

――10年の間に開発でもっとも変化した部分を教えてください。

松永:開発ではなくて自分の問題になるんですが、5年目くらいまではキャラの名前や設定などを覚えていたんですが、6年目くらいからキャラが多すぎて、言われて思い出すや、調べて把握するなども増えてきました。歳もあると思うんですが(笑)。

細山田:わかる! キャラが増えすぎる問題は『ぷよクエ』でもあって、現状はキャラクター図鑑の枠だけカウントしても6000以上あるんです。名前が出てこなくて他の人に言われてから「ああ、そうだ」ということはよくあります。

松永:6000すごいね。うちは2000以上とかですが、似ている名前のキャラも多くなってきましたしね。最初は50音順に並べて、バランスを見ていたんですが、どこかのタイミングから「どちらにしても、どこかでかぶるな」という考えになりました。

細山田:その発想はなかったです。『ぷよぷよ』のアルルなど、名前を変えられないキャラもいるので気にしていませんでした。

――細山田さんから見た『チェンクロ』の印象/自分のタイトルにはない強みと感じている部分はありますか?

細山田:スマホで本格的なRPGを新規タイトルとしてきちんと作ったこと、そして熱いファンがいて、売り上げも長年きちんと上げていることはすごいと感じますね。それは松永にしかできないことです。

松永:それは10年前というタイミングだからできたことでもありますね。ただ確かに、スマホから始まったオリジナルIPはマーケットでもそこまで多くはないから、本当に嬉しいことです。

細山田:2タイトルを見ると『チェンクロ』と『ぷよクエ』で健全な運営ができていて、いいことだと思いますね。ただ、最初のころのセガネットワークス感謝祭で『チェンクロ』はすごく取り上げられていたので、「『ぷよクエ』ももっと扱ってほしい」と当時思っていました。

(一同笑)

松永:両方とも急に出てきたタイトルなのに、あの差はなぜだったんだろうね。

細山田:同じタイミングで家庭用ゲームで『ぷよぷよテトリス』、アーケードで『ぷよぷよ!!クエスト アーケード』なども展開していて、IPとして露出が多かったからかもしれません。他タイトルはスマホゲームのみでの展開も多かったので、そういう流れがあったのかもしれません……ただその後は、いろいろと盛り上げてもらいましたけど。

 話を戻しますが、言い方はあれかもですが“普通に作ってあれだけ売れるってなんで?”とチェンクロ配信当時は思っていました。新卒採用の面接などで「ストーリーを書きたいからゲーム開発者になりたい」という方がいらっしゃったりするのですが、ゲームは基本コンセプトを重要視して作ることが多く、ストーリー先行でゲームを作るということはほとんどありませんでした。

 シナリオ重視のスマホRPGという見え方でリリースされたこともあり、そういう典型パターンでヒットしたゲームというのは当時なかったので、ゲームをプレイするまでは大丈夫かしら?とゲーム開発者の多くは思っていたと思います。なのに、その典型を通して、これだけヒットした。それはゲーム部分がおもしろいことに加えて、キャラクターの世界観や設定が尋常ではないレベルでしっかりと作りこまれた内容となっており、シナリオを重視したスマホRPGを新規IPで作り上げたという所で、初めて触った時にびっくりしました。

 コンシューマやアーケードのキャラ好きに向けた作り方と近い方法をスマホアプリ初期に丁寧に作り上げたという点は、時代を切り開いたアプリであるという点で評価できると思います。CEDEC AWARDSで著述賞をもらっているのは、そういういろいろな部分まで気を使っているからの結果、評価ですよね。他のアプリでもそこを押しているタイトルはあるんですが、誰よりも先に出しているのは、さすがですよね。

参考:https://cedec.cesa.or.jp/2019/event/awards/prize.html

 ……実は我々のチームも『ぷよクエ』と『ぷよクエ アーケード』との連動部分を評価していただき、ゲームデザイン部門で最優秀賞を受賞しているんですが。

――ありましたね-!

細山田:あと、1カ月の売り上げが大台に乗ったという偉業を、セガのどのタイトルよりも先に達成しているのが『チェンクロ』です。大興奮しているチームや社内をリアルタイムで見ていたので、「新規IPでそんなことを達成できるってすっげーな!」って思いました。それを受けて「あそこを目指せ!」という会議が行われて、かなりすごいこと&難しいことだと改めて思いました。結果的には10カ月後くらいに『ぷよクエ』でも達成したのですが……。松永はドンドン階級が上がって出世していきましたね。

松永:出世って、変わらないでしょう(笑)。

細山田:セガネットワークスやセガのスマホゲームの根幹を『チェンクロ』が支えていたのは事実で、それもあってかプロデューサーやディレクターが社内外問わず評価されています。『ぷよクエ』は『ぷよぷよ』というベースがあるのと、元々ブームがあったので“できて当然”というところがなぜかあって、結構厳しく見られがちでしたが、お互いに切磋琢磨していけるスマホタイトルが社内にあって、それに同期が関わっていたというのは心強かったです。

 あとは『ちぇいんくろにくるローグ』などの広がりも行っている。そこはチームとしてすごいですよね。

――では、松永さんから見た『ぷよクエ』の印象/自分のタイトルにはない強みと感じている部分は?

松永:ゼロからのタイトルではなく、今もコンシューマで盛り上がっている『ぷよぷよ』がベースにあるのは強みですよね。細山田は、『ぷよクエ』以前からずっと『ぷよぷよ』を盛り上げていて、今もeスポーツやいろいろな場所へとIPを広げ続けているのが、本当にすごいなと思います。だから、新規のユーザーさんが今も『ぷよクエ』に入ってくる。

 また、アクションパズルゲームとしての作りがしっかりしてるのも強い。個人的にも『ぷよぷよ』は歴史に残る神パズルゲームだと思っていますが、それをモバイルゲームにリデザインしなおして、ちゃんとおもしろいのがすごいなって当時から思ってました。そして、10年経った今遊んでも変わらずおもしろい。ほんとすごいです。

 『ぷよクエ』はこの2つを兼ね備えていて、他にそういうゲームってないんじゃないかなと思います。スマホゲームはあくまでIPの一部で外にも広がっていて、それでいてスマホゲームの『ぷよクエ』自体も素晴らしいゲームっていう。だからコラボをやったりしても、新しいユーザーがたくさん来るし、そして残ってくれる。すごくいい循環ですよね。

――やはりコラボでは新規ユーザーが多く来るのですか?

細山田:リリースから時間がたつと、一度プレイした人がどんどん増えていってしまうので、復帰ユーザーが多くなるというのはどのタイトルでもそうだと思うのですが、コラボきっかけなどで『ぷよぷよ』自体を知らない、遊んだことがないという若い子が遊ぶようになっているのは感じています。

 あとは、わりと家庭用ゲームから入る人もいるのが特徴です。『ぷよぷよ™テトリス®2』を最初に遊んで、その後に「スマホで『ぷよクエ』プレイするようになったという人にたくさん出会いました。あとは両親が家庭用タイトルをプレイしていて、その横で見ていた子どもが携帯を借りたり、自分のスマホを持ったりして、ぷよクエをプレイするようになったというケースもよく聞きます。

 長く運営を続けていくと新規ユーザーを獲得するのは、どんどん大変になります。競合タイトルも多く、新しいファンを獲得するには大きな宣伝などが必要です。だからこそこれから新規アプリを立ち上げるのは、相当コストをかける必要があり、とにかく大変という印象です。

松永:新規タイトルでのユーザーの獲得は本当に難しいですね。

細山田:とはいえコラボもコンテンツによって、いろいろあります。コラボ先を決める際に『チェンクロ』でやっているから相談してみたら、タイミングでNGということもある。逆に、他タイトルでお願いに行ったら「『ぷよクエ』でもやってほしい」と言われることもある。担当者が知っているから理解も早くてOKが出れば、逆に昔から存在するゲームということで「古いゲームとのコラボは意味がない」と断られることもある。本当にいろいろですね。

 タイトルに触れていただくきっかけはなんでもいいんです。それこそコラボでなくて、『ぷよぷよまんじゅう』からでもいい。入口をとにかく広げたいんで、カフェでのコラボも行っていました。それこそ、カフェも『チェンクロ』が行っていたものですね。

参考:https://dengekionline.com/elem/000/000/762/762148/
参考:https://dengekionline.com/elem/000/000/934/934326/

松永:秋葉原でやったチェンクロ酒場ですね。あれはおそらく“ぷよクエカフェ”の前ですね。

細山田:コラボでお酒を出していいんだ、って思ってマネしようと思いましたね。

『ちぇいんくろにくるローグ』×『ぷよぷよ』コラボ開催中!

――『ちぇいんくろにくるローグ』で『ぷよぷよ』コラボをすることになった経緯を教えてください。

松永:短いメールで細山田に「コラボさせてほしいんだけど」と送ったら、その日のうちに「いいよー」って戻ってきたのがきっかけですね。

細山田:軽いノリ! それで「GOGO!」となりました。

――素晴らしい!(笑)

松永:長い歴史のあるIPなのに、ほんとありがたい。

細山田:お互いに自社タイトルですからね。守ってもらう部分もあるんですが、ゆるいほうがいい部分もある。もともとはフットワークのいいタイトルですから、なるべく軽いノリでやっていきたいなと思います。『ぷよクエ』でも『Mirrativ』さんとのコラボを度々行っており、内容を把握していたので即OKと判断できました。

――今回のコラボの内容/注目ポイントについて改めてご説明いただけますか?

松永:『ちぇいんくろにくるローグ』は、カワイらしい3Dで描かれたキャラがRPGっぽい冒険を繰り広げるゲームになっています。今回のコラボでは『ぷよぷよ』のキャラが同様に、ワイワイとRPGっぽい冒険を繰り広げるので、ファンの方に新鮮に楽しんでもらえるのではと思っています!

 またシグが無料で手に入ります。本作では、自分で設定するパーティキャラは2人だけで、プレイしていると冒険中にどんどん他のプレイヤーのキャラが加わって、パーティが増えていくゲームになっているので、『ぷよぷよ』パーティも気軽に楽しんでもらえるはずです。

 またRPGっぽい冒険と言いましたが、“ぷよ”がバトルで出てくるので、ぷよを攻撃するという体験は、それこそ『ぷよぷよ』の原点となっている『魔導物語』を遊ばれていない方には新鮮なんではないでしょうか。

――サービス開始から3カ月が経った『ちぇいんくろにくるローグ』ですが、手応えはいかがでしょうか? また、今後の展望は?

松永:セガは文化的にゲームを作りこんでしまうので、気軽にプレイいただけるMirrativ(ミラティブ)のライブゲームという場所にマッチするのか、探り探りでチャレンジしたタイトルでもありました。結果的に、喜んでいただけているのかなと思います。一方で配信があるからこそのおもしろさというのは、やってみて気づくことも多く、まだまだだなと思うことも多いですね。

――もとからの『チェンクロ』ファンというよりは、新規ユーザーにプレイいただいているのでしょうか。

松永:そうですね、新規の方が多いです。Mirrativのユーザーに『チェンクロ』を知ってもらうのがもともとの目標だったので、良かったです。あと個人的には、Mirrativは若い人が配信を楽しむ場所かと思っていたんですが、『チェンクロ』経験者のユーザーの方がけっこう多くいて、ひさびさにプレイして楽しいという声も多く聞けて、そこを含めてよかったです。

 また、『チェンクロ』ファンの方の交流の場所にもなればと思っているので、ぜひファンの方も触れてみてほしいですね。

2024年のぷよイヤーについて

――『ぷよぷよ』はeスポーツの分野でもかなり盛り上がっているという印象なのですが、eスポーツブーム以前と今で変わったことはありますか?

細山田:個別に聞けないので数値の実証はできていないのですが、eスポーツから知っていただき、『ぷよクエ』や『ぷよテト2』をプレイしていただいている人はたくさんいると感じます。特に小学生を中心とした層と、それを支えるご両親の層は、おそらくeスポーツをやっていなかったらプレイしていなかったと思われます。

 国体の文化プログラム事業でのeスポーツ参加を5回やっていることや、会社に支援していただいていることは大きいです。会社がやることは通常だと利益に繋げる必要があるんですが、未来への先行投資としてやっている部分もあり、そこは恵まれている部分です。

――繋がっているわけですね。

細山田:『ぷよクエ』や『ぷよぷよテトリス』を含めて広げようと展開していることは、すべてがイコールではないんですが、繋がっているんです。最近ではVチューバー(バーチャルYouTuber)さんがプレイされて話題になったこともあります。

 結果として、『ぷよぷよテトリス』シリーズで300万本以上が全世界で売れています。発売から3年以上経ったタイトルがいまだに売れているのはeスポーツ展開や動画配信などの取り扱いが積み重なって起きているんです。

 難しいのは先ほどもお話ししたように、いろいろな事象がタイトルに貢献していることを証明できないこと。そこは悩みどころですが、支えていただいているファンのみなさんと一緒に盛り上げていくこと、できることをこつこつと積み重ねることを続けることが大事だと思っているので、なるべくやっていきたいですね。

――将来に繋がる小学生に訴求できるのは大きいですね。

細山田:強くなりすぎて「小学2年生で引退するんじゃないか?」とか「他のゲームタイトルや競技、嗜好性のあるものとして類似する囲碁や将棋などに流れてしまうのでは?」などとハラハラしているのですが、低年齢の方やシニアの方などまで、広がりはすごく感じています。ただ「続けようとしているならば、新作を出せよ!」と言われてしまうので……そこは頑張りますと!

――Vチューバーやお笑い芸人などがプレイすると、複数人で遊ばれることが多いので、それぞれのファンにも浸透していきますね。

細山田:どちらのファンにも情報が伝わるので、昔からある古いゲームの1つである「ぷよぷよ」としては、新作が最新ハードでリリースされているということを知ってもらうきっかけにつながるので、プロデューサーとしてはすごく助かるんですよ。とはいえ国内だけでなく、海外にも届いていない場所や人も多く、まだまだ広がっていく余地は大いにあると思っています。

――WBS(ワールドビジネスサテライト)にご出演されていましたが、ファンや周りからの反響はいかがでしたか?

細山田:楽しかったのですが、出演が決まってからのスケジュールや生放送本番の緊張感はしびれました。経済報道番組はもちろん初めてで、世界経済がリアルタイムに動く中で情報が刻々と更新される生放送は緊張感がありました。番組の内容もCMの間にディレクターさんが来て「ここはいい感じでお願いします」と現場で突然言ってくるので、緊張感がすごかったです。テレビ番組や生放送には慣れていたつもりでしたが、「初めてテレビに出た時、こうだったな」と昔を思い出しました。

 ただ、番組に関わるチームのみなさんの雰囲気はすごくよくて、終わった後もみなさんが控室にお越しいただきお話をしていただいたり、わざわざビルの下までお見送りしていただいたりと、とても貴重な経験をさせていただきました。松永が何かのタイトルで番組に出る時にはアドバイスできますよ。

松永:いやいや! あなたがしびれるような場所、怖すぎるよ!

(一同笑)

細山田:本格的な取材は1週間前くらいからで、そこからあのボリュームを放送を間に合わせるという速度感はすごかったですね。ただ、その際にも『ぷよぷよ』が好きな方に多数ご協力していただき、成り立ちました。当日はゲーム業界の社内外の偉い人を含めて、たくさんの人が見ていたので、余計なことを言わないように気を使って話をしていました。

『チェインクロニクル』と『ぷよぷよ』の今後について

――『チェンクロ』や『ぷよクエ』が10年続いている一方で、セガの新規アプリが苦戦している印象です。もし新たなタイトルを立ち上げるとしたらこんなジャンルのアプリを作りたいという“野望”はありますか?

松永:『シン・クロニクル』は残念ながらうまくいきませんでした。最後までおもしろいと支持してくれた方がたくさんいて、だからこそ本当に悔しかったですが、おもしろさだけで勝てるタイミングはすでに過ぎたのだと痛感もしました。『チェンクロ』のときのように「どうすれば売れるかわからない」と言われてちゃダメで、どうお客様に伝えるかがすごく重要ですし、同様に運営や関係する人みんなが、強みを理解できるようにしないといけない。

 だから野望というか、新しくやりたいことはもちろんあるのですが、それは完全に新しいものであると同時に、いままで自分たちが作ってきて、おもしろいと感じていただいたものをベースとして持っているべきだなと。ちょっと変えただけじゃんって言われるのはもちろんダメなので、すっごく新しいけど、自分たちの強みも活きるもの。それを提案していきたいと思っています。

細山田:真面目!

松永:真面目ですよ(笑)。でも『ぷよぷよ』もそうやって広げていると思うし、今のセガの強いタイトルはそうやって勝負してると思うので、いま世界でゲームファンが増え続けている中、いっしょに勝負していきたいなと思いますね。

細山田:昔と比べて今はタイトルの規模がまったく違う。小さいことをしていても勝てない時代なので、多大な宣伝費と開発費を会社に承認してもらった上で、開発が開発に集中できる環境を作らないといけないと思っています。あとはタイミングを見ることや、しっかりとしたゲームデザイン、おもしろいものを作るチームを作ることが必要だと思います。

 それとは別に新しい技術を組み合わせて、新たなものを作るのは皆がやりたがっています。それでバズることをできたら、すごくいいですよね。さらに、新しい技術や思想を持ってIPを引っ張っていくことも求められるので、そこは探っていく必要があります。いろいろと突き詰めていくと『ぷよぷよ』とは関係ないものを作るということになるかもしれない……というところで、ぷよぷよIP担当者としては考えるべきことが多くなるので、それは少しジレンマとしてありますね。

 とはいえ「新しいことをやらないの?」といろいろな人から聞かれるので、何か新たな試みをできるといいですね。だからこそ『ちぇいんくろにくるローグ』は横で見ていて、少しうらやましいと思いました。

松永:ぜんぜん違う角度でのチャレンジができて、おもしろかったですね。

細山田:松永も言っていたようにスマホアプリで戦うのは、考えることが多いうえに巨額を投資する必要がある。中途半端なタイトルでは太刀打ちできない時代になっていますね。

――2024年2月4日が100年に一度の「にせんぷよねん、ぷよの日」でしたが、2024年は『ぷよぷよ』でどのような展開をしていくのか、お話できる範囲で聞かせていただけますか?

細山田:引き続き、eスポーツや『ぷよテト2』の展開、『ぷよクエ』の開発運営アップデートは行っていきます。他にも『ちぇいんくろにくるローグ』やメダルゲームの『ビンゴシアター』とのぷよぷよコラボなど、いろいろな展開をしています。また『ぷよクエ』は4月で11周年ということで、新しいことも仕込んでいます。先日の生放送で『ぷよクエ』で新たなコラボを仕込んでいると発表したのですが、順調にいけば現状3月くらいにはアナウンスできると思うので、引き続き頑張ります!

――『チェンクロ』の今後の展望はいかがでしょうか?

松永:まず継続していくのが何より大事だと思っています。また、先ほども話しましたが、昔アプリをやっていた人が『ちぇいんくろにくるローグ』で再び触れているのはすごくいいと個人的に思いました。タイトルが広がっていくことは、今支えていただいている方にこたえられることの1つ。ゲーム内でおもしろいことを用意することはもちろん、一緒に楽しむ仲間が増えるチャレンジを引き続きやっていきたいです。

――ありがとうございました!

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