『即死チート』9話感想。クライマックスに向け一斉に物語が動き始める。リュートと花川のコンビには平穏に暮らして欲しい(ネタバレあり)

米澤崇史
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 2024年2月29日(木)に放送されたTVアニメ『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』第9話“自分だけ助かりたい一心のクラスって感じよね”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』9話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

生き残るために重要なのは“土下座”なのか

 ようやく目指していた王都に到着し、クラスメイト達と合流を果たした夜霧たち。今までクラスで目立っていなかったのもあり、ほとんどのメンバーが夜霧のことに気づいていないのはなかなか酷いです。

 夜霧たちを見捨てる判断をした矢崎は、秋野に主導権を奪われて影響力をほぼ失っているようで、表情もどこか浮かない様子。矢崎の“統率”って、最初こそ凄い能力にも見えたんですが、花川や裕樹たちをはじめ離脱者を結構出していて強制力は対してなさそうですし、戦闘時には役に立たないと考えると、能力者としてのヒエラルキーはあまり高くなさそうなんですよね。

 むしろ自分にギフトを使われるリスクを考えれば仲間には置いておきたくないくらいで、どんどん立場がなくなっていくのは納得感があります。

 夜霧は“害虫駆除人”、知千佳は“利己的な鍛冶屋”というギフトにそれぞれ偽装していたようですが、あらかじめ夜霧の監視役として送り込まれていた3人だけは本来の能力を見抜いていました。ただ、二宮やキャロルはともかく、夜霧以上に常識がなさそうな深井を監視役にする“教団”という組織もある意味でヤバそうな気がします。誰がどう見ても不審で目立ってそう。

 監視役の中でも、二宮だけは特別夜霧の能力をもっとも危険視しているようですが、二宮が所属する“研究所”は、朝霞や以前にシオンに召喚され自爆した職員が所属していた組織でもあり、もっとも夜霧の能力の危険生を知っているからだと思われます。

 あまりにもへりくだりすぎて夜霧をイラッとさせてしまいそうにはなったものの、夜霧と何度もエンカウントしながらもしぶとく生き残っている花川の存在を考えると、この世界で生きる残る上で重要なのは、自分の弱さを認めてためらわず土下座することなのかもしれないとも思い始めました。

 一方、その花川はアオイから捨てられたあと、今度は魔族の眷属であるリュートに連れ回されることに。アオイにさらわれた時もそうでしたが、花川自身はまったく善人ではないにも関わらず、なんか段々と好きになってくる不思議な魅力があるキャラだなと。

 さりげなく『ときメモ』ネタが盛り込まれているなど、オタク独特の超早口トークを下野さんが熱演してくれたのも相まって、今回はとくに生き生きとしていたなと思います。スタッフからも愛されているのか、土下座からそのまま逃げ去ろうとするシーンは妙に作画の気合が入っています。

 また、前までのアオイとのコンビも良かったんですが、今回のリュートくんちゃん(?)とのコンビも違った良さがありますね。女の子の方が良かったという結構無茶苦茶なワガママを聞いて女の子の姿になってあげたり、花川がシオンに殺されそうになったら助けたり、リュートはあらゆる登場人物の中でも一番花川に優しく接してあげているキャラクターなのでは(魔神の眷属ではありますが)。

 個人的に美人だけどちょっと地味そうな見た目がドストライクなのもありますが、できることならリュートには花川と平穏に暮らしていてくれないかなという想いがあります。

結局何もさせてもらえなかった“エロゲマスター”牛尾。夜霧の排除を目論むシオンもそろそろ危なそう

 第9話は花川たちだけではなく、オリジン・ブラッドに覚醒したエウフェミア、大司教の罠にはめられた聖王、クラスメートへの復讐を開始した篠崎綾香、鳳を利用して夜霧を亡きものにしようとするシオンと、様々な視点での物語が動いたエピソードでもありました。

 直近で夜霧達に関わりそうなところでは、篠崎とシオンの件かと思いますが、不運にも真っ先に篠崎の復讐対称になってしまった“エロゲマスター”こと矢崎は、8話で国王に指を切り落とされたかと思いきや、9話でも篠崎に顔面をボコボコに殴られて死ぬという、良いところなしのまま退場に。時間停止は本来、かなり強力な能力だったと思われますが、作中では結局一度足りとも使わせてもらえませんでしたね……。

 エロゲ三貴族の中で一番戦闘向きの能力が時間停止ですし、篠崎なら残る二人も簡単に殺せたはずですが、あえて見逃して一人ずつ殺すと宣言するのは、次に襲われるのは誰なのかという恐怖をクラスメート達に味わわせることも含めての復讐なのでしょう。篠崎の怒りは理解できるものの、まったく同じ立場におかれた夜霧と知千佳が、主犯である矢崎を一応は許したのとは対照的です。

 花川は牛尾たちに見つかることを避けようとしてましたが、明らかに近い趣味をもってそうなのに関係がよくなさそうだったのはちょっと意外なところ。花川が仲が良いのは東田たちだったので、そもそものグループが違っていたんだとは思いますが、同じオタク同士でも相容れない部分があったのかもしれません。

 一方のシオンは、その場の軽い思いつきだったと思いますが、夜霧を殺すために鳳を利用したのはかなり迂闊なことをやったなと。何も情報がないときならともかく、レインとアオイという二人の賢者の失敗を見てもなお、候補生たちで夜霧をどうにかできると思うのは、大分楽観視が過ぎているように感じます。関与が露呈してしまったら、今度はシオンが夜霧の敵になるわけですからね。

 仮にそうなっても、自分ならどうにかできるという自信がシオンにあるからこそだとは思いますが、今まで安全圏にいたシオンがついに危ない橋を渡り始めた感じがあります。

 暴走する篠崎、リズリーと合流したエウフェミア、リュートの復讐に巻き込まれる花川と、広がり続ける物語がどのように収束していくのか楽しみです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©藤孝剛志/アース・スター エンターテイメント/即死チート製作委員会

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