『即死チート』10話感想。もこもこさん、夜霧に負けず劣らずのチート存在説。相手が悪すぎただけで本当は桁違いに強かったドラゴンの力に驚く(ネタバレあり)

米澤崇史
公開日時

 2024年3月7日(木)に放送されたTVアニメ『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』第10話“むかしのおんながあらわれた。ともちかはおどろきとまどっている......”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』10話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

どんな敵でも逃げられない夜霧ともこもこさんの凶悪コンビ

 アバンでの梨央奈との戦いから始まり、まさに“篠崎無双”ともいうべき展開が詰まっていた第10話。

 次々とクラスメートへの復讐を果たしていく篠崎ですが、ギフトを弱体化させていた王を殺してから再戦を挑むあたり、戦いという行為そのものを楽しんでいるのか、自分の力が通用しないという絶望を味あわせた上で殺したいのか……。

 退屈そうにしている篠崎の表情からは前者を期待していたら拍子抜けだった、みたいな印象も受けましたが、見捨てられたことへの復讐心からは離れていっているような気がします。

 一方、夜霧たちは9話ラストでシオンから依頼を受けた鳳の雇った暗殺者の良介から付け狙われることに。ある程度夜霧の能力の弱点を把握しているようで、自分が即死能力の対象とならないように、直接の関与を徹底的に避けていたようですが、もこもこさんが電波の発信源を突き止めたことで計画は失敗。

 その上、良介の切り札だった精霊姫と精霊王もあっさりと倒しているなど、実はもこもこさんが夜霧に負けず劣らずのチート存在であることが改めて分かった回でもあった気がします。機械関係の知識であったり、知千佳に対するフォローなど、夜霧の苦手とする分野を的確にカバーしていて、お互いに得意とする範囲が被っていない2人が組んでいるというのがヤバさに拍車をかけていますよね。

 その後、戦意を完全に失って降伏していた良介を感情のまま殺すという、夜霧としてはかなり珍しいシーンも印象的でした。良介が使っていた機械人形は、夜霧にとって始めて出来た友人である槐(えんじゅ)を模していたもので、槐を利用した形となったのがどうしても夜霧にとって我慢ならなかったのでしょう。アニメでは描写がなかったのでちょっと唐突な印象がありましたが、原作では、描き下ろしの番外編で夜霧と槐の交流が描かれていました。

リュートのために自分の危険を顧みなくなった花川の成長に感動

 9話では、夜霧たち共々落ちこぼれ能力者として扱われていた悠吾でしたが、実は“コック”のギフトはめちゃくちゃ汎用性の高い強能力であったことも判明。

 無能に見せかけて本当の実力を隠していたという、能力モノの主人公あるあるパターンですが、それでもあっさり死んでしまうのが本作の無情さ。今まで登場したドラゴンは夜霧に即死させられていたので力を発揮するタイミングがありませんでしたが、ドラゴンの能力を得た篠崎の暴れっぷりを見るに、本来は規格外の強さをもつ存在だったんだなと。

 確かにこれだけの実力差があるとなると、1話でバスが襲われた時、クラス全員で協力して立ち向かったとしてもドラゴンに対抗するのは無理だったでしょう。夜霧たちを囮にして逃げた矢崎の判断にも一定の正当性はあったことが分かります。

 それでも夜霧が手を下せば篠崎も即死すると思いますが、復讐を果たそうとする篠崎の立場を理解しているのが夜霧たちでもあるので、篠崎を止める存在がいないんですよね。篠崎にとっても同じ見捨てられた者同士である知千佳らは復讐の対象外でしょうし、「味方ではないけれども敵でもない」という変わった関係性のまま話が進んでいるのが面白いところ。

 とはいえ一応は友人だったクラスメート達が殺されているので、普通の作品なら「復讐は何も産まない」的な話になって篠崎を止めようとする流れだと思うのですが、自分たちに直接危害が加えられないなら、とりあえずは放置でもいいかという判断のドライさが本作ならでは。もっとも夜霧たちは別の敵から命を狙われている最中なので、篠崎について対処している暇がないのもあると思いますが。

 しかし、大久保瑠美さんの声でドラゴン的な技名が繰り出されるのを聞いていると、『Fate』シリーズのファンとしてはエリザベート・バートリーを思い出すなぁと思っていたら、以前に大久保さん自身もXで言及されていました。異世界受付嬢だけではなく、ドラゴン娘役にも定評が……!

 また、10話を見て、やっぱり花川とリュートのコンビが好きだなぁと改めて思いました。明らかに魔神アルバガルマ本人よりもヤバいヤンデレな妹マナのペースに飲まれつつも、花川に「巻き込んで悪かった」なんて殊勝なことを言ってくれるキャラは、本作にはリュートの他にはいないでしょう。

 花川もリュートに対しての感情が明確に変化していて、今までの花川ならリュートをマナに売ってでも自分だけは生き残ろうとしようとしたはず。マナの封印が解けて世界が滅びでもすれば、当然自分も無事ではいられなくなるのを分かっていながら、花川が第一に頼んだのはリュートを見逃して欲しいということでした。花川にできた始めての本当の仲間がリュートだったんじゃないかなと思います。

 それと並行して始まるクラスメート同士のバトルロワイヤル。シオンとしては単に気まぐれな思いつきだったんでしょうが、夜霧が鳳の罠に掛かってしまった瞬間だったのが実に最悪のタイミングです。夜霧がいれば、どんなギフト持ちでも相手にならないでしょうが、知千佳一人となるとまったく事情が変わってきます。

 夜霧と離れ離れとなった状態で、知千佳はクラスメート同士の殺し合いという地獄から生き残れるのか。次回は見逃せないエピソードになりそうです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©藤孝剛志/アース・スター エンターテイメント/即死チート製作委員会

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