『バーンブレイバーン』10話感想:ルルもまた、イサミとスミスに並ぶヒーローだったと知る回。9話を見直すと色々な違和感の真相に気づく(ネタバレあり)

米澤崇史
公開日時

 2024年3月14日(木)に放送された、『勇気爆発バーンブレイバーン』第10話“日本ではそれをOMIAIという”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『勇気爆発バーンブレイバーン』10話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

「未来から来た」という衝撃の発言がいきなり飛び出す

 第9話ラストのスペルビアとルルのやりとりからの再開かと思いきや、「未来から来た」という衝撃的な告白からスタートした第10話。スミス=ブレイバーンについては、かなり前から予想できていた人も多かったと思うんですが、ここにきてシナリオギミックに驚かされる展開が待っているとは、完全に嬉しい誤算でした。

 ルルが経験したもう一つの未来の結末は、大破してライトだけが光るブレイバーンの姿もあってかなりショッキングでした。ただ初めてこのシーンを見た時、「あれ?ルルってもうスミス=ブレイバーンに気づいてなかったか?」と疑問を持ったんですが、その疑問は後で解消されることになります。

 この伏線には完全にやられたという感じで、OPを見直すと大人版のルルらしきキャラの姿も確認できます(10話ではOPが流れませんでしたが)。

 ただ、このイサミとブレイバーンが死んでしまった方の未来が決してバッドエンドではないというわけでもなさそうなんですよね。デスドライヴズとの戦いは終わって地球は平和を取り戻しているように見えますし、イサミとスミスの二人はこの世界でもしっかりとヒーローになっています。ただ、完全なハッピーエンドを迎えるには”二人では”ヒーローが足りなかったということでしょう。

 それにしても、回収したブレイバーンのコアを元にしていたり、スペルビアの協力もあったりするとはいえ、ルルやミユの見た目から推測するに十数年ほどでタイムマシンを作っているミユが天才的すぎる。ロボットアニメのメカニックは何かと天才が多いですが、あっさりタイムマシンを作ってしまったミユもその一人に数えられそうな気がします。

 スミスの死を経験し、これ以上誰も死なせないため一人で戦いに行こうとするイサミ。その結果が10話でのルルの回想した世界ということなんでしょうけど、イサミを死なせないために完全に落としにいくルルのシーンは笑わされました。

 未来では過去を変えるために戦闘訓練も受けてそうですし、人間の落とし方も知っているのだろう……と分かってはいながらも、泡を吹いて倒れるイサミを確認したルルがガッツポーズする姿を見て、久しぶりに「イサミかわいそう」の感情が湧いてきました。

 一方、ルルの頼みを一度断ったスペルビアが裏でこっそりとブレイバーンに相談しにいくあたり、いつの間にか二人が何でも話せる友人同士みたいな関係性になっているなと。このシーンの二人の間で語られた“相手を信じて受け入れる”ということは、ルルとスペルビアに限らず、イサミとスミス、イサミとブレイバーンにも通じていて、ある意味本作のストーリーのテーマでもあるのかなと思います。

9話の大人びたルルは、すでにタイムリープした後だった説

 スペルビアに乗り込もうとするルルのシーンでは「セカンドバースディだ!」というセリフがスミスがスペルビアに乗り込もうとしていたシーンと同じで、着ているTシャツといい、未来の世界を経ても相変わらずスミスを真似ているのが微笑ましいですね。

 二人が「ガガピー」で会話するシーンもあり、実は「ガガピー」がデスドライヴズ語的なものだったことも判明。ルルの側が「責任をまっとうする」ということを言っていて、スペルビアが受け身で、終始ルルがリードする側だったのが面白い。ただ、ルルを受け入れるのに腕立ての特訓は何の意味があるのかというのは気になるところです。

 一方、ルルに気絶させられたイサミはスミスの部屋で目を覚ましますが……眼の前にあるスミスのシャツに顔を埋めながらすすり泣く姿は、気持ちは分かるものの傍目に見ると完全にヤバい人そのもの。

 プラムマン上級曹長が気を使って去っていくシーンでは腹筋をやられましたが(そもそも曹長は何をしにスミスの部屋に寄ったのか)、写真立てに掘ってあった「SURVIVE(生きる)」というメッセージを読んで、イサミが生きるために戦うことを思い出す流れは熱い。

 その後のルルとのスペルビアが一つになるシーンでは、スペルビアが感じ取った未来のルルの記憶がグッと来ました。ブレイバーンとイサミを失い、悲しみに暮れるルルの頭を恐る恐る撫でて慰めようとしたり、ルルの成長を子どものように見守り、“ル↓ル↑”ではなく“ル↑ル↓”として相棒と呼ぶまでの流れは、ここだけ1話分のドラマとしてじっくり見たいと思えるほど。

 その後のスペルビアとルルが一つになるシーンは、『創聖のアクエリオン』の合体シーンなんかを思い出していろいろ大丈夫か心配になりつつも、魔法少女モノのようなルルの変身バンク(?)にはスタッフの気合を感じましたね。

 ついに物語もクライマックスへと突入した感のある10話でしたが、ちょっと注目したいのが、未来のルルがタイムリープしてきたタイミングです。
 
 ルルの服装やスペルビアの「ブレイバーンが生まれた瞬間に戻る」というセリフから察するに、ルルが戻ったのはスミスがクーヌスと相打ちした瞬間と考えて間違いないはず。この瞬間、スミスはブレイバーンとなって1話の時間軸に戻っていたわけですが、ルルは強制脱出後に目覚めた時点で未来のルルと中身が入れ替わっていたということでしょう。

 少なくとも9話Bパート以降のルルについては、すでに未来から来たルルになっていたと考えていいと思います。9話を見たときに、あまりにもルルの成長が急激だなと感じてはいたんですが(それだけスミスの死のショックが大きかったのだろうと納得していました)、中身がすでに十数年後の成長したルルと入れ替わっていたと考えると違和感が全部解消されるんですよね。

 9話では、ルルがイサミのことをスミスと同じくらい気にかけて名前を呼んでいたのもちょっと引っかかっていたポイントでした。これもルルがスミスの死後にイサミと支え合っていた経験をすでにしていたと考えると辻褄が合います。

 また10話のルルの回想では、ブレイバーンの正体がスミスだったことを知るくだりがありましたが、9話のルルはバーンブレイバーンに対してイサミとスミスの二人の名前を呼んでいます。なのでこのときのルルは、“既にブレイバーンがスミスであることを知っている=未来のルル”と考えるのが自然だと思います。

 9話の感想では、BパートはAの続きではなく、1話に戻ったスミスがやり直した後の世界なんじゃないかという考察をしていたんですが、今回のエピソードでこの線はさらに強くなったんじゃないかとも思います。

 ルルがタイムリープしていない場合、バーンブレイバーンへの合体そのものが成功せず(実際10話の回想でパーンドラゴンのパーツの残骸らしきものがない)、我々が見た9話とは異なる展開になっていて、スミスとルルの二人がやり直した結果生まれた世界を我々は見ていたんじゃないかなと。もしかしたら、ルルがタイムリープしなかった世界が10話冒頭に繋がっていたのかもしれません。

 物語の終盤に差し掛かっても、こうした考察ポイントが出てくるのが『ブレイバーン』の面白いところ。残す話数はあと僅かとなりましたが、3人のヒーローたちの行く末を最後まで見守りたいと思います。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース

©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

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