『即死チート』11話感想:アイキャッチのリュートの笑顔が切ない。目の前の惨劇を「仕方ない」で割り切る知千佳のドライさが凄すぎた(ネタバレあり)

米澤崇史
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 2024年3月14日(木)に放送されたTVアニメ『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』第11話“Phase 2”の感想記事をお届けします。

【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』11話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。

久しぶりに感じたキャラクターが死ぬ悲しさ

 11話は、なんともいってもこれまでの感想で何度も言及してきた、花川とリュートのコンビが好きだった身としては辛い回でした。この作品で仲間のために命を投げ出す、綺麗な死に方をした初めてのキャラクターではないでしょうか。

 おそらく、知千佳と同じように段々キャラクターの死に対して感情が動かなくなってきていたのは筆者だけではないと思いますが、リュートの死は久しぶりに明確に“悲しい”と感じられる死でした。Aパート終わりのアイキャッチで描かれた、花川に向けた別れの笑みは、完全にヒロインの風格があります。

 そのリュートに逃がされた花川はついに夜霧と合流。最初に夜霧を殺そうとした花川が、ここに来て一緒に行動するようになったのはちょっと感慨深いものがあります。仲間になっているわけではなく、夜霧としても別に花川を連れていきたいわけでもないし、花川も早く夜霧から離れたいけど、確かに色々な状況が花川を利用する方が都合がよくなっているのも面白いなと。

 花川が同行するようになり、スマホを使ったり、殺意を察知して先に即死させたり、視聴者にとってすでに当たり前になっていた部分に改めてツッコミを入れてくれるのはちょっと新鮮でした。視聴者の視点だと幸正が夜霧たちを殺そうとしていたことは分かっていますが、花川視点からすれば夜霧がエレベーターの先に偶然いたクラスメートを出会い頭で殺したようにしか見えないので、そりゃあドン引きしますよね。

 冒頭では、殺し合いを命じたシオンに反抗するという、深井の意外なシーンもありましたが結局即死は通用しないまま呆気なく退場。レベルアップでHPが全開するのはRPGではよくあるので感覚的には分かりますが、死んでいようとレベルアップ処理が走り続けて勝手に復活するのがなかなかエゲつない。

 ただ、夜霧の即死能力の場合レベルが上がろうと蘇生の処理ができないと思いますし、事前にかなり警戒を重ねていたレインと違い、シオンは未だに夜霧を侮りまくっているのもあって、シオンにとって夜霧は相性のかなり悪い相手になりそう。シオンを即殺してしまうと元の世界に帰るための手がかりがなくなってしまうので、簡単に殺すわけにはいきませんが。

“聖女”が登場人物の中で一番邪悪だったかもしれないという皮肉

 クラスメートたちの殺し合いに始まり、復活したマナの介入もあって、11話は今までのエピソードの中でも一番名前ありのキャラクターが死んだ人数が多かった回だったのではないでしょうか。

 その過程でいろんなクラスメートの能力が披露されていましたが、なかでもぶっ飛んでいたのが“聖女”の力をもつ花宮盟。

 建築物を相手のいる座標にそのまま転移させるという有馬と虻川のコンビも、これが普通の異能バトルロワイヤルものだったら無茶苦茶強力な組み合わせだったと思うんですが、神の力を部分的に行使できる盟を敵にするのは、あまりにも相手が悪かったと言わざるを得ません。

 先に“攻撃が当たる”という結果を確定させて攻撃する因果の逆転に加えて、ワープしたり攻撃を無効化したりと能力の幅も広く、夜霧を除けばクラスメートのなかでも最強格の存在といっても過言ではないでしょう。攻撃・防御共に隙がなく、本人も言っていた通り賢者に匹敵する領域の強さを持っているのは間違いないと思います。

 しかしその一方で、クラスメートとの殺し合いを面白イベントとして楽しめてしまう屈指のサイコパスでもあり、邪悪さでいうと本作の間で相当上位にランクインするキャラクターでしょう。しかもギフトの影響で好戦的になっている他のクラスメートと違って、盟だけは素の性格がこれなので、いろんな意味で救いようがない。シオンに殺し合いを命じられた時は怯えた表情を見せているのですが、無力な存在に見せかけて標的にされやすいよう演技していたのだと思います。

 夜霧がエルボーで直接肉体を攻撃をする非常に珍しいシーンもありましたが、盟が聖女パンチを繰り出した時点でもうカウンターで猫神は死んでいて、ただの非力なパンチになっていたのでしょうね。夜霧に殺されはしなかったものの、何の能力もない状態で魔物が跋扈する森の中に逃げ込んだことを考えると生存は絶望的。ある意味夜霧に即死させられていた方が、痛みや恐怖を感じることなく死ねて幸せだったのかもしれないなと思いました。

 一方、いろいろ事態をややこしくしていた矢崎が、クラスで協力して賢者を打倒しようとする比較的真っ当な方向に進もうとしたのはちょっと意外でした。ただ、将来性を考慮しても矢崎たちの能力ではシオンに対抗できるとは到底思えませんし、典型的な自己評価が高すぎて破滅するタイプだったんだなと、ちょっと親近感が持てるようになりました。

 口ではいろいろ言い訳をしつつも、結局秋野を自分のグループに取り込もうとしたのは、やはりリーダーに返り咲きたいという感情が大きかったからかなと。もっと強力なギフトをもらってリーダーのまま自尊心を満たせていれば、違った結末を迎えられていたのかもしれません。

 そんななか、ギフトによる強制力がない知千佳は戦いに参加せず静観していましたが(ここで殺し合いを止めにいったりしないのが実に知千佳らしい)、実はネクロマンサーだった親友のろみ子に、もこもこさんを奪われるというまさかの展開に。

 なんだかんだ知千佳はろみ子を一度たりとも攻撃しようとしていなかったので、殺したくないという感情があったのは間違いないと思うんですが、数秒で「仕方ない」と切り替えられるドライさは相変わらず凄まじすぎる(夜霧が後ろめたさを感じないように気を使った部分もあると思いますが)。

 そこを考えると、花川は根っからのクズなのは間違いない一方で、あの世界にいながら人間の生死に関してある程度まともな倫理観を維持している貴重なキャラクターでもあるんですよね。なんだかんだリュートが花川を最後に助けたのは、そういう花川に残った善人的な一面を感じとっていたからなのかもしれないなと、別れのシーンを思い出してまたちょっと切なくなりました。

 ラストには、対篠崎用に生成された爆弾(戦術核クラスの威力がありそう)がラストに爆発していましたが、夜霧が焦りを見せるというなかなかレアなシーンも見れました。2門が解放されたという今の夜霧なら、爆発の威力を殺すことも十分に可能なのでしょうが。

 復活したマナ、殺し合いを命じたシオン、復讐を続ける篠崎と、ここ数話の間で並行して進んでいた物語が1本にまとまっていく感じはまさにクライマックスといったところ。残すはついに最終話のみとなりましたが、夜霧たちの旅の行方を最後まで見守りたいです。



米澤崇史:ロボットアニメとRPG、ギャルゲーを愛するゲームライター。幼少期の勇者シリーズとSDガンダムとの出会いをきっかけに、ロボットアニメにのめり込む。今もっとも欲しいものは、プラモデルとフィギュアを飾るための専用のスペース。

©藤孝剛志/アース・スター エンターテイメント/即死チート製作委員会

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