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なんたるタイミング!!【O村の漫画野郎#22】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

なんたるタイミング!!

 あー。その日は突然やってきた。1994年のことだ。編集長の大西さんに呼ばれ、会議室でGRANDチャンピオン休刊を告げられた。

 まあ、ある程度覚悟はできていたので、冷静に受け止められた。たった2年間とはいえ、赤字の隔週誌をそこそこの部数を刷って維持し続けるのは、会社にとって相当な負担だからなあ。

 もっとも当時は、我々には編集部の単体収支は公開されてなかったので、ボンヤリとそう思っていただけだったけどな。

 具体的に言っちゃうと、そこそこのヒット漫画じゃなく、明確な二塁打、三塁打レベルの作品が2本はないと、雑誌の赤字なんて補填できねえのだ。

 2年間でその状態を作れなかった段階で、我々の敗北である。もっと言っちゃうと俺の仕事は、結局雑誌の足をひっぱりまくっていたので、間違いなくA級戦犯だ。プロとしては情けねえ限りである。


 ……てな感じで反省しつつ、とりとめもなくボーッとしてたら、アスキーの金田一君から唐突に電話があって、明日会いてえとのこと。

 アスキーの金田一君と広瀬君とは、アミーゴ(桜玉吉)の仕事場で、アホみたいな話ばっかりしてて、既に仲良くなってたのよ。


 翌日、何なんだろう? アミーゴがらみでトラブルでもあったのかしらん? と思って待ち合わせの場所に行ったら……全然違った。

 今度、アスキーで漫画雑誌を新創刊するので、そのスタッフに加わってほしいという内容だった。

 ……驚いた。その内容ではなく、そのタイミングの良さに。前日に雑誌の休刊を告げられた翌日に、新雑誌のオファーである。物凄えなあ!! もしかしたら休刊の話を彼らが知ってるのか?……んなワケねえ、秋田書店の大半が知らねえ話を知ってるはずねえもんなあ。


 これはもしかして、アレか? “シンクロニシティ”ってヤツかしらん!?

 “シンクロニシティ”ってのは狩撫さんの漫画読者ならお馴染みなんだが、俺の解釈では「一見偶然と思える出来事なんだが、大きな視点で見れば必然としか思えない出来事」っちゅう意味なんだな。

 なんか驚くようなタイミングでの出会いや出来事は必ず意味がある、ってことなの。もちろん俺も、そういった考え方を支持する人間なので瞬間的に、こう判断した。

 “これは絶対にアスキーに行くべきである”と。

 もう理屈もヘチマもねえの。俺の体が、そう判断してるんだもん。だけども、俺は返事を一旦保留にした。べつに勿体ぶったりしたワケじゃねえ。そんなイモなこたぁやるもんか。んじゃ、なぜか? ……以下、次回!!

(次回は11月2日掲載予定です)

奥村さんが編集に携わったコミック2冊が発売中

 特別編でも紹介したように、奥村さんが編集に携わったマレーシア発の2冊の漫画(電子書籍)が発売中です。

 恋愛漫画の短編集『常夏の国で、君と。』(ファクヌール・アヌール著)と、コミカルなヒーローモノとなる『ライデン 1巻』(ZINT著)。


 どちらもエネルギッシュで、日本の漫画とはまた違う読後感を味わえるので、気になった方はぜひ!

O村の漫画野郎 バックナンバー

イラスト/桜玉吉

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