グダグダ悩んだ末に!!【O村の漫画野郎#23】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

グダグダ悩んだ末に!!

 あー。アスキーからのオファーを受けて、こりゃ、行かにゃなるめえ、と確信した俺だが、返事は一旦保留。なぜなら、秋田書店には、俺には立派過ぎる師匠や尊敬すべき先輩方、有能な後輩がいる中で、人間関係的には辞める理由が1ミリとも無かったんだわ。

 これは御世辞でもなんでもない。(もちろん全くウマの合わない人だっていたけど、そんなもん何処にだっている) 俺にしては珍しくグチグチ悩んだ。人間だもの。


 それでしばらくして老舗の劇画誌『プレイコミック』に配属されてしまった。これはマズイ。配属前に辞めなきゃ、現場のスタッフも大迷惑じゃんか!? 


 そこで背中を押してくれたのは大西さんである。帰りの電車で一緒になった時、(大西さんには、アスキーからのオファーがあったことは伝えていた)思いっきり怒られたのだ。

 「お前、もう行くって決めてんだろ!! プレイの連中に迷惑かかるから、チンタラしてないで早いとこ辞めちまえ!!」


 もう俺の頭の中なんざ、とっくにバレバレだったんだな。本当にありがてえ一喝だった。

 目が覚めて腹をくくった俺は、翌日、プレイのスタッフに頭を下げて辞める意思を伝えた。

 さて、次に報告をすべき人物は……壁村さんである。報告だけじゃなく辞表も渡さねばならない。頭の中がグラグラした。俺みてえな野良犬のような人間を拾ってくれた壁村さん。編集者という生き方を俺に叩き込んでくれた壁村さん。テレ屋で絶対にやりたくないであろう仲人まで引き受けてくれた壁村さん。

 色んなものを受け取っておいて、何一つ恩返しもしねえで、俺はこの会社を去るのか……最低の男だよなあ、俺。5~6発ブン殴られたって当然だ。無茶苦茶重たい気分で、壁村さんと2人で会議室で向かい合った。

 「すんません。会社辞めさせていただきます」なんとか声を絞り出した。

 「そうか」とだけ返事をして、壁村さんは静かに辞表を受け取った。
 それで終了。


 あらあ? 「テメエ! 義理壊しやがって!」そのあと数発のパンチ……を予想してたんだけどなあ。もしかして体調が悪かったのかしらん。……なんて思ってたら、後日、真相がわかったんだ。その真相とは!? 待て!! 次回!!

(次回は11月9日掲載予定です)

奥村さんが編集に携わったコミック2冊が発売中

 特別編でも紹介したように、奥村さんが編集に携わったマレーシア発の2冊の漫画(電子書籍)が発売中です。

 恋愛漫画の短編集『常夏の国で、君と。』(ファクヌール・アヌール著)と、コミカルなヒーローモノとなる『ライデン 1巻』(ZINT著)。

 どちらもエネルギッシュで、日本の漫画とはまた違う読後感を味わえるので、気になった方はぜひ!

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イラスト/桜玉吉

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