“舞台少女ヨルハ Ver1.1a”ゲネプロレポート! 可憐なセーラー服姿で戦場を駆けるアンドロイドたちの悲劇

電撃オンライン
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 2017年の2月に発売されたスクウェア・エニックスの人気アクションRPG『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。その世界観をベースに独自のストーリーが展開していく“舞台ヨルハ”シリーズの最新作“舞台少女ヨルハ Ver1.1a(以下、少女ヨルハ)”が、12月3日から6日まで、池袋の東京建物 Brillia HALLにて公演されています。

 今回、幸運なことにゲネプロにおジャマさせていただけたので、そのレポートを思うがままにテキストにしてみたいと思います。人類に栄光あれ。

※後日写真を追加公開予定です。

性別が逆になったことで増幅された悲劇の物語

 さて、この“少女ヨルハ”について書いていくにあたって、まずは下記の2つを説明しておきたいと思います。

 1つは、この舞台の原作・脚本を手掛けるのはゲームのディレクターを務めたヨコオタロウ氏であるということ。物語は『ニーア オートマタ』と地続きの内容となっており、ゲームとはひと味異なる演出で、機械生命体から地球を奪還するために戦う“ヨルハ部隊”の悲しき戦いが描かれていきます。

 外伝、サイドストーリー、スピンオフ。今回の舞台にそんな概念には当てはまらない。ここにあるのは紛れもなく“ヨルハ”の物語。『ニーア オートマタ』で2Bや9S、そしてA2ら“ヨルハ”たちの戦いに胸を打たれ、今なお胸の奥にその傷と痛みを残す人たちには、ぜひ見てもらいたい内容に仕上げられています。

 2つめに説明しておきたいのは、この“少女ヨルハ”は2018年1月末から公演された“舞台少年ヨルハ Ver1.0(以下、少年ヨルハ)”のアレンジバージョンであるということ。タイトルどおり“少年ヨルハ”では男性陣が演じていた役柄を、この“少女ヨルハ”では女性陣が演じています。

STORY
自動歩兵人形ヨルハ。
その女性型モデルのテストケースとして創設されたF部隊。
そこは少女達が訓練する学校のような場所だった。物語は主人公九号を含む二期生達の入隊から始まる。先輩モデルとの交流を通しながら学園生活に慣れてゆく新人達。
しかし、そこには、ヨルハ部隊に対して疑念を抱く者が現れるようになっていった……。

 この物語の主人公である“ヨルハF部隊”の面々や、彼女たちと行動をともにするレジスタンス部隊は、与えられている役どころこそ“少年ヨルハ”と同じ(レジスタンスは名前が変わっているが、とある共通項はある)。しかし演者はもちろん、その性別までもが変わったことで、当然ながら受け手側の印象も大きく変化することになっています。わかりやすく書くと「あんなに凛々しかった少年たちが、こんなにも可憐になるなんて……」といったところ。

 誤解してほしくないのは、この“少女ヨルハ”は物語としてしっかりと独立しており、『ニーア オートマタ』や“少年ヨルハ”を未経験でもしっかり楽しめるということ。ただし、上記2作を(あわよくばその他の“舞台ヨルハ”シリーズも)体験することで物語に深みが出るのも事実なので、できればすべてを体験してみてほしいというのがイチシリーズファンとしての本音です。

 体験する順番は正直あまり関係ないとも思うので、まずは目の前の“少女ヨルハ”を鑑賞して世界観やキャラクター、ビジュアルなどに興味を抱いたら、これを起点に『ニーア オートマタ』や“舞台ヨルハ”の世界にも飛び込んでみるのもオススメ。深い深~い沼が、あなたを待っている……かもしれない(笑)。

言葉の羅列で攻める“少女ヨルハ”の魅力

 前置きがすごく長くなってしまいました……。肝心かなめのゲネプロレポートについては、あえて多くを説明することなく、思いつくままに羅列していきたいと思います。“舞台のスピード感にならう手法”とこじつけつつ、今はTwitterなどのように短文で端的に情報を伝えたほうが読み手も理解しやすいと思うので! それでは参りましょう。

・演じる女の子たちはみんなキラキラしている

 言葉のとおり、演者のみなさんがとてもフレッシュでエネルギッシュ。それに引きずられたわけではないだろうが、ヨルハF部隊の面々はこれまで以上に“アンドロイドっぽくない”側面を見せてくれます。ネイルのコーデやかわいい服に興味を示す彼女たちには、少し同情してしまいました。そりゃアンドロイドだって、フツーに女子高生したいかもしれないよなあ……。

【主要キャスト】
九号:大西 桃香
二号:青木 志貴
二十一号:小泉 萌香
二十二号:園田 あいか
六号:谷口 めぐ
三号:松田 彩希
四号:鶴見 萌
教官:野口 真緒
ハオウ:関谷 真由
スイレン:春咲 暖
ツルハナ:二瓶 有加

・なのに物語はめちゃくちゃドロドロしている

 これはもうはっきり書いておくと、本作の物語はかなりダークで、胸が痛くなるシーンが盛りだくさん。そしてそれゆえに美しく、胸を打たれるシーンもまた多い。“ドロドロ”というと嫉妬とかそういう、人間臭い感情が思い浮かぶだろうが、この物語はアンドロイドたちの物語にもかかわらず、やはりドロドロしているのがすごい。

 あと、キャストのみなさんが叫ぶシーンばかりなのも大きな特徴。その数たるや、喉がつぶれてしまわないか不安になるほど。でもその叫びが心にクるのもまた事実なわけで……。

・衣装へのこだわりが尋常ではない

 これまでの“舞台ヨルハ”シリーズの衣装は、いずれも並々ならぬこだわりが盛り込まれていたが、今回もその例にもれず作り込みがハンパじゃない。

 特筆したいのは、ヨルハ部隊の面々の衣装はセーラー服やブレザーがベースになっていること。いつものゴスロリじゃない……と最初は違和感があったものの、すぐに見慣れてしまいました。むしろ“女子高生”を連想させるその造形が、人とは似て非なる存在であるアンドロイドの悲哀を増幅させた感もあり、今回の舞台を象徴しているようにも思えます。

 仲間を助けるために一生懸命舞台を走り回る九号役の大西桃香さんの背中に、9Sと同じタイプのショルダーバッグを見つけたときは、ちょっと目頭が熱くなりました。

※補足:ヨルハ部隊や教官、レジスタンスの面々については“キャラクタフォトブック”がグッズとして販売されています。舞台を見て彼女たちのファンになった方は購入を検討してみてもいいかも?

・戦場の地名が明確になった

 今回の物語では、作戦を展開する場所の地名が要所で出てきます。明確な場所は伏せておいたほうが本番で楽しめるかもしれないので割愛するが、公式サイトのイメージビジュアルをご覧いただければ、だいたいの場所が想像できておもしろいかと。個人的には、ヨルハ部隊が終盤で訪れたとある遊園地廃墟の背景がツボってしまいました。

・スピード感のある殺陣に目が釘付け

 “舞台ヨルハ”になくてはならないもののひとつが、バトルシーンにおける迫力の殺陣。若い少女たちがどれだけ派手な殺陣を見せてくれるか期待していたのだが、結果的には想像以上の出来栄えに仕上がっていました。稽古の期間はたった3週間くらいとのことなのに、よくぞここまで……。

 なお、“少年ヨルハ”で四号役を務めた小栗諒さんが、この“少女ヨルハ”では殺陣師として名を連ねておられるのも胸アツポイント。

・ビジュアルの作り込みに感服

 敵である機械生命体のCG、白と黒を基調とした色彩設定、状況や時間軸などを説明する際に出現する文字のフォントなど、目に飛び込んでくる情報は徹底的に『ニーア オートマタ』やこれまでの“舞台ヨルハ”のイメージを踏襲。ここまで入念に作り込まれているからこそ、世界観に乱れが出ないのであろう。やはり統一感は大事。

 ちなみに終盤で出てくるとある機械生命体はCGではなく大道具として作られており、ファンは必見。どのような印象を抱いたかぜひみなさんの意見を聞いてみたいところです(自分は“そうきたか!”と少し笑ってしまいました)。

・ステージの立体感がすごい

 今回の会場である“東京建物 Brillia HALL”ならではの特性かもしれないが、これまでのハコよりもステージに立体感を感じました。上下左右、奥行きに至るまで視覚情報が多く濃密。背景や美術にもこだわり抜かれており、演出がとても映えます。

・ヨコオタロウ&松多壱岱タッグの、ひとつの完成形

 ヨコオタロウ氏による原作・脚本を演出するのは、これまで何度もヨコオ作品の舞台を手掛けてきた松多壱岱氏。これまでに培ってきたノウハウが存分に盛り込まれた今回の舞台は、さながら全集中の阿吽の呼吸。数年に渡って“舞台ヨルハ”を作り上げてきた彼らの、ひとつの集大成を見せてもらった気分です。

複数回の鑑賞のススメ

 なんだかベタボメしまくってしまったが、記事を書いている自分がヨコオタロウ作品を大好きだということを差し引いても、見ごたえある舞台に仕上がっているのは間違いないと思います。

 こんな駄文にここまで付き合ってくれた読者の方は、きっとなんらかの手段で舞台を見てみようと考えていることでしょう。そんなあなたにお伝えしたいのが、複数回の鑑賞のススメ。

 舞台はナマモノ。同じ演目でも日が変わることでまったく異なる解釈が生まれることもめずらしくないので、もし可能なら複数回鑑賞してその変化を堪能してみてはいかがでしょう。

 ちなみにこの“少女ヨルハ”は、ニコニコ生放送で有料配信されることが決定しています。

 まずは定点カメラ配信で全容を把握し、そのうえでマルチアングル配信で演者たちの寄りを楽しむのもオツなもの。会場まで足を運ぶことが困難な方は、こちらで視聴するのも“大いにアリ”でしょう。自分は舞台を見るときどうしても推しを集中的に追いかけてしまう人間なので、定点カメラであえて一歩引いたところから舞台を眺めるのもまた新鮮だろうと楽しみにしています。

 なお、そんな自分の個人的な推しは二号役の青木志貴さんと、六号役の谷口めぐさん。二号は立ち居振る舞いから声質まで『ニーア オートマタ』の2Bを彷彿とさせる圧巻の演技だし、六号の決戦シーンで完全にネジがぶっ飛んだ演技には目が釘付け状態でした。六号は刀と銃によるガンカタな殺陣もたまらない。足で相手の攻撃を弾くアクションには心底シビれました……。

 もちろん、ほかのメンバーの演技も鬼気迫るものがあり、この舞台をなんとしても成功させたいという気概を感じさせてくれます。自分は舞台に明るいわけではないので説得力はないかもしれないが、演者やスタッフをはじめ、関係者のみなさんの熱量が尋常ではなく高い。おそるべし“少女ヨルハ”……。

 この記事を読んで少しでも興味を抱いてくれた方は、ぜひ鑑賞してみることをオススメしつつ、今回はこのへんで! 感情優先の雑多なレポートになってしまったことに多少の申し訳なさも感じつつ……最後はやっぱりこの言葉で締めさせてもらえれば。

 人類に、栄光あれ!

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