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慣れねえ数字で脂汗!!【O村の漫画野郎#39】

奥村勝彦
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最終更新

 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

慣れねえ数字で脂汗!!

 あー。一年の猶予をもらったビーム編集部であるが、そんなもん具体的に何もしなければ、漫画雑誌の一年間なんざ、アッという間に過ぎちゃうからねえ。

 まずは予算の作成だ!! 財務部門に日参して財務シートの読み方やら、エクセルの操作法を教わったりした。全くの未知の知識のオンパレードだったんで、結構楽しかったりして。


 だってよー、ちょっと本の値段やら何やらを変更して、ボタンをポチッと押したら、頼みもせんのにアチコチの数字がカシャカシャカシャって変わんだぜ。面白えー!! スゲエじゃん、オマエ(パソコン)!!

 でもまあ、考えてみたら彼らはコッチが本職である。エロ動画を再生したり、ゲームでアホみたいに遊ぶのは、彼らにとっては侮辱に等しい行為なのかもしれねえ。

 ろくに計算もしねえで、くだらねえ用途で使っといて、「俺のパソコン遅くってさー」なんて言われた日にゃあ、たまったもんじゃねえだろう。すまんかったのお……オマエらのこと誤解しとったわ。俺。


 んで、生まれて初めて予算なるものを作ってみた!! なんか、まるで有能なビジネスマンになったような気分である。

 そんで予算の目標は、支出と会社に対する間接費(まあ、会社からの家賃みてえなもんと思いねえ)を払ってトントンの状況。その年の決算は無茶苦茶な大赤字確定なので、余裕なんざ微塵もねえけど、正直ここまでやれたら御の字である。

 予算なんざ、基本は捕らぬ狸の皮算用なので、ワケのわからんタイトルをボコボコ入れれば数字なんて出来ちゃうもんなのだ。それで無事予算会議は通過した。ただ、それを実現するのは眩暈がするほど至難のワザなのは、実感してたのよ。


 岩井と2人で三軒茶屋(初台から引っ越していた)のファミレスで延々と作戦会議。現有戦力の連載作品を単行本化しても全然足りねえ。その上、過去の作品を単行本化しても、やはり全然足りねえ。

 非常に有能な漫画家が揃いつつあったビームであったが、ヒット、2塁打を打てるバッターはいても、ホームラン(10万部)を打てるバッターはいなかった。

 そんなの、そうそういるワケねえのだ。例えば他誌で10万部売れる漫画家を引き抜いたとしても、ビームでその数字を出せるかどうかは別だしね。

 ところが数字が絡むとインスピレーションが、全く湧かなくなる俺(いまだにそうだ)の前で、アメリカ帰りの岩井が突然、真価を発揮しはじめた!! イエーーーイUSA!! ……待て!! 次回!!

(次回は3月22日掲載予定です)



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イラスト/桜玉吉

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