『牧場物語』シリーズを開発者が振り返る。印象的なタイトルや開発時の思い出、愛される理由は?

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 マーベラスから発売されている『牧場物語』シリーズ。そのシリーズ25周年を記念したインタビューを掲載します。

 『牧場物語』シリーズは、人気の牧場生活ゲーム。荒れ地を開拓して牧場を作り、動物や畑のお世話をして牧場を発展させていくタイトルで、2021年で25周年を迎えます。

 2月25日には最新作『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』が発売された本シリーズについて、開発スタッフの方々へのインタビューを実施。シリーズで印象的なタイトルや開発当時の思い出、愛される理由などをお聞きしました。

 なお、インタビュー中は敬称略。

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シリーズ25周年に対する意識

――まずは皆さんが『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』で担当された役割を教えてください。

中野:マーベラスの中野です。本作では企画原案や世界観の設定、プロジェクト全体のディレクションを行いました。

  • ▲中野さん

武村:同じくマーベラスの武村と申します。本作には中野とともに企画立案から携わっていて、全体的なプロモーションも含め、幅広く対応してきました。

  • ▲武村さん

三輪:本作の開発を担当させていただいた、スリーリングスの三輪と申します。私は開発の統括というかたちで携わらせていただきました。

  • ▲三輪さん

――25周年を迎えた『牧場物語』シリーズですが、皆さんはシリーズ作品ではどのタイトルに携わられてきたのでしょうか?

中野:僕はこの中だとシリーズにいちばん長く関わっていて、『牧場物語2』がシリーズの中で最初に参加したタイトルになります。そこから『牧場物語3 ハートに火をつけて』や『牧場物語 しあわせの詩』まで、デザイナーとして関わっていました。

 『牧場物語 コロボックルステーション for ガール』以降は現在のような制作部署に入って、いくつかの作品でプロデュースやディレクションを行っています。直近ですと、『牧場物語 再会のミネラルタウン』でディレクターを務めました。

武村:私はまだマーベラスに入って日が浅くて、『牧場物語』シリーズでは『再会のミネラルタウン』と『オリーブタウンと希望の大地』の2タイトルに関わっています。

三輪:私も、『牧場物語』の開発は初めてになります。スリーリングスとしてはマーベラスさんの前身であるAQインタラクティブさんのころからお仕事をさせていただいていて、今回はマーベラスさんにとっても大事な『牧場物語』シリーズの最新作に関わらせていただくということで、さまざまなことを勉強させてもらいました。

――『オリーブタウンと希望の大地』はシリーズ最新作にして25周年記念作品となりますが、そのあたりを意識して作られた部分はありますか?

中野:正直、僕はあまり気にしていませんでした。もちろん25周年だというのは知っていたんですけど、本作は『牧場物語』をいちから考え直して再構築することをつねに意識していて、より多くのお客様に『牧場物語』の魅力を伝えられるようにすることで必死でした。結果的に、25周年にふさわしい、これまでとは違うタイトルになったと思います。

武村:立ち上げの段階から25周年記念作品として出すことを考えていたわけではなかったんですよね。ただ、長く続いているタイトルなので、節目となる25周年に向けて発売しようとなったタイミングからは、さらに先の25年を意識するようになりました。

――シリーズ50周年に目を向けていたと。

武村:そうですね。既存のユーザーさんに満足していただくのはもちろん、新しいユーザーさんをしっかり取り込んで、新たなファンになっていただいてこそ、これからの25年も続いていける長寿タイトルになると思っています。そういった部分も含めて、原点に立ち返りながら作っていくというところは初期段階から意識していました。

三輪:僕は中野さんたちとはちょっと違っていて、25周年記念の作品になると伝えられた時には、ものすごいプレッシャーを感じました。我々は『牧場物語』を作ったことがなかったので、まずは過去作品を触って勉強するところからのスタートでしたね。

――さすがに過去作をすべて遊ぶのは難しかったと思いますが、過去作をプレイされたのですか?

三輪:『牧場物語 3つの里の大切な友だち』と、『再会のミネラルタウン』発売後はそちらもプレイしたので、そのあたりが軸になっていますね。25周年記念作品というのは本当に大きなプレッシャーだったのですが、中野さんや武村さんから「自由にやりましょう、新しいものを作りましょう」と言っていただけて、ある程度、気が楽になった部分はあります。

シリーズの中で印象的なタイトルは?

――『牧場物語』シリーズはこれまでに31作品ものタイトルが出ていますが、その中で特に印象的なタイトルはどれになりますか?

中野:僕は関わりが深すぎるのでちょっと贔屓(ひいき)してしまう部分があるんですけど、やっぱり『牧場物語2』ですね。初めて関わったタイトルでもありますし、当時を思い出してもキャラクターとシナリオが本当にすばらしかったなと思っています。今でも“牧場物語イズム”みたいなもので迷った時には『牧場物語2』のことを思い出しますね。

武村:僕は、やり込んだタイトルで言えば『再会のミネラルタウン』ですね。ただ、中野さんの前で言うのもアレなんですけど、僕は『ルーンファクトリー』(※)が好きなんですよ(笑)。『ルーンファクトリー3』、『ルーンファクトリー4』はマーベラスに入る前からかなり遊んでいました。

『ルーンファクトリー』:『牧場物語』シリーズから派生した作品。農作や恋愛に加えてバトルなどRPGの要素も取り入れている。

――『牧場物語』から生まれた『ルーンファクトリー』を遊んでいて、『牧場物語』最新作の開発に携わることになったというのは興味深いですね。

武村:そうですね。『牧場物語』はニンテンドー3DSでリリースされたタイトルは触っていたのですが、そちらはやり込むというよりはふわっと遊んでいました。思い入れがあるタイトルという意味で言えば、やっぱり『オリーブタウンと希望の大地』ですね。

三輪:それ僕も言おうと思っていたんですけど、言われちゃいましたね(笑)。僕も全作品を遊んだわけではないのですが、やっぱり『牧場物語』を研究するうえで『3つの里の大切な友だち』はけっこうやり込みましたし、『再会のミネラルタウン』も楽しんでプレイしました。ただ、思い入れがあるのはやはり『オリーブタウンと希望の大地』ですね。

――中野さんが関わってきた『牧場物語』シリーズの中で、特に苦労したタイトルは?

中野:担当した中で一番印象に残っているのは、『牧場物語 キミと育つ島』ですね。当時は『ルーンファクトリー』の1作目が同時に開発されていて、会社も『牧場物語』と『ルーンファクトリー』のすみ分けにすごく気を使っていました。それもあって、「全部任せるから『ルーンファクトリー』とは違う、王道の『牧場物語』を作ってほしい」と上司に言われたんです。

――ポイントとなったのはどのような部分だったのでしょうか?

中野:当時の開発スタッフはファンタジー路線の企画を考えていたんですけど、それだと『ルーンファクトリー』と方向性が近くなってしまうので、ある意味泥臭いというか、リアルな目線にしたのが『キミと育つ島』なんです。開発期間が短かったわりには、キャラクターを一新したり、ある意味RPG的なロジックを取り入れたりしていて、冒険的なタイトルになったと思います。

 結局開発期間が伸びてしまって、会社にはすごく迷惑をかけてしまいました。実は、私としては『キミと育つ島』というタイトルはこれしかないと思っていたんですけど、社内の反応はよくなかったんです。

武村:それは初耳ですね。

――他の候補タイトルはどのようなものだったのですか?

中野:それが、他に案があるわけではなかったんですよ。ただ、何か気に食わないと(笑)。「牧場なのに島ってどうなんだ」みたいな声もありました。舞台が島ですし、島にある町がどんどん発展していくというのがテーマだったので、まさに『キミと育つ島』だったんですけどね。

 そういうのもあって最初から最後まで苦労しましたが、絶対におもしろいという確信は持っていました。それで実際に発売してみたら、当時のシリーズ最大販売本数を記録したので、本当にうれしかったです。

武村:自慢じゃないですか(笑)。

中野:でも本当に、当時は精神が病むぐらい、つらかったんですよ(笑)。

――『キミと育つ島』に対する反響はいかがでしたか?

中野:それまでは『牧場物語 ハーベストムーン』のキャラクターがずっと使われていたので、キャラクターを一新したのはすごく新しい印象を与えたみたいでした。賛成も反対もいろいろな意見があったんですけど、受け入れられたと感じましたね。

 あとは、『キミと育つ島』は携帯機で初めて主人公の男女が選択できるようになったので、男女関係なく遊んでもらえるタイトルになってよかったと思います。

――それまでは『牧場物語 ハーベストムーン for ガール』など、女性向けの別バージョンが発売されていましたからね。

中野:そうですね。それが1本で男女問わず遊べるようになったので、『キミと育つ島』以降は全ユーザーが同じ時期に盛り上がれるようになったと思います。

――シリーズの中でユーザーの反響が特に大きかったのはどのタイトルでしょうか?

中野:あくまで個人的な印象ですけど、よくも悪くもユーザーさんの反応が大きかったのは『牧場物語 コロボックルステーション』じゃないかなと思います。あれはすごいボリュームの作品で、それだけ反響も大きかったんですよね。

 キャラクターもおもしろくて、魔女様が初めて登場した作品でもありますし、いろいろな反応がありました。当時僕は別タイトルに関わっていたんですけど、開発期間に余裕があったらもっと要素を増やす予定だったとも聞いています。

『牧場物語』シリーズが愛される理由は?

――『牧場物語』シリーズが25年ものあいだ愛され続けているポイントは何だと思いますか?

中野:自然との関わりでしょうか。『天空の城ラピュタ』でも「土から離れては生きられない」といったセリフがありますけど、自然という得体の知れないものがあって、それとうまく付き合いながら力強く笑顔で暮らしていく……それが人の生活におけるひとつの理想像なのかなと思うんですよ。

 そういうものをずっとテーマにしている、数少ないゲームだから愛してもらえるのかな、と思っています。このへんは時期によって見解が変わるところですね。

武村:いまでこそファーミングゲームって『牧場物語』以外にもたくさん出ていますけど、やっぱり『牧場物語』が元祖なんですよね。『牧場物語』が持つシステムのおもしろさは25年経ったいまでも不変のものだと思っていて、システムの根幹がしっかりとおもしろいからこそ、作品ごとに新しい要素や世界観を肉付けしても、『牧場物語』という作品であり続けられるんだと思います。

 25年間続けてこられたのは、その不変のおもしろさがあるからじゃないかな、と。

三輪:私がこのタイトルに携わっていちばん感じたのは、これまでに作ってきたゲームは殺伐としたものが多かったんですけど、こんなに人を傷つけないゲームはなかった、ということですね。作っていて暗い気持ちにならない唯一のゲームを作っているというか(笑)。

――作品全体がほのぼのしていますからね。

三輪:キャラクターにもすごく人間味がありますし、シナリオも含めて全部が本当に平和なんですよね。そういう部分が25年間愛され続けている理由なんだなと思います。開発する時も、そこはすごく意識していましたね。

武村:そうなんですよね、ほのぼのしている! 打ち合わせで「食材として肉を出そう」と言っただけで猛反発を受けますからね。「今回は狩りを入れましょう」なんて冗談半分で言った時の中野の目はもう、目で人が殺せるとはこのことだなと(笑)。

――25年もシリーズが続く中で、ユーザー層の変化はありましたか?

中野:息が長いシリーズなので、現時点で言えば子どもから大人まで遊んでもらっていると思います。ただ、10年前、15年前に比べると大人層がややメインにはなってきているのかなと思います。これに関してはゲーム機の購買層なども影響してくるので、一概にシリーズの特性とは言えないかもしれないですけどね。

――男女比という点ではいかがでしょうか?

中野:『再会のミネラルタウン』では、男女比は半々程度でした。シリーズが続く中で、男性が多かった時期があれば、逆に女性が多かった時期もありますね。

武村:『ルーンファクトリー』が恋愛部分を大きくクローズアップした作品なので、そこから流入してきているユーザーを考えると、女性の比率が増えている印象はあります。中野も言ったように、25年続いているシリーズなので昔から遊んでいただいているユーザーの年齢が上がっていって、ユーザーの年齢層も上がってきていると思います。

 25周年記念作品として新しい『牧場物語』を作ることになった時にも、そこの部分はテーマになっているんですよね。

――ユーザー層も含めて原点に立ち返る、と。

武村:そうですね。やっぱりここで原点に、男女比が5:5くらいを意識した『牧場物語』に立ち返っていかないと、この先の25年間を進んでいけないという部分があったので、『オリーブタウンと希望の大地』では男女比を5:5に戻していこうという話がありました。

 かつ、25年前に初代『牧場物語』を遊んでいた子どものように、今回の作品を若年層の方々に遊んでいただいて、この先の25年間も『牧場物語』を遊んでいただけるようにしたいという思いがすごくあります。

――25年間でシリーズの転換期になったと感じるタイトルはありますか?

中野:シリーズの歴史の中で、という意味では、僕は『しあわせの詩』かなと思います。自宅を移動できたり、好きな土地を牧場にできたり、主人公の性別が選べたりと、初めての要素が多くて、それ以降のタイトルに影響を与えた思想がたくさん詰め込まれていたんですよね。

 それまでは『ハーベストムーン』のシステムに縛られていた部分があったんですけど、そこから“こんなこともできる”という新しい一歩を踏み出した作品だと思います。

――これまでにさまざまなパッケージが作られてきましたが、お気に入りのパッケージデザインはありますか?

中野:僕は『牧場物語2』と『牧場物語 キラキラ太陽となかまたち』ですね。『キラキラ太陽となかまたち』は僕が想像した通りのパッケージになっていて、小さくてかわいいキャラクターがわちゃわちゃしていて、すごく好きです。

武村:パッケージに関しては全作品見ていますけど、これはもう間違いなく『オリーブタウンと希望の大地』のパッケージがいちばんです。めちゃくちゃ気に入っています。

三輪:僕も、『牧場物語』と言うともう『オリーブタウンと希望の大地』のパッケージが頭に浮かぶくらい印象的で、すごく気に入っていますね。

武村:単純に絵柄だけの話ではなくて、パッケージのイラストに『オリーブタウンと希望の大地』のゲーム性がメッセージとしてしっかり詰め込まれているんですよね。これを見てもらえばゲームの楽しさがわかりますし、実際にプレイすればパッケージ通りのおもしろさだな、というのがわかってもらえると思います。本当に、すごくいいパッケージだと思います。

『牧場物語』を作るうえで大切にしたいテーマを質問

――『再会のミネラルタウン』は『牧場物語 ミネラルタウンのなかまたち』のリメイク作品ですが、数あるタイトルの中からこちらをリメイクされた理由を教えてください。

中野:このリメイクは『オリーブタウンと希望の大地』とほぼ同時期に走っていた企画なんですけど、当時「『牧場物語』とは何か?」というところをしっかり考え直す必要があったんです。その中で、いちばん『牧場物語』らしい作品としてピックアップしたのが『ミネラルタウンのなかまたち』でした。

 開発の体制なども含めて『牧場物語』として迷走しないためにも、リメイクをした価値はあったと思います。

――反響次第で今後も別のタイトルをリメイクしていくことはあるのでしょうか?

武村:やはり、新作を作り続けていくのが本分だとは思っています。『再会のミネラルタウン』についても、『オリーブタウンと希望の大地』を作るうえで『牧場物語』の原点に立ち返るために着手した部分があるので、続編を作るにあたってしかるべき流れがあれば、新たなリメイクを行う可能性はあると思います。

――予定などはいったん考慮しないものとして、いまの技術でリメイクしてみたいタイトルはありますか?

中野:個人的には『牧場物語2』や、『牧場物語 ワンダフルライフ』、『コロボックルステーション』などですかね。ハードの性能や技術が向上したことによって、当時よりもやれることが増えて、表現できることも増えているので、やってみたいとは思っています。

――『牧場物語』を作るうえで大事にしている“『牧場物語』らしさ”は何ですか?

中野:『牧場物語』はリアルな世界観を持っていることが多いので勘違いされがちなんですけど、思想としてはすごくファンタジーなんですよね。哲学的な感じになりますけど、ゲームの主人公って自分が世界の中心みたいに考えがちじゃないですか。でもそうではなくて、主人公も世界の一部なんだという感覚を大事にしています。

武村:ファーミングゲームの原点である作品だと思っているので、システム面のおもしろさがブレていないのが『牧場物語』らしさじゃないかなと思います。

 ほのぼのとした世界観で、誰も傷つけない平和なゲームなんですけど、実は遊べば遊ぶほどやり込めるゲームになっているんですよね。そういう、システム的なおもしろさの根幹がブレてこなかったのが『牧場物語』らしさだと思います。

三輪:言いたいことはかなり言われてしまったんですけど、やっぱり僕自身こんなに平和なゲームを作ってこなかったので、今回『オリーブタウンと希望の大地』の開発に携わって、これまでのゲーム作りの概念が壊されたところがたくさんありました。
 開発者目線で言えば、ゲームのおもしろさを別ベクトルからしっかり文化として見せていく、それが『牧場物語』らしさなんだと思います。

――最後に、シリーズの今後について聞かせてください。

中野:海外展開に関して言えば、『オリーブタウンと希望の大地』は日本版とアジア版は同時に発売され、北米版と欧州版もひと月遅れで発売され、ほとんどタイムラグのないかたちでリリースすることができました。

 メーカーとしては、今後はさらに世界同時発売という動きを目指す必要があるかなと思っています。日本だけではなく、世界のユーザーが同時に楽しめて意見を交わせるほうが、ムーブメントとしてより大きいものになるかと思っているので、言語対応も含めて、世界で同時に遊べるようにしていきたいです。

 それによって反響が大きくなって、その反響を聞いた人が「僕もほしい」や「私も遊びたい」となって、ユーザーさんが増えてくれるとうれしいですね。

武村:やはり『牧場物語』は日本発のゲームで、開発しているのも日本人なので、これまでのタイトルはとくに海外の文化などがフィードバックされづらかったんですよね。そのあたりについては次回作、次々回作で改善していって、世界中の『牧場物語』の輪みたいなものを広げていきたい、という思いは強くあります。

 そのため、単純に言語面でのローカライズだけではなく、しっかりとカルチャライズの面まで対応して、海外の方にも受け入れられる作品作りという部分は、課題として取り組んでいかないといけないなと思います。

――ありがとうございました。

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