『新すばらしきこのせかい』インタビュー! 開発陣が目指した続編の在りかたとは?

電撃オンライン
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 スクウェア・エニックスから7月27日に発売予定のNintendo Switch/PlayStation 4/Epic Games Store(※)用アクションRPG『新すばらしきこのせかい』。その開発者インタビューをお届けします。

※:Epic Games Store版は2021年夏に発売予定です。

 『新すばらしきこのせかい』は、2007年にDSで発売された『すばらしきこのせかい』の続編。3Dで再現された渋谷の街を舞台に、主人公リンドウが生死をかけた“死神のゲーム”に挑みます。

 インタビューのお相手はディレクターの伊藤寿恭氏、シリーズディレクターの神藤辰也氏、プロデューサーの平野智彦氏、クリエイティブプロデューサー&キャラクターデザインの野村哲也氏。ファン待望のシリーズ続編の魅力をうかがいました!

目指したのは『2』ではなく『新』となる『すばらしきこのせかい』

――2007年にDSで発売されたオリジナル版からじつに14年ぶりとなる続編ですが、制作の経緯をお聞かせください。

平野智彦氏(以下、敬称略):DS版を発売した当時からチーム内では続編制作の意気込みはありましたし、ファンの方々の続編を望む声も認識していました。ですが、『すばらしきこのせかい』はかなり尖ったゲーム性ということもあり、当時の状況でほかのタイトルと並行して制作するのはなかなか難しく……。2018年発売の『すばらしきこのせかい -Final Remix-』を開発した際に、チームが再結集して、そのまま続編制作が可能になりました。

野村哲也氏(以下、敬称略):きっかけとしてはアニメ化の話が大きかったと思います。実際開発がスタートしても自分は半信半疑な部分もあった程、この14年の間にも何度か続編の話は出ては消えてを繰り返していたので。アニメ化はこれ以上のタイミングはないという思いにはなりましたね。

――続編を制作するうえで、チーム内で掲げたコンセプトやテーマなどはありましたか?

神藤辰也氏(以下、敬称略):オリジナル版が1本のゲームとして完成されていたので、そこから続編を作るならどんなものを目指すべきかというのは議論になりました。そのなかで、前作主人公のネクを中心に据える『すばらしきこのせかい2』のような形ではなく、作るならまったく新しい『すばらしきこのせかい』にしようと決めました。

 新主人公のリンドウを中心に、フレットやナギなど新キャラクターをたくさん出して、今作から始めても楽しめるような新たな死神のゲームを描こうと。だから、タイトルも『2』ではなく『新』になりました。ただ、前作ファンの期待にも応えられるよう、旧作キャラクターの出番も用意してあります。

野村:ハードも進化しゲーム自体の進化は必然だったので、『すばらしきこのせかい』らしさとして基本的にはコンセプトやテーマは前作から引き継ぐんだろうと思っていました。

 今回は前回より規模を大きく、登場キャラクターも増やしたいと思っていてチーム戦にしてほしいというのは最初に伝えていました。また『すばらしきこのせかい』ならではの斬新なゲームシステムも必要だと。

 タイトルはかなり悩んで…決めたのも発表直前でした。悩んだ挙句、あえてストレートにちょっと懐かしい“新”で行こうと決めました。

――続編で舞台を渋谷から別の場所に変えるという案はなかったのですが?

神藤:アイディアの1つとしては挙がりました。ですが、渋谷というのが東京のなかでもとくに象徴的な街なので、やはりここを外して『すばらしきこのせかい』は語れないだろうという結論になりましたね。

 舞台を新宿にしようかという考えもありましたが、『Final Remix』をプレイした人ならご存じの通り、“A NEW DAY”で新宿の街はあのようなことになっていますし(笑)。

伊藤寿恭氏(以下、敬称略):あと、渋谷は1つの街でありながらエリアごとに特徴があるというのも大きかったです。街並みも立体感があって、エリア移動した際に印象に残りやすいのはやはり渋谷かなと。

野村:前作を作り終えた段階で自分は「次も舞台は渋谷」とは言っていました。まだまだ渋谷の街は広く、描こうと思えばもっと描けると思っていたので。

――オリジナル版では神藤さんがディレクターでしたが、本作では伊藤さんがディレクターを務め、神藤さんはシリーズディレクターという立ち位置なのですね。

神藤:はい。伊藤はプログラマー、プランナーを経験しているベテランなので、開発現場を率いるには最適な人物です。なので今回ディレクターを任せました。『新すばらしきこのせかい』は北海道にある開発スタジオのハ・ン・ドさんと協力して制作しているのですが、伊藤は主にその指揮を執っています。

 僕自身はシリーズディレクターとして、『すばらしきこのせかい』の世界観やゲームの方向性などを伊藤と共有して作り上げています。

渋谷の街並みの“らしさ”を最新ハードの技術で追求

――舞台は前作の3年後になるようですが、物語はどの程度つながっているのでしょうか? やはり前作――とくに『すばらしきこのせかい -Final Remix-』をプレイしていたほうが理解は深まりますか?

神藤:前作で渋谷の死神のゲームはひと段落し、“A NEW DAY”をきっかけに新宿にいた死神が渋谷に流れました。『新すばらしきこのせかい』はそれから3年後を舞台に、渋谷死神と新宿死神が入り混じった死神のゲームが描かれます。

 世界観は前作から完全につながっていますし、“A NEW DAY”の内容にも関わるので、『すばらしきこのせかい -Final Remix-』をプレイしていればベストですね。もしくは、放送中のアニメを観てもらえればスムーズに理解できます。もちろん、前作をまったく知らないでも楽しめる作りにはなっていますよ!

――今回は渋谷の街が完全3Dマップになっているのが、大きな見どころの1つかと思います。

伊藤:そもそも前作の2D表現がかなり特殊で、抽象的なゆがみなども含めてアーティスティックに描いていました。それを3Dグラフィックで描画しようとなると、どうしたものかと……。街並みの正確な再現ではなく、わざとポリゴンを曲げたりカメラを工夫したりして、そのロケーションをより誇張するような描き方をしています。

 例えば104前はビルを見上げるような構図になっていたり、スペイン坂はいろいろなものとの距離が近い雰囲気になるよう画角を調整して表現していたりします。前作のアートを3Dで再現するだけでなく、各ロケーションの“らしさ”を最新技術でより強調しているのが特徴です。渋谷の街の再現は苦労しましたが、制作過程は楽しくもありました。

――最新トレーラーでは、広角レンズで眺めているような構図も印象的でしたね。

神藤:あれは広角レンズのように見えますが、実際は建物のほうを頂点アニメーションでゆがませています。ほかにも、ロケーションごとに印象に残るような見せ方を盛り込んでいるので、楽しみにしていてください。

――前作にはなかった新たに行けるロケーションなどはあるのでしょうか?

神藤:前作では渋谷駅から東側のエリアはあまり描かれていませんでしたが、月日の流れで現実の渋谷に特徴的なランドマークなどが建てられたので、今回はそのあたりも再現しています。あとは、原宿方面の再現で竹下通りとか……。

 前作にあったロケーションももちろん登場しますが、複数のロケーションが1つのマップになっていたりと、ある程度取捨選択はしています。

――オリジナル版から比べると渋谷の街並みも変わっているので、変化を見比べるのも楽しそうですね。

伊藤:渋谷はリアルタイムで変化している街で、ゲームを制作している間もどんどん開発されていましたからね。現在も工事中の建物に関しては、完成図を調べて予想で作るしかなかったのでたいへんでした(笑)。

神藤:ゲームが発売されるのは2021年ですが、イメージとしては2020年の渋谷がリアルに再現されていると思ってください。西口のターミナルあたりは、本当に最近になって様変わりしたので、さすがにゲームへ反映させるには間に合いませんでした……。

前作同様バトルシステムは独特なものに!?

――本作のキャラクターデザインは野村さんのほかに小林元さんと山下美樹さんも手掛けていますが、誰がどのキャラクターを担当したのでしょうか?

神藤:パーティメンバーについては、主人公のリンドウは野村、フレットは小林、ナギは山下がデザインしています。メインとなるツイスターズのメンバー内でも3人のキャラクターデザインが混在しているので、多様な絵柄が感じられると思います。

野村:最近登場キャラが多いタイトルが増えて来て、こういう分業制も増えて来ています。一定の統一性を出す為に、デザイン段階では自分が2人のデザインも監修し、ゲーム画面では小林が全キャラ描き起こしています。

 自分としては個人の作業になりがちなキャラクターデザインを数人で行うことで、良い影響を与えあえて良いなと感じています。1人からは出て来ない発想や個性が出ていて面白いと思いますよ。

――新たに登場する新宿死神の面々も個性的ですね。

野村:そこも3人で分担していて、自分は2人描いてます。かなり濃いグループになりましたね。

――前作の主人公のネクは周囲との関わりを拒絶するタイプのキャラクターでしたが、今回の主人公のリンドウはそういう性格ではないようですね。

神藤:ネクほど内向的ではありませんが、リンドウはリンドウであまり自分を表に出さない人物ではあります。周囲を拒絶はしないけど主体性を持っていなくて、陽気で社交的なフレットに引っ張られているキャラクターですね。

 リンドウは自分の意思を示さない性格なのですが、ゲーム中ではところどころで決断を迫られる局面があります。そういう場面でリンドウがどんな選択をするのか、そこに彼のサイキック能力も絡んでいたり……というのが見どころになります。

――ネクのトレードマークはヘッドフォンでしたが、リンドウはマスクなのですね。

野村:ネクのヘッドフォンは、他人との距離感というアイコンになっていました。今回リンドウもそういったアイコンを用意したいと考えていました。

 世相と言うか、その頃の渋谷でマスクをした若者達がスマホをいじっている、という光景を良く見掛けて、リンドウはこれで行こうと。マスクも他人との距離感という意味で使えそうだなと思いましたね。まさかこんな時代が来るとは思ってませんでしたが。

神藤:野村がリンドウをデザインしたのは何年も前なので、新型コロナウイルスによるマスクとは関係ありません。『すばらしきこのせかい』の公式ツイッターでも本人が触れていましたが、完全に偶然ですね。

野村:海外の方でリンドウを見て、「顎にマスクするな」と怒ってる方がいましたが、こういう状況になってからデザインしていれば、そうしていたと思います。

――ナギはパーティ内の紅一点ですが、なんというか“濃い”キャラクターという印象です……(笑)。

伊藤:今回はツイスターズ内でわちゃわちゃした賑やかな会話をしたくて、それに合うキャラクターの方向性を考えていたときに、たどり着いたのがナギだったんです。

――オリジナル版では、DSの機能をフルに使ったシステムが特徴でした。続編を作るにあたり、野村さんのほうからシステム的な指針は何か出しましたか?

野村:前作はDSという個性的なハードだったので、DSならではの機能をあれこれ入れましたが、今回はハードからして扱いが違いますし。最初からマルチということで機種の特性を活かし辛い。だから逆に、どんなことができるのかとスタッフに聞いたんです。「前作のようなインパクトを操作面で与えられるの?」かと。

 キャラクター面ではけっこう提案をしました。続編を作るならこのキャラクターはこう、あのキャラクターはこうしたいという方向性が自分のなかにあって、ミナミモトのパーティ加入もその一環です。

――トレーラーを見る限り、今回もアクション性が高いバトルになりそうですね。

野村:伊藤から、今回のバトルはパーティメンバーを同時に操作すると言われました。メンバーを切り替えて戦うのではなく、あくまで同時操作だと。最初はピンときませんでしたが、詳細を聞いたら「なるほど」と。『すばらしきこのせかい』の独特な操作感を最新ハードで提供できるのかが心配でしたが、それなら問題ないと判断しました。

 公開中のトレーラーではバトルシステムが伝わりにくいのですが、あの映像がすべてではないです。複数のキャラクターを同時に操作するめずらしいアクションになりますので、続報をお待ちください。

――発売を待っている人たちにメッセージをお願いします。

神藤:ただ今アニメが絶賛放送中で、アニメ終了後の翌月には続編のゲームが出ます。作品を知るタイミングとしては最高なので、これを機に今まで知らなかった人も『すばらしきこのせかい』に触れてみてください! あと、Nintendo Switchで遊べる『すばらしきこのせかい -Final Remix-』のダウンロード版が、5月5日まで50%オフなのでこちらも今のうちにぜひ!!

野村:14年前にオリジナル版が発売されて以降、熱心なファンの方々がずっと続編を望んでいてくれましたが、ようやくその声に応えられます。自分自身、続編の存在がいまだに信じられないような気持ちですが、前作に劣らぬほど斬新でおもしろいゲームに仕上がっていますので、発売をお楽しみにお待ちください。

※画面は開発中のものです。
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CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA & GEN KOBAYASHI & MIKI YAMASHITA

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新すばらしきこのせかい

  • メーカー:スクウェア・エニックス
  • 対応機種:PS4/Switch/PC
  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売日:2021年7月27日(PC版:2021年夏)
  • 価格:7,480円(税込)※パッケージ版、ダウンロード版ともに

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