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六甲おろしに颯爽と!!【O村の漫画野郎#49】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

六甲おろしに颯爽と!!

 あー。この頃、楽しい思い出は一杯あるんだけど、極め付きのヤツを一発!!

 秋の夕方6時頃、俺の内線が鳴り出す。「あ、そうすか。すぐ行きます」神妙な顔をして立ち上がる俺に、副編の岩井「社長室から内線……何かあったんすか?」 「わからねえ、ちょっと顔出してくるわ」


 静かに社長室の扉を開けると、そこには阪神のハッピを着てメガホンを持った浜村社長と10人位の阪神ファンが!? そこで我々は秘かにタイガースを応援した!! まるで江戸時代の隠れキリシタンのように!!


 浜村さんは俺と同じ年齢で、出身地も同じ大阪。当然、2人とも由緒正しく熱い阪神ファンである。なので2人がシリアスな顔つきで話し合っていても、実は絶望的な阪神打線のつながりを嘆いていたりするのです。


 んで、その年は阪神が好調で優勝が近づいてきて、仕事をしていても全く集中できねえし、どうせなら社長室で観戦しちゃえってことになったのだ。それを不謹慎などと言ったらいかんぞ。こちとら、巨人やソフトバンクみてえなアタリマエに優勝しちまう堕落したチームと違うんじゃい。

 阪神の優勝ってなあ、お伊勢さんの式年遷宮みてえな聖なる出来事なんだよ!! 滅多にあることじゃねえんだよ!! だもんで道頓堀川にダイブしちまうんだよ!!


 あと、それ以外だと社員旅行で沖縄に何度も行ったよなあ。青い空、青い海、吹き抜ける海風、甘い香りの南国の花々、ソープランドの心優しいネーチャン、名前だけで興奮しちまった漫湖公園……。

 なぜか、桜玉吉とかいう漫画家に秘かにストーキングされ、思いっきり作品上で暴露されちまったが、それも含めて素敵な思い出だ。


 ……とまあ、あんま仕事とは全く関係ねえ話をしちまったが、浜村さんはビームに関して非常に温かく見守ってくださった。今の上司である青柳さんもそうだが、ただ部署の数字を見るだけじゃなくて、我々の志や心意気まで理解してくれて護ってくれたのだ。

 なかなか出来るこっちゃない。会社や組織に属している人ならわかると思うけど、背中を気にせず前を向いて仕事に没頭できるってのは、本当に幸せなことなんだよなあ。そういう意味では、俺は秋田時代から上司には恵まれてるぜ。


 あ、そうそう今年の我がタイガースは、凄すぎて心配になるほど絶好調!! 秋には球場で応援できればいいですなあ、浜村さん。   ……んじゃ、待て!! 次回!!

(次回は5月31日掲載予定です)



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イラスト/桜玉吉

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