ビーム中期の作品群、その1!!【O村の漫画野郎#46】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

ビーム中期の作品群、その1!!

 あー。今回は俺が編集長になってから、数年たってからの作品群を挙げてみよう。まあ、中期つってもいいのかな? ただ、ビームは現在も続いているので、当然“俺の編集長の時期”つーこったぜ。

 あと、ウィキとかで調べて、この分け方ちょっとおかしくね? なんてツッコミはやめてね。なんせ昔の事なんだからさあ。

●『カスミ伝S』(唐沢なをき)

 ウエケンと同じくギャグ漫画職人である唐沢さん。彼らが目指していたのは、漫画界初とか誰もやったことがない事への挑戦だったんだろうな。

 でも、これは大変な事なんだぜ。よくよく調べてみたら、赤塚不二夫さんとかが、既にやってたりする。結局、過去の歴史と戦ってるようなもんだからな。そーなると、どんどん面倒臭い方向に行ったりして。

 ウチじゃねえけど、小学館でやってた『怪奇版画男』なんて、全編版画で製作してて、コミックスの装丁も全編版画。ただバーコード部分だけは、版画でできなかったって残念がってた。……いや、そりゃそうだろ!! 何やってんだかなあ。

●『死霊狩り ZOMBIE HUNTER』(梁慶一 “ヤン・ギョンイル”/平井和正)

 これが林光黙“イム・クワンムック”君、渡海“ド・ヘ”君と続く、韓国在住漫画家シリーズ第1弾!! 『幻魔大戦』と並ぶ平井さんの代表作が原作だ。それを無名の漫画家に任せてくれた平井さんにはひたすら感謝!!

 ところが、連載第2話目で落っこちるという事態に!! 怒りのあまり直接電話したのはいいが、当然ロクに何も話せず、かえって落ち込んだり、アシスタント代が足りねえなんて言われたので、100万ウォンの札束を持って飛行機に飛び乗り、梁君に持って行ったりしたが、結局そーなった。

 俺と岩井で担当したんだが、正直、言葉と文化の壁は厚かった。2人とも体重が落ちて、韓国式ダイエットと笑いあったが、結局完結出来なかったなあ。既に故人となられたが、未だに平井さんには申し訳なく思っている。

●『恋の門』(羽生生純)

 この作品はヒットし、映画化されたんだが、その完成パーティーの帰路、羽生生君が主演の松田龍平君やヒロインの酒井若菜さんを「彼らは何であんなシュッとしてるんですかねえ、同じ人間とは思えない」なんて言ってたので、「そりゃ羽生生君、種族が違うんだ。彼らはエルフで君はドワーフなんだ。でも、君なんかまだいいぜ。俺なんてオークだ。ワケのわからない繭から生まれてギャアギャア言ってる」と慰めた。でも、全く慰めになってねえな、これ。


 んで、実は羽生生君がデビュー前、ファミ通の新人賞つーのがあって、それに応募してきた彼の作品を、審査員のアミーゴ(桜玉吉)と一緒に見てたんだ。2人とも一発で気に入ったんだけど、どんな風に成長していくのか皆目予想がつかなかった。だけど、見事に奥行きと幅のしっかりした漫画家に成長してくれた。嬉しいねえ。

●『武侠さるかに合戦』(吉田戦車)

 戦車さんとは何本か組んだけど、この作品が一番好きだなあ。お互い大きな声では言えないが、武侠モノが好きで北方謙三氏の小説『水滸伝』を一緒に読んで、その勢いで描いてくれた。

 戦車さんは普通の漫画家なら、多くの描写が必要なニュアンスを、スパッと一発で切り取る名人だ。でないと、あんな4コマ漫画描けるもんか。だもんで、エッセイなんかも面白いんだよなあ。

 あ、一つだけ残念なのは、長編でマカロニウェスタン描いてほしかったなあ。完全にこれは俺の趣味なんだけれどもな。


 ハイ、これまた例によって1回では終わりませんでしたあ。次回に続きますんでヨロシク! 待て!! 次回!!

(次回は5月10日掲載予定です)



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イラスト/桜玉吉