『NIGHT HEAD 2041』原作者・飯田譲治さんインタビュー。現代のアニメファンも楽しめる物語とは?

電撃オンライン
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 7月14日より毎週水曜24:55からフジテレビ「+Ultra」枠他各局で放送開始となるTVアニメ『NIGHT HEAD 2041』。今回は、TVドラマ『NIGHT HEAD』の原作者にして本作の脚本を手掛ける飯田譲治さんにインタビューを実施しました。

 インタビューでは、『NIGHT HEAD 2041』の見どころをはじめ、小説・ドラマを中心に活動してきた飯田さんにアニメがどう映るのか、ドラマ放送時のエピソードなど、飯田さんならではのお話をお聞きできました。

 このアニメから『NIGHT HEAD』を知った方はもちろん、ドラマ放送時からファンの方もぜひご注目ください!

『NIGHT HEAD 2041』はどんな作品?

――『NIGHT HEAD 2041』の企画を初めて聞いたときの感想はいかがでしたか?

飯田さん:『NIGHT HEAD』をリブートしたいという話をスロウカーブさんからいただいて、最初に詳しい話を聞きました。そこで話をしてくださったのが、皆さん40歳前後の方々で、ドラマの『NIGHT HEAD』をリアルタイムで見ていたんですよ。そんな方々から「これ(NIGHT HEAD)は絶対に今の若い人に楽しんでもらえるので、ぜひアニメをやりたいです!」と言ってもらえたわけです。すごく嬉しかったですよ。僕が30年前に書いた作品を「今の人にも絶対におもしろい」と言ってくれたわけですから。

――実際にアニメの第1話、2話を拝見しましたが、内容も演出も見ていて引き込まれる内容でした。

飯田さん:アニメはすごく丁寧でしっかりと作られていて、それはもうスタッフの力の賜物と言う他ありませんね。ストーリーも非常にうまいこと話を作れたなと思っていますので、みなさんにも楽しんでもらえるはずです。

――アニメ化ということで、実際にキャラクターを演じられる声優さんたちのセリフを聞いていかがでしたか?

飯田さん:やっぱり皆さんうまいですよ。客観的にもお芝居を聞いていて楽しめました。しっかりやってくれると分かっていたとはいえ、やっぱり改めて声優さんのお芝居を聞くと安心しますね。制作するスタッフの方、声優さんたちからは、クリエイターとしてもいい影響をもらえました。

――いい影響と言いますと?

飯田さん:例えば、自分だけで話を組み立てたとすれば、霧原直也はこういうキャラクターにはならなかったと思います。否定的な意味ではなく、そもそもこの引き出しは自分の中には絶対ないからという意味です。でも、初めて見たときに違和感はなくて「なるほど!」という気持ちが強かったです。

 あとは、霧原直人が眼鏡をかけていたり、小林君江がセクシーだったり、秋山唯がなぜか巨乳だったり、そういうアニメらしい魅せ方は今回学ばせてもらいました。


――「なるほど!」ってすごくいい言葉ですね。原作者である飯田さんの引き出しにはなかったものなのに、新しいキャラクターを「なるほど!」と受け入れられたということは、この作品がまさしく『NIGHT HEAD』の遺伝子を受け継いだものなんだなと、聞いているこちらも思いました。

飯田さん:なんだかんだ、僕も60歳過ぎていますから(笑)。今、最前線で作品を手掛ける30代、40代の感覚には影響されるところはありますよ。アニメの世界は売れるか売れないかの過酷な世界で、常にいいものを求めて考えていないと置いて行かれてしまうわけですから。その中で切磋琢磨している人たちの感性は、すごく刺激的だと思いました。

――世界観は近未来の物語ですが、ストーリーを作る際に抵抗や課題などはありましたか?

飯田さん:設定を未来にすること自体に抵抗はありませんでした。純粋におもしろそうだなと。やってみたら大変なことも多かったですが(笑)。

――第1話では作品固有の単語が出るシーンもありましたが、不思議と内容は理解できる作りになっていました。

飯田さん:お話の作りとしては、初めての物語なのに知っている前提で話が進んでいくスタイルですね。それでも内容は頭に入ってくる。これはドラマのときも同じことを言われたのですが、自分の中では自然なスタイルです。まずは視聴者にいろいろな情報を与えて、それを段々と後追いしていけばいいわけですから。

――当時からスタイルは変わっていないということですね。

飯田さん:当時からドラマの常識として「初見の人に丁寧に世界観を説明する」という風潮はありましたね。その中で僕は「わざわざ説明しないといけないのかな?」と疑問に思っていたわけです。

――新たにストーリーを描けるにあたり意識したポイントはどこでしょうか?

飯田さん:続編のようなリブートのような、明確に言い切れない位置にある作品という点ですね。そういう意味では、新しいタイプのアニメだと思います。その中でのポイントは、やはり霧原兄弟と黒木兄弟という2組の兄弟の登場です。

飯田さん:黒木兄弟は、能力者を追いかける立場で、追われる側の霧原兄弟とは真逆の立場にいる兄弟になります。作中では、それぞれの兄弟からの視点を対比させることで、物語としておもしろくなると思いました。

――今後4人はどのような関わりを見せるのでしょうか?

飯田さん:詳しく彼らの関係を語るとネタバレになってしまうので……今回はノーコメントでお願いします(笑)。ぜひ、4人の関係性には注目しながらアニメを楽しんでもらえると嬉しいです。見てくれた人が「この4人はこうなるのでは!?」とか、いろいろ予想して、視聴者同士であれこれ話してくれたら、こちらとしてもおもしろいですね。


30年前のドラマ放送の頃を振り返って

――アニメ化されたうえで、ドラマが放送された当時を今振り返ってみて思うことはありますか?

飯田さん:先ほどキャラクターの見た目の話をしましたが、元をたどればドラマの『NIGHT HEAD』で直人は背が高くて、直也は背が低くて、兄が弟を守っているような描写がみなさんの印象に残っていると思います。

 その組み合わせが人気のポイントにもなったわけですが、実は当時は作り手としては何も狙っていませんでした。偶然オーディションで来た豊川悦司と武田真治を選んだ、偶然身長差が生まれただけという……。

――狙っていたわけではなくて、図らずも人気を集めるフックになったと。

飯田さん:ただ自分が作りたいように作って、2人にお芝居をさせたら、ご覧になった皆さんに彼らの兄弟愛を感じてもらえて、どんどんと注目されて……という流れなんですが、まったく予想していませんでしたね。まさか30年経って未来を舞台にアニメ化されるなんて……。

――飯田さんご自身もまさか……という感じでしょうか。

飯田さん:私自身もそうですし、誰にも想像できなかったんじゃないでしょうか(笑)。今の僕があの頃の自分に「小説はベストセラーになるし、30年経ってからアニメをやるぞ」と言っても、絶対に信じないでしょう。

――アニメ化をするにあたり、ドラマとアニメの差のようなものは感じられましたか?

飯田さん:新鮮さを感じました。ドラマや映画の世界にいた人たちよりも、アニメの人たちのほうが前衛的な印象です。アニメでやったことと同じことを実写の人たちに理解してもらおうと説明したらすごく大変だと思います。

『NIGHT HEAD 2041』では1つの“アンサー”が出る?

――改めて作品を手掛けるにあたり、当時から変化したテーマなどはありましたか?

飯田さん:旧作ドラマで描いたことは、ある意味完結していないと思っています。未来に変革が起きて「物質文明が滅びて、精神的な文明が復興する」といったことを言って物語は終わりを迎えました。それに対して、本作では今の時代に合ったアンサーをテーマとして取り入れようと考えました。せっかくこうして、改めて自分の考えを表現できる場所をもらったわけですから。

――そのアンサーを出そうと思った理由を伺ってもいいですか?

飯田さん:ドラマを作った当時は、作品のクライマックスで「これ!」といった結論を出すような時代ではなかったんです。一方で現代では、作中の世界がどうなって、今後どうなっていくのか、明確な答えを視聴者が求めていると感じたからですね。

――そういった時代の変化はどこで感じ取ったのでしょうか?

飯田さん:今の若い人たちって、不思議なことが起こると、実際にあり得るかあり得ないは置いておいて「へ~そうなのか」と抵抗感なく受け入れられる人が昔よりも多いような気がしています。世界的にも、大統領がUFOについてしゃべったりもしちゃうような段階まで来ているわけですよ。昔は「見てないからあり得ない」と言う人が大半でしたからね。

 今は「確かめたわけじゃないから断言できない」というのが、若い世代の中で増えてきつつあるわけです。とはいえ、受け入れたからといって、公の場でそれを真実かのように明言するのはまだ少し躊躇される。現代は、そんな感覚の変化が起こりかけているタイミングと感じています。

――今と昔で、制作における違いって何かありますでしょうか??

飯田さん:実写ドラマの頃は、あやふやなことはあやふやなまま残しておける雰囲気がありましたけど、今はもうできませんよね。変なことが起きたら、簡単に記録として残って、その真偽を確認できてしまうわけですから。

――今はもう誰でも簡単にネットの情報を得て、発信もできる時代ですよね。

飯田さん:私は2人子どもが居て、下の子が22歳ですが、自分の若い頃と比べて情報の受け取り方やその量が全然違いますね。情報処理能力が明らかに上がっています。それを考えた結果、1つの画面から得られる情報が少ないと、見ている人を退屈させてしまうなと思いましたね。たくさんの内容を盛り込めるという意味では、作り手としてはおもしろいと感じます。

――確かに第1話の段階ですでに多くの情報が盛り込まれていると感じました。

飯田さん:1つの場面にいくつも情報があって、その中でどれだけ受け取ってもらえるか、そういった考察が若い世代では1つの娯楽になっている印象です。そういう人たちに『NIGHT HEAD』を見てもらって「おもしろい」って言ってもらえたら達成感を感じるでしょうね。

――視聴者の情報処理能力が高まると、その分作り手側のハードルも上がっていくように感じます。

飯田さん:作品を作るときは「こんな結末にしよう」と考えて書くわけですが、書いているうちに「こっちの方がおもしろいのでは?」と、どんどん方向転換をすることは多いです。それが帰結したところが、実は自分が想像していたところじゃないなんてこともありますね。そのときはすごく達成感を感じますね。

――インタビューをするにあたって第2話まで見させていただきましたが、その時点ではまったく先の結末の予想がつきませんし、どんな展開を迎えるのか楽しみです。

飯田さん:見る側も、物語の展開を予想して同じ旅をするのではないでしょうか。恋愛モノで最初からくっつくヒロインが分かっていたり、見ている側に結末が見えたら楽しめないじゃないですか。意外な展開をお届けして「えっ!?」と驚いてもらえたら嬉しいですね。

――それでは最後に、ドラマからのファンと、アニメで初めて作品を見る視聴者。それぞれの視点からの見どころを教えてください。

飯田さん:昔から僕の作品を知っている方には、当時から今までずっとクリエイターとして活動し続けてきて、自分の進化した部分を見てほしいです。新しく見る方には、昨今の技術では超能力の演出なんてやろうと思えばいくらでもやれる中、我々の日常から少しだけ逸脱しようとしているアナログ感も感じてもらえれば、より本作を楽しめると思います。

 どちらの方でも共通して楽しんでもらえる部分は、やはりアニメならではの演出ですね。超能力の表現が最先端の魅せ方である一方、みんな映像ですごい演出は見慣れちゃっていて、ちょっとやそっとでは驚いてくれないレベルまで目が肥えていると思いますが、そういう人でもきっと楽しめるんじゃないかなと。

 超能力が否定されている世界で、超能力で人が吹っ飛ばされる――アニメをご覧になってそんなカタルシスを感じてもらえれば嬉しいです。

【放送情報】
7月14日(水)より毎週水曜24:55からフジテレビ「+Ultra」にて放送開始! ほか各局でも放送!

【配信情報】
7月14日(水)より毎週水曜24:55からFODにて独占配信決定!

小説『NIGHT HEAD 2041』(上・下)

  • 著者:飯田譲治 協力:梓 河人
  • 出版社:講談社タイガ
  • 発売日:上巻2021年8月12日/下巻2021年9月15日
  • 価格:上巻820円+税/下巻未定


© 飯田譲治/NIGHT HEAD 2041 製作委員会

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