News

2012年6月18日(月)

戦車内部のリアリズムにこだわった――『重鉄騎』イメージトレーラーを撮影した押井守監督のロングインタビューをお届け!

文:電撃オンライン

■ もしも『重鉄騎』の映画を撮れるとしたら? ■

『重鉄騎』

――もしも『重鉄騎』の映画を撮れるとしたら、どういう作品にしてみたいですか?

押井:ちゃんと真面目な戦争映画。『重鉄騎』のトレーラーにも“Inside and Out”という表現がありましたが、それをテーマに。“Inside and Out”ってサブタイトルをつけてもいいくらい。いいキャッチだと思うよ。他のゲームではありえないテーマ。戦車だけが持てるテーマだと思うから。そういうタイトルまで考えちゃった(笑)。

――どの部分に一番予算をつぎ込みますか?

押井:もいろん戦車。戦車って3台以上で撮らないと魅力がでないんですよ。単台で撮ってもオブジェになってしまったりするんで。『重鉄騎』のトレーラーに、一個中隊くらいでガシャンガシャン動いてる絵があったんですけど、これがなかなかいい。「わかってるな」って感じでした。CGだったら別に100台出そうが同じですけど、実写でそろえたらすごいことになる。まぁそういうことは日本じゃ永遠に不可能だから、外国行くしかないんじゃないですか?

――ちなみに、3台以上っていうのは、どういう理屈が?

押井:絵面、レイアウトの問題だけどね。1台だとレイアウトってのは簡単なシルエットでしか撮れないし、2台っていうのは基本大小しかありえない。3つ以上になると初めてレイアウトにいろいろな選択肢が出てくるんです。戦車じゃなくて、人間でも一緒。3人以上になるとレイアウトに威力が出てくる。飛行機だろうがなんだろうが一緒です。並べた時の魅力っていうか、デカイものがたくさんあるっていうのは、それだけですごいことなんですよ。問答無用の迫力がある。

――今回、撮影でいろいろと苦労されたと思うんですけど、これは大変だったなということは?

押井:まず、せまくて大変だったということ。せますぎて。役者とカメラマンと2人しか入れない。だから指示するのが大変だった。モニター見ながら、トランシーバーで日本語からポーランド語に訳してもらいつつ……。最初はめちゃくちゃでしたよ。

 それと、戦車って実は外の音がよく聞こえるんだってこと。全然聞こえないだろうと思ったら大間違いで、周りでおしゃべりしてると全部聞こえるんですよ。外の音が入ってくるとよく聞こえる。何回「静かにしろ!」って言ったかわからない(笑)。そういうドタバタはおもしろかったと言えばおもしろかったし、大変だったと言えば大変でした。

――それは意外ですね。全然聞こえないものだと思っていました。

押井:撮影中はハッチを開けてるしさ。ああいう鉄の箱みたいなものの中にいるとね、外の音が入ってくるとよく聞こえるんですよ(笑)。最後に、監督として一番大変なのは言葉の通じない役者といかに話をするかっていうところ。これが一番大変。結構てんてこまいでした。

――片岡さんはいかがですか。同行された感想などありましたら教えてください。

片岡:僕はゲームの世界しかわからなかったので、こういう撮影は初めてだったんですよ。映画のメイキングなどはよく観ていますけど。実際に目で、耳で、身体でってのは初めてだったので、とても感動しました。だから押井さんが声をかけてくれた時、涙が出てきました。

――どこに感動しましたか?

片岡:僕らはやはり想像の中で本物らしく作ろうとするんです。けれど、目前に本物があるわけですよ。本物のメカを、本物の人間が動かしていると考えるとなんだかジ~ンとしてしまったというか(笑)。それに戦車って本当にせまいんだなって。僕も1回中に入らせてもらったんですけど。

――実際に乗ってみたんですか?

片岡:はい。ゲームの中ではせまいように作っていても、まだ広いんですよ。4人も乗れますしね。あれはゲーム中の問題もありますけど。ただ、戦車のせまさを出したかったので、これを知ってから作っていたら、また違ったレイアウトになったのかなと思ったりしましたね。

押井:それはそうですよね。アニメーションをやってる時も同じで、可能なかぎり本物を見に行く。もしくは体験する、触ってくる。アニメーションと言えど、頭の中で作っていると限界があるんですよ。だから、戦車だろうがヘリコプターだろうが、あるいは建物、人に会いに行ったりとか。その延長線上に実写映画を撮るということがあるんですよ。現物があって、役者が立って、カメラが回って……というね。だから、たぶん映画って何回やってもその瞬間は、ときめくものがありますよ。ただ、忙しすぎて、アっという間にそういうものはなくなっちゃうんだけど(笑)。

――現実は厳しいってお話ですね(笑)。

押井:寒いとかお腹すいたとかトイレ行きたいとか、いろいろあるからね。今回は午前中の撮影がとても寒かったですね。もうちょっと暖かい季節にやったら楽しいんだけど。

――実際に撮影したのは何月なんですか。

押井:4月ですね。本当は夏に撮りたかったんですけど、ゲームの発売に間に合わないから(笑)。夏はいいんですよ。日が長いし。それに戦車って鉄の塊だから、寒い時に触りたくないわけですよ(笑)。

→押井監督が抱く“二足歩行で戦場を歩くマシン”のイメージとは?(5ページ目へ)

(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.

データ

▼『重鉄騎 LIMITED EDITION』
■メーカー:カプコン
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:STG
■発売日:2012年6月21日
■価格:35,000円(税込)
※イーカプコン専売
▼『重鉄騎 サントラセット』
■メーカー:カプコン
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:STG
■発売日:2012年6月21日
■価格:8,990円(税込)
※イーカプコン専売

関連サイト