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2014年1月21日(火)

3DS『カラス BOR』独占レビュー! 真ボス余裕のSTG狂と前作未プレイのサブカル女がそれぞれの視点から『BOR』を解説

文:ミゲル皐月誠

■『カラス』ってのは、つまり変で真摯なゲーム。

 ハイどうも。ニュース記事担当、STG狂の皐月誠です。『カラス』の腕前は真ボスを倒せる程度。好きな『カラス』のメールは、「腹がいたい人の気持ちなんか、わからないじゃない? ヒトが何を考えてるかなんて、わかりっこないよね」と「俺達はさ、差別する対象がいないと不安で生きられないんだよ。きれい事ばかり言うけど、どいつもこいつも同じなんだよ」です。

 で、もちろんシンクロ秒間30連射の勢いで期待している『カラス BOR』なんですが、前作プレイヤーとして何か書けとミゲルくんに言われました。さて、どうしましょう。じゃあ無印『カラス』から話しましょう。


●『カラス』にハマる、その理由。

 セガのアーケード用基板“NAOMI”をプラットフォームとして、STG『カラス』がリリースされたのは2006年11月。自分がそれを初めてプレイしたのは、とあるゲームセンターに訪れた翌月4日のこと。筐体はブラストシティだったかアストロシティだったか、デモムービーからは前作『ラジルギ』から通じるトゥーンシェードを用いたグラフィックが見えて、ちょっとした安心感を覚えた。

『Karous‐The Beast of Re:Eden‐(カラス‐ザ ビーストオブレデン‐)』 『Karous‐The Beast of Re:Eden‐(カラス‐ザ ビーストオブレデン‐)』 『Karous‐The Beast of Re:Eden‐(カラス‐ザ ビーストオブレデン‐)』
▲『ラジルギ』の番外編的な位置づけの、『ラジルギノア』(画像はWii版)。時系列的には続編と言えなくもない……らしい。

 席に座ってまず感じたのは、辟易だった。画面に天井の蛍光灯が反射し、素の状態では半分ほどが真っ白に見える。筐体を設置するには最低の場所だ。店員は起動の確認後、恐らくテストプレイまではしておらず、インカムだって期待されていないだろう。

 人の努力や頑張りなんてものは、預かり知らぬ他人にとっては糞ほどの価値もない。当時は現在よりも多少マシだったものの、斜陽産業たるアーケードゲームの、日陰の中にある縦スクロールSTG。さらに隠花植物じみた非著名メーカーのタイトルだ。普通の人には期待されているわけがない。

 だけど一部のアレなゲーマーには、大手メーカーの大作RPGよりも期待のタイトルだった。ボスしか出ない『カオスフィールド』という妙なSTGでデビューしたかと思えば、翌年にいろいろとイってる『ラジルギ』というSTGをリリース。それらに共通するのは、回避よりも“攻め”を要求されるゲームシステムと裏に流れるダークなシナリオ、そして耳に残る独特なBGMだ。新作『カラス』とは、いかなるゲームなのか――いざ、コインを投入。

「なんだこれ」

『Karous‐The Beast of Re:Eden‐(カラス‐ザ ビーストオブレデン‐)』 『Karous‐The Beast of Re:Eden‐(カラス‐ザ ビーストオブレデン‐)』
▲『カラス』(Wii用ソフト『マイルストーンシューティングコレクション カラス』版)

 初プレイの正直な感想は、ちょっとした失望。『カラス』の特徴のひとつは、敵の撃破などに使用した武器が、それによって獲得した経験値(=スコア)に応じてレベルアップしていくというシステムだ。しかし、STGというスピーディなゲームの中で、3種ある武器のどれを育てるべきか選択するのは難しい。また、選択するということはプレイングのテンポを崩す要因にもなる。

 前作『ラジルギ』を遊ぶには、とりあえず“アブゾネット(いわゆるボム)を使ってアブゾネットの使用に必要なゲージを溜め、アブゾネットが終了したら次のアブゾネットをすぐに使う”というシーケンスを覚えればよかったが、それに対し『カラス』のシステムは煩雑に感じた。同様に困った知人は、“画面下でシールドを展開し、無操作状態でラスボスまでBGMを楽しむ”という、明後日の方向に全力疾走した遊び方を編み出していた。

 しかし、武器の特性やスコア稼ぎを習得していくと、徐々にその触感が変わってくる。敵弾をしのぐシールドは敵機を撲殺する鈍器に、闇雲に振り回すソードは敵を仕留めるリーサルウェポンに、垂れ流すだけのショットは効果的な面制圧手段に変化する。

 そしてゲームシステムを熟知した先、専用BGM『Sex Pervert of a Silence』の印象的なイントロとともに現れる真ボス。真EDまで見てもよくわからない物語と世界観。ハイスコアや、まだ見ぬメール(画面下に表示される短文)とアイキャッチ(ステージ間に挿入される画像)を求めて筐体にどんどん流れていく100円玉。

「なんだこれ」

●『Sex Pervert of a Silence』

 まるで噛んでも噛んでも味のでるガムのよう。ただし、出てくるのはクールミントの爽快フレーバーとは真逆で、苦酸っぱくてクセになるドロッとした汁。こんな素晴らしいゲームをプレイできる私は、きっと特別な存在なのだと感じました(ヴェルタース)。

 その後、当時のクラブセガ秋葉原(現:クラブセガ秋葉原 1号館)では『スパイクアウト』仕様ブラストシティ(筐体左右にスピーカーが増設されていてBGMをよく聴ける)に入れられるという類を見ないスタイルで稼働されたり、ドリームキャスト移植版はドリームキャスト史上最後の正式リリースソフトとなったり、いろいろと『カラス』は様子がおかしかった。

「なんだこれ」

→今作『カラス BOR』は、オススメできるゲームなのか?(4ページ目へ)

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