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2014年6月30日(月)

『サガ』×『聖剣伝説』コラボ記念対談! 『聖剣伝説5』や河津秋敏氏による最新作はどうなる?

文:まさん

 こんなコラボは……アリだー!! なんと6月26日から7月10日まで、『サガ』シリーズと『聖剣伝説』のシリーズ初のコラボとなる“『聖剣伝説 RISE of MANA』Android版リリース記念『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RoM』相互コラボキャンペーン”が実施中です。思わず「レベルアップですぜ。あんたも成長したもんだ」なんて、上から目線でほめたたえたくなりますね。

『エンペラーズ サガ』ロゴ画像 『聖剣伝説 RISE of MANA』ロゴ画像

 さてさて、皆さん、こんにちは。30代のゲームマニアライター・まさんです。30代と言えば、小学生のころにゲームボーイで『魔界塔士 サ・ガ』と『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』をプレイし、両方のシリーズにどっぷりハマッてしまった人が多いはず。そんなボクたちにとって『サガ』シリーズと『聖剣伝説』のシリーズ初となる大がかりなコラボレーションと聞いたら、ワクワクしないわけがないじゃないですか!

 というわけでこの記事では、コラボレーションの立役者である4名のクリエイターをお招きして4者対談を実施! シリーズ制作時の思い出話や気になる新作などについて、いろいろと語っていただきました。

 お話を伺ったのは、『エンペラーズ サガ』側からはプロデューサーの市川雅統氏と、『サガ』シリーズの生みの親にして神! エグゼクティブ・プロデューサーの河津秋敏氏。そして『聖剣伝説 RISE of MANA』側からは、プロデューサーの小山田将氏とディレクターの八木正人氏。超豪華な顔ぶれをお招きしています。

“『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RISE of MANA』特別対談参加者”
▲左から『エンペラーズ サガ』プロデューサーの市川雅統氏と、エグゼクティブ・プロデューサーの河津秋敏氏、『聖剣伝説 RISE of MANA』のディレクターの八木正人氏、プロデューサーの小山田将氏。

■コラボのきっかけは……席が隣だったから!?

――『聖剣伝説 RISE of MANA』は『聖剣伝説』シリーズとして8年ぶりとなるアクションRPGですが、まずはプロジェクトを立ち上げた経緯を教えてください。

小山田:もともと、自分は今の部署に入った時に市川と一緒に仕事をしたことがあるんです。『エンペラーズ サガ』の開発をしている時から見ていて、ファンとして『サガ』シリーズが復活することがうれしかったのですが、そんな時にふと「『聖剣伝説』はどうなるんだろう?」と思ったんです。

 『聖剣伝説』シリーズは、生みの親である石井浩一さんがスクウェア・エニックスを退社されてしまって、そこから誰も手をつけていませんでした。しかし、だからといって『聖剣伝説』を眠らせておくのは非常にもったいないことなので、無理を言って『聖剣伝説 RISE of MANA』を立ち上げさせてもらったんです。

『聖剣伝説 RISE of MANA』タイトル画面
▲iOS版に続き、Android版の配信も始まった『聖剣伝説 RISE of MANA』。しっかりしたアクション性が楽しめるゲームに仕上がっている。

――今回のコラボレーションは、『聖剣伝説』シリーズと『サガ』シリーズ初の大がかりなコラボということで、かなり驚いた人が多いと思います。まずは、『エンペラーズ サガ』と『聖剣伝説 RISE of MANA』という2タイトルで、コラボを行うことになった経緯から教えてください。

市川:小山田とは会社の席が近いんですよ(笑)。以前に一緒に仕事をした縁もあって「いつでもコラボをしようよ」と話していました。もちろん、河津に後押ししていただいたのもキッカケですね。

小山田:つまり、きっかけはプロデューサー同士の席が近かった、という単純な理由です(笑)。でも、実は個人的な欲望もありまして……。河津は『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』のプロデューサーじゃないですか。『聖剣伝説 RISE of MANA』は、最終的に『聖剣伝説』オールスターの作品にしたいので、ぜひ河津のお話を聞きたかったんですよ。そういえば、八木は『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』でシナリオを書いていましたね。

八木:ドラゴンキラー編を書いていました。実は、僕が『聖剣伝説 RISE of MANA』を作った理由の1つは、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』の雰囲気で、バトルをもっとアクション性を強めたものをやりたかったからなんです。『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』はもちろん大好きなゲームなのですが、バトルがちょっと独特なんですよね。

『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケ画像 “『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RISE of MANA』コラボカード画像
▲コラボとして『エンペラーズ サガ』のロックブーケや『聖剣伝説 RISE of MANA』のアリアなどが、お互いの作品に登場する。

――バトルも独特でしたし、街を作っていくといった全体的なシステムも変わっていましたね。思い返してみると『聖剣伝説』シリーズは、DS版の『聖剣伝説 HEROES of MANA』がRTSですし、ガチガチのアクションばかりじゃないところが意外なシリーズでした。

小山田:石井さんは非常にチャレンジャーな方でしたから。「『聖剣伝説』はつねに新しいチャレンジをするタイトルだから」って、いつもおっしゃっていました。そうやって、石井さんがまかれた種を集めていく形で、新たな『聖剣伝説』が作れたのだと思っています。

市川:『サガ』シリーズもそうだったのですが、もともとあったシリーズをもう1回リブートさせるのはすごく難しいんですよ。僕の場合は河津がそばにいたので、河津に話を聞いてエッセンスをいただけるのですが、『聖剣伝説』の場合は石井さんが退社されているので、より難しかったと思います。

――ユーザーとしても、2007年のDS版を最後にコンシューマの『聖剣伝説』は発売されていないので、休止したタイトルという印象もありました。今回、復活したことで喜んでいるユーザーも多いと思います。

小山田:最初は『エンペラーズ サガ』のように、SNSのカードゲームにする案もありました。ただ、携帯アプリで『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』を移植した時に、新作は『聖剣伝説2』や『聖剣伝説3』のようにアクションゲームで遊びたい、という意見をいただいたんですよ。

 カードゲームの『聖剣伝説』自体も、すでに2013年にGREEでリリースされた『聖剣伝説 CIRCLE of MANA』という作品がありましたし、ここでさらにカードゲームを出すのはファンをガッカリさせてしまうだろう、と。そこで『聖剣伝説2』をベースにして現代風に作ったらどうなるのか、というところから企画を立ち上げました。

『聖剣伝説 RISE of MANA』画面写真 『聖剣伝説 RISE of MANA』画面写真
▲『聖剣伝説 RISE of MANA』では魔ペットと呼ばれる仲間とともに冒険できる。強化や進化をさせられる他、連携を行うことで敵に大ダメージを与えられる!

――今回のコラボレーションでは『聖剣伝説 RISE of MANA』側に『サガ』シリーズのキャラクターが出演していますが……ロックブーケとリアルクイーンはともかく、なぜ“ゲラ=ハ”を選ばれたのですか?

河津:選んだのは私じゃないですよ(笑)。ゲラ=ハは『聖剣伝説 RISE of MANA』側からの指名です。

小山田:『ロマンシング サ・ガ』は主人公だけでもたくさんいますから、どのキャラクターを残すべきか悩みました。そこで、ユーザーが印象に残っているキャラクターは誰だろうと開発側で話をしたら、なぜかみんなゲラ=ハを覚えていたんですよ(笑)。でも、ゲラ=ハだったら『聖剣伝説』の世界になじむのではないかと思ったので、試しに作ってみたら意外とマッチしましたね。

『聖剣伝説 RISE of MANA』ゲラ=ハ(1) 『聖剣伝説 RISE of MANA』ゲラ=ハ(2) 『聖剣伝説 RISE of MANA』ウコムの鉾
▲開発スタッフの印象に残っていたというゲラ=ハ(左と中央の画像)。彼が持っている武器は『ロマンシング サガ-ミンストレルソング-』のハープーンで、進化させると“ウコムの鉾”(右の画像)に変化する。小山田さんによれば、外見デザインも小林智美さんが起こしたイラストからこだわって作っているとのこと。

八木:ロックブーケは『エンペラーズ サガ』でも人気ですけど、今回はガッツリとアレンジさせていただきました。そのせいか、社内では「ロックブーケが萌えキャラになった!」と話題になっているみたいです(笑)。

河津:それはそれで、いいんじゃないですか? 頭身を『聖剣伝説』風に合わせたら、かわいくなっちゃったということですし。

『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケのポーズパターン(1) 『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケのポーズパターン(2) 『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケのポーズパターン(3)
▲『聖剣伝説 RISE of MANA』にコラボとして登場するロックブーケ。オリジナル版でおなじみのポーズも再現!?

小山田:リアルクイーンは、できるだけ原作を再現しようと思いました。ただ、これだとレーティングがCERO AじゃなくてCERO Bになっちゃうんですよね(笑)。

河津:リアルクイーンのレーティングは、本当に心配でしたね。『ロマンシング サ・ガ2』では、カメラが前に回ることを想定していないデザインじゃないですか。でも『聖剣伝説 RISE of MANA』だと正面から戦うので、これはヤバいんじゃないかな……と。まあ、そもそも人間ではないので、裸でも大丈夫なはずなんですけど(笑)。

リアルクイーン3Dモデル(1) リアルクイーン3Dモデル(2) リアルクイーン3Dモデル(3)
▲『聖剣伝説 RISE of MANA』にコラボとして登場するリアルクイーン。よく見るとセクシーかも。

八木:『聖剣伝説 RISE of MANA』は武器を装備するゲームなので、キャラクターだけではなく、おなじみのアイスソードやレフトハンドソードといった武器ともコラボしています。特にアイスソードは、本作で初めて追加される大剣カテゴリなんですよ。

『聖剣伝説 RISE of MANA』アイスソード 『聖剣伝説 RISE of MANA』藤娘
▲アイスソード▲藤娘
『聖剣伝説 RISE of MANA』レフトハンドソード 『聖剣伝説 RISE of MANA』竜槍マリストリク
▲レフトハンドソード▲竜槍マリストリク

小山田:アイスソードを装備すれば“冷凍剣”が使えます。あと、ゲラ=ハが連携技を使うと“愛がアップ”の吹き出しとともに回し蹴りをするところもこだわりです。

八木:ロックブーケも、連携を使うと『ロマンシング サ・ガ2』のポーズをとります。開発側も当時の作品を好きな人が多いので、特に何も言わなくても勝手に作ってくれるんですよ。

『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケのポーズパターン(4) 『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケのポーズパターン(5) 『聖剣伝説 RISE of MANA』ロックブーケのポーズパターン(6)
▲『エンペラーズ サガ』ではナビゲーター役も務めるロックブーケ。ポーズがかわいいので、別ポーズの姿も見せちゃいます!

――“愛がアップ”しても、ゲーム中に特別な効果があるわけではないんですよね?

河津:連携技を発動する演出なので効果はないですよ。『ロマンシング サ・ガ』の時の“愛”は、使う側の回復術の効果が上がりましたね。

――懐かしいですね。当時は“愛”の効果がわからなくて疑問に思っていたんですよ。疑問といえば、個人的にはリアルクイーンの性別も気になるのですが……。確か『ロマンシング サ・ガ2』だと女性特攻が効きませんよね?

河津:まあ、虫ですから。女性とは違うんじゃないですか? それにリアルクイーンの姿になったのは、もう卵は産まないぞ、と決意した状態ですから。

小山田:ちなみに、イベントが始まる時はおなじみの「アリだー!」もちゃんと流れます。

『聖剣伝説 RISE of MANA』マンターム(1) 『聖剣伝説 RISE of MANA』マンターム(2) 『聖剣伝説 RISE of MANA』マンターム(3)
▲リアルクイーンだけでなく、各種アリも登場する。リアルクイーンに比べて、かなりデフォルメされている。

河津:『サガ』と『聖剣伝説』のコラボは、これまでなかったんですよね。『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』には『サガ』の武器や技が混ざっていますが、あれは『サガ』シリーズのスタッフがかかわっていたから入ったんですよ。

■救われなさが魅力の『聖剣伝説』と、ドライな感じがたまらない『魔界塔士 サ・ガ』

市川:話は変わりますが、小山田は本当に『聖剣伝説』シリーズが好きなんですよね。どれくらい好きかというと、好きすぎて飲み屋でケンカを売られました(笑)。「市川みたいに『聖剣伝説』シリーズをわかってない人はダメですよ」って。

小山田:うーん、そこまで言った記憶はないのですが……(笑)。

市川:『聖剣伝説』も、もうすぐ25周年じゃないですか。『サガ』と一緒に、お互いでいろいろ盛り上げていければと思っているんです。小山田は、きっと僕らよりもすごいコラボを考えていると思いますよ!

小山田:なにか、尋常じゃないくらいプレッシャーを感じるのですが。困ったな、どこかでマナの樹を探してこないと……(笑)。

河津:それ、いいですね。屋久島の縄文杉とかを撮ってくるんですよね?

小山田:そして、マナの樹のもとでイベントを開催するんです(笑)。

――よく考えると『サガ』シリーズはズルいですね。佐賀県とコラボしても『サガ』と河津さんならおかしくない、とファンは思っちゃいますから。

ロマンシング 佐賀キービジュアル
▲佐賀県の情報発信プロジェクト“FACTORY SAGA(ファクトリー サガ)”と『サガ』とのコラボとなる“ロマンシング 佐賀”。六本木などでイベントが行われた。

市川:『サガ』は世界観も含めて自由ですからね。『聖剣伝説』シリーズは、根底の話がシリアスなので……。『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』なんて、当時では珍しいエンディングでしたからね。『魔界塔士 サ・ガ』だって、核シェルターとか悲惨なことが起こっていますけど、悲惨さはあまり感じなくて、本当に最初から対極的なシリーズですよね。

河津:『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』のエンディングは、当時「これはないんじゃないの?」と石井君に話したのを覚えてますよ(笑)。

――確かに『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』は、道中やエンディングがシリアスで、子ども心にもすごく印象に残っています。

河津:最終的に救われない感じは、石井君の好きなところなんだよね。みんなが業を背負っていて、その業で滅んでいくんですよ。カタルシスにたどりつかずに死んでいってしまう。

八木:そのモヤモヤしたものがあるから考えちゃうんですよね。別のエンディングがあるのか、と。

市川:当時、学校で嘘テクが流行って、別のハッピーエンドがあるって言われていましたね。トロッコに乗ったり、鎌で草を刈ったり、やっていることは明るいのに、終わりが暗い。

河津:道中も暗いんだよね。出てくる人が、みんな幸せにならずに終わっていくんですよ。

『聖剣伝説 RISE of MANA』 『聖剣伝説 RISE of MANA』

八木:河津のゲームも酷い場面が多いのですが、河津はドライなんですよね。「殺しても奪い取る」とか、簡単に言っちゃう。

河津:あれは言葉の綾で、実際に自分たちで殺せと言っていないから大丈夫。

――ん? ちょっと待ってください。『ロマンシング サガ-ミンストレルソング-』だと、実際にガラハドを殺していましたよね?

河津:あれは、どうせガラハドと戦わないだろうと思うはずなので、実際に戦うようにしたんです。しかも、ガラハドが強い。どちらかというと、ユーザーにあそこで全滅してくれ、という気持ちで作りました(笑)。

『ロマンシング サガ-ミンストレルソング-』
▲『ロマンシング サガ-ミンストレルソング-』より。ガラハドに返り討ちにあった人も多いのでは?

八木:自分は昔、河津と一緒にゲームを作っている途中に「これはどういう意味なんですか?」といろいろ質問したんですよ。そうしたら「いやいや、知らなくていいよ。世界のことなんて知っていることのほうが少ないでしょ?」って返されました。

 特に覚えているのが『アンリミテッド:サガ』の“七大脅威”ですね。あれはいったい、なんだったんですかと聞いたら「いや、別に」ですよ!? 絶対教えてくれないんです(笑)。でも、世界なんてそういうものでしょ、という考え方もすごくわかるというか……それが『サガ』の世界観なんですね。

市川:八木は、これまで河津と一緒にいろいろな仕事をしてきましたからね。

八木:直接的に一緒の仕事をしたのは『ラストレムナント』からですね。河津が「僕は今回ただの1プランナーだから頑張って」とか無茶なことを言い始めて……。あの時は、メインシナリオの大本を河津が構築して、そこを僕がどう補完していくかという作り方をしました。

 その時もいろいろ質問をしたんですけど、やっぱり教えてくれないんですよ。ユーザーはともかく、作る側は知っていてもいいんじゃないですか、と言ったら「いやいや、好きにすればいいから」って。結局、最後まで教えてくれなかったです。

――ヒドい(笑)。でも、スタッフにも教えないだけで、河津さんの中では、きちんとした設定が存在してるんですよね?

河津:もちろんありますよ。でも、説明しちゃうと長くなっちゃいますし、実際にそこを全部作るのは無理ですから。ゲーム制作は、作業が上から下に流れていく過程で、実際に現場で作っている人たちが一番偉いと思うんですよ。

 上の人間は仕込みだけで、あとは現場の人たちが納得するものを作らないと意味がない。上の人間の意識や考えなんて、どうでもいいんです。

市川:河津からFC、SFC時代やPS初期の話を聞けるのはいつも貴重な時間です。スクウェア時代、各プロジェクトの人数規模ってどうだったんですか。

河津:初代PSのころに、人数が一気に増えたんですよ。『ファイナルファンタジーVII』のころにはかなりの人数がいましたね。

 『ロマンシング サ・ガ2』は20人くらいで作ったのですが、その当時でも『FF』チームは50人を超えていました。『FF7』の時は100人を超えたのですが、それでも人が全然足りない。外注で3DCGを作れる人を片っ端から集めても足りなくて、当時日本にいたほぼすべてのCG制作者に発注をかけました。あの当時にCGを作った人たちは、おそらくほぼ全員が『FFVII』のムービーを作った経験があるんじゃないですか。

市川:その前の時代もすごいですよね。だって、たった7人や8人で『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』や『魔界塔士 サ・ガ』を作っているんですよ。

『聖剣伝説 RISE of MANA』 『聖剣伝説 RISE of MANA』
▲アクション性が高い『聖剣伝説 RISE of MANA』。武器の強化など、RPG的な成長要素も多数存在する。

河津:昔はそんなもんですよ。『FFII』だって、10人くらいで作りましたからね。SFCでは20人いないと作れないという話になり、そこから倍々でどんどん増えていって……。

八木:『聖剣伝説 RISE of MANA』は30人くらいで作ったので、SFC時代くらいの懐かしい感じがしますね。

市川:『エンペラーズ サガ』もそうなのですが、ソーシャルゲームって開発よりも運営の人数がどんどん増えるんです。ずっとおもしろいものを作り続けないといけないので、増えていく一方なのが悩みどころですね。

――ソーシャルゲームって、終わりが見えないゲームですからね。

市川:終われないんですよ。『エンペラーズ サガ』も今は第4部をやろうか、という話をしています。『エンペラーズ サガ』は、河津がガッツリ書くシリーズとそうじゃないシリーズで分けているのですが、河津が手掛けたところはテイストがまったく違うので、プレイしている方はわかっているかもしれませんね。

――『サガ』シリーズのファンは、どうしても“河津テイスト”を求めてしまいますからね。

河津:私のテイストっていうと、たぶん“不親切”ですかね? テキストを読んで「何言ってるんだ、こいつ」となる。言葉が足りていない感じですかね(笑)。

――そこがいいんですよ! 自分は、河津シナリオだと『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』が好きでした。

八木:あれもガラッと変わった作品でしたね。『FFCC』は、そもそもガッツリした物語を入れないで、みんなで遊ぶ作品でしたから、いきなりテイストが変わって……。

――でも、遊んでいる側からすると、むしろ他の『FFCC』よりも河津テイストを感じるゲームでしたよ。

市川:『エンペラーズ サガ』を作っていると、河津のアイデアが書かれたテキストが送られてくるんですが、その文章からすでに河津の個性が出ているんですよ。そんな文章で個性が出せるってすごいですよね。それを真っ先に読めるのって幸せだなと思います。

ロマンシング サガ ZERO
▲『エンペラーズ サガ』で好評を博したのが、河津氏が自らシナリオを手掛けた“ロマンシング サガ ZERO”。シリーズの知られざる物語が明かされた。

――つまり、これからも河津さんのテイストが入った『エンペラーズ サガ』が読めると期待していいんですね?

河津:そうですねえ。2章でやっていたようなシリーズを、3章でもやろうという話はありますよ。作品自体も『サガ フロンティア』までしかでていないので、まだまだネタはあります。本当に昔いっぱい仕事をしておいてよかったな、という感じですよね(笑)。もちろん、ユーザーが受け入れてくれるから成り立つ話ではあるのですが。

市川:『聖剣伝説』シリーズとのコラボも、もっとやりたいですね。

小山田:まだ『ロマンシング サ・ガ』の武器しか出ていませんからね。評判がよければ別のシリーズも出したいですよ。個人的には『サガ フロンティア2』が大好きですし。そうそう、今回のコラボレーションイベントでは『ロマンシング サ・ガ2』の原曲が流れるんですよ!

■『サガ』シリーズ25周年から『聖剣伝説』シリーズ25周年へ

――今年は『サガ』シリーズが25周年ということで、ファンとしても期待が膨らんでいます。

河津:そうですね。ファンの方からも『サガ』シリーズが好きですという声と、いろいろなところから新作を遊びたいという声をいただいています。すごくありがたいことですよ。

市川:佐賀県とのコラボもそうなのですが、そうやってファンの声を盛り上げて次につなげることがプロデューサーの仕事だと思っています。僕らが所属している部署は、そうしたユーザーの思い出を大事にする部署なので、今回『聖剣伝説』シリーズが復活したように、今後もお客様の声しだいでいろいろな作品にかかわっていければと思っています。

――ユーザーも今年で『サガ」が25周年。再来年に『聖剣伝説』が25周年と、いい流れで盛り上がってほしいという気持ちがあると思います。『聖剣伝説』シリーズの25周年については、もう何か準備をされているのでしょうか?

小山田:『聖剣伝説』シリーズは、今だと現行のハードでほぼ遊べないタイトルなんですよ。特に『聖剣伝説3』に至ってはSFC版しか遊べない。ですから『聖剣伝説 ‐ファイナルファンタジー外伝‐』『聖剣伝説2』『聖剣伝説3』とシリーズをちゃんと遊べる状態にしつつ、2年後に『聖剣伝説5』を出したいです。もちろん『聖剣伝説 RISE of MANA』も、それまで継続させたいですね。

――ファンとしてもすごく楽しみです。2年後に『聖剣伝説5』を作るとしたら、どの機種で作りたいですか?

小山田:それは難しい質問ですね。なにせ、2年後ですから。ただ、ユーザーが望んでいるのは据え置きハードだと感じています。『聖剣伝説 RISE of MANA』はスマートフォンなので、大人になって過去作を遊べないユーザーや新規の方でも手に取りやすい環境になっていますが、それはそれとして、腰を据えて遊びたいというユーザーさんも一定数いるんですよね。そちらに向けても、きちんと物作りをしないといけない、という意識はつねにあります。

――個人的にはスマートフォン用のコントローラがいろいろ発売されたことで、携帯ゲーム機が必要なくなるのではないか、と思うくらい操作性がよくなりましたね。ただ、まだまだスマホ用のコントローラーは浸透していないようにも感じます。

小山田:全体的にはまだまだですね。ですが『聖剣伝説 RISE of MANA』を遊んでいるユーザーに関していえば、アクションということもあってか普及率が高いんですよ。

――なるほど。確かに、しっかりしたアクションを遊べる『聖剣伝説 RISE of MANA』は、コンシューマゲームに近い作品なのかもしれませんね。

小山田:それは、よく言われます。ただ、遊ぶのにドっと体力を使うという意見もあります。数分間とはいえ、しっかりアクションをするという行為が、今までのフリートゥプレイに慣れたユーザーからすると疲れるようです。

――逆に『エンペラーズ サガ』のほうはアクションじゃないので、フリートゥプレイに慣れたユーザーにも受け入れられやすいのでしょうか?

市川:ええ。いつもではなく、時間がある時にシナリオを集中して読んでもらいたいという遊び方を想定しています。こちらはこちらで、カードゲームの文法やマネタイズで、お客様にどう満足してもらえるのかを考えるのが難しいですね。

八木:でも『エンペラーズ サガ』って、いわゆるカードゲームというよりも『サガ』らしいですよね。こう、うまく言えないですが、なんとなくにじみ出る感じが……。

市川:うん、だって変なゲームでしょ?

河津:変なゲームだよね。もう、ゲームじゃないような感じもするし、なんか変な感じがする。

『エンペラーズ サガ』 『エンペラーズ サガ』 『エンペラーズ サガ』
▲“光と闇の双子皇帝”篇など、『エンペラーズ サガ』のオリジナルストーリーも展開している。

市川:他の会社のカードゲームとは、なんだか雰囲気が違うんですよ。

河津:本当に変なゲームだよねえ。

――なんで、お2人でことさら変なゲームを強調されるんですか(笑)。でも、言われてみると、確かにターム族が主人公になった時はビックリしました。

市川:あれ、変ですよね! あのシナリオを作った時はやったと思いました。当時『ロマンシング サ・ガ2』で、河津が書いたアリが出てくるシナリオに驚いたじゃないですか。その時と同じくらいビックリすることはないか、と考えていたら、うちのライターが「今度の主人公はアリです!」と言ってシナリオを書いてきたんです。

 そうしたら、うちのアート担当も盛り上がっちゃって……。さらに、その後のイベントでそいつらと戦うじゃないですか。『エンペラーズ サガ』って、そういうおもしろいことがよく起こっているんですよ。ただ、残念ながらソーシャルゲームに興味ない方もおられるんですよね。そこは、おもしろいことをやって少しずつファンを広げていくしかないのかな、とも思います。

――あのシナリオはおもしろかったですね。個人的に『エンペラーズ サガ』で1つ気になっていることがあるのですが、“河津のエンサガクロペディア:皇帝全書”でキャットと河津さんの掛け合いがあったじゃないですか。そこでフリーシナリオの話題になって、新しいフリーシナリオを作っていかないといけないというお話をされていましたよね。

河津:そうですね。毎回、自由度を高くしないといけない、というのはテーマとして持っています。当然、シナリオ以外のゲーム性や世界観も毎回変わるので、それに合わせてフリーシナリオも変わらなければいけません。

 ユーザーのゲーム体験も『ロマンシング サ・ガ』のころと現在では全然違うものを体験してゲームに入ってきますからね。その時に求められるフリーシナリオの自由度や、ゲーム体験の自由度とはなんだろう、と。そこは違うものを作らないといけないな、と考えています。

――その新しいフリーシナリオを、ぜひ新作や『エンペラーズ サガ』で見てみたいです。

市川:こんなことを言っていますけど、河津って本当は全然違うことを考えていたりするんですよ(笑)。河津はシステムを俯瞰で見ている人なんですよね。だから『ロマンシング サ・ガ2』でも平気でキャラがどんどん死んでいく。だけど、死んでいくのに不思議とキャラクターが心に残るんです。ドライなところで残っていくおもしろさがあって、この人には一生勝てないと思いますね。

――だからこそ『サガ』シリーズは、新作が出るたびにまったく予測できない作品が生まれるんでしょうね。

市川:たぶん、河津の頭の中をチームメンバーが共有するのって、すごく大変だと思いますよ。

八木:ほとんど教えてくれないですからね……。

河津:スタッフもわからないほうがいいんです。僕の考え方としてはそうです。とは言え、よく「いや、スタッフはわかっていたほうがいいですよ」と言われるんですけど。うん、まあ、そう言われるとそうなんですが……(笑)。でも、世の中って実際にわからないことばかりですから。

――そうやって秘密にしていた内容を、河津さんご自身が25周年記念のTwitterで明かしているじゃないですか。あれで、ファンはすごく盛り上がってますよ。

河津:どうなんでしょうね? 本当に伝わっているのか、よくわかりませんが。

――いやいや。あのTwitterを楽しみにしている人は、自分も含めてすごく多いです。いつも何をつぶやくんだろうと思ってます。

市川:それ、僕らもなんですよ。だって、僕らも知らないことをつぶやくんですから。

『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RISE of MANA』コラボカードSCR 『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RISE of MANA』コラボカードSCR
▲GREE版『エンペラーズ サガ』には、コラボとして『聖剣伝説 RISE of MANA』のレインとイリスが登場。

――たぶん、25周年記念のTwitterは、河津さんがプライベートをつぶやいてるだけでもおもしろいと思いますね。

市川:そういう話って、河津のほうからはしてくれませんからね。この間『聖剣伝説』シリーズの石井さんと飲みに行ったのですが、昔、河津と石井さんが2人で一緒に『もののけ姫』を見に行ったという話を聞いたんですよ。

 そういうレジェンドクリエイターのプライベートって興味深くないですか? 当時のクリエイターがどんなことを考えていたのか……。ちなみに、その時は『もののけ姫』を見て「俺たちが年をとってもまだまだできるぜ!」みたいなことを言っていたらしいです。

小山田:石井さんと飲みに行かれたそうですが、河津とも定期的に飲みに行っているんですか?

市川:定期的に飲むことはないですね。その代わり、お昼ご飯は毎週月曜日に2人で一緒に食べています。

河津:ランチミーティングを週1回やっているんですよ。ミーティングというよりも、自分の子どもがどうの、といった雑談なんですけど(笑)。でも、そうやって会話をするのは重要ですよ。お互いに何かを共有している感覚が大事なんです。だから、『エンペラーズ サガ』の運営を開始してからは、毎週月曜日に開いてます。

市川:基本的に誰でも参加していいよ、と言っているミーティングですが、結構河津と2人っきりですね(笑)。

河津:まあ、ご飯くらいは上司に気をつかわないで食べたいんでしょう(笑)。ちなみに、昔はよく夜になると飲みに行っていたのですが、今は皆さん、運営のほうが忙しくて……。

――ソーシャルゲームは、毎日運営をしなければいけないから大変ですね。

河津:1年半くらいずっと忙しくて、その後の2、3か月は会社に来ても何もしない……なんて働き方をしていたのは、ゲーム会社だけですよ。普通は、毎日同じ仕事を繰り返すわけで、ある意味、一般的な世の中の仕事と同じサイクルになったのだと思います。

市川:普通に運営するだけでも大変ですよ。おもしろくしなきゃいけないわけですが、売り上げも考えなくちゃいけない。たとえば、先ほど話したアリのイベントは、おもしろさを重視して売り上げを度外視しています。だって、アリのカードなんて売れるわけないじゃないですか(笑)。そのバランスを、どう判断するのかが難しいですね。ずっと、続けていかないといけないわけですから。

『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RISE of MANA』コラボカードUR 『エンペラーズ サガ』×『聖剣伝説 RISE of MANA』コラボカードUR
▲mobage版、dゲーム版『エンペラーズ サガ』には、コラボを記念した2枚のカードが登場する。

――小山田さんも『聖剣伝説 RISE of MANA』を運営するうえで、同じような苦労を感じられていますか?

小山田:Appleさんの審査がある以上、すぐ修正するわけにもいかないので、普通の携帯アプリよりも慎重に作っています。それでも、ユーザーさんの手に渡ると予想外の不具合が出るので、毎回ヒイヒイ言いながら運営していますね。

 本当はメンテナンスもなくしたいのですが、さすがにしないと運営できないので……。融通が利かないなりに愚直にやるしかないと思っています。

――それでは最後に、皆さんの今後の展望や新作にかける想いなど、電撃オンライン読者に向けたメッセージをひと言お願いします。

市川:『サガ』シリーズは、25周年企画の第1弾として“ロマンシング・佐賀”というコラボレーションを行いました。『エンペラーズ サガ』を中心に動いていますが、まだまだいろいろな企画を河津と一緒にやっていくので楽しみにしていてください。どれも『サガ』シリーズのファンの皆様が楽しめるものなのは間違いない、と思っていただいてかまいません。

小山田:自分は、いろいろな場で対外的に言い続けているように、2年後の『聖剣伝説』シリーズ25周年に『聖剣伝説5』を作ります!

八木:作るの確定なんですか!? いや、自分も作りたくないわけではないのですが(笑)。『聖剣伝説 RISE of MANA』はある意味お祭りゲーなので、自分が作ってもファンは許してくれますけど、シリーズ物だとそうはいかないんじゃないですかね?

小山田:そんなこと言わないで、一緒に作りましょうよ(笑)。『聖剣伝説』はシリーズを通して作っている人のほうが少ないんですから。『聖剣伝説 RISE of MANA』の話をすると、こちらは現在16章まで配信していますが、8月を目標に開発内部で第1部と呼んでいる20章までを配信する予定です。そこで1つの話が区切りを迎えますが、さらに『聖剣伝説』の世界を広げる第2部のシナリオが展開していきます。

『聖剣伝説 RISE of MANA』 『聖剣伝説 RISE of MANA』
▲第1部のクライマックスが近づいてきた『聖剣伝説 RISE of MANA』。聖剣をめぐる物語も、いよいよ佳境へ!

 それと、今『聖剣伝説2』のAndroid版も作っているんですよ。そちらの配信に合わせて、過去タイトルとのコラボレーションも積極的にやっていこうと考えていますので、過去作を遊んでいた人たちも手に取ってもらえるとうれしいです。魔ペットを使った遊びを増やす予定もあり、まだまだ終わらないので楽しみにしてください!

八木:まずは『聖剣伝説 RISE of MANA』第2部のシナリオを書きます。『聖剣伝説 RISE of MANA』を立ち上げた1人として、今『聖剣伝説』を求めている人って多いと思うんですよ。そこに届けるお手伝いをしたいと思っていますし、最近は『聖剣伝説』に限らず、継続して出ているシリーズが減ってきているので、久々に「このシリーズが来た!」と言ってもらえる作品を作りたいです。

河津:自分は『サガ』の新作をなかなか発表できていないので、とにかく新作を発表することが第一ですね。きっと、ユーザーの皆さんもそれしか望んでいないと思うんですよ。だから、もう、今はそれだけしか考えられないですね。新作に関してはちょっとずつ蛇行してはいるのですが、ちゃんと進んでいるので安心してください。

『聖剣伝説 RISE of MANA』フィギュア 『聖剣伝説 RISE of MANA』フィギュア 『聖剣伝説 RISE of MANA』フィギュア 『聖剣伝説 RISE of MANA』フィギュア
▲3Dプリンターで作られたという『聖剣伝説 RISE of MANA』の主人公たち。残念ながら、今のところ商品化の予定はないそうです。

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