2015年2月1日(日)
本日2月1日に幕張メッセで開催された“闘会議2015”。イベント内でSCEが配信した番組“SCE JAPANスタジオ チャンネル 出張版 in ニコニコ闘会議”に『アーク ザ ラッド』シリーズの生みの親である赤川良二さんが出演。さまざまな開発秘話が明かされました。
番組にはSCEの広報の西島卓さんも登場しましたが、実は『アーク ザ ラッド』発売当時はSCEに入社する前で、1ゲーマーとしてプレイしたとのこと。SCE入社後は主に『ワイルドアームズ』シリーズのプロモーションを担当していたので、ある意味で『アーク』シリーズはRPGの先輩として目標にしていましたと話していました。
そもそも『アーク ザ ラッド』を開発することになったきっかけは、PSという新しいハードを展開するのに際して、ユーザーにPSを選んでもらうためのジャンルが必要だという発想からだったとのこと。
そこで、のちに『グランツーリスモ』で知られることになる山内さんが『モータートゥーン・グランプリ』というレースゲーム、山元さんが『ジャンピングフラッシュ!』というアクションゲームを作り、RPGを赤川さんが担当することになりました。こうして新世代RPGとなる『アーク ザ ラッド』が作られることになったそうです。
▲1995年6月30日に発売された『アーク ザ ラッド』。新世代RPGとして多くのRPG好きがプレイをしました。 |
他のRPGとの差別化については、新しいハードということでいろいろやろうと意識したとのこと。今では当たり前となっていますが、ゲーム中にキャラクターがしゃべる、CGムービーを本格的に使うといったことはまだまだ当時のゲーム業界では珍しいことでしたが、それらを意識的に取り入れていったそうです。
ちなみに、その当時にちょっと調子に乗ったこととして、ロンドンの有名楽団を使って音楽を生オーケストラで収録した思い出を語っていました。CDを使えるので音楽を豪華にできることから会社に提案したところ、本当に実現できることになってうれしかったそうです。
ここで西島さんに『アーク』を遊んだ感想が質問されました。当時は学生でRPGとして楽しく遊んだそうですが、ちょっとボリュームが短かったという本音が語られました。
▲『アーク ザ ラッドII』は1996年11月1日発売。クリアまで100時間以上を超える大ボリュームや衝撃的な結末が話題を呼びました。 |
これについて赤川さんは、いくつかの要因があったことを明かしました。1つはゲームのテンポや長さに関する部分で、プレイ時間よりもさくさく遊べる部分を重視したそうですが、当時はRPGは長く遊べないとダメだと言われていた時代だったため、あまり反応はよくなかったとか。
RPGはクリアまで30時間、50時間が当たり前という風潮があったため、普通に遊ぶと15時間くらいでクリアできる『アーク』は少し短いと言われることが多かったそうです。その反動もあり、『アーク2』は100時間遊んでも終わらないくらいの長さになったようでした。
もう1つの要因は開発期間とゲームボリュームによるもの。そもそもは『1』と『2』と分けずに1本で発売する予定でしたが、PS本体の発売から近い時期での発売が望ましかったため、ある程度の物語がまとまった部分までを『1』として発売することになったそうです。
▲1999年10月28日に発売された『アーク ザ ラッドIII』。この後も『アーク ザ ラッド モンスターゲーム with カジノゲーム』、ワンダースワン版『機神復活』などのシリーズ作が展開。PS2でも『精霊の黄昏』、『ジェネレーション』が発売されました。 |
ちなみに、赤川さん的にケガの巧妙となったエピソードとして、データ引き継ぎに関する逸話が語られました。そもそもゲームの続編に前作のデータを引き継げるという仕様自体が当時は珍しかったので、開発は少し大変だったそうです。
とはいえ、本題はそこではなく、ベスト版に関するものでした。『1』のベスト版は『2』の少し前となる1996年7月12日に発売されましたが、その際に“プレイデータを『2』に引き継げる”という部分が話題になり、『1』のベスト版が売れて、『2』の知名度アップにもつなかった実感があったそうです。
赤川さんいわく、「結果論ではありますが、『1』と『2』に分けてよかった部分もあります」としめくくっていました。
ドット絵に関する話題の中では、ドットの技術継承がされていないことを少し寂しそうに語る部分もありました。ドット絵はよく見るとデッサン的に変な部分もありつつ、動くとちゃんと楽しそうに見える独特なものだと語り、『アーク』の開発時はとにかくたくさんのパターンを作ることに苦心したとのこと。
例えば、今なら敵の攻撃を避ける動きを作る際、キャラのデータ自体は共通して作られていて、そこに動きをつけるという考え方ですが、ドット絵の場合はアクションごとにすべて新規で作る必要があるので大変だったと語っていました。
また、キャラクターデザインやイラストに関する話題として、それらを手掛けた国末竜一さんがドッター出身だったことも語られました。だからこそ『アーク』シリーズはゲーム中のCGとイラストとの親和性が高いと感じているそうです。
▲初期の『アーク ザ ラッド』3部作はゲームアーカイブスで配信中です。 |
番組後半には『アーク』だけにとどまらず、赤川さんが手掛けた往年の名作に関する話題も飛び出しました。
パチンコゲーム『ヴィクトリーゾーン』の名前も出されつつ、桂正和さんがキャラクターデザインを手掛けた恋愛アクション『LOVE&DESTROY(ラブアンドデストロイ)』、PSとは思えないほどのビジュアルクオリティを実現したアドベンチャー『THE BOOK OF WATERMARKS』、カルトな人気を誇る本格登山SLG『蒼天の白き神の座(そうてんのしろきかみのくら)』の思い出が語られました。
『LOVE&DESTROY』については「恋愛アクションという特殊なジャンルで、ロボットも出てくるし、ちょっとHなシーンもある問題作」と紹介され、『THE BOOK OF WATERMARKS』では主題歌をエンヤさんのお姉さんにお願いした思い出話がされていました。ちなみにお姉さんの声は、めちゃくちゃエンヤさんに似ていたそうです。
そんな思い出話がありつつ、もっとも盛り上がったのはやはり『蒼天の白き神の座』について。特に西島さんは思い入れが強かったようで、「今のような“おもてなし”とは真逆のシビアさを感じられる」と熱弁していました。
『蒼天の白き神の座』を知らない方に説明すると、物語はエベレストをしのぐ1万メートル級の山が発見されたことから始まります。その山頂を目指して登山チームを組むSLGなのですが、問題はその難易度の高さ! 普通に遊ぶとあっさり全滅しまくるバランスながら、遊び込むとクリア方法が見えてくる絶妙なゲーム性が話題となり、いまだにPSのベストゲームとして考える人も存在するタイトルです。
ちなみに赤川さんは、ネットで“無酸素で1人で登頂”といったとんでもないプレイをするユーザーの存在を知って、本当に驚いたとのこと。自分たちが想定した状況を超えてプレイする人が多く、感銘を受けたとのことでした。
ちょっとした裏話として、当時の広告では実写の雪山っぽい写真を使っていましたが、実は山ではなくスキー場で撮影したことが明かされました。また、タイトルが長くて難しいので、社内では“山”と呼んでいたそうです。
そんな赤川さんですが、最近は『クロックタワー』の制作陣が手がける新作ホラーゲーム『NightCry』に携わっているそうです。
番組の最後には好きな言葉を添えたサイン色紙が披露されました。赤川さんが選んだ言葉は“明日へ!”。これはもちろん、『アーク ザ ラッドII』のエンディング曲『明日へ』をイメージしたもので、おまけとして激レアな『アーク ザ ラッド モンスターゲーム with カジノゲーム』テレフォンカードも視聴者プレゼントに提供していました。
西島さんが書いた言葉は“『山』アーカイブス希望!”。『蒼天の白き神の座』のゲームアーカイブス化はまだ実現していませんが、できるだけ実現できるように頑張りたいとのことでした。
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■“闘会議2015”開催概要
【開催日】
2015年1月31日~2月1日
【時間】
1月31日 10:00~18:00(最終入場17:30)
2月 1日 10:00~17:00(最終入場16:30)
【会場】
幕張メッセ国際展示場4~7ホール
【入場券】
1日券:前売1,000円/当日1,500円
通し券:前売1,500円
優先入場券:1日券1,200円/通し券1,700円