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『Battlestations: Midway(バトルステーションズ:ミッドウェイ)』兵器資料室:SBDドーントレス

SBDドーントレス

 「SBD」が正式名称で、「SB」は「ScoutBomber(偵察爆撃機)」を意味する符号、「D」はダグラス社製であることを意味する符号である。
  「偵察爆撃機」という名称はアメリカ独特のもので、これには当時のアメリカ海軍の事情がある。イギリスや日本が空母を「他の船を沈める飛行機を飛ばす軍艦」として開発していったのに対し、アメリカ海軍は「艦隊の目となる偵察機を飛ばすための軍艦」と考えたのだ。偵察機の母艦なら偵察機を積まねばならないし、敵の偵察機を撃ち落すための戦闘機を積まねばいけない。どうせ敵の偵察機を撃ち落とすのなら、そもそも偵察機を撃ち落とすより、敵の空母の飛行甲板を破壊して偵察機を飛べなくしてしまうほうが問題が少ない。では、その任務は偵察機にやらせたらどうだろうか。「偵察爆撃機」は、そういった理念で作られた。
  ……実は、もう1つ理由があったとも言われている。アメリカ海軍は航空魚雷の開発、そしてその航空魚雷を運ぶ雷撃機の開発に失敗してしまったのだ。爆弾で軍艦を弱らせることはできるが、撃沈することはできない。軍艦を沈めるのには魚雷が必要だというのは、当時の海軍軍人の「常識」だった。

SBDドーントレス

 いささか妙な形で表舞台に飛び出した「ドーントレス」だったが、機体そのものは非常に優秀であった。余裕のある設計は数々の機器の追加搭載を可能とし、戦争後期に作られた機体ではレーダーを標準装備していたほどである。
  また、操縦性も非常に素直で、爆弾を搭載していない状態なら空中戦すらこなすことが可能であり、戦闘機が足りない時には空中戦に駆り出されることもあった。著書「大空のサムライ」で有名な日本海軍のエースパイロット・坂井三郎氏の片目を奪ったのも「ドーントレス」である(※1)

 「ドーントレス」とは英語の形容詞で、「Dauntless」とつづる。意味としては、「勇敢な」、「不敵な」、「我慢強い」、「不行不屈の」といった、どちらかといえば精神的な強さを表す色合いの強い形容詞である。太平洋戦争を通して戦い続け、日本の海軍にとどめを刺す一助となった本機体にふさわしい形容詞といえよう。

※1:坂井氏は、「ドーントレス」を後部機銃座が搭載されていない戦闘機と誤認、後ろから近づいてしまい被弾した。