大正5年(1916年)に図案屋として創業し、2026年に110周年を迎えた工画堂スタジオ。四代目の代表取締役・谷逸平氏が、会社の歴史と受け継がれてきた考え方を語るインタビューコラムをお届けします。

第3回となる今回は、まだ絵筆やケント紙を使って版下を作っていた時代に、工画堂スタジオがMacintosh(マッキントッシュ)を導入した経緯を紹介します。一台約100万円の「Macintosh IIci」を1989年に購入した、小さなデザイン会社の“冒険”とは?
谷逸平:株式会社工画堂スタジオ四代目代表取締役社長。大正5年(1916年)に図案屋として創業した同社を牽引する。祖父である初代から受け継ぐグラフィックデザインを根幹に据えつつ、ゲームやイラスト制作など時代に合わせた事業を展開。110年続く企業の秘訣を「先人たちの真面目さ」と「人々の人間力」と語る。
絵筆とケント紙で版下を作っていた時代
――工画堂スタジオは、かなり早い時期にMacを導入していたそうですね。当時のデザイン現場は、どのような環境だったのでしょうか。
谷
これはグラフィックデザインのチームの話ですが、僕がグラフィックデザイナーとして入社した当時は、デザイン見本を作るときに絵筆を取って、ケント紙を水張りし、ポスターカラーで色を付けるという時代でした。
そうして出来上がったデザイン見本を元に、版下を作成して入稿するのが当たり前でしたが、その工程が大きく変わると言われるようになったのが、Macintoshが登場した頃なんですよね。
そうして出来上がったデザイン見本を元に、版下を作成して入稿するのが当たり前でしたが、その工程が大きく変わると言われるようになったのが、Macintoshが登場した頃なんですよね。
1989年、約100万円の「Macintosh IIci」を導入
――実際に導入したのは、どの機種だったのでしょうか。
谷
うちが最初に導入したのは、「Macintosh IIci」です。通称“ツーシーアイ”と呼ばれていた機種ですね。
一台で100万円近くしたんじゃなかったかな。1989年ごろの話です。うちみたいな小さなデザイン会社にしては、100万円のコンピューターを買うなんて、ちょっとした冒険でしたよ。
一台で100万円近くしたんじゃなかったかな。1989年ごろの話です。うちみたいな小さなデザイン会社にしては、100万円のコンピューターを買うなんて、ちょっとした冒険でしたよ。
「これからMacもカラーになる」――導入を後押しした社内の先駆者
――なぜ、当時としては高価なMacを導入する判断ができたのでしょうか。
谷
「これを導入しなければだめだ」と言っていた社員がいたんです。現在はうちの顧問を務めている方ですが、当時からMacなどに興味を持ち、自分で購入して研究していました。社内に、そういう先駆者的な存在がいたんですよね。
その人が、「これからMacもカラーになってくる。性能も上がって、こういう時代になっていくんじゃないか」と話していた。それで、IIciの時代に導入したというのが最初です。
たまたまだったのかもしれませんが(笑)、それを「やろう」と言った人がいたことが大事だったのだと思います。
まだデザインの世界でパソコンを使っていなかった時代に、「なぜ急にそんなものを買うんだろう」というところからのスタートでしたから、やっぱり冒険だったと思います。
その人が、「これからMacもカラーになってくる。性能も上がって、こういう時代になっていくんじゃないか」と話していた。それで、IIciの時代に導入したというのが最初です。
たまたまだったのかもしれませんが(笑)、それを「やろう」と言った人がいたことが大事だったのだと思います。
まだデザインの世界でパソコンを使っていなかった時代に、「なぜ急にそんなものを買うんだろう」というところからのスタートでしたから、やっぱり冒険だったと思います。