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『ストレンジャー ザン ヘヴン』開発陣インタビュー。実在の俳優の“老けた顔”を想像する難しさ。5つの時代には異なる国くらい差がある!?【TGS2026】

文:米澤崇史

公開日時:

 セガより2027年1月15日発売予定の『STRANGER THAN HEAVEN(ストレンジャー ザン ヘヴン)』。本作の開発を務める、阪本寛之氏(プロデューサー)、堀井亮佑氏(チーフディレクター)、阿部幹信氏(ディレクター)へのインタビュー記事をお届けします。

当時の倫理観や常識まで再現するこだわり【ストレンジャー ザン ヘヴン】

▲阪本寛之氏
▲堀井亮佑氏
▲阿部幹信氏

――『龍が如く』シリーズとは異なる新規IPとのことですが、開発体制としてはどのような違いがあったのでしょうか?

阪本
もともとRGGスタジオは『龍が如く』だけを作っているわけでもないですし、スタジオ全体の体制自体は変わっていませんが、ディレクター陣に若手を起用したり、新たなポストを作って、独自のカラーを出していくようなアプローチをとりました。

――RGGスタジオのタイトルは発表から発売までが短いイメージがありますが、本作は発表から発売までの期間が長く、これまでのプロモーションとはアプローチが違う印象を受けました。

阪本
発表したのは2年くらい前で、そのときはまだ『PROJECT CENTURY』という名前でしたね。おっしゃる通り、RGGスタジオとしては珍しいと思います。

 今回は続編ではないので、これまでのリソースをすべて捨てて、ゲームシステムからゼロベースで作り直す必要がありました。そのため開発期間も従来より長く、完全新作ということでワールドワイドに向けたプロモーションをしっかりと展開していこうという狙いがありました。

――今回は大正~昭和中期頃の年代が舞台となっていますが、あの時代ならではの苦労はありましたか?

阿部
現代の感覚からは考えられないような当時の倫理観や人々の生活の営みを、どうゲームに取り入れていくかという点にいちばん苦労しましたね。

 例えば“飲食店でタバコを吸う”というシーンを表現するとき、今なら席に着いて、灰皿を注文したりしてからタバコを吸いはじめますよね。しかし当時の感覚では、タバコを吸いながら店に入ってくるのが普通だったんです。

 ほかにも道端でのポイ捨てが当たり前だったり、当時の空気感みたいなものを再現するのは苦労した部分ですね。

 もちろんただの再現ではなく、面白い部分は取り入れ、ゲームに合わない部分は省くといった取捨選択を丁寧に行いました。


――建物の外観とかなら資料もありそうですが、そういう常識みたいなのは調べるのが大変そうですね。

阿部
いえ、じつはそこの大変さはあまり変わらなくて、確かに有名な建物とかは写真が残っているのですが、一般民家の資料となるとかなり限られるんです。

 なので現地に行って取材をしたり、古本屋を巡って当時の雑誌を買い集めたり、インスピレーションの元となる資料集めにはかなり時間と労力を割いています。

――5つの時代が舞台となりますが、数十年単位の変化をどのように表現されたのでしょうか? これが100年、200年なら違いはわかりやすいのかなと思ったのですが。

阪本
そこについては、かなり明確に違います。今回扱っている50年は、日本が近代化していく激動の時代なので、自動車や道路の舗装、西洋建築の流入など、文化レベルや生活様式がそれぞれでまるで異なります。

 なので数十年単位の変化でも、違う国に来たみたいな大きな変化を感じ取っていただけると思います。

――それも見越して舞台となる時代を選んだのでしょうか?

阪本
いえ、そこに関しては、結果的にそうなってくれた形ですね。大元は「大東が東城会をどうやって作っていったのか?」を考えて、そこから時代を逆算した結果、大正~昭和中期が選ばれたという流れでした。


――昭和の時代は、戦争が絡んでくるのもあり、扱いとしてデリケートな部分もあるかと思います。

阪本
我々のスタンスとしては、「あくまでもフィクションで、史実を描いているわけではない」というものです。実際に起きた出来事は、物語の中で大きなターニングポイントとして描いてはいますが、あくまでもゲームなので、エンタメとして受け入れられるようにチューニングは行っています。

 一方で、フィクションではあるものの、プレイヤーにリアリティを感じさせることについては、すごくこだわりながら作っています。

「この人が年を重ねたら?」の想像で作る加齢表現の難しさ【ストレンジャー ザン ヘヴン】


――映像的なところで、『龍が如く』シリーズとは色味や表現が全然違っていると感じました。

阿部
画面を1フレーム見ただけでも時代の差がわかるように、あえてそれぞれの時代ごとに統一感を持たせずに制作しています。

 アートディレクターが当時の日本画で使われていた絵の具の色の制限や、ヴィンテージレンズ・フィルムの表現を調べて、どういう表現ならゲームに持って来られるのかを研究したんです。

 ただ、そのときにわかったのが、そのまま再現してしまうとただ古臭いものになってしまって、カッコよくならないんです。ただの“古い”と魅力的な“ヴィンテージ”って、全然違うものなので、画面をヴィンテージ風にカッコよくするという試行錯誤はかなり行いました。


――50年の時間経過を描くとなると、とくに大変なのは映像表現の部分かと思ったのですが、アートチームにそれを伝えたときの反応はいかがでしたか?

阿部
「えー!」みたいな反応はなくて(笑)、やろうとしていることを「それは面白そうだ」と感じてくれて、モチベーション高く取り組んでもらえたと思っています。

 街の変化もそうですが、とくに主人公の大東が歳を取っていくというところですね。日米ハーフの主人公が当時の日本に来て50年を過ごす中で、英語力や日本語力が変化し、ボディランゲージやパーソナルスペースの取り方も変化していく。

 その表現にはこだわりをもってやっていて、実際すごく大変だったんですけど、挑戦的なビジョンをチームで共有できたのは大きかったと思っています。


――具体的に、時間経過の表現で大変だったところはありますか?

阿部
とくに苦労したのは、実在の俳優さんの顔をお借りしているキャラクターの“老けたときの顔”を想像で作らないといけなかったことですね。

 菅原文太さんのように、若い頃から年を重ねられるまで実際の映像がある方は別なのですが、ディーン・フジオカさんなど、現実でまだその年齢に達されていない方々の加齢表現というのは、かなり苦労した部分ですね。

阪本
主人公が年をとっていくのにあわせて、時代や舞台の変化を表現したゲームって、ほぼ過去に例がないですからね。ゲームデザイン的なところも大変でした。

堀井
今回は5部構成で、とにかくストーリーのボリュームが多いんです。例えストーリーが面白くても、同じようなことを繰り返すと飽きてしまうので、いかに時代ごとにゲーム体験に差をつけるかは意識したポイントでした。

 例えば『龍が如く』シリーズだと、街ごとの違いはプレイスポットなどのコンテンツが中心ですが、本作の場合、昔は目的なく歩いていることが多かったのが、時代が進むにつれて目的地に向かって歩いている人が増えたり、街行く人々の動きも変えていて、街を歩くだけでも、時代ごとの違いやワクワク感を楽しめるようにしています。

 加えて、大東自身も成長して、周囲の世相に影響を受けて考え方が変わっていったりするので、そうした変化も楽しんでいただけると思います。

あえて時代に逆行した“泥臭い”バトルに【ストレンジャー ザン ヘヴン】


――試遊で実際に触らせていただいて、『龍が如く』のアクションバトルとはかなり遊び心地が違っていて驚きました。本作のバトルはどのようなコンセプトだったのでしょうか?

阿部
直感的にバトルが遊べることを重視しました。プレイヤーと主人公のシンクロ率を高めることで、“生きるか殺されるか”という緊張感みたいなものを感じてもらえるんじゃないかなと。

堀井
泥臭い戦いみたいなものを表現したかったんです。例えば主人公が桐生一馬だったら、スタイリッシュでスピーディなバトルに違和感はないんですけど、大東はそうではない。

 今の流行りでいうと、スタイリッシュでレスポンスのいいアクションになると思うのですが、ちょっと操作しづらいと感じる部分があったとしても、本当に人を殴っているような感覚をプレイヤーに体験させるには、どういった操作がいいのかを0から考え直した結果が本作のバトルになります。

阪本
これは本作に限った話ではないですが、RGGスタジオのタイトルはいわゆるナラティブ的な部分をいちばん大切にしていて、ドラマへの没入感が最も高まるものとしてゲームシステムを選んでいるんです。

 『龍が如く7』でコマンドバトルを採用したのもそうで、仲間たちとともに巨悪に立ち向かうのがドラマなのに、プレイヤーが春日を操作している横でNPCがちょっと攻撃してくれているくらいじゃ、ナラティブとしての共感度が低そうだなと。ならいっそコマンドバトルで完全なRPGにしてみよう、という流れで決めたものでした。

 一方で本作も、50まで年をとるゲームなのに、スピーディに動いてコンボを決めてサクサク敵を倒す、というのは絶対に合わないだろうなと。なので最初はちょっと苦労するかもしれないけど、最もこのタイトルに合うシステムとして採用しました。

――『龍が如く』のアクションバトルだと、回復アイテムを大量に持ち込んでのゴリ押しが効いたりしましたが、それはできなくなっているのでしょうか?

堀井
そうですね。(『龍が如く』シリーズは)“アクションが下手な人でもできる”がコンセプトでもあったので、そこから本作では『龍が如く』よりもバトルのハードルは少し上がっているかなと思います。

 ただ、最初こそ戸惑うかもしれませんが、操作自体はまったく複雑ではなく、重要なのはどこでガードや回避をするのかっていうシンプルなものです。慣れていただければ、いいバランスで遊んでいただけるのではないかなと。

――最後に発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

阿部
1からすべて考え直し、たくさんの挑戦を詰め込んだ、みなさんに面白いと言っていただけるゲームに仕上げています。発売まではもう少しお待ちいただくことになりますが、これからまだまだいろいろな情報を出していきますので、ご期待ください。

堀井
あまりロジカルではないのですが、言語化できない魅力がたくさん詰まったタイトルになりました。まずはRGGスタジオの新作としてプレイしていただければ、我々の気合みたいなものを感じていただけるのではないかと。

 ゲームの最新トレンドや、開発の最適解とはまったく違う、今回のゲームに合うものを0から積み上げていく、ある種コスパを度外視した手間をかけているタイトルでもあるので、楽しみにしていてください。

阪本
『ストレンジャー ザン ヘヴン』は、RGGスタジオとして新しいゲームのスタイルを提案する大切なタイトルです。 ほかのゲームにはないアプローチを多数盛り込んでいて、この挑戦が次のナラティブゲームの1つの基準になればという期待を込めながら開発しています。ぜひプレイいただければと思います。

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担当者プロフィール

  • 米澤崇史

    米澤崇史

    ロボットアニメを愛するライター。 フリーランスの専業ライターとして10年以上活動。複数のアニメ・ゲーム系のWebメディアでコラムやインタビュー記事を担当し、書籍では主に攻略本・ムック本のライティングに多数関わる。ゲーム会社在籍時は企画・プランナーとしてゲーム開発にも参加。 幼少期からゲームに触れ、主にRPG・SRPG・アドベンチャーゲームを中心にプレイし、とくに好きなのは『テイルズ オブ』シリーズや『Fate』シリーズ。ガンダム系のゲームも好み、『スーパーロボット大戦』や『ジージェネレーション』シリーズはほぼ全作プレイ済の大のファンで、人生のベストゲームは『スーパーロボット大戦α』と『ジージェネレーションF』。

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