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『FFXIV』これは彼らを覚えておくための記録――かつての敵対者たちを追想する企画【The Villains of FFXIV】が始動

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<企画序文>

オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』の物語は、ひとりの冒険者の視点で描かれます。
その冒険者とは、光の戦士――あるいは今は闇の戦士とも呼ばれる、あなたのこと。
あなたは此方にいたるまでに幾多の人々と出会い、別れ、自分の意思で何かを選び取り、目の前に立ちはだかる誰かと戦い、勝利し、果てなき旅路を歩み続けてきました。

そしてあなた自身もよく知るとおり、これまでの道行きは数多くの戦いによって彩られてきたはず。
その戦いの系譜とはすなわち、あなたと仲間たち、あなたが守った者たち、守りたかった者たち、そしてあなたの敵となった者たちが織り成す、長い長い物語です。

これより綴るは、あなたの歩んだ旅路の途中で刃を交えし“彼ら”のことを、忘れないための記録。

人は神に拠らず自ら立つべきと吠えた男のことを、
氷雪に人と竜の融和を祈った彼女のことを、
千年の嘘を信仰で塗りつぶそうとした老人のことを、
怨嗟の安寧に溺れた偉大なる竜を、
あなたを友と呼んだ孤高の戦鬼を、
最後まで復讐の道を選ぶしかなかった哀れな娘を、
砕けぬ思いを胸に永劫を歩んだ彼を、
どこまでも続く冒険の途上であなたに強き想いをぶつけた数多の敵対者たちを、
その命を、信念を、あなたが“覚えて”いたいと祈ったときに
本企画がその一助となることを願って――。

(※本企画の解説・考察は、ゲーム内の情報や世界設定本“Encyclopaedia Eorzea ~The World of FINAL FANTASY XIV”などを参考に筆者が独自に展開したものです。)

光の戦士の“敵対者”は、どんな者たちだったのか?

 本企画“The Villains of FFXIV”は、オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、『FFXIV』)』で冒険者の敵となった人物を振り返りつつ、物語をより楽しむために掘り下げていく連載コラムです。物語において“敵”とは、主人公の前に立ちふさがる者であり、多くの場合、両者の対決にはその作品で語りたいテーマが詰まっているもの。ちょうど折よく、パッチ5.1でゲーム内に“つよくてニューゲーム”が実装された時期。これまでの“敵対者”がどんな存在だったのか? 何を求め、何を為し、光の戦士たちとどうかかわり、散ったのか……本企画を通してあらためて追想し、そして時間が許すならぜひもう一度『FFXIV』の中で彼らが登場する物語を再体験してほしいと思います。

 さて、この記事はあくまでも序章。第1回“ガイウス・ヴァン・バエサル”についての記事は後日の掲載となりますが……本記事では、企画の意図を明確にするために、光の戦士のこれまでの歩みと“敵対者とはどんな者たちだったのか”というところを大まかに振り返ってみたいと思います。加えて、全編通して重要な存在“アシエン”についての概論もつらつらと綴っておりますので、お時間のある方はどうぞお付き合いください。

 さて、古の時代から滅びと再生を繰り返すこの世界……そこに秘められた謎を紐解こうとすれば、遥かな過去にまで探求の手を伸ばす必要があるでしょう。ですが、冒険者が自分の視点で体験した事柄だけを振り返るのならば、さほど歴史的知識は必要ありません。

エオルゼア新生時(ゲームスタート時点)を軸として、パッチ5.1現在にいたるまでに起きた世界的に大きな物事は、おおよそ以下のようなものでしょうか。

・約20年前、北方の軍事国家ガレマール帝国が、エオルゼアいちの強国アラミゴを陥落させる

・約15年前、帝国軍第XIV軍団が大飛空艇艦隊でエオルゼアに侵攻。しかし幻龍ミドガルズオルムとドラゴン族の大群が突如出現し、帝国軍を撃退

・約5年前、エオルゼア各国が第七霊災で大きな被害を被る

・かの冒険者がエオルゼアの地に降り立つ

・冒険者、人々を助けるなどの働きでエオルゼアの都市国家首脳から信用を得る

・エオルゼア内に要塞を築いていたガレマール帝国軍第XIV軍団の動きが活発化

・ウルダハ、グリダニア、リムサ・ロミンサの軍と冒険者部隊による反攻作戦により第XIV軍団が壊滅

・ウルダハでクーデター事件が勃発。濡れ衣を着せられ、冒険者は北国イシュガルドへ

・イシュガルドで1000年続くドラゴン族と人の争い“竜詩戦争”が終結

・イシュガルドを加えたエオルゼア4国軍事同盟が締結

・帝国の属領となっていたアラミゴおよび東方ドマ方面で戦線が拡大

・革命軍や東方勢力などと冒険者の協力でアラミゴ、ドマが帝国から解放

・帝国本国とエオルゼア軍事同盟間の緊張感が過去最大に高まる

・冒険者が第一世界へ赴く

 至極当たり前のことを言ってしまえば、“敵対者”たちは、この期間に冒険者が各地で出会ってきた存在だということになります。彼らはそれぞれの事情を抱え、己の意思に基づいて行動してきたわけですが……。

 そんな敵対者たちは、はたして“悪”だったのでしょうか?


 NO、というのが本企画の回答です。“善”“悪”の評価は、その行いを見る誰かのフィルターを介して物事をとらえた際の反応にすぎません。誰もが悪を目指して悪となるのではなく、その行いが誰かに悪と認識されたとき、その誰かにとっての悪となる。無論、多くに悪と認識される存在はあれど、善も悪も本来はなく、あるのはただ、個人の信義や思惑に基づく行いがあるのみ。まして“正義”など、「自分たちこそが正しい。そうでない相手は滅すべし」とする状況で振りかざされることの多い言葉……安易に正義を語ることは、大いなる誤解を生む原因ともなり得ます。

 確実に言えるのは、敵対者たちは誰もが自ら道を選び、自らの足で進んだのだということ。そしてその途上で、別の立場で歩んできた冒険者と、己が道を賭けてぶつかったのだということです。立場や視点が違うだけで、どちらも自分が信じたもののために戦った……あえて使う言葉を選ぶならば、ある意味では彼らもまた、己の置かれた状況に立ち向かう“運命への反逆者”だったのだと言えましょう。

 ゆえに本企画では彼らを悪とも善とも見ず、ただ1人の個人として扱います。そのうえで彼ら自身の目指したものは何だったのか、何を正しいと信じ何を悪しきものとしていたのか、といった各人の考えを中心に掘り下げ、多くの冒険者の方々がより深く物語について考えるためのきっかけにできればと思います。



歴史の影に蠢く者――<天使い>アシエン概論

 光の戦士の敵対者として決して忘れてはならない、『FFXIV』の物語における重要な存在――アシエン。これから記事で紹介していく敵対者たちも、その多くが何らかの形でアシエンと接触しています。そんなわけで、第0回となる本記事でアシエンについての概略をあらかじめ解説しておきましょう。……とはいえ、『漆黒のヴィランズ』で彼らの正体に迫る重大な情報が語られてはいるものの、まだまだすべてが明らかになったわけではないというのが現況。ゆえに今回の記述はパッチ5.0前から語られていた彼らの最低限の情報+α程度にとどめ、いずれ別の機会にあらためて、個別に密度濃く掘り下げていく予定です。

 アシエンとは、長衣と仮面で素顔を隠し、“古の時代より歴史の陰に潜み、常に混乱と戦を煽ってきた者たち”“不滅なる者”などとされてきた存在。各地の獣人に、蛮神を召喚する“神降ろしの儀”を伝えた者としても知られます。これまで冒険者は“暁の血盟”の面々とともに、影に日向に災禍をまき散らす彼らと、幾度も戦火を交えてきました。

 さて、上記で“彼ら”と述べたように、アシエンは複数存在しています。彼らのなかには赤い仮面の者と黒い仮面の者がおり、赤い仮面をつけた者がより上位という位置付け。さらには赤い仮面を持つ者の中にも、古代から己の魂を持ち続けてきた“オリジナル組”と、世界の分裂時にもともとの魂が分かたれてしまった “転生組”がいて、オリジナル組のほうがより強大な力を有しています。オリジナルとして判明しているのは、アシエン・ラハブレア、アシエン・エリディブス、アシエン・エメトセルクの3名。

 なお、彼らの多くは黒い長衣を着ていますが……オリジナル組のアシエン・エリディブスだけは白い長衣を着用。“調停者”と名乗る彼は冒険者の前に現れ、自分にはほかの黒衣のアシエンとはまた違った役割があると冒険者に語ります。黒衣のアシエンが世を乱しつつ、あまりに光と闇のパワーバランスが偏ってしまうと属性の氾濫が起きてしまうため、そうならないよう陰で画策しバランスを調整するのがエリディブスの役割……ということですが、見据える目的自体は黒衣のアシエンたちと同じである様子。

 アシエンの目的。それは、はるかな過去において14つに分割されたこの世界を再び1つに戻し、この星の意志とされる“ハイデリン”の代わりに、彼らの真なる神“ゾディアーク”を星の管理者として復活させることです。そして、世界を統合する方法は、鏡像世界の属性バランスを大きく崩したうえで原初世界側に同属性の大規模な災害を起こし、世界の壁に亀裂を入れること。

 世界の壁に亀裂が入ると、鏡像世界の特定属性に偏ったエーテルが原初世界側に流れ込み、鏡像世界のすべての命が掻き消えたうえで輪廻をめぐる魂(≒星をめぐるエーテル)すべてが冒険者のいる原初世界に統合される……これが世界統合の仕組みです。鏡像世界が1つ消滅する一方で、原初世界で起きた洪水や暴風などの災害は、鏡像世界からの同属性エーテルを受けてさらに強大化。全世界規模の災害に発展します。この災害のことを人は霊災と呼び、一方でアシエンたちは次元圧壊(アーダー)と呼んできました。そして過去7度の次元圧壊は、大半がここエオルゼアで起きています。世界の広さを考えるならば、これだけ集中するのには何かしらの理由があるはず。それが明らかになったとき、エオルゼアの“神々に愛されし地”というフレーズにも別の意味が見いだせるのかもしれません。

 いずれにせよ、世界を統合するごとに、分かたれた世界の力を受けてゾディアークの復活が近づきます。そしてアシエンたちは、神降ろしの儀を各地で広め、“蛮神”を生み出す土壌を作り上げました。蛮神という強大な力を投入すれば各地の争いは激化し、それはやがて、メテオ計劃や黒薔薇の行使といった霊災のトリガーとなる事象を引き起こす事態へつながる……。このように彼らアシエンは、次元圧壊を起こすために永い年月をかけて人々に働きかけ、策謀を巡らせてきたというわけですね。


 アシエンについてまだまだ語らねばならないことは数多くあれど、今はここまでといたしましょう。『FFXIV』最新の拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』では、これまで謎のままだったアシエン側の想いに触れる機会もありましたが……アシエンたちが目指す“世界の統合と再創造”とは、つまるところ現行の世界と、今生きている命と、その命が紡いできた歴史、それらすべての否定。“神”の顕現を手段として世界の生を否定する彼らと、これまで冒険者として世界を見、そこに生きる人々の想いを受け継ぎながら旅をしてきた冒険者……両者の対比は、今後も物語のなかで大きな意味を持つことになるはずです。

といったところで、第0回は以上。本企画では後日掲載となる“ガイウス・ヴァン・バエサル”についての第1回記事以後もさまざまな人物や事象を掘り下げていく予定ですので、どうぞお楽しみに!

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