『FFXIV: 漆黒のヴィランズ』メディアツアー吉田P/Dインタビュー。フェイスや5.0ジョブ調整の真意に迫る【電撃PS】

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 先日行われた『ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ』メディアツアーで判明した最新情報をまとめてお届けします。

『漆黒のヴィランズ』メディアツアー記事目次

 本記事では、イギリス・ロンドンで3日間にもおよぶメディアツアー中に行われた吉田直樹P/Dのインタビューをお届け!

 メインクエストにも絡む“ロールクエスト”の詳細や、ジョブ調整の意図、新ジョブのコンセプト、注目の新システム“フェイス”についてなど、最新情報が満載ですので、ぜひ最後までご覧ください!

※本記事は最終調整前に実施したインタビューであり、
 リリース時にはゲーム内容が大きく変更される可能性があります。

ロールクエストで語られる
“闇の戦士”たちの生き様――

――今回、全ジョブのジョブクエストがレベル80のものだけになり、その他はロールごとのロールクエストに統合される形となりました。そうした意図について、ぜひお聞かせください。

吉田直樹氏(以下、敬称略):いくつかの複合的な理由があります。まず、そもそもジョブクエストは、今回のメインストーリーが原初世界で展開されるため、以前と同じような形で実装しても“第一世界でレベルが上がるたびに原初世界に戻る”という仕様になってしまいます。そんな仕様にしても、きっと多くの人が後回しにしてしまうだろうと。

 つまり、みなさんのゲームプレイが、こうした仕様にしばられてしまうのを避けたかったのです。そのために、今回はすべてのアクションをレベルアップで修得するものとして、ジョブ専用装備の獲得も別の方法で必須獲得できるようにしました。さらに言うなら、新しいストーリーを描くためにも、クラスクエストの頃から引っ張り続けている物語に一度区切りを付けたかったという思いもあります。

 それに加えて、せっかく第一世界に行くのならば、“闇の戦士と呼ばれていた英雄たちが第一世界でどのような活躍をしていたのか”を、ちゃんと伝えてあげるべきだろうと考えました。もちろん、それによってメインストーリーがより引き立つという側面もあります。

 これらの要素を複合的に消化するにはどうするかと考えた結果、ロール別のストーリーラインにすることで開発コストを集約し、そのすべてを闇の戦士たちの生き様を描くことに注ぎ込む形にしたんです。

――じつは、「彼らの物語がいつか小説などの形で出ないかなあ」とずっと思っていたのですが、こういう形で見られることになるとは思いもよりませんでした。

吉田:闇の戦士たちの活躍に興味がおありでしたら、ぜひ全ロールクエストを遊んでみることをオススメします(笑)。彼らがどういった旅立ちをして、どんなタイミングで誰と出会ってパーティになり……といった部分がわかるようになっていますよ。

――強いて言えば、全ロールクエストをすべてやり終えてからメインストーリーをクリアしたほうが、より楽しめる形になっているのでしょうか?

吉田:そうですね、人によるとは思いますが、思い入れが強くなるのは間違いないと思います。ですが、無理をしてまでメインストーリークリア前にすべてを……とは言いません。1つは必ずやってもらう必要がありますし、残りはクリアしてから見ていただいても十分楽しめますよ。

――『紅蓮編』では、メインストーリーをクリアする前と後で、クエストの会話内容が状況に合わせたものに変化する場合がありました。今回のロールクエストにも、そういった要素はあるのでしょうか?

吉田:いえ、ロールクエストはいつやっても大丈夫なように作っています。

――そういった成り立ちを鑑みると、ほかのクエストも第一世界で完結するようになっているのでしょうか?

吉田:はい、原初世界は絡んでいません。ずっと第一世界にいていただいて大丈夫です。

――それは、パッチ5.0のメインストーリーもそうである、ととらえてよいのでしょうか?

吉田:はい、そうなっています。“その頃原初世界では……”という部分は、わざわざ光の戦士が向かわなくてもメインストーリーで語られるようになっています。

 また、パッチ5.0のメインストーリーをクリアしたあとには、“これまで出会ってきたジョブクエスト・クラスクエストの登場人物たちがパッチ5.0の時点でどうなっているか”といった、後日談みたいなものを楽しめるようにしています。第一世界での冒険にひと区切りを付けた光の戦士が、ひさびさに原初世界に戻ってきてジョブの関連者に出会ったらこんな話が……みたいなイメージですね。

旅の仲間たちの個性が光る
“フェイスシステム”について

――暁の面々と一緒にダンジョン攻略ができる新たなシステム“フェイス”ですが、今回の試遊ではサンクレッド、ウリエンジェ、アルフィノ、アリゼー、ミンフィリアから選択できました。パーティとして編成できるNPCはダンジョンごとに異なるのでしょうか?

吉田:フェイスというシステムには、じつは3つの段階が存在しているんです。まず『漆黒編』最初のダンジョン(レベル71)で自分たちと一緒に行動しているNPCに話しかけると、フェイスが開放されます。そのあとメインメニューからパーティを編成する“フェイス”コマンドを選ぶことで、今回体験してもらったようなUIが出現し、そこで“この中から、どのロールの誰を連れて行くか”を選択して突入する形ですね。

 そして、ダンジョンへ連れていけるメンバーは、メインストーリーの流れにそって変化します。例えば、今回はメンバーの中にガンブレイカーのサンクレッドがいましたが、じつは最初のダンジョンを攻略する時点で彼はいないんですよ。とはいえ、フェイスたちのロールは変わらないので……。誰が代わりのタンクとして登場するかは、伏せておきましょう(笑)。

 逆に、今回のメディアツアー用に開放していたダンジョンには、ヤ・シュトラがいませんでしたよね。彼女にはとある都合があってあの場面にいないんです。次のダンジョンに行くとヤ・シュトラが加わっていますが、もしかしたら代わりに誰かがいなくなっているかもしれません。

 つまり、フェイスはシナリオの状況に合わせてメンバーが変わっていき、その中からチョイスしてもらう形です。当然ですが、シナリオの後半になれば全員がそろうので、その中から同行者を選ぶことになります。これが2段階目ですね。

――メインクエストをすべて終えたあと、過去のダンジョンにフェイスを連れていく場合は、全員の中から選べるようになるのでしょうか?

吉田:いえ、全員は連れていけません。これまでもそうですが、設定的に『FFXIV』のダンジョンは“そのときのシナリオを再現する”という方針だからです。例えば『紅蓮編』レベル61ダンジョンの“漂流海域 セイレーン海”では、リセやアルフィノ、アリゼーが毎回登場しますが、それも同じ理由です。また、開発的な都合で言うと、いるはずのない人のセリフも作らないといけないですし、シナリオも破綻してしまいますしね(笑)。

 そして3段階目。メインストーリーをクリアしたあとのフェイスは、“育成モード”に突入してフェイスのNPC全員がレベル70になります。シナリオ上は育てなくてもレベルを合わせてくれますが、メインストーリークリア後はダンジョンに連れて行って育てる遊びになると思ってください。

――フェイスのレベルが下がるということですか?

吉田:メインクエスト進行中は、彼らは実体としてバトルに参加します。しかし、メインクエストクリア後は、パッチによってストーリーがさらに進行することになるので、彼らは彼らでストーリー上の役割があり、いつでも連れていくわけにはいかなくなります。

 そこで、正確にはとある技術を使って彼らの幻影をクリスタルに封じ込めて、それをダンジョンに連れていくという感じになります。その際にレベル70になるので、気に入ったメンバーを育成してください……というイメージです。

――育成することで、彼らのステータスを上げたり、新たな何かを覚えさせたりできるようになるのでしょうか?

吉田:いえ、NPCのステータス振りができるようになるといった遊びではなく、あくまで、自分のサブジョブを上げるときに一緒に育てれば、同時にレベル80になる……といったものを想像してもらえれば。

――フェイスを実際に触ってみて、かなり細かく作られているなと感じました。

吉田:ありがとうございます。今回、シナリオ側とバトル側でガッチリタッグを組んで、その登場人物を鑑みてAIをどう設定するかなどをしっかり練り込みました。「こういうシチュエーションのときは、こういうボイスを発するべき」といった部分ですね。まさに、スタンドアローンのRPGを遊んでいるかのように、パーティプレイできると思います。そのときの心情に合ったセリフを話してくれます。彼らのことを好きな方、ストーリーを追うRPGが好きな方は、ぜひ目的がなくても違ったメンバーでもう一度挑んでみるなどして、楽しんでもらえるとうれしいなと思います。

――今回挑めたダンジョンのラストで細い一本道を歩くギミックがありましたが、あのときのフェイスのセリフがすごくおもしろかったです。

吉田:僕、あのときのアリゼーのセリフがツボなんですよ(笑)。「どうせ〇〇でしょ!」と何も気にせず、ドバーっと走って行っちゃって。逆にアルフィノとミンフィリアは、時間を掛けてゆっくりとしか渡れなかったり。サンクレッドは縮地を使ってぶっ飛んでいきますしね。

――ウリエンジェも、いつの間にか向こうに渡っていましたね。

吉田:あのあたりで少し気をつけていただきたいのですが……じつは、プレイヤーの縮地だと、落ちちゃうんですよ(笑)。

――えっ!?

吉田:暁の面々の移動アクションは、ちょっと性能が高いのです。サンクレッドたちのマネをして縮地などを使うと落ちちゃうので気をつけてください(笑)。このように、各ボスやダンジョンに対しての細かい演出は、本当に丁寧にやっているので、RPGとして楽しんでもらえるとうれしいですね。

――キャラ同士の掛け合いもあったりするのでしょうか?

吉田:あります。極端に多くは用意していませんが、このダンジョンでこの2人がいると会話が発生するという、特定の組み合わせでの掛け合いがあります。その組み合わせに関しては、シナリオを遊んでもらえれば“この人物を連れて行くべきだろう”と感じてもらえるかと。

 フェイスは、普段の行動もけっこう性格付けされています。例えば、ヤ・シュトラやミンフィリアはDPSですが、プレイヤーのロールがDPSだった場合、LBを使いません。これは光の戦士が使うべきだと判断しているからなんですが、逆にアリゼーは率先して使うようになっています。彼女は、その性格上“自分が強くなることで英雄を助けたい・力になりたい”というキャラクターなので、ゲージがたまった瞬間に意地でもLBを撃ちます(笑)。

――逆に、DPS以外がLBを撃つ場面はありますか?

吉田:いえ、ありません。ダンジョンでは、LBをダメージソースとして使うことが圧倒的に多いので、基本的にはDPSが使用します。

――ちなみに、お話を聞いていて察してはいるのですが、2人パーティ+フェイス2人といったことはできないという認識でよいのでしょうか?

吉田:そうですね、できません。 “どのプレイヤーが育成したフェイスを使うのか”といった兼ね合いもあるので、その仕組みは入れていません。ソロ+フェイスかプレイヤーだけの4人パーティか、という2パターンに制約することで初めて、ああいった遊びが用意できた感じですね。

――ダンジョン1回あたりの経験値自体は、プレイヤー4人で行く場合とフェイスと行く場合どちらも変わらないと考えてよろしかったですか?

吉田:はい、変わりません。

――ソロ+フェイスの場合、宝箱からの装備品の扱いはどうなるのでしょうか?

吉田:そこも4人パーティと効率は変わりません。ソロ+フェイスの場合は、単純に宝箱から装備品が出る確率が4分の1になっていると考えてもらえれば。ただし、最後のボスの装備品だけは確実に手に入ります。

――通常の宝箱からは、装備品以外のアイテムが出るということですか?

吉田:そうなります。そこをどうするかかなり議論したのですが、装備品を毎回サンクレッドがロット勝ちしてサンクレッドが嫌われる……なんてことになっても困るので、こういう形になりました(笑)。やはり、フェイスの効率をよくしすぎるとパーティを組まなくなってしまうので、そこは申し訳ないですが、全体のバランスを考えた調整になっています。

――試してみて、どうやらなさそうだな……とは思っているのですが、彼らがこちらのエモートに対して反応することはありますか?

吉田:その仕組みは入れていないですね……。ちなみに、途中で暁のメンバーの誰かが戦闘不能になったりしましたか?

――アリゼーが倒されました。運悪く範囲攻撃が重なったところにいて……。

吉田:アリゼーはよく突っ込んで倒されますね(笑)。そのとき、蘇生魔法がすごいスピードで飛んできませんでしたか?

――倒れて2~3秒くらいで、しかも体力全快で蘇生していたので、ビックリしました。

吉田:倒されるのがわかっていたんじゃないかというぐらいの速度で、レイズされますよね(笑)。話を戻しますが、効率的にはプレイヤー4人でまとめながら進んだほうが全然速いのですが、じっくり楽しみたい・今までやったことがないロールを練習したいといったときには、フェイスがとても役立ちます。ものすごく遊びやすいし楽しいと思うので、そういった意味ではゲームの幅が格段に広がったかなと思います。

『漆黒編』のバトルは
“わかりやすく、かつおもしろく”正統進化!

――ロールアクションについてお聞きします。今回、ロールアクションの調整でアクション数が減り、例えばタンクですと、高難度コンテンツでも活用されていたアウェアネスやアルティメイタムなどがなくなっています。これまでのコンテンツではアルティメイタムを使って、MTとSTで複数の敵をスイッチする場面もありましたが……これがなくなると過去のコンテンツ攻略にも影響が出たりしませんか?

吉田:今回、タンクスタンスを入れるとどのアクションを使っても必ず敵視を稼げるようになったので、ロールアクション数を減らしてシンプル化するためにアルティメイタムはなくなりました。悩んだところではあるのですが、絶コンテンツの一部や次元の狭間オメガ:アルファ編4層など使いどころが限定的であったことから、このように対応しています。絶バハムートなどは一部攻略方法が変わると思いますが、本来MT/STがそれぞれ敵を抱えることを想定していたので、クリアは引き続き可能ですが、申し訳ありません。

――ちなみに、ロールアクションの数が減ったのは、アクションの総数を減らすという意図によるものでしょうか?

吉田:“必要のないものを含んだ状態で、結果的に迷ってどれを入れたら良いかわからない”、“とりあえず全部突っ込んだことでホットバーを圧迫して使いたいものがうまく使えない”……。そういった状況にならないように、ロールアクションは今後のバランスに合わせて本当に必要なものだけに絞りました。

 また、その内容も、ロール内で横並びの調整をしようとしたときに共通して持っておいたほうがいいアクションだけを厳選して用意しています。

――同様に、バトルの計算式が変わったそうですが、具体的にどういったところを調整したのでしょうか?

吉田:その部分は、現時点で言及するのはよくないかなと思っています。普通にプレイしているぶんにはあまり関係のない要素ですし。ただ、調整の意図を述べるなら……パッチ4.xの状態でも数値がインフレし始めていて、このままの成長曲線で素直にレベルが上がっていくと、ダメージ計算が成り立たなかったり、モンスターのHPが異常な量になったりしかねないので、それを抑えるためですね。

 「現時点で言及しないほうが」と言っているわりになぜ繰り返し「計算式が変わった」と発言しているかというと、“パッチ4.x時代の感覚でアクションの威力を見た場合「スゲー威力じゃん!」となるかもしれないですが、アクションの威力に対して掛けている係数を変えているから、じつはそこまでではないんだよ……”ということをお伝えしたかったんです。

――これまでと変わらない感覚で遊べるように、内部で数値を変えているということですね。

吉田:そうです。ほかには……極端な形で与ダメージがDPSに近づきすぎているタンクについては、ロールの役割に沿った数値になるようにある程度調整しています。レベルとアイテムレベルが上がっていくうちに、徐々に数値が離れるようになっています。数値的に破綻していたので、申し訳ありません。

 あとは、タンクのSTRとVITの関係を解決するための調整も行いました。タンクマスタリーを修得していると、ほかのジョブよりもVITによってHP最大値を引き上げやすくなり、STRの値はほかのジョブよりも攻撃力に対する影響が低めになります。このように、そのロールに合わせた調整を細かく行いました。

 また、5.0からはマテリア穴にメインパラメータのマテリアを入れることができなくなりますので、タンクがアクセサリにSTRマテリアを入れる必要はなくなっています。マテリアは、純粋にサブパラメータで個性を出すためのものになりますね。

――全ジョブひと通りさわってみたのですが、同一ロールならば、1つのジョブができることは基本的にどのジョブもできるようになっている印象でした。“できること”で差を出すというより、プレイ感や、そのジョブでのゲーム体験で差を出すという方針になったのでしょうか?

吉田:その通りです。ゲーム体験の差をジョブの個性として位置づけています。遊びのメカニクスが違うので、“それぞれのジョブでのプレイ感を楽しんでください”、“あとはプレイヤースキルで勝負する”というイメージです。

――例えば、パッチ4.xのタンク内では戦士の火力がやや高くなる傾向でしたが、そういった部分が横並びとなるように調整した形ということでしょうか?

吉田:できるだけそうしています。あとは腕の差なのですが、今後はそこがより顕著になるかもしれません。4.x時代までは、火力を維持するためにタンクスタンスを切って、ヒーラーの負担が増えていたり、忍者の“影渡”での敵視コントロールを必要としたりしていましたが、そういった部分がなくなる感じです。

 タンクについては、敵視が必要なときはタンクスタンスをオンにして、防御力が必要なときはセルフバフを使い、サブタンクのときにメインタンクに強力な支援をしたいときは味方単体用のバフを使い、全体を守りたいときは全体用のバフを使う。そういったこれまでどおりの動きを行いつつ、それ以外のときは、火力を出すコンボルートをひたすら回すような形になっています。おそらく、タンクのみなさんが一番やりたかった状態になっているはずです。

――ネットでは「タンクはDPSを下げて、単に攻撃を防ぐようなロールになるのでは」というウワサもありましたから、そうならなくて安心しました。

吉田:ええ。やはり「役割をこなしたうえで火力を出したい」が前提だと思うので。純粋にそうなっていると思っていただければ。

――ほかにも今回、例えば竜騎士なら以前と比べてドラゴンアイ2つで紅の竜血状態に移行できるようになっていたりと、4.x時代までの行動が簡略化しています。そのように“既存システムを簡略化し、そのうえで新たな要素が追加されているジョブ”が多いように思いますが、あえてそういう方向性にした意図を教えてください。

吉田:複雑すぎないようにストレスを減らし、そのぶん正当進化させた……という感じですね。例えば4.x時代の吟遊詩人も管理する要素が多く、本当に使いこなせる人でないともはや複雑すぎる状態になりつつありました。竜騎士に関しても、必ずこのアクションからスタートしないとまともに火力を伸ばしにくいという形になっていました。そういった部分をなくして、“もっと自由にシンプルに遊んでもらおう”という意図の変更になっています。より遊びやすく・わかりやすく、かつ突き詰めやすい進化をさせています。

――バーストタイムを合わせるという部分では、これまでどおりテクニックが必要だと感じました。カジュアルになりつつも、腕の差は出せる……という認識でよろしかったでしょうか。

吉田:そうですね、それはもちろん、そうでないとおもしろくないと思うので。ちなみに竜騎士で言えば、ジャンプがハイジャンプに強化されたことでモーションがものすごく速くなり、GCDに食い込みにくくなりました。これによってジャンプにまつわるストレスは軽減されていると思います。……開発中はもっと速かったのですが、画が破綻していたのであの形に落ち着きました(笑)。そのようにどのジョブについても、みなさんが細かくストレスに感じていた部分はひと通り解消できたかなと思っています。

――召喚士や機工士は今回とくに大きなシステム変更が入りましたが、その経緯を教えてください。

吉田:それらのジョブは、基本的にメカニクスが複雑すぎたり、ストレスが強すぎたりしたものを変えています。

 召喚士に関しては、ペットがダメージを受けることそのものや、倒されたら呼び出しに詠唱が必要になることなど、ペットに関するわずらわしさが目立っていました。そこで、エギを敵からターゲットされずHPも減らないようにしています。召喚士の意識の向き先を、純粋に“攻撃のためにどのエギを使うか”というポイントにフォーカスできるような方針にしました。エギの呼び出しもインスタントアクションにして、ワンボタンで召喚できるようになっています。

 シチュエーションに合わせてエギを使い分け、エギの行動を、プレイヤーの好きなタイミングでプレイヤーアクションとして使えるようにするなど、メカニクスをシンプルにしてあります。加えて、バハムートを呼べないヒマなタイミングでフェニックスを召喚できるようにし、バトル開始前にエーテルフローを回復しないと……という部分でもストレスを軽減するなど、ストレートに、“召喚士らしさ”を体験してもらえるように進化させたつもりです。

 機工士について話す前に……全体にかかわる新要素としてまだ1つだけ説明していない要素がありまして。『漆黒編』では、“GCDとは別のリキャストを持っているWS”が新たに登場しています。機工士にはホットショットをはじめそのようなWSが多く用意されており、それらを上手に使ってもらえればかなり手数の多いジョブになるよう設計しました。今までは準備に準備を重ねないとできなかったことが、今回からは素直にダメージが伸びていくイメージですね。

 あと、いろいろ議論した結果、“ガンナー”ではなく“機工士”として多くの兵器を使って攻撃をしていくジョブにしました。動画を見ると、「なんかスゲーいろいろ取り出すな!」と感じてもらえると思います。

――アクション名を見ると、『FFⅥ』のエドガーを思い出しました。

吉田:そうですね、全ジョブの中で、機工士が一番これまでと変わっていますね。

――追加アクションは、いろいろと個性が立ったものが多いですが、それらの由来となるストーリーなどを体験できたりしますか? ……例えば、暗黒騎士の影身具現は……設定好きにとってはなかなか熱いものがありました。

吉田:それは今回、無理に入れないようにしています。シナリオで押し付けることをしたくなかったことと、そういった部分は、これまでの冒険から想像にお任せする方が良いだろうと。暗黒騎士の影身具現に関しても、あれは英雄の内なる負の感情すら使役していて、その姿形が“何”であるかはみなさんに想像してもらえればいいかなと。

 今まではアクションの修得を紐付けることで、強制に近い形でクエストを進めてもらっていました。言い方が悪いですが、ジョブクエストをやってもらうために報酬として用意していた。ですが、そこはストーリーを楽しみたい人が楽しむという形で、もっと自由であっていいかなと。今、『FFXIV』はコンテンツ量が横に大きく広がっているので、そこに強制力があると面倒に感じてしまう人も少なくないと思うので、あえて紐付けないようにしました。

――黒魔道士や侍といったピュアDPSは、比較的大きな変化はなく純粋にダメージを伸ばしやすくなっていました。例えば、黒魔道士は移動しながらできる有益な行動が増えていましたが、そういった調整をするうえで、とくに注力した部分があれば教えてください。

吉田:黒魔道士は、今回は本当に“移動しながら”できる行動が増えたことがすべてですね。いちおう「破壊の力を使いリビングデッド状態で復活させる」といった蘇生の話も検討はしたのですが、せっかく面倒くささを減らす調整をしたのに別のところで面倒くささを増やしたらダメだろうと。それをやるぐらいだったら移動しながら魔法を使えるとか、Procをコントロールしやすくするために激成魔のリキャストを短縮したり、遊び心地のところを重視した調整のほうが楽しいはずだと考えました。

 黒魔道士は、これまでより自由にProcを操れるようになります。それをサンダガに使うか、ファイガをProcさせて移動しないとならないシーンを乗り切るのか……とっさの判断で使いこなしていただければと。また、今回からポリグロットが2つスタックできるようになり、それを使用するインスタント発動の単体攻撃魔法・ゼノグロシーを追加しています。ですので、ポリグロットを2つためておいて移動中にゼノグロシー×2と三連魔を使って移動シーンを乗り切ることも可能です。

 このように、移動させられるつらいシーンで無理に詠唱させる調整ではなく、移動中に可能な行動を作り、それを吐き出すタイミングをプレイヤー側で調整することで難所を乗り切り、トータルで火力が出せるようことができるように……そういう方向に調整することで、“詠唱”というマイナスを補えるようにしてあります。“テクニカルで、やり込めばおもしろい”という部分を変えずに、そのまま進化させた形です。

 侍も、しっかりゲージ管理をして居合の頻度を上げて気持ちよく攻撃を続けていくというところに特化しているので、どちらも正当に“火力を詰めるジョブとして気持ちよく戦ってください”という感じになっていますね。

――新ジョブの踊り子&ガンブレイカーについて、コンセプトや調整の方向性についてお聞かせください。

吉田:踊り子に関しては、パーティメンバーの中でパートナーを決めて、その相手とのシナジーを高めるジョブです。要は、ダンスパートナーを選ぶみたいなイメージで、そこがおもしろさの1つになっています。

 また、ある程度のランダム性を持っているので、極端に腕の差が出にくいのも特徴です。自分の火力を詰めていくというよりは、味方に貢献していって結果的にパーティ全体を支援します。シナジーが強いというよりも、“支援能力が高い”という感じでしょうか。おそらくパッチ5.0序盤では人気ジョブになるので、赤魔道士のときと同じく、使いやすさを重視して調整しています。

――自分自身の火力的には、ほかのジョブよりも少し控えめなのでしょうか?

吉田:パーティ貢献度が高いので、プラスマイナスで考えるとそうなりますね。

――プレイしてみて、ラッシュが楽しいジョブになっているなと感じました。

吉田:開発中はフィーバータイムと呼んでいました。そこを楽しんでもらうジョブですね(笑)。あとは、『FFXIV』としては初めて、ノンターゲットで自分の向いている方向に一定距離移動するというアクションが用意されており、遠近の距離を自在に操るのが楽しいですね。そこあたりで腕の差が出てくるかなと思います。

――チャージアクションのアン・アヴァンですね。主に回避で使う想定でしょうか?

吉田:回避とともに、踊り子は自分中心となる攻撃を持っているので、そういったPBAE(Point-Blank Area of Effect=自分を中心に効果を発揮する範囲攻撃)を使うための移動手段としてですね。あとは、味方との立ち位置を合わせたりぐらいでしょうか。

 一方で、ガンブレイカーに関してですが、もともと『FFⅧ』で発明されたガンブレードには、“銃を撃てる剣”ではなく、“斬るタイミングでトリガーを引き、インパクトを高める”というベースの設定がありました。それを表現するために、『FFXIV』では“ソイル=弾に込めた魔力を、斬ると同時に発動させる”というところをコンセプトにしています。WSを撃ちながら即座にソイルのアビリティを使うことで、“斬って、トリガーを引く”という感覚をうまくゲーム体験に落とせないか……という意図で作りました。

――ウィケッドタロンのコンボ1段目を打った直後にコンティニュエーションを即座に発動し、2段目を撃ったらさらに別の技を発動し……というあの挙動は、そういうところを意識していたんですね!

吉田:そうです、そうです。苦労のかいあって、やり込めばやり込むほどおもしろさが出てくるジョブになったかなと思っています。今までのタンク3ジョブとは全然違う、かなりスタイリッシュな体験ができるので、ぜひ遊んでみてください。

――サブステータスについてですが、4.xの頃は、同ロールのジョブで重要なサブステータスが異なるため、装備の使い回しがしにくい……という状況がありましたが、この部分にはなにかテコ入れがあったりしますか?

吉田:タンクだけでなくキャスターなどでもそうですが、そこはあくまで「僕はスペルスピード派」「私はクリティカル派」といった好みの部分だと思うんです。こだわるのだったら、それぞれのジョブ用に別途装備を用意する・マテリアをはめ直すといった手段を取ってもらえればと思います。

――ちなみに、最近話題になりましたが、マクロに先行入力が効かないという点は5.0でも同様でしょうか?

吉田:そこは変えていません。あれは、コマンドを1つ挟んでいる以上どうにもならないと思っていただければ。

――LBゲージのたまり方が変わるとお話されていましたが、ぜひ詳しくお聞かせください。

吉田:まず、調整の理由として一番大きいのが、ファインプレー時の増加係数が大きすぎると感じたことです。同じコンテンツでもプレイする人によってLBゲージの増加量が大きく変動していました。また、タイムアタックなどで意図的にファインプレーを発動させる戦術が見出され、それがヒーラーに大きな負担を与えていたので……パーティメンバー同意のうえとはいえ、もっと別の方法でタイムを競っていただいた方が良いだろうと考えました。

 そこで、ファインプレー時のゲージ増加係数を“パッチ5.0以降に実装されるコンテンツ”では下げました。つまり、これまでのコンテンツにおいては同じことができますが、5.0以降のコンテンツではLBゲージのたまり具合がある程度均一になるような調整をしているということです。意図としては“練習中に偶発的にLBゲージの溜まりが毎回違ってしまう”、“必ずファンプレーを狙うのが正規の攻略になってしまう”ということをなくしたかったからなのですが……この調整をネガティブな意味にとらえてほしくはないんです。

 むしろ、コンテンツを作る際に“この時間帯で必ずLBゲージがたまっている”という状況を保証するために、あえてそうしている部分もあります。これまではファインプレーを見越した調整しかできなかったので、その係数を下げることで“わざわざ瀕死の状態を作らなくても、ちゃんと適切なタイミングでLBゲージがたまっている状態”になるよう調整した……そう考えていただけたらと思います。

――例えばタンクLB3でないと防げない攻撃が来るタイミングできちんとそれを発動できるよう、LBゲージのたまり方を調整した……ということですね。ちなみに、同ジョブが複数いた場合にLBゲージがたまりにくくなる仕様は変わらずですか?

吉田:それは一緒です。

――最後に、プレイヤーのみなさんにパッチ5.0をどう楽しんでほしいか、ぜひメッセージをお願いできればと思います。

吉田:バトルに関しては、まずは“メカニクスのわかりやすさ”がないと、おもしろさは伝わらないと思っています。おもしろいかそうでないかは、理解ができたあとに付いてくるものですので。長く『FFXIV』を遊んでくれている方は、バトル調整の変遷を知ってくれているので大きな問題にはならないかもしれませんが……今回の調整では、新規で始めてくれた人がわかりづらいと感じるであろう部分をとにかくなくしました。誰にでもある程度理解してもらったうえで、ジョブを好きになるかどうか……。バトルに関してはそういった調整を行っています。また、これまでで悪かった部分……例えば、高難度レイドに優先的に入ってしまうジョブがいたことで、結果的に募集の枠が狭まってしまう状況などをなくして、もっと自由にパーティを組めるバランスに再調整しました。

 もちろん、新たに加えるだけでなく、パッチ4.xシリーズのよかったところもできるだけ踏襲しています。例えば、クラフターの大工房クエストに関しても、中身は“お得意様取引”のシステムを使っているんです。お得意様取引では、それ以前のリーヴなどのように採取が面倒な素材を集めて製作するのではなく、その場で素材を用意できる専用レシピにして誰でもすぐ製作に入れるような形をとりました。そのように、今までの作ってよかったものを積極的にメインストリームに取り込んでいくことで、これまでの『FFXIV』で積み上げてきたものを、『漆黒のヴィランズ』全体として次の時代に向けて正当進化させています。

 とくに、その中心にあるメインストーリーは、ものすごくこだわって作りました。「『FFXIV』が終わっちゃうんじゃないか、コレ」というところまで踏み込みこむので、おそらく驚きの連続になるはずです。考察しがいのある要素も多数ありますし、個人的には『FFXIV』史上最高のメインストーリーだと思っているので、まずはこだわりにこだわった物語を、じっくり楽しんでいただければと思います。そのあとは、いつもどおり好きなものから楽しんでいってもらえればと。

――何はともあれ、レベル80になるためにもメインストーリーからですね。フェイスもありますし、とても楽しみです。

吉田:物語的に“仲間と一緒に旅をする”という感覚を味わえるようにこだわって作りましたし、ロールクエストに関しても、“システムのためではなく、お話を読むために”という原点回帰をしていますので、メインストーリーはさらにRPGらしくなったかなと。

 あらためて考えると、こう遊んでもらいたい……というのは、相変わらずないんですよ。みなさんバトルしたりクエストを進めたり、スクリーンショットを撮ってみたり、ハウジングを楽しんだりと、いろいろな価値観で楽しんでいらっしゃるので。できるだけストレスがかからないようにすることをテーマに作っています。……まぁ、風脈だけは、相変わらず集めなくてはいけませんが(笑)。ぜひ、みなさん好きなものから遊んでもらえればと思います。

――ありがとうございました!

『漆黒のヴィランズ』メディアツアー記事目次

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  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ コレクターズ・エディション(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

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