スランプなっちゃったよー!!【O村の漫画野郎#19】
- 文
- 奥村勝彦
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秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!
スランプなっちゃったよー!!
あー。編集長の大西さんと副編の樋口さんに、呼び出されて言われたことをワンフレーズでまとめると、こうだ “売れる漫画を作ってくれ”。
実にシンプルである。
恐らく、創刊以降いろんな会議やら何やらで、会社から相当なプレッシャーをかけられたんだろうなあ。俺みてえな下っ端は、想像するしかないんだけれども、漫画に関しては歴史のある秋田書店であるからして、相当ツメられちゃってたのは間違いない。
連敗が続いたプロ野球の監督みてえなもんだったと思う。そらまあ会社としても当然の反応だわな。
もちろん俺にも大きな責任はある。だもんで、その時から“売れる漫画”って何だ? と考える日々が続いた。いやもうアホなりに考えまくった。
……その結果、どうなったか? 完全に足が止まっちゃったんである。つまり全く新連載が起こせなくなっちまった。何をやったらいいかわからなくなったのよ。
俺は基本的には手数が多い部類の編集者なのね。漫画家とバカ話をしながら、いつの間にか新連載の打ち合わせになってたなんて、ザラだからなあ。それがパタッと出来なくなった。
そっから新雑誌が休刊するまでの間、多い時は6~7本あった連載が、最後には1~2本にまで減っちゃった。これじゃ全く戦力になってねえ。完全にスランプ!!
もちろんサボる気なんてねえ。なんとか雑誌を存続させてえって気持ちだったんだけど、結果的には何もできなかった。
今にして思うと、俺の考える“売れる漫画”ってえのは、“面白い”ってのが、まずあって、そっから、その面白さが読者に上手く伝わった結果売れるもんだ。そのプロセスは絶対である。
ところが、その当時(今でもそうかもしれないが)、あるトレンドやら市場分析でジャンルやらストーリーやらキャラクターを作り出すような方法が主流になりつつあったのだ。
そんなやり方は俺には全く出来なかった。ほぼ、体が拒否してたもん。面白いって主観を売れやすいって客観が凌駕してはならない。
今でもそれは俺の信念の一つだったりする。単純にアホなだけのような気もするけど、たぶん本能に忠実なだけだったのかもしれんな。それでも何とか折り合いをつけるのがプロの編集なんだろうけど、まだそこまでの知恵は俺にはなかった。今でも大西さんや樋口さんに申し訳なく思ってるんだ。
んで、次回は『GRANDチャンピオン』時代の総括をやっちゃう。……あ、これは雑誌の総括じゃなくて、あくまで俺自身の総括ね。……待て!! 次回!!
(次回は10月12日掲載予定です)
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どちらもエネルギッシュで、日本の漫画とはまた違う読後感を味わえるので、気になった方はぜひ!
O村の漫画野郎 バックナンバー
イラスト/桜玉吉
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