まさかの辞表カブり!!【O村の漫画野郎#24】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

まさかの辞表カブり!!

 あー。殴られる前提で壁村さんに辞表を渡した俺だが、あっさり受理されたもんで、正直パニックになっちまった。

 まあ、しょせん俺なんざ、その程度の人間だったんだなあ……と少し、いや、相当落ち込んだりして。


 んで翌日、会社で真相を聞いてブッ飛んだ!! なんと壁村さんが昨日、社長に辞表を出していたのだ!!

 確かに当時、体調はかなり悪そうだったし、現場仕事からも外れていたので、役員だったけど管理業務に全く興味のない壁さんが、会社を辞めちゃうのは理解できた。

 しかし、同じ日に辞表を出してたとはなあ……またも何たる偶然!! これもシンクロニシティ……なの?

 そりゃ殴れんわなあ。自分も辞めちゃうんだもの。たぶん壁さんも「テメエ!! 何ちゅうタイミングで辞表を出すんだ、この野郎!!」なんて思ってたかもしれんなあ。


 まあ、結局それで、俺と壁村さんは同時に秋田書店を去ることになっちまった。

 もうこれで、誰も俺に背中を見せてくれて、導いてくれる人なんざいねえ。テメエでコトを起こして、ケツを拭いて、結果を出さなきゃ、タダのクズだよなあ……なんて妙に気合が入ったもんなあ。


 んで、同じ日に辞表を出したよしみっつーことで、秋田書店時代に壁村さんに学んだ(それはもう、山のように教わったけれど)ことで、一番印象に残ったエピソードを一つ書いちゃおう。


 ある日、他の編集者と漫画の話をしてたら、酔っぱらった壁村さんにこう言われた。

「お前ら、打ち合わせとかで何時間も漫画家とグダグダ喋ってんだろ。バカじゃねえの!! そんなもん襟首つかんで、テメエ、面白え漫画描かなきゃ、ブッ殺すぞ!! つったら終いじゃねえか。」

 いやまあ、壁村さんは実際にやったんだろうけど、俺らがやったら(特に今は)確実に警察沙汰である。

 ただ、その内容は本質を突いている。打ち合わせでの編集者と漫画家の発言は、“面白え漫画”にベクトルが向いてねえとダメだ。それ以外の発言は枝葉末節であり、基本的にどーでもいい。

 ま、さすがに“ブッ殺すぞ!!”は反社会的であるからして、「アナタ、面白い漫画を描かないと、怒っちゃうよ!!」……ダメだ!! 全く迫力&説得力がねえぞ!! まるで新宿二丁目みてえだ!! うーん、壁村さん、アンタの時代は良かった!! それで秋田書店を去った俺は、決意も新たに次なる……待て!! 次回!!

(次回は11月16日掲載予定です)

奥村さんが編集に携わったコミック2冊が発売中

 特別編でも紹介したように、奥村さんが編集に携わったマレーシア発の2冊の漫画(電子書籍)が発売中です。

 恋愛漫画の短編集『常夏の国で、君と。』(ファクヌール・アヌール著)と、コミカルなヒーローモノとなる『ライデン 1巻』(ZINT著)。

 どちらもエネルギッシュで、日本の漫画とはまた違う読後感を味わえるので、気になった方はぜひ!

O村の漫画野郎 バックナンバー

イラスト/桜玉吉

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