カルチャーショ―――ック!!【O村の漫画野郎#26】
- 文
- 奥村勝彦
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秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!
カルチャーショ―――ック!!
あー。アスキーに喜び勇んで入社した俺だが、何から何まで秋田書店とは正反対の社風に面食らった!! まず女がやたら多い!! しかも丸の内のOLみてえのは全然いねえ!! はっきり言えば渋谷の交差点を歩いてそうなネーチャンばっかりだ!!
いやまあ、俺はバンカラ男子校から、突然校則ユルユルの共学へ転校したようなもんだから、余計にそう見えたのかもしれんがなあ。
んで、デスクに座っていたら、すぐ近くで女が泣いている、そしてもう一人の女がソイツを慰めてるのな。なんか仕事で失敗でもやらかしたのかしらん、と思って観察していたんだが、どうも付き合ってた男にフラれて泣いてるらしい。
……あのなあ、フラれて泣くのはわかるんだけどさー、そんなのテメエのプライベートじゃんさー、泣くなら給湯室とか便所とか、目立たねえトコで泣けよなー。
なんかワケがわからなくなってきて、俺は見学を兼ねて社内を見回った。他のフロアもだいたい似たよーな感じだった。ただ、デスクの上にやたらフィギュアがズラズラ並んでいたのが気になったけどな。
んで、地下のフロアに行ってみたら、なんか大きな段ボールが転がっていて、若い野郎特有の匂いがして臭かった。あとで聞いてみると、あまりに仕事が忙しいんで、家へ帰るのが面倒臭くなって会社に住み着いちゃったヤツらがいるらしかった。
まあ、そりゃいいんだが、ついでに風呂にも入ってねえらしい。いくら面倒臭いつっても、近所に風呂屋ぐれえあるだろうに。これじゃ、公園の段ボーラーと全然変わらねえもんなあ。
たしかにアスキーには自由があった。いやもう売るほどあった。そもそも会社の成り立ちからして全然違った。
文化&娯楽事業として出版社を立ち上げるのと、ハイテク使って好きな事やろうぜってノリで会社が成立しちゃったのは全然違う。そらもう滅茶苦茶違う。
ただ、その自由さに反比例してプロ意識に欠けるのが、問題といえば問題なんだけど、それらが両立するような都合のいい会社なんてあるワケがない。どっちを選ぶかは、個人の好みだわな。
そんで俺はアスキーを選んだ。過去の先例、現在のトレンドに囚われず好きに漫画を作ってみたかったのよ。
それから、もう一つ理由があって、それはアスキーには団塊の世代が存在しなかったことだ。当時の日本は彼らが完全に主導権を握り始めていて、良きにつけ悪しきにつけ、俺の世代にはドでかい壁だった。正直に言えば彼らがリタイアするまで、とてもじゃねーけど待っていられねえな……って思ってたもんなあ。
そんだけ強力な世代だったんだ。彼らがいない風通しのよさが俺には心地よかったのは事実だ。
そんな状況に少しづつ感覚を慣らしつつ、アスキーでの俺の仕事がスタートした!! それは……待て!! 次回!!
(次回は12月21日掲載予定です)
O村の漫画野郎 バックナンバー
イラスト/桜玉吉
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