また売られたあ!!【O村の漫画野郎#48】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

また売られたあ!!

 あー。前回も書いたがビームは着実に歴史を重ねていって、ヒット作も出始めたりして多少安定し始めたのね。ところがどっこい会社は、相変わらず安定しなかったんだわ。

 オーナーであるCSKさんの会長さんが亡くなって、そのドサクサでアスキーは売られちゃった。どこへ? そう、いわゆる“ハゲタカファンド”と呼ばれる方々にである。

 このハゲタカって言い方は、まことに日本的経営感覚から見た侮蔑と恐れを含んだ言い方だけど、実は俺はそんな見方はしてないの。経営状態の良くない企業を買収して様々なテコ入れを施し、業績を改善した後、2~3年で買値より高く売り払う。べつに間違ったことは何もやってねえじゃん。

 ただ、俺はそっち方面には全く興味がねえので、勝手にすればええやん、と思っていた。みんな結構騒いでいたけどなあ。


 ところが、俺みてえな変人は先方からは奇妙に映ったらしく、なぜか先方の会社に呼ばれて色々話を聞かれたりした。(つっても俺は社内事情には疎いので、漫画業界のバカ話しかしなかったけどな)

  俺は俺で、あまりに別世界の人たちだったので話してみて結構面白かったのは事実。「会社はどこにあんの? ケイマン諸島? なんなんだそれ? 税金? ふーん。名刺にスティーブンって書いてあるぜ。あんたハーフ? 海外相手じゃ便利? じゃあ俺もロドリゲスって名乗ろうかなあ」……なんて感じで。

 彼らは本当に頭が良さそうな人たちで、親切にも俺の企業人としての考え方やら行動様式に数多くの欠点があること指摘し、修正法までアドバイスしてくれた。聞いていてなるほどなあ、と思える話ばっかりであったが、結局、それで俺の態度が改善されたかというと、全く何も変わってねえでやんの。

 ……だって面倒臭えじゃん。特に出世してえとも思わねえし。


 そんで、その後アスキーからエンターブレインに枝分かれしーの、彼らの予定通り角川に買われーのして現在に至るわけだ。


 んで、エンターブレインが成立した頃、会社はバブルの浮ついた雰囲気が抜けてきて、人数的にも適正規模に落ち着き、非常に良いムードになってきた。

 やっとガキの会社から大人の会社になり始めたと言うべきか。この頃、所在地は初台から三軒茶屋へ移転して数年は経っていた。街の雰囲気は大好きだったけど、やたら駅から遠かった。夏場はマジで汗まみれ!!

 でもいいこともあって田園都市線の中で、内田裕也さんを2回も見かけた。さすが三軒茶屋!! ロケンロール!!


 んじゃまあ、この頃の話を色々書いてみようか。……待て!! 次回!!

(次回は5月24日掲載予定です)



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イラスト/桜玉吉

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