2009年11月20日(金)
――“12番目の理論”を思いついた経緯を教えてください。
林:“12番目の理論”はタイムリープなんですが、そこは志倉が企画書段階から“Dメール”と“タイムリープ”についての説明が、結構な量でバッチリ書かれていたんです。で、「こりゃすごい」と。でも実際にシナリオを書き始めると、その説明だけではまだ足りなくて(笑)。「ここ、どうしましょう?(林)」「よし、今から考える(志倉)」と相談しながら完成したのがタイムリープ理論です。
松原:僕と志倉、林の3人でそのあたりの設定を打ち合わせることが結構ありましたね。その打ち合わせは大体長くなって、終電が終わった夜中の2時ぐらいまで会議が続いて、会社に泊まることがよくありました。
――過去を変えた時の“ダイバージェンス(世界線変動率)”の数値には何か意図があるのでしょうか? それとも、ランダムで決めた数値なんですか?
林:あれはまったくのランダムです。最終的には小数点以下が6桁になったんですが、もともとは3桁ぐらいだったんです。ただ、世界中には数十億と人間がいて、たとえばその中の1人が死ぬとしますよね。でも、それぐらいではたいして数値が変わらないだろうと気がづいて、だんだん桁数を増やしていきました。たいして数値が変わらない、というのは作中でも紅莉栖がツッコんでいますね。
――主人公の倫太郎が、“中二病の青年”という設定になった理由をお聞かせください。
林:『カオスヘッド』の主人公・西條拓巳(にしじょうたくみ)が引きこもり一歩手前のオタク少年で、ネガティブ思考で暗くて自分のことしか考えていない、いわゆる最低な主人公だったんですね。でも、ユーザーさんからはその拓巳の最低ぶりが逆におもしろい、という評価をいただいて。で、科学アドベンチャーシリーズの第2弾を作るという話が出た時に、やっぱり主人公に関しては拓巳と同じ系統&ノリにしたい、というのは僕の中でありました。倫太郎の一番重要なポイントは“イタイタしさ”だと思っているんです。プレイヤーが引いてしまうほどの“イタイタしさ”を徹底的に追求した方が、インパクトと目新しさが出せるかなと。
――“中二病の青年”という設定は初めから固まっていたということですか?
林:いえ、最初の志倉の企画段階だともっと普通の青年だったんですよ。まあ普通というか、理系のオタクではあるんですけど、結構真面目な科学者タイプだったんですね。でも、そこに僕が手を加えて、さらにイタイタしさを増していったんです。あと、主人公がいつでも自由にケータイを出せると聞いた瞬間に、ネット上で“食堂の男”(※4)と言われる、とあるコピペを思い出して「コレだ!」と(笑)。
※4……中二病の1つ。大学の食堂で国際情勢のニュースを見るたびに、ケータイで電話をするふりをしながら「それが世界の選択か……」や「俺だ、○○(大統領などの名前)はどうやら俺たちとやる気らしい……」などとつぶやく男。
――“ラ・ヨダソウ・スティアーナ”(※5)ですね。
林:ええ、まさにケータイを使った中二病の男ということで、今作の設定にピッタリだと思いました。で、秋葉原が舞台なら、これぐらいイタイタしい人がいてもありえるんじゃないかと思ったんです。
※5……“食堂の男”が電話を切る時に言う、特に意味はない別れの合言葉。
――確かに、秋葉原が舞台でしかも個性的な登場キャラクターに囲まれていれば、特に違和感はないですよね。
林:なので、そこは志倉に「この設定でいきましょう!」とガンと主張して、説得したんです。
――主人公・岡部倫太郎が、1人で誰にもつながっていないケータイを切る時に言う“エル・プサイ・コングルゥ”の元ネタは、“ラ・ヨダソウ・スティアーナ”なんですか?
林:そうです。“ラ・ヨダソウ・スティアーナ”からヒントを得て、僕なりに考えた“特に意味はない、別れのあいさつ”です。“意味のなさこそに意味がある”ということで、変に意味を込めてしまうとダメだと思うんですね。まったく意味がない言葉であることが重要なんです。
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