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2013年4月25日(木)

『バイオショック インフィニット』は人種差別や歴史の闇に真っ向から取り組んだ意欲作! その“毒”のある世界観を考察レビュー

文:イトヤン

■天空都市は“エデンの園”? それとも人種差別がまかり通るディストピア?■

 一見すると平和で穏やかな雰囲気のコロンビアですが、よく見ると、この街で綺麗な洋服を着て自由を謳歌しているのは、いずれも白人ばかりです。黒人をはじめとする有色人種は、使用人や雑役夫といった立場に追いやられています。そう、この街では人種差別が堂々とまかり通っているのです。

『バイオショック インフィニット』 『バイオショック インフィニット』
▲コロンビアの建国記念祭に出くわしたブッカーは、白人男性と黒人女性のカップルにボールをぶつけるように強制されます。この街では、人種を超えた恋愛は重罪とみなされているのです。▲華やかなコロンビアの商店も、裏側に回るとその本性が露わになります。黒人たちで構成されている労働者は、白人の顧客に対して“旦那様”“奥様”と呼ぶことを強制されています。

 一方で、このコロンビアの街を治めているのが“預言者”のカムストックであることからもわかるように、この街はキリスト教的な信仰による価値観に支配されています。コロンビアの住人によると、この街は汚れた地上のソドム(※旧約聖書に登場する、その罪によって神に滅ぼされた都市)を脱出した人間がたどり着いた、新たなエデンの園だというのです。

 ただし、この街に広まっているのは現実のキリスト教ではなく、独自の教義を持つ架空の宗教であることに注意する必要があります。なにしろこの街の人々は、ワシントン、ジェファーソン、フランクリンという、アメリカ独立に貢献した3人の人物を信仰の対象として崇拝しているのですから。

『バイオショック インフィニット』 『バイオショック インフィニット』
▲コロンビアを建設したカムストックは、人々を新たなエデンの園へと導いた“預言者”として崇拝されています。彼は自らを、ユダヤの民をエジプトの支配から救って約束の地へと導いた、旧約聖書に登場するモーゼになぞらえているのです。▲左から順に、フランクリン、ワシントン、ジェファーソンの巨大な石像。アメリカ合衆国がイギリスからの独立を勝ち取る上で、重要な役割を果たしたこの3人は、コロンビアでは祈りを捧げる対象となっています。

 宗教的価値観が重視される一方で、人種差別が公然と行われる社会と言えば、アメリカの歴史に詳しい人なら、19世紀から20世紀初頭にかけてのアメリカ南部地方を連想するかもしれません。最近、日本でも劇場公開された映画『ジャンゴ 繋がれざる者』では、19世紀当時のアメリカ南部での黒人差別の実態が、赤裸々に描かれています。この映画でレオナルド・ディカプリオが演じる、黒人奴隷を保有する南部の大農園主の言動などは、カムストックをはじめとするコロンビアの支配階級の人々と通じるものがあります。

 実はコロンビアとアメリカ南部の社会との間には、共通点がもうひとつ存在しています。そしてそれは、コロンビアの起源とこれまで歩んできた歴史とも関係しているのです。

→天空都市コロンビアの起源は南北戦争にあり!?(3ページ目へ)

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