2013年4月25日(木)
コロンビアは、1893年に初めて大空へと飛び立ちました。その時からゲームの舞台となっている1912年までの間に起こった事件は、本作の中で断片的に見ることができます。
コロンビアの街角のあちこちには、“キネトスコープ”という機械が置かれています。これは、中を覗き込むことで数分間の映画を観られるものなのですが、これを使ってコロンビアの歴史が解説されているのです。
キネトスコープで見ることのできるコロンビアの歴史によると、誕生当時のコロンビアは、アメリカ合衆国の権威を世界に示す存在として活動していたようです。ところが1901年に合衆国政府とカムストックが対立し、政府はカムストックに対して退陣を要求します。カムストックはその要求を拒絶し、コロンビアを合衆国から分離独立させることを宣言しました。以後、雲の彼方に消えたコロンビアは、その存在を地上の人々から隠していたというのです。
現実のアメリカの歴史においても、合衆国政府と対立し、合衆国からの分離独立を宣言した人々が存在しています。それは1861年から1865年にかけて南部諸州が結成したアメリカ南部連合。リンカーン大統領の率いる合衆国政府と、この南部連合の間で繰り広げられたのが、アメリカ南北戦争なのです。
アメリカ南北戦争は、農業を中心とした社会を維持しようとする南部と、急速に工業化を進める北部との間で、今後アメリカがどちらの道を進んでいくかという問題で対立した結果、開始された戦いです。そして、南部が大規模な農業を維持するために不可欠だったのが、黒人奴隷たちを農場で働かせるための奴隷制でした。それに対して合衆国政府は、戦争の大義を諸外国に認めさせるため、奴隷解放宣言を発布して南部に対抗しました。現在公開中の映画『リンカーン』では、アメリカ南北戦争を通じて奴隷制を完全に撤廃しようと努力する、リンカーン大統領の姿が描かれています。
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▲コロンビアの中でも特に狂信的な団体である“オーダー・オブ・レイブン”の屋敷には、南北戦争の光景を描いた絵画が飾られています。そこでは、南部連合の大統領であるジェファーソン・デイビスが神々しい姿で描かれている一方で、リンカーン大統領はまるで悪魔のような姿になっています。 |
1865年に、南北戦争は北部の勝利で終わり、アメリカ合衆国はふたたび統一されました。そして法律の上では、奴隷制は撤廃されたはずでした。しかし戦争に敗れた南部社会では、その後も根深い人種差別が20世紀の中ごろまで続いていくことになります。そして南北戦争が実質的に終了した直後の1865年4月15日、リンカーン大統領は南部連合を支持する俳優ジョン・ウィルクス・ブースによって、暗殺されてしまうのです。
もしアメリカ南北戦争で南部が敗北せずに、合衆国から分離独立したまま存在し続けたとしたら? その仮定をゲームの中で具体化したものがコロンビアなのではないかと、そんなふうに思えるのです。実際にゲームの中でも、カムストックや彼を信奉するコロンビアの人々は、奴隷制を撤廃したリンカーン大統領を敵視していることが描写されます。コロンビアの中でも特に狂信的な団体である“オーダー・オブ・レイブン”の屋敷には、リンカーン大統領を暗殺した犯人であるジョン・ウィルクス・ブースの巨大な石像が、うやうやしく飾られているのです。
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▲南部連合を支持していた俳優のジョン・ウィルクス・ブースは、観劇中のリンカーンを背後から銃撃して殺害。そんな彼の石像が、コロンビアに飾られているのです。 | ▲ブースの石像がある屋敷には、リンカーン暗殺の瞬間を描いた絵画も飾られています。リンカーン大統領の頭には、悪魔のような角が描かれているのが印象的です。 |
このようにコロンビアには、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アメリカ南部の保守的な社会が抱えていた負の部分が凝縮されているのです。ですが、それだけではありません。物語の舞台となっている1912年には、アメリカ北部の工業化社会にも、負の側面が生まれていたのです。そしてそこには、本作の主人公であるブッカー・デュイットも関わっていました……。
→ブッカーとアメリカの負の側面とをつなぐものとは?(4ページ目へ)
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