2013年6月19日(水)
――ゲーム制作において、作曲以外に何か携わっていることはありますか?
永田:林はいろいろやってるよねぇ……。ネットワーク管理者とか……。
林:そうじゃなくて、効果音を作ったりとか、音源を実機に実装したりとかでしょ(笑)。クロンにはサウンドプログラマーがいないから、ゲーム機に実装するための専用のツールをすべて理解して、ビルドしてプログラマーに渡す仕事もしています。“作曲家だから、作曲だけをする!”ってことは、今までやったことないかもなぁ。
永田:今、作曲だけしてるゲーム音楽の作曲家っていないんじゃないかなぁ?
林:大手メーカーさんとかはわからないですけど。これも一長一短だと思いますよ。作曲だけやっていると、“作曲の頭”でずっといることができるから、突き詰めて音楽を作れます。でも、サウンドプログラマーを兼任できれば、制作スケジュールからゲーム制作進行の全体像を見通せるんです。それって、今のご時世を生き残るのにすごく有利なことだと思うんです。
永田:できるに越したことはないよね。よく、「何でもできる奴は、何もできない」とか“器用貧乏”とか言いますけど、僕はそういう言葉が嫌いで。
――永田さんは、他に絵を描かれたりデザインもされていますよね。
永田:絵を描くことも物語を考えることも、僕の中では作曲とあんまり差がないかな。結果的に音楽に割いてる時間が一番多いから、作曲がホームになってるけれども、“世界観を作る”にあたって、デザイン業や作曲業も差別化はそんなにしていないです。
『カオスフィールド』は、いろんな人の手でこねた粘土みたいな作品でしたけれども、そこが好きじゃなかったんですよね……。だから、2作目の『ラジルギ』からは、シナリオやデザインを自分作ったんです。その流れが、『カラス』や『イルマティックエンベロープ』にも続いている感じです。
▲アーケードで稼働し、後にドリームキャストやWiiへ移植されたSTG『カラス』。ハードコアな世界観を表現したブラックミュージックテイストのサウンドも魅力の1つ。 |
▲写真は、アーケード用STG『イルマティックエンベロープ』のWii移植版『イルベロWii』。無数の隠しステージや謎解きといった、STGには珍しい要素が多数搭載されている。 |
――いわゆる“マイルシュー”と言われるものですね。
永田:リアルな描写のシューティングってあまり好きじゃなかったから、トゥーンシェード(アニメチックな画像処理)でデザインした『ラジルギ』を作ったんです。それまであった普通のものじゃおもしろくないので。敵の硬さやシステム、ゲームバランスはメインプログラマーの松本さんによるものですけれども。
▲『ラジルギ』の直接的な続編STG『ラジルギノア』。そのWii移植版『ラジルギノアWii』や、Xbox 360移植版『ラジルギノア MASSIVE』も発売された。 |
▲『ラジルギノア MASSIVE』。前作『ラジルギ』に、多くのシステム変更が加えられているが、その全般を永田さんが采配したわけではない。“マイルシュー”の中でも異色なゲームではある。 |
――永田さんが作る世界観に対して、林さんが何か意見することはないんですか?
林:皆無ですね。むしろ上がってきたデザインを見て、打ち合わせをして、永田の作る世界観からさらに突っ込んだ効果音を作ったりします。「永田のグラフィックから引き出せる音以上のものを作りたい」といつも思っています。『カラス』のボス前のアラート音は、1回でバッチリ(イメージと)合ったよね。
永田:そうだったねぇ(しみじみ)。
――作っている楽曲のジャンルが、お2人で全然違うように私には見えます。
林:ゲームミュージックにダンスミュージックを取り入れたものというくくりでは一緒かな?
永田:僕らは、ゲームミュージックにダンスミュージックが流れ込んできたのを体感している世代なんです。それは、細江慎治さんや古代祐三さんたちが始めたもので、その手法を「カッコイイ!」と思って、追いかけてきた世代だと思いますね。
林:根底はそこだから、あまり僕たち2人の音楽がかけ離れているという意識はないかなぁ。今は、音楽のジャンルが細分化されているから、そう感じるのかもしれないですね。
――楽曲を作っていて、お互いに「相手に合わせなければ」と意識することはありませんか?
永田:1つのゲームタイトルに合うように楽曲を作るというだけで、十分な縛りになっていると思います。具体的な到達点を設けて、お互いに相手を意識して合わせることはしませんが、でき上がったものを聴くと、ちゃんと統一感が出るんですよ。
――では、その“ゲームタイトルの縛り”をなくして、お互い自由に作ったらどうなると思いますか。
林:永田と僕でアルバムが2枚に分かれると思いますよ。考えたこともないけど(笑)。
永田:イベントにk.h.d.n.として出る時は、先に林がDJプレイをして、その後に僕が続く形を取っています。お互いにどんな楽曲を流すか、事前に打ち合わせはしないんですよ。前日までに各々が好き勝手にリストを作って、当日初めて聴く。そうすると、歴然とした違いが出ますね。
林:クラブイベントでのプレイは、意識的に“陰陽”の関係を作っている部分がありますけどね。僕は“踊れる”派手な音楽作りを心がけて、永田はその後に“k.h.d.n.としての音楽”をまとめ上げる感じ。
楽曲のサンプルも聴ける!
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