2014年1月23日(木)
――記念すべき1作目となった『東京魔人學園剣風帖』の世界観は、どのように作っていったのでしょうか?
今井:伝奇ものや青春もののベースとなる作品がゲーム業界にはなかったので、やるなら王道にしようと思いました。最初から奇をてらうようなことはせず、「ユーザーがこういう展開を望んでいるだろう」「こうなったら、こうだろう」という王道の展開にしています。
本当に王道の青春を描きたかったので、1作目からトリッキーなことをしても仕方がないなと。先ほども言いましたが、今後出る伝奇もの、ジュヴナイル伝奇では超えられないものを作ろうと思ったので、そのためにも王道のおもしろさを追求しました。
――確かに、王道のストーリーに引き込まれたユーザーは多いですね。スタッフが文献を調べて作られただけあり、さまざまな要素も詰まっていました。
今井:風水、密教、陰陽道、ヴァンパイア、ウェアウルフ、古今東西のオカルト的な要素は全部入れて世界観を作っています。仲間になるキャラクターも、山田風太郎さんや菊地秀行さんの小説に登場するような、伝奇ものらしい王道の人物設定にしているんです。だから相棒の蓬莱寺にも、木刀を持たせています。これも私が思う、伝奇ものの王道なんですよ。
▲頼れる親友や美しいヒロイン。王道のストーリーには欠かせないキャラクターたちが、物語を盛り上げてくれている。親友である蓬莱寺が木刀を持っていたのも、今井監督の王道へのこだわりからだった。(画面写真はDS『東京魔人學園剣風帖』) |
――舞台を新宿に選んだのも、“魔都といえば新宿”というイメージからでしょうか?
今井:新宿も王道ですよね。王道を目指すうえで、『東京魔人學園』はNHKの大河ドラマをイメージして作りました。NHKのドラマって、物語や音楽のつくりが壮大で王道じゃないですか。『東京魔人學園』で音楽を作る時も、作曲家の新田さんに壮大な感じで作ってほしいとお願いしました。
――細部まで、王道にこだわって作られたのがわかるエピソードです。
今井:王道を作ってみて思ったのが、そうそう作ることはできないなということですね。かなり勉強して、調べに調べて作りました。伝奇ものというジャンルは勉強して作る必要があるのですが、そういう時間はなかなか開発の中でとれないんです。なので、今後も作品としては多くならないと思います。私は昔からジュヴナイル作品が好きで、小説を読んだり、映画を見たりしていて興味があったのでよかったです。
――土台となる知識が、しっかりしていたんですね。
金沢:今井さんは知識の引き出しがあるだけじゃなくて、ちゃんとオリジナリティを加えていますしね。
今井:作品として出すからには、そこには作品オリジナルのものがなければいけません。だから風水、密教、陰陽道という要素を活用したうえで、『東京魔人學園』ならではの解釈を出す必要があります。それが、他の作品とそのまま同じというのはゲームとしてダメですからね。
その考えは、『魔都紅色幽撃隊』などでも同じです。まだ詳しくは言えませんが、『魔都紅色幽撃隊』ではテーマとしている《霊》について、独自の解釈をしっかりと描いています。そこはファンタジーではなく、そういう見方もあると納得してもらえるのではないでしょうか。
――確かにゲームをプレイしていて、風水や陰陽道など勉強になる部分も多いです。
今井:ゲーム中にでてくる用語解説は、徹底してやりました。作中に「知っている」「知らない」という選択肢も入れて、知っていたらスルーできるし、知らなければ絵を入れて解説しています。どういうものかわからないと、おもしろくないですから。これは他の作品でも徹底しています。
▲プレイヤーの知的好奇心を刺激するイベントや、世界観設定が豊富に用意されている。(画面写真はDS『東京魔人學園剣風帖』) |
クリエイターの仕事は、プレイヤーに未知の体験をさせてあげることだと思っています。見たことがないものを見せ、体験したことがないことを体験させるのが我々の仕事。『東京魔人學園』のさまざまなエッセンスもそうです。見たことがないけど、こんな感じなのかなと疑似体験できるような作品になっています。
『魔都紅色幽撃隊』では幽霊を描いていますが、ホラーではなく、ちゃんとドラマを描こうと思っています。人の生と死はどんなものか、ゴーストはなぜ現れるのかにちゃんと解釈を与えています。ぜひ作品をプレイして、新しい知識を得てもらえたらうれしいですね。
→2作目となる『東京魔人學園外法帖』について聞く(4ページ目へ)
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