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2014年7月9日(水)

『モンハン』10周年記念インタビューで辻本・藤岡両名が無印~『MH4』の裏話を明かす! チャチャの前身は人間のおっさんだった!?

文:kbj

 今年で10周年を迎える『モンスターハンター』シリーズについて、開発の中心であるキーパーソン2人にインタビューを行った。

『モンスターハンター』
『モンスターハンター』 『モンスターハンター』
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『モンスターハンター』 『モンスターハンター』

 2004年3月に、カプコンからPS2用ACT『モンスターハンター』が発売された。その後、シリーズタイトルが発売されるたびにセールスを伸ばし、PSP『モンスターハンターポータブル 2nd』ではPSP初となるミリオンセラーを記録し、社会現象となった。その後も売り上げを伸ばし、ゲームだけでなく、さまざまな商品が発売されるモンスター級タイトルとなり、同社を代表するソフトへと成長した。

『モンスターハンター』
▲辻本良三プロデューサー(左)と藤岡要ディレクター(右)。

 お話を伺ったのは、辻本良三プロデューサーと藤岡要ディレクター。発売された各タイトルの開発秘話や思い出などを、シリーズ初期からタイトルに関わってきた2人に聞いている。さらに、10周年を記念したコラボについても語っていただいたのでご覧いただきたい。

『モンスターハンター4G』のインタビューも掲載中!

■オンラインゲームの醍醐味をユーザーと満喫した初代『モンハン』

――『モンスターハンター』10周年おめでとうございます。10年前にお2人は何をされていましたか?

『モンスターハンター』

辻本:僕は、『アウトモデリスタ』の制作が終了して、そこからオンラインの運営の方の仕事をしていたので、初代『モンスターハンター』の時も、サーバーが飛ばないかドキドキしていましたね(笑)。落ちたらすぐに電話がかかってくるんですよ。

藤岡:発売された時は、自分たちでもつないで遊んでいたよね?

辻本:夜10時か11時になったら、家からオンラインで集まるスタイルでした(笑)。

――開発の中でもテストプレイをしていると思うのですが、帰宅されてからもプライベートで遊ばれていたんですね。

『モンスターハンター』

藤岡:やっていましたね。皆がやっているので「一緒にやりましょうよ」という空気がありました。「実は自分もやっています」みたいな感じで、社内でも普段はあまり会わない人ともやっていたことがあります(笑)。

 発売日は、皆でオンラインを見ていましたね。当然、ユーザーにとっても、『モンスターハンター』というゲームは右も左もわからない状態だったので、その“ワラワラ感”がすごい楽しかったです。「どこにいったらいいんだろう?」みたいに、裸のハンターがウロウロしていて(笑)。オンラインゲームの発売直後にある“お祭り感”みたいな雰囲気が、印象的でよかったですね。

辻本:“無印”と呼ばれている初代『モンスターハンター』は、最近のシリーズタイトルほど親切ではないんですね。多少不親切でも「ユーザー同士の情報交換で覚えていってもらおう」と当時は考えていたようで、「今、何かできます」というアイコンもほとんど出なかったんですよ。

『モンスターハンター』

藤岡:どこで何をしたらいいのか、手探り状態でした。開発メンバーは少し知っていて、ユーザーさんよりも少し進んでいる状態だったので、“教官キャラ”みたいになっていました。周りで裸の人たちが「何をすればいいんですか!?」ってついてきて、「ここを探れ!」とワサワサやると他のハンターが「わー! 何か出た!」って(笑)。ランポスを皆で一生懸命狩っているところを後ろから見て「よしよし!!」みたいなポジション。次の日に「ちょっと優越感に浸っていました」と言っていましたね(笑)。

辻本:結構わざとらしいこともしましたね。イャンクックの素材(怪鳥の鱗)がとれる場所で「あっ、なんかとれました!」とチャットで発言して、「ここ、何かあるみたいですよ!」って教えたり(笑)。

藤岡:プライベートでは自分たちの立場を隠しつつ、普通に遊んでいました。当時のことは、いまだに鮮明に覚えています。

――2004年に『モンスターハンター』が発売されました。10年間、ユーザーさんから支持されてきた要因はどこにあると思いますか?

『モンスターハンター』

辻本:いろいろな要因があると思うのですが、要素を絞るとしたら“アクション”と“コミュニケーション”の2つだと思います。今でも『モンスターハンター』シリーズを作る時の企画書にも、そこは絶対に出てきます。「アクションとコミュニケーションの進化はどうするのか?」とか。

藤岡:アクションゲームとして楽しんでもらう部分は、捨てたらダメだろうと思っています。遊んでいただいた時に「『モンハン』っぽいな」と思ってもらわないといけないですし、その“手触り感”は絶対に崩してはいけない。

 もう1つは、人と一緒に遊んだり、モノを交換したり、ネットワークでつながったり、いろいろな人たちのいろいろなやり方でつながれること。コミュニケーションツールという、2つの大きな顔がありますね。

――開発するうえでも、そこをずっと意識しつつ作り続けているんですね。

藤岡:そうですね。10年間ずっとそれはあって……。要素が増えたり、変化したりしていますが、つねに大事に思っているところです。

 他に、ボク個人として意識しているのは、『モンスターハンター』という世界観をいかに浸透させていくか、ということです。ゲーム内での描き方は当たり前ですが、コラボグッズやイベントなどのいろいろな展開においても、しっかり「『モンハン』っぽいな」と思ってもらえる世界観の作り方はつねに意識しています。そうすることで、ユーザーの皆さんにも伝わりやすいのかなと思っています。

■ゲームバランスにも影響されたサウンド演出

――先日、『電撃PlayStation』に掲載されたインタビューで、「開発初期にお2人がぶつかりあうことが結構あった」とありましたが、実際にはどのようなことがあったのでしょうか?

『モンスターハンター』

藤岡:一緒に開発で働いているけど、年代はボクのほうが上だし、入社のタイミングもボクのほうが先。さらにひと足先にボクがディレクターになっているので、辻本はちょっと気を使っていたんだろうな、と思うんですよ。

 でもボクがプロデューサーに求めていたものは気を使ってもらうことではなく、プロデューサーとしていろいろなことをちゃんと決めていってほしかったんです。そう思って接していたんですが、変に気を使っているようなので「そこはやめて」と言った覚えはあります。

 今は、開発にもいろいろと相談やオーダーをしてきてくれます。そうなってからはあんまりぶつからないですよ。多分最初のころはプロデューサーとディレクターの関係がお互いによくわかっていなくて、手探りな感じがあったんで何度かぶつかったんだと思います(笑)。

辻本:僕もシリーズの途中からプロデューサーをさせてもらっているので、初めはどこか気を使っていた部分があったんでしょうね。ある時から自分のスタイルでやろうと思ってからはあまり気を使わなくなりましたが(笑)。

――なるほど。ちなみに開発初期にメンバー内ではどのような意見が出ていましたか?

『モンスターハンター』

藤岡:そうですね……説明しにくいんですが「自分たちがおもしろいと思える要素があるな」という自信を持ちながら作っていた印象がありますね。ただ、当時のカプコンとしてもあまりないスタイルのゲームだったので、いろいろと言われました。言い方は悪いですけど、モンスターは躊躇なくハンターを襲ってくるじゃないですか? 当時はオトモアイルーもいなかったので、モンスターのターゲットはすべてプレイヤーに向いていて、シングルで遊ぶとハードルの高さがすごかったんですよ。

 それでも「回復アイテムがあるし、ポジション取りをちゃんとすれば立ち回れて、狩猟できればすごく楽しいゲームだと感じてもらえる!」という変な自信がありました。ただ、それが伝わりきるまでは「強すぎてどうにもならん!」みたいなことをよく言われましたね(苦笑)。

辻本:いまだに昔のことを覚えていらっしゃる人も多いですよね。

藤岡:イベントなどでは言われます。あとは、2人、3人が集まって遊んだ時の楽しさは絶対にあると考えていました。作ることにも時間をかけましたが、おもしろさを伝えていくことにも時間をかけた記憶があります。東京ゲームショウでスタッフとして張り付いてユーザーの方々にレクチャーしたり、自分たちでイベントのポップや操作説明書を作って持っていったり……そんなことばかりをやっていました。

――PS2の右スティックで攻撃を行うゲームはあまりないと思うのですが、この攻撃方法を採用した意図を改めて教えてください。

『モンスターハンター』

藤岡:さわった時に直観的な操作感のゲームにしたいということがありました。プレイステーション2のコントローラは左右に2本のアナログスティックがあるので、ボタンを単純に押すよりもスティックを動かした方が、斬った感じや武器を動かしている感じを擬似的に感じられて、独特なものにできるだろうと。

 当時は「いい操作ができた」と思っていたのですが、携帯ハードで出すことになった際に、その攻撃方法をずっと採用していくわけにはいかなかったので、PSPに最適な操作を用意しました。今でも「あの操作方法が好き」と言ってくださるユーザーもいるんですが、古きよきものになりつつありますね。

――ラオシャンロン討伐の最後に『英雄の証』が流れますが、あれは最初から「ここで流そう」と考えられていたのでしょうか?

藤岡:サウンドメンバーから「こういう演出はどうでしょう?」と提案がありました。あのクエストは、ラオシャンロンがどんどん迫ってきて、「ここが俺たちの最後の砦だ!」という緊張感があります。当時のゲームバランスは、討伐できるかできないか、かなりギリギリの難易度にしていたんですね。撃退してクリアするバランスだったのですが、「実はこのモンスター、討伐できるんじゃないの?」という雰囲気を出したかったんです。

――「隣の町のアイツは、ラオシャンロンを討伐したらしいぜ?」みたいな噂話みたいな感じでしょうか?

藤岡:そうです(笑)。そんな感じでユーザー間で広がる噂になってほしかったんです。絶対に撃退しかできないバランスではなくて、うまくやれば討伐もできる。そこの伸び代を消さないでおこうと意識していました。

 撃龍槍を当てた時に曲がバンと変わって「もう少しでいけそう!」みたいな感じも出ますし、自分たちもゾクッとするじゃないですか? 曲もすごくハマったので採用しました。最近のタイトルでも、手法としてよく採用させていただいてます。

――この10年の間で開発内で変わったことはなんですか?

『モンスターハンター』

藤岡:当たり前ですが、扱う物量が圧倒的に増えました。防具の種類などだけではなく、『モンスターハンター』はシリーズを通して、据え置きハード、携帯ハード、オンライン対応、すれちがい通信など、いろいろな要素がどんどん増えていっています。大事な要素なのでどれも削れないうえに、それぞれをしっかり作らないといけません。そうすると、結果として作るべき要素がどんどん増えていくんです。

 無印当初のプランナーは6人くらいでしたが、今では20人以上います。考えるだけではなく、管理しなくてはいけない立場の人もすごく増えました。当初の6人では、全然作れないほどです。そういう意味では、規模が本当に変わりましたね。いろいろなコラボのお話をいただくことも比べ物にならないため、資料だしやチェック作業もすごく増えています。

辻本:ゲーム開発に限らず、宣伝やグッズ開発などこのブランドにかかわる人は本当に増えました。昔は、少しでもユーザーを増やしたい一心でゲーム開発やさまざまな展開をしていましたが、みんなで力を合わせてまだまだ頑張っていきたいです。

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藤岡:いろいろな人に『モンスターハンター』を覚えてほしいと、狭いスペースで体験会をやってみたり、学校のような場所をお借りして夏期講習みたいにやってみたりとか。少しずつイベントを拡張していって「最終的には大きなお祭りみたいなことをやりたいよね!」とずーっと言っていました。そんな思いがありつつも、「そんなことをいつやれるのだろう?」という話を長い間し続けて、ようやく1回目の“モンスターハンターフェスタ”をやれたんです。

――『モンスターハンターポータブル 2nd』の時ですね。

辻本:我々としても、そこまで大きいイベントをやったのは初めてで、すごく大変だったんです。でもユーザーからたくさんの反響を得られて「やっぱりこういうイベントは“いいもの”。ユーザーの方々がちゃんと受け止めてくれるならやるべきだ」と思うようになりました。その後は、定期的にフェスタもやれるようにもなりましたし、1つのタイトルであんなことをやれることは、なかなかないと思っています。その反面、いろいろな意味での規模感が大きくなったというか、やらなくてはいけないことが本当に増えてきたと感じていますね。

■世界観を広げた『G』、手軽にマルチプレイを楽しめた『ポータブル』

――無印の人気を受けて『モンスターハンターG』が発売されました。ここでスキルシステムが変更され、モンスターの亜種が増えました。武器種では双剣が追加されていますね。

『モンスターハンター』

藤岡:双剣は、海外版を作る時に増やそうとした武器で、「もっと攻撃に特化した武器種を作ろう!」というコンセプトでした。最初は片手剣の派生で双剣を作ったんですよね。武器屋でも当時は片手剣から派生させていたのではないでしょうか?

――そう記憶しています。

藤岡:『モンハンG』開発時には、無印を遊びこんでくれている人たちに感謝をしながら、自分たちで“もう一声”の遊びを提案して作ろうというコンセプトがありました。どうやって、もっとやり込みがいを出すか、もっと楽しんでもらえるかを考えたんです。

 この時に初めてG級を用意しました。あと、スキルシステムの見直しですね。元々は一定の組み合わせで防具を装備するとスキルが発動するシステムだったので、どうしても防具の組み合わせの幅が少なかったんですね。防御力と属性耐性だけを見るのではなく、スキルを考慮してコーディネイトしていくほうが、選択の幅が増えると考えてシステムの根本を変えました。

『モンスターハンター』

――亜種は、すべてのモンスターに存在するわけではないととらえているのですが、モンスターの生態系が関係しているのでしょうか?

藤岡:すべてかどうかは定かではないですね……まあ、だいたいの種に存在しますけど(笑)。古龍などの強力な存在感を放っている一部のモンスターにはまだ亜種はいませんね。

――続いて『ポータブル』シリーズについてお伺いします。この作品で街中で遊んでいる人が増え、『モンスターハンター』シリーズの存在が知れ渡ったという印象ですが、お2人はどうとらえていますか?

『モンスターハンター』

藤岡:無印、『G』を発売したんですけど、ネットワークに接続する敷居の高さをずっと感じていたんです。特にこの時代、今みたいに簡単に接続できなかった。辻本は約10mのLANケーブルを買ってきて、部屋の端からつないでいたくらいです。

 それに対して、持ち寄ったらすぐにマルチプレイできるのが『ポータブル』シリーズで、その手軽さから人気が出たと分析しました。あとは、ここから一瀬(※一瀬泰範ディレクター)を中心とする『ポータブル』チームが参加してくれたのですが、そこが“携帯機としての『モンハン』”をまとめるのがうまかったので、すごくよかったと思います。もとのよさを生かしつつ、シンプルにまとめるところがうまかった。

辻本:操作方法もガラッと変わっちゃいましたし、携帯機のプレイ環境を考えつつ、さまざまな要素を見直して作り変える必要がありました。さらには、ハードの特性を見極めつつ、アドホック通信でどれくらいのことをやれるのかを研究して……開発メンバーは終わりが見えない中で本当に頑張ってくれました。人と一緒に遊ぶハードルをグッと下げる作り方をしてくれていたタイトルですね。

 ベースになっているのは『モンスターハンターG』ですが、ただの移植ではなく『モンスターハンター』が本来持っているいいところを引き出せた作品になったのがよかったと思っています。

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藤岡:『ポータブル』シリーズでコミュニティができたのがすごく強かったです。それによってユーザーがちょっとずつ増えていってくれました。かなりジワ売れしたタイトルだということも覚えています。

辻本:長期的に売れ続けましたね。1年くらいかけて100万本を達成したことを記憶しています。

■さまざまなことを詰め込みに詰め込んだ『MH2(dos)』

――少し遅れてPS2『モンスターハンター2(dos)』が発売されました。『MH2(dos)』と『モンスターハンターポータブル』は、連動させると双方のソフトに要素が追加されるなど、変化を起こすことができるのがおもしろいと感じました。

『モンスターハンター』

藤岡:『ポータブル』では、イャンガルルガがちょっとだけ出てきました。ジャンボ村にライバルハンターが登場後、『MH2(dos)』と『MHP』を連動させると依頼でイャンガルルガのクエストが受注可能になり、その後はランダムで出てきますね。元々この2タイトルには“ニコイチで仕掛けよう”というプロモーション案があったんです。無印や『G』からの『MH2(dos)』と、新しい携帯機の『ポータブル』を2軸で広げていきましょうというプロジェクトだったので、連動企画を入れました。

――とにかく堅くて突進が強くて、苦労するという印象でした。『MH2(dos)』からは太刀、狩猟笛、ガンランス、弓と、現在も人気の高い武器が追加されました。

辻本:4種類も足したんですよね。すごいボリュームでした!

藤岡:勢いだけでやっていたので、もうムチャクチャでしたよ(笑)。

『モンスターハンター』

――勢いで乗り切れるパワーが、開発側にもあったということですか?

藤岡:この時は向こう見ずな勢いでしたけどね(笑)。「全然やれる」と思っていたけど、後半は「ウワァ!」となっていました。

辻本:シリーズ全体を見ても、いろいろなことが一番追加されているのが『MH2(dos)』ですね。新武器4種類、古龍、昼夜や季節、対戦要素の大闘技会。

藤岡:捕獲したら飼うことができて、他プレイヤーとお互いのモンスターを倒しあう大闘技会! ありましたねぇ。なつかしいなあ。

――大衆酒場に射的がありましたね。

『モンスターハンター』

辻本:ありましたね! そんなふうに、このタイトルは要素がメチャメチャ多いんですよ。

藤岡:このタイトルは“オンラインゲームとしての厚みを出そう”というテーマがあり、長いスパンで遊んでもらえる仕組みを用意しようとしたんです。『モンスターハンター』という世界につかって、狩猟生活を満喫してもらえる雰囲気を用意するために、本当に多くの要素を足しました。

 それが昼夜だったり季節だったり、古龍の襲撃だったりです。イベント的なものを長期で仕込んでいったため、本当にたくさんの要素を用意しました!

『モンスターハンター』

――古龍種という存在は、どのようにして生まれたのですか?

藤岡:元々“飛竜”という形で主役級のモンスターを作っていたのですが、そういうモンスターの骨格は大体ファンタジーの生物がベースとなっています。そういった生物が闊歩(かっぽ)している世界で“飛竜よりも別格の存在を出したい”、ではファンタジーにおけるそういう存在と言えば、やはり“ドラゴン”だろうと。飛竜とは違うドラゴンタイプのモンスターを作りたいということで、試行錯誤して生まれました。

 結果として、体力を引き継ぐ遊びを入れてみたり、街を襲うという仕組みを用意したりしましたね。このように、長い時間をかけながら遊んでもらう仕組みが『MH2(dos)』はすごく強かったんです。

『モンスターハンター』

――多数のコンテンツを用意されたのですね。

藤岡:防具にスキル用のスロットが開くようになったのもこのタイトルからですね。カスタム要素を増やして、色変えできるようにもしました。

辻本:このタイトルは転機だったと思いますよ。いろいろなものをチョコチョコ付け加えたのではなく、一気にドカッと詰め込んでいます。その中には、その後のシリーズで大きく伸びた要素があったりとさまざまな要素の可能性を詰め込まれたタイトルです。

藤岡:ボクとしてもいろいろな意味で転機でしたね。ユーザーさんとコミュニケーションをとることの大切さを一番感じたタイトルで、思い出深いです。

■ユーザーの勢いがすごかった『MHP 2nd』! オトモアイルーが生まれた『MHP 2nd G』

『モンスターハンター』

――『モンスターハンター ポータブル 2nd』について、開発経緯や当時について教えていただけますか?

藤岡:『ポータブル』の勢いを受けて『MHP 2nd』を作ろうという流れになりました。一瀬を中心とするチームが携帯機ということもあり、「ストレートに表現をしていこう」と考えて作っていきましたね。強そうなやつは強そうに描くといったことです。その代表が、メインモンスターのティガレックスですね。まっすぐに突っ込んでくるわかりやすいモンスターで、迫力があることからいまだに人気です。

――当時苦労していた時に、タイトルの担当ライターが「慣れるとカワイイですよ」とコメントしてきたんですが「全然カワイくないよ!」と思いながら挑んでいました。

『モンスターハンター』

辻本:直球のよさが出ているモンスターですよね(笑)。ここからプロデューサーになったので、個人的には思い出深いタイトルです。ロゴもストレートなデザインにしました。

藤岡:無印や『MH2(dos)』は重厚感があり、ちょっと重いロゴデザインなんですけど、『ポータブル』シリーズはライトに寄せてノリを強めている感じにしています。これくらいから、『ポータブル』シリーズと据え置きシリーズの色味をグッと変えていくことを意識しました。

――より多くのユーザーに遊ばれるようになったタイトルですね。

藤岡:喫茶店やカラオケで遊ばれるようになるとは、本当に思ってもみませんでした。不思議な感覚でしたね……電車内とかで皆が遊んでいるのを見るのは。

――ユーザーさんからの意見やプロモーションなどで印象的だったことはありますか?

辻本:先ほども出ましたが、“モンハンフェスタ”をここから行っています。一番印象的なのは最初の福岡会場でしたね。本当に人が来るのか一切わからなかったんですよ。

『モンスターハンター』

藤岡:どれくらいの人が来てくれるか、全然読めない。会場のキャパもどれくらいのものを用意していいかわからないし、地方になればなるほど見えない。そんな状況だったのですが、蓋を開けてみれば、入りきれない会場もあり、立ちっぱなしでいてもらわないといけない会場もありました。ユーザーの方々にはご迷惑をおかけしたのですが、参加してくれた人たちみんなが楽しそうにしてるのが印象的でしたね。「こういうふうにソフトを受け止めてくれるんだな」と一番実感できたのは事実で、自分たちにとっても本当によかったです。

辻本:「福岡でイベントをやってくれてありがとう!」と多くの人に言われましたね。この後、北海道や名古屋でもよく言われました。

――1年後『モンスターハンター ポータブル 2nd G』が発売されました。

『モンスターハンター』

辻本:このタイトルは、シリーズを通して見ても開発期間が短いです……10カ月弱で作ったので一番短いのでは?

藤岡:ホントに短かったですね(笑)。『MHP 2nd』を作った後に、開発スタッフは「やりきった!」となっていて「もうこれ以上は無理です」と言っていました。ところが「『MHP 2nd G』を作るぞ! ネタを探せー!」となり、皆でワーッとアイデアを出して、ドンドン詰め込んでいったタイトルです。

辻本:ここからオトモアイルーが登場しています。

藤岡:そうですね……このくらいの時期から、別のチームが同時並行で『モンスターハンター 3(トライ)』を作っていたんですよ。お互いの企画チームで情報を共有しながらやっていた時に、ハンターに付き添うオトモのアイデアがどちらからも出ていたんですね。

 その時に『ポータブル』チームは迷うことなくアイルーで、『MH3(トライ)』のチームは……なんかね、おっさんだったんですよ(笑)。

――え? チャチャはおっさんだったんですか?

『モンスターハンター』 『モンスターハンター』

藤岡:単なるおっさんではなく、ハンターを引退したおっさんですね。ユーザーが着古した防具を与えて装備させる企画も入っていたと思います。ただ、『ポータブル』チームと打ち合わせした後に、いろいろと鑑みると「確かにおっさんは難しいな……」と感じました。開発チームからも「確かに!」という声があがり、チャチャが生まれたんですよ。

辻本:「おっさんじゃアイルーには勝てない!」という話になって、かわいくなったのがチャチャです。もしそれがなかったら、いまだにおっちゃんがクエストについてきていたかもわからないですよ(笑)。

藤岡:そもそもオトモアイルーの開発経緯としては、“シングルプレイの遊び心地を考え直す”が始まりでした。1人で遊ぶとずっとモンスターに追われるため、休める暇がシビアでしんどいんです。だからモンスターの注意を引きつける“相棒”みたいなキャラが必要だと。

 マルチプレイは自分にモンスターが迫ってきたり、仲間のほうに行ったりするんで、回復のターンを作れる。そういう間を作ってあげるだけで、グッと遊んだ感覚が変わるんですよ。

――それで出てきたのがおっさんの相棒ハンターだったと。

『モンスターハンター』

藤岡:一緒に出した企画が、かたやアイルーでかたやおっさん。チームの性質の違いがすごく出ました(笑)。こういったアプローチは『ポータブル』シリーズがすごく上手にやってくれたと、今でも思っています。

辻本:「おっさんじゃダメだ」と藤岡が言っている表情を、今でも覚えていますよ(笑)。

――オトモアイルー以外にもG級があり、モンスターに新行動が加わり、旧フィールドも収録されていて、開発期間が一番短かったというのが信じられないくらいです。

『モンスターハンター』

藤岡:どんな要素を入れれば喜んでもらえるかなと考えている時に「昔のフィールドを持ってきてはどうか?」というアイデアが出ました。そしてどうせならばということで、全部のフィールドを持ってきたんですね。亜種やG級などなど、とにかくやれるだけのことをやろうと一丸となりました。集中的に取り組んで、スパッ……と気持ちよくは終わらなかったですけどね?(辻本氏を見つつ)

辻本:(しみじみと)ギリギリまで作っていましたね。

藤岡:このタイトルのチームは、本当によく頑張ってくれたと思います。

辻本:過酷でしたね。そんなレベルで作ったタイトルですが、今となれば『MHP 2nd G』が印象深いというユーザーが一番多いんです。

藤岡:『MHP 2nd G』から始めたユーザーも結構多いと思います。やはりオンラインゲームとかコミュニケーション要素の強いゲームは、一番ハマったタイトルを覚えているんです。

――先日からiOSで配信されていますが、今遊ぶと難易度がかなり高いと感じました。

藤岡:骨太も骨太ですよ。モンスターがガンガンきますからね。アプケロスはかなりアグレッシブに来ましたよね。

『モンスターハンター』

辻本:あとは、ファンゴの突進が恐怖だった時期ですね。とにかく突進してくる!

(一同笑)

藤岡:2匹いたら十字砲火されて、阿鼻叫喚(笑)。そういうモンスターは個々に持ち味があるので、絶対に大事ではあるんですけど、そういう遊びを「もうちょっと伝わるように作っていこうね」という考えが『MH3(トライ)』に反映されています。イチから仕組みを見直して、いろいろな要素を見ながら考え直しました。モンスターの群れであれば、群れの中で抑制されているものを作ったり、生態系を見直したり……『MH3(トライ)』ではそこを重点的にやりました。

――『MHP 2nd G』について話を戻します。他に何か思い出はありますか?

辻本:クイーンランゴスタが出たのは『MHP 2nd G』ですよね?

『モンスターハンター』

藤岡:そうですね。おしりが……いろいろと……。

辻本:順番にいろいろな情報を公開していくんですが、一瀬が「新モンスターがまだ残っていますよ」と言って出してきたのが、クイーンランゴスタでした。これどうやって発表するかなって、周りがざわつきましたね。「そこまでインパクトがないと思うけど、新モンスターなのでどうやって発表しようかな?」みたいな話をした覚えがあります。

藤岡:実際に見てみたら、でかいランゴスタはインパクトがあるんですけどね(笑)。

■セットで考えていたWii版『G』と『MH3(トライ)』――スラッシュアックスは辻本さんのオーダーで誕生!?

――続いて『G』のWii移植版がリリースされました。

『モンスターハンター』

藤岡:Wiiで『MH3(トライ)』の時には、インフラの調査や整備をする必要もあったんです。ただ、いきなり『MH3(トライ)』で全部をやるのは難しいので、しっかり遊べるようにシステムを多少作り直しつつ、過去作『G』をWiiに移植しました。

 『MH3(トライ)』にうまくスライドしてもらえるような施策として、いろいろと考えてやりました。ネットワークに対しての準備もそうですし、『MH3(トライ)』体験版を入れていたこともそうです。クラシックコントローラ同梱版もその1つでした。

辻本:操作タイプはクラシックコントローラ専用で、昔懐かしのスティックを使った操作タイプも遊べたんですよ。

藤岡:ああ、ガチャガチャね。懐かしいですね。

『モンスターハンター』

辻本:懐かしのスティック操作、いいですよね。単純な移植ではなくて、今風に武器やシステムの調整とかも加えていました。あと、テストを兼ねたネットワーク部分がすごくよくできていて、本当に安定してましたね。

藤岡:そういう土台を『MHG』が作ってくれたので、『MH3(トライ)』は滑り出しが楽でした。

――捕食、水中要素など、『MH3(トライ)』もいろいろな要素が加わった作品ではないでしょうか?

藤岡:そうですね。なにか目線が変わるフィールドを必ず用意したいと思っていたんですね。単純に「水中へジャブンと入りたいよね!」みたいなところから始まった要素なんですが、入れる以上はアクションできないといけない。それでありつつ『モンハン』らしくできるかを検証しながらの開発でした。

――新たに水中という場所を構築する際に、どんなことを意識しましたか?

『モンスターハンター』 『モンスターハンター』

藤岡:水中を作ることでモンスターの活動の幅がグッと広がります。それによって、モンスターの生態系をちゃんと作りたいと意気込みました。モンスターをより生き物らしく作る作業とでも言うんですかね。

 モンスターはハンターだけでなく、他のモンスターも意識しているんです。大型モンスターが登場したら小型モンスターはちょっと引くとかです。以前の作品のランゴスタはどこまでも追ってくるんですが、『MH3(トライ)』のブナハブラは自分のエリアを持っていて、それ以上は追ってこないんですね。フィールドに加えて、モンスターもイチから作り直そうとしたのが『MH3(トライ)』です。

――見えないところもかなり細かく調整されているという印象のタイトルでした。

藤岡:実は見た目以上に、根っこの部分がすごく変わっているのが本作なんですね。『MH3(トライ)』以前はモンスターは1匹足すか足さないかで難易度がすごく変わっていた時代で、設定する側も、設置する人も、すごく悩ましい時期でしたが、本作からは、モンスターの性質というところに頭を悩ませるようになりました。

『モンスターハンター』

――あとは『MH2(dos)』以来の新武器・スラッシュアックスが追加されました。

藤岡:いろいろな要素を作り直す必要があったために、『MH3(トライ)』で武器ジャンルを一度絞ったんですけど……やはり『MH3(トライ)』ならではの武器ジャンルを1個、絶対に作りたかったんです。辻本は「変形する武器がほしい」とずっと言っていたので、「ならば何か考えるか」と。

――実は辻本さんのオーダーだったんですね。

辻本:オーダーというほど大げさではなく、気軽に言っているだけですけどね(笑)。

藤岡:“変形”はキャッチーな要素だと思うのですが、「変形してどうするの?」という意見もありました。ただ、変形しながら2つのモードを切り替えつつ遊ぶ新しいスタイルになったので、作ってよかったと思っています。

■温泉が印象的な『MHP 3rd』! 『MH3G』はタイトルが違っていた!?

『モンスターハンター』

――次は『MHP 3rd』ですね。かなりテイストが和に寄っているというか、独特なイメージを受けました。

藤岡:『ポータブル』シリーズとして、どう個性を出すかという点をもっとも煮詰めたタイトルです。

辻本:世界観としてはかなり独自なものですが、どちらかと言えば本作はすごくストレートな作りになっています。和のテーマは『モンハン』シリーズとしては初めてで、ガラッと景色が変わりました。

 ただ、『モンハン』に見えないかもしれない、といった懸念もありました。ただ、そこは『ポータブル』開発チームの一瀬らがちゃんと整理してくれました。今となってはすごくなじんでいるんですが、シリーズの中で一番“村の色が濃い”ですね。

――村だけでなくフィールドも印象的でしたね。

藤岡:これまでにない色使いなどをしています。さらにグラフィックも前作以上に書き込まれていますし、メインデザイナーも変えてみたりと何気にかなり冒険しているタイトルです。

――3DSで発売された『MH3G』は、ブラキディオスがすごく怖かった印象が強いです。

『モンスターハンター』

藤岡:この時も『MH3(トライ)』の話題と若干似ているんが、元来は「3DSで『MH4』を作りましょう!」という目標があったんですね。ただ、新たなハードで新規タイトルをいきなり作るのはすごくハードルが高い。そのハードの性質がどういうものかを理解している必要があるため、「全部やろうとすると『MH4』はすごく時間がかかる」ので何か考えようと話してたんです。

 『MH3(トライ)』は“G”がなかったこともあり、作ることを提案したのですが、最初は移植作にする予定でした。『MH3(トライ)』を3DSに移植して、3DSがどういうものかを理解したうえで、それと平行して『MH4』を作っていくという流れだったんです。とはいえいまさら『MH3(トライ)』を出すのであれば、プラスオンの要素が欲しいじゃないですか?

――もちろん、用意してもらえるならば欲しいですね。

藤岡:そうなると、ネタを出さないといけません。それでいろいろとネタを入れていったら「こんだけ新要素があるんだったら“G”でいいんじゃない?」みたいな話になりました。ただ、辻本は『MH3G』にするかどうかで結構悩んでいましたね。

『モンスターハンター』

辻本:悩みましたねぇ。Gを付ける基準というか、ユーザーの方に「こんなんGじゃない」と思われないようになっているかをしっかり見極めたかったんです。実は違うタイトルをすでにつけていて、ロゴもあったんですよ。

 藤岡を始め、開発チームは本当にいろいろな要素を足して作っていたんです。最終的にタイトルをどうするかで悩んだ時に、出てくるモンスターや搭載されているシステムなど、新要素をリストで全部出してもらったんですよ。それを見て“G”としてリリースできると思ったので、「『MH3G』で行こう」と判断しました。

藤岡:やっぱり“G”のハードルはすごく高いので、自分たちも満足いくものを足して、ユーザーさんにしっかりやり込んでもらえる要素を用意したうえで“G”のタイトルをつけたいんですよ。

 「MH3Gにします!」と言い出したのはロゴができた後だったんですね(笑)。「ロゴが届いているけどタイトルを変えるの?」と聞いたら、「『MH3G』にします!」と言うので開発メンバーも腹をくくりました。

――最終的には、タイトルに恥じないものになったと。

『モンスターハンター』

藤岡:あれも足そう、これも足そう、メインモンスターも新しいものを用意しようなど、やっぱり欲は出ちゃいましたね(笑)。先ほども言われていたブラキディオスですが、獣竜種でメインモンスターがいなかったので作ったんですよ。そしたら、思いの他ガチで恐ろしいモンスターに仕上がってしまいました(笑)。でも、いいキャラクターになったかなと思います。

辻本:ガチボクサーですね。とにかく正面からぶつかってくるタイプ。と思ったらサイドステップで回り込んできたりと(笑)。

――『MH4』でもブラキディオスが出てくるクエストは、ちょっと心の準備が必要ですね。

辻本:緊張感がありますからね。

――『MH3G』の新要素もなかなかのボリュームだったのではないでしょうか?

藤岡:『MH3(トライ)』では全部の武器種を入れることができなかったので、このタイミングですべて入れました。作業量的にはかなりのボリュームがあったのですが、スタッフのやる気に押されてなんとかやりきれました。

『モンスターハンター』

――爆破によって属性が1つ増えましたが、このタイミングで入れようと考えられていたのでしょうか?

藤岡:しばらく変わらなかったので、何か増やしたかったんです。『MH3(トライ)』の時に“属性やられ”は作ったものの、新しい属性が出てこないと武器や装備の選択肢が増えにくい。何を出すのかを考慮した際に、時限式で爆破するのは、アイデアとしておもしろそうだと感じたんです。モンスター的にも、単純に前のめりな武闘派を作ろうとしていたんですけど、フックになる属性を入れることで、より個性が出ると判断して採用しました。

■地形に対応するためにもターゲットカメラは欲しかった

『モンスターハンター』

辻本:『MH3G』には、『MH4』の前に我々もユーザーもシステムに慣れるというコンセプトと目標がありました。『MH3G』でターゲットカメラが確立されていたので、『MH4』でもすんなり操作できたと思います。

藤岡:元々カメラを巧みに動かすのは、そこありきで難易度設計をしていたわけではないんですよ。なので、そこはシンプルな仕組みにしてもいいんじゃないかと話し合いました。

――カメラを操作する難易度は、アクションの難易度とは別だと。

藤岡:下画面の右側に仮想の十字ボタンを置いてカメラを操作できるようにすることも当初からあがっていたのですが、ワンボタンで大型モンスターにカメラが向いてくれるのが一番遊びやすいだろうと。

 そういう仕組みを一度積んでみたところ、カメラに対する操作量が圧倒的に減り、アクションに集中しやすかったんですね。『MH4』で地形を変えることは最初から決めていて、プロトタイプを作っている時に問題となったのはカメラの操作量だったんです。

――確かに、高低差があるとカメラを今まで以上に動かす印象があります。

『モンスターハンター』

藤岡:上下左右、かなりカメラを動かさないとモンスターを追いかけられなかったため、「この操作量はよくない」と議題になっていたんです。そこで、ターゲットカメラのアイデアを『MH3G』で検証しつつ、『MH4』に生かした流れです。

――『MH4』は、新要素が大量に入っているうえにボリュームがすごいという印象を遊んでいて受けました。

藤岡:先ほど話したように、ベースの部分は『MH3G』でだいぶ形づくられていました。そこで、これまでに自分たちが経験したことや思っていること、ユーザーを取り巻く期待をできるだけクリアしようとしました。よく言っていましたが“引き算をしない”ということです。新しい要素を足したため「だからこれはなくそうね」というのはナシ。基本的に「足そう!」と企画書を書いて、そこに向かって進んでいった感じです。

――高低差からのジャンプ攻撃や乗り状態など、アクションにも変化が見られましたね。

藤岡:シリーズをずっとやっていると、アクションゲームとして見直さなきゃいけないところも増えてきます。自分たちで作っているゲームなんで、あえて言いますけど“ちょっと古臭く感じてくる”んですよ。そうならないためにも、アクションを根底から見直して変えたいという想いがありました。

――高低差からのジャンプを入れたのも、そういう意識からですか?

『モンスターハンター』

藤岡:最初は、単純にこれまでにないようないろいろな地形を作りたかったんです。過去のシリーズはどちらかと言うと、フィールドを平面に作らないとモンスターやプレイヤーを対応させられなかったんですよ。ただ、それを続けていると幅が出ないこともあって、とにかくいろいろな地形を登場させられるようにしようと考えました。モンスターやプレイヤーをその地形にしっかり対応させることを念頭に開発しているうちに、段差からジャンプするアクションが加わり、ジャンプ中に攻撃を繰り出すシステムが生まれ、その結果としてモンスターへの乗り状態という要素が生まれたのです。

――先ほど辻本さんは「『MH2(dos)』が転機」とコメントされていましたが、シリーズ全体として印象的だったタイトルはどれですか?

辻本:印象的だったのは『MH4』ですね。理由は1つで、ここから先の広がりに対して、何かの“種”を植えられたタイトルだと思うからです。ここからどうなっていくかはわかりませんが、10年、15年が過ぎた時「『4』がターニングポイントになっています」と言うと思います。もちろんタイトルそれぞれにいろいろな要素はあるのですが、今は『MH4』です。あと、『MHP 2nd G』も印象深いです。本当によくあの期間でできたなと思います。スタッフに感謝です。

藤岡:同じように『MH4』には思うことがたくさんあり、やったことの手ごたえも感じました。たくさんの方に協力してもらって、思い出深いタイトルなんですけど……一番印象的と言ったら、『MH2(dos)』なんですよね。

『モンスターハンター』

――それはなぜですか?

藤岡:やりたいことを、どれだけ詰め込むか、自分たちができるかできないかをあまり省みずに開発していたタイトルだからです。それによってたくさんの失敗があったことが、ボクの中で印象深いです。いろいろなユーザーの方からいいところ、悪いところ、たくさんの意見をもらったんですね。いまだに好きと言ってくれる人がいて、それもすごくうれしいです。

 自分たちの中でも、やりきれなかった部分を一番感じたタイトルですし、「あの時に自分たちが思ったことを、しっかり作り直したい!」ということをずっと思い続けているタイトルです。ユーザーの声に、ちゃんと考えて物を作らなきゃダメという、当たり前のことを一番意識させられたこともあって、ボクにとって一番思い出深いタイトルですね。

■お祭りらしさを感じられる豪華なコラボを展開

――10周年ということで、“モンスターハンター展”や“オーケストラコンサート~狩猟音楽祭 2014~』が発表されました。こちらについてご説明いただけますか?

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辻本:“モンスターハンター展”ですが、昔の資料を掘り起こした資料館的なイベントは、実は初めてなんです。「このタイミングだから出してもいいか」と考えて出している貴重なものがたくさんあります。反面、「当時のものなんで許してください」というものもあるんですけど(笑)。そういうところも会場で感じてもらって楽しんでほしいです。ゲーム開発ってよくわからなくて、「何をやっているのですか?」とか「どうやってできるのか謎です」ということをよく聞きます。

 資料と言えるかラクガキと言えるかわからないですけど、開発者が考えていることが資料のメモに残っていることもあります。“モンスターハンター展”はそういうものを見ているだけでも、かなりおもしろいと思います。以後お披露目する機会はないと思うので、ぜひこの機会に見てください!

――今後も10周年記念イベントは予定されているのですか?

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辻本:今のところはないです。何か思いつくかもしれませんが(笑)。

藤岡:発表されているものは、夏に集中していますね。渋温泉もグランドフィナーレを迎え、盆踊りならぬ“モン踊り大会”をするみたいです。

辻本バイクメーカーのドゥカティさんとのコラボはすごいですよ。“レウス”をモチーフにしていて、“レウスの上に乗っているようなイメージ”というコンセプトになっています。鱗のような模様をハンドペイントで塗装してもらっていて、お値段は約180万円です。

『モンスターハンター』 『モンスターハンター』

藤岡『モンスターハンター × ESP 炎剣リオレウスギター』の230万円を聞いているから安く感じますが、すごい値段ですよね(笑)。バイクのデザインを監修するのはなかなかできませんし、当然初めての体験でしたね。僕自身に基準がまったくない監修物だったのですごく勉強になりました。カッコいいデザインになったと思いますよ。

――ちなみに、開発内で買われる方はいらっしゃるんでしょうか?

辻本:どうでしょうね? ちょっとわからないですね。ただ、そういうおもしろいこと、驚くことも10周年ならではだと思います。

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藤岡:ボクはバイクとか乗り物には、本来あんまり詳しくなかったんですが、監修してみてバイクってカッコいいと思いました。近頃のデザインは、シルエットを含めてすごく綺麗に作ってあるので感動しました。

辻本:藤岡が買うと言っています。

藤岡:いやいや、そもそもバイクの免許を持っていないです!(笑)

――この10年を踏まえて、今後の『モンスターハンター』はどうなっていくと思いますか? 展望などあればお願いします。

辻本:どうなっていくかは……わからないですね(笑)。20周年を迎えたい気持ちが出てきますし、その前に15周年をしっかりと迎えたいですね。あとは、何より『モンスターハンター』というゲームがしっかり出ること。それから『モンスターハンター』を使ったイベントを始め、ユーザーの方々が触れ合える機会を多くしていくことは続けていきます。それができないと、20周年などは迎えられないと思うので。

 ゲームとしては、マルチ協力アクションとコミュニケーションという大きなコンセプトは変えずに作っていくと思います。ネットワークやアドホックなどの差はあれど、マルチプレイの楽しさやコンセプトはたぶん変わらないですね。「じゃあどうなるの?」と聞かれたら「1つ1つやってみなきゃわからない」と答えることになるのですが(笑)。正直10年前には『4』なんて想像もしていませんでしたしね。

藤岡:ユーザーのいろいろな意見を感じながらずっと作ってきたタイトルなので、この先どう変化していくかは、皆さんの遊び方、受け止め方で変わっていくものだと思っています。ただ、当然自分たちは「『モンスターハンター』はこうなってほしい」という夢を描きながらやっているので、“いい意味での裏切り”を持ったタイトルを作っていけるのではないかなと思っています。『モンスターハンター』というキーワードが広がってほしいと思っているので、この先も世界が広がっていくのを感じられるタイトルになってほしいと願っています。

――ありがとうございました。引き続き、『モンスターハンター4G』のインタビューをお願いします。

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データ

▼『モンスターハンター4』ダウンロード版
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:ACT
■配信日:2013年9月14日
■価格:5,990円(税込)

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