『FFXIV』で頭装備&メガネ同時装着の可能性!? 新企画を生むリードアイテムデザイナー林洋介氏インタビュー!

電撃PlayStation
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 オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)』の魅力をお伝えすべく、タイムリーな話題を追いかけながら開発者の方々の声をお届けするインタビュー連載企画。最終回をお届けいたします。

 『FFXIV』のアイテムと言えば、おしゃれ装備も含めた装備品や食事・薬などの消耗品、ミニオンやマウント、ギャザラーの採集品やクラフターの中間素材、演技教本などなどじつに多種多彩なものが存在しています。ゲーム全体で見るとどうしても物語やバトルに注目が集まりますが、我々の冒険はじつはこうした“アイテム”を中心に回っており、これがあるから日々の遊びが成り立っているのだというのは、プレイヤーのみなさんもきっと認識しておられることでしょう。

 というわけで今回は、そんな“アイテム”ができるまでのお話を、リードアイテムデザイナーの林洋介氏にインタビュー! パッチ5.2で実装された“傘”などなどエオルゼアの生活を豊かにするさまざまな企画も立案しているという林氏のお仕事にも迫る内容となっていますので、ぜひぜひ最後までご覧ください。

※本インタビューは、時節柄を考慮しビデオ通話でのオンラインインタビューにてご対応いただきました。

複数のチームとの連携が重要!
アイテム班のお仕事に迫る

――まずはこれまで意外とお聞きする機会のなかった“アイテムができるまで”のお話ができればと思います。まずはリードアイテムデザイナーである林さんの、普段のお仕事について教えてください!

林洋介氏(以下、敬称略):僕の仕事は、大きく分けると2つあります。1つは、肩書きのとおりアイテムを作る仕事。もう1つは、傘や楽器演奏、髪型変更、染色、チョコボ育成、エターナルバンド、“牙狼”“妖怪ウォッチ”などの他IPとのコラボといった、新規企画の管理です。これに加えて、じつは電撃さんも含めた各種メディアさん向け資料に使われている装備品や画像のCG撮影も僕がやっています。

――そうだったんですね! 意外なところでお世話になっていました(笑)。では続いて、プレイヤーさんにとって最も身近なアイテムと言える“装備品”ができるまでの基本的な流れをお聞きしたいです。

林:これまでの拡張パッケージには、パッチX.0~X.5までの6つのアップデートがありました。FFXIV開発チームではまず、吉田(吉田直樹氏。プロデューサー兼ディレクター)が“X.0~X.5それぞれのアップデートで何が実装されるか”という大まかな全体スケジュールを、事前に決めます。

 その全体スケジュールを元に、僕たちアイテム班では、レイドや蛮神戦といったメインとなるコンテンツで報酬となる装備品がどれぐらい必要なのかを洗い出します。これをバトルシステム班が武器/防具/アクセサリといった装備の種別ごとにアイテムレベルを決めて一覧化します。さらに武器や防具の新規グラフィックは作るのには約6カ月かかるので、デザイナーへの発注を2パッチほど前から準備していくことになります。

――『FFXIV』は種族も多いですし、緻密なモデリングやSEの付与、各種項目の設定なども含めるとそれぐらいの時間が必要なんですね。

林:グラフィックの準備が整って実装時期が近づいたら、実際にリリースするアイテムデータとして組み上げます。1つのアイテムにつき約70種類の項目があるのですが、これを1パッチあたり約300~600個ほど用意しているんですよ(笑)。そうやって作ったアイテムを、ダンジョンなどの宝箱やショップ・交換のリスト、クエスト報酬に組み込みます。この排出先の決定までを1つの流れとして、管理している感じですね。

――ちなみに、前回のインタビューはアート班の茂木雄介さん(リードコンセプトアーティスト)にさせていただいたのですが、その際に“装備品は一旦アート化してから3Dモデルを作る”というお話をされていました。その一連の流れも、林さんが管理されているのでしょうか?

林:まず何を作るかが決まったら、そのコンセプトを僕が茂木や生江(生江亜由美氏。キャラクターコンセプトアーティスト)に伝えて、彼らがアートにします。その後、アートがキャラクター班に渡って3Dモデル化する感じですね。

――グラフィックにまつわる一連の流れの中で林さんが気をつけているところは、どういったところですか?

林:アラガントームストーン交換品のような比較的たくさんの光の戦士が目にする装備品は、あまりクセの強くない見た目のものを心がけています。逆に、レイドの装備品は、そのレイドの雰囲気に合いつつ、それを見たプレイヤーがほしくなるような見た目になるよう意識しています。また、討伐・討滅戦の報酬武器の場合、各蛮神のイメージを強く反映させて作るようにしています。

――装備品の染色部位もアイテム班が決定するのでしょうか?

林:いえ、そこに僕はタッチしておらず、キャラクター班とアート班が話し合って決めています。

――装備品の見た目について、レイド報酬などのカッコイイものから、イシュガルド復興の作業着やエプロンなど普段着に近いものまで、非常にバリエーションが豊かです。そういった意味で、次に実装するアイテムの見た目的なアイデアはどういったところから湧いてくるのでしょうか?

林:おしゃれ装備品に関して言えば、茂木や生江といったアート班からアイデアをもらうことが多いです。アイテム班から提案することや、プレイヤーの方からよせられたアイデアを参考に実装する場合もあります。

――おしゃれ装備品といえば、“YoRHa: Dark Apocalypse”の2B装備は、非常に人気が高いですね。

林:やはりコラボをするとなれば「あれを入れないわけにはいかないだろう」と。また、出し惜しみせずに1発目で追加するのが『FFXIV』らしいかなということで、実装しています。もちろん、ヨコオタロウさん(株式会社ブッコロ 代表取締役社長。『NieR』『ドラッグオンドラグーン』シリーズなどの生みの親)の快諾をいただいたうえで実装しました(笑)。

――モデリングも相当工夫されたのでは?

林:上手く再現するという部分と『FFXIV』のレギュレーションに合わせるという部分で、デザイナーががんばってくれました。

――アイテムに関連したプレイヤーさんからの声で、林さん的に記憶に残っているものはありますか?

林:イベントなどでお会いした方に直接伺ったお話の印象は強いです。例えば『紅蓮編』がリリースされたあとのとあるイベントで「ドードーのマウントがほしい」と言われました。それまで、マウントは基本的に“新しく実装されたモンスターに乗れるようにする”ということを重視して実装していました。ドードー自体は、パッチ2.0から存在するモンスターなので、「なんで、今更ドードーに?」と聞いたら、「古いか新しいかは、プレイヤーにとってはあまり関係ないんです」と言われ、それに「なるほどな」と納得してアメノミハシラの報酬として実装することを決めました。

 あとは、ゴールドソーサーにMGP30,000で交換できる、クロウ・オブ・ビーストという爪だけを染色できる装備品があります。これも、プレイヤーさんから「手装備で爪だけ染色したい」といったお話を受けて実装しました。僕からは絶対に出ないアイデアだったので、とても印象に残りました。

それぞれの専門家のこだわりによって
生まれるアイテムたち

――アイテムには、消耗品やクラフト用素材など、さまざまなカテゴリのものが存在します。これらと装備品とでは、制作の流れも大きく変わってくるように思いますが、いかがでしょう?

林:そうですね、けっこう違います。装備品は“どういうものを準備する必要がある”ということが明確に決まっているので、僕が作業する段階では迷うことはほとんどありません。逆に、消耗品やクラフター用素材といったものは、クラフター専門の担当者がいるので、彼が決めてアイテム班に発注してもらう形になっています。魚や釣り餌、家具や調度品なども、それぞれで釣りやハウジングの担当者がいますよ。

――それぞれで専門家がいらっしゃるんですね。

林:そうですね。その中でミニオンやマウント、エモート、髪形などが僕の担当ということになります。また、例えば装備強化コンテンツで必要になるトークンなどの特殊なアイテムの場合は、そのコンテンツの担当者と話し合って作っていきますね。

――その“報酬系アイテムは、どこで手に入る”というところまで、林さんが決めているのでしょうか?

林:手持ちのリソースのうち、どのコンテンツの報酬とするかというところに関しては、パッチの直前に報酬が必要なコンテンツを並べていって、チームの他のスタッフたちと話し合いながら、各コンテンツに割り振っています。また、“リターン・トゥ・イヴァリース”の報酬にある髪型“ラムザ&アルマ”のように、コンテンツに登場するNPC用のリソースと報酬を兼ねることを最初から決めて作るようなものもあります。

――コラボ髪型といえば、SNSなどを見ていると「“YoRHa: Dark Apocalypse”でも2Bの髪型がほしい」という声を見かけますね。

林:なるほど。それは検討します! 今現在各種コンテンツの報酬として用意している髪型は、以前公式で開催した“髪型デザインコンテスト”の入賞作を優先的に入れていっている形です。

――楽しみです! ちなみに、ひとことでアイテムといっても、それらをいざ実装するとなった際に、やはりそれぞれのカテゴリで実装の優先順位が異なると思いますが、そのあたりはどうやって管理しているのでしょうか?

林:グラフィックリソースという意味では、作ることができる数が決まっているので優先順位はあります。しかし、グラフィックが必要ないアイテムデータは、必要なものを必要なだけ入れるという方針でやっているので、「優先順位が低いから、これは入れないでおこう」みたいなことはやっていませんね。

 ただ、装備品やマウント、家具のような固有のグラフィックと紐づいているアイテムは多ければ多いほどいいと思いますが、それ以外のアイテムはあまり多すぎないほうがいいと個人的には思っています。すでにたくさんのアイテムであふれている感があり、ここから先もどんどん増やしていっていいものだろうかと心配になることがあります。なるべく数を増やさないようにしていたのですが……パッチ5.2でついにアイテム総数が3万を超えてしまいました。個人的には、けっして多いほうがいいと思っているわけではありません。

――パッチ5.2では、ディアデム諸島の改修でアイテムがかなり増えましたね。「こんなに一気に新規アイテムを増やせるんだな」と驚きました。

林:シンプルにすごく増えました。ちなみに、増やしたくないとは言いましたが、システム上はまだまだ潤沢に実装することが可能です。

――どちらかというと、装備品や3Dモデルなどの枠のほうが大変そうですね。

林:そうですね。作業の手間などを度外視すれば、アイテムはデータを足していくだけなので(笑)。先ほども言いましたが、1回のパッチアップデートで実装可能な新規グラフィックの数は決まっているので、そのなかでやりくりしていく感じです。

――3万点ものアイテムがあると、その来歴や元ネタの被りなどをどう管理しているんだろうという疑問も出てくるのですが……。

林:アイテムに限らず地名やモンスター、称号、アチーブメントなどの名前に関しては、織田(織田万里氏。世界設定/メインシナリオライター)を含めた世界設定班が一括して考えています。そこは、彼らがしっかりと管理してくれているので、大丈夫なはずです。

 そういう意味では……みなさんからすると織田は“シナリオや世界設定を決めている人”という印象だと思いますが、我々データ屋からすると“アイテムの名前をくれる人”という感じなんですよ(笑)。

――なるほど!

林:来歴の部分では、たしかにおっしゃるとおりで。武器……とくに刀剣類の名前を付けるのは本当に大変ですし、パッチが進むにつれて、どうしてもネタの在庫的なものが少なくなっていきます。なので、「ここからどうしよう」というところは、まだ僕も考えたくない課題ですね(笑)。

――とくに、ガレマール帝国系のアイテムや技名は、時を追うごとにつらくなっていきそうですね。

林:「いつかは……」という心配はありますが、とはいえまだまだうちの織田なら大丈夫なはずです(笑)。

――そういう意味では、鉱石などのクラフター素材系は大変そうですね。原初世界と第一世界でも名前を変えなければいけないでしょうし。

林:素材系は、いわゆるファンタジーでよくあるものはけっこう使ってきているので、「どうしようかな」というのはありますね。最終的に織田が決めてくれるので、僕が偉そうに言うことではないですが……僕の師匠にあたる先輩プランナーは「プランナーはネタが尽きてからが勝負」と話していました。なので、ネタが尽きてから一生懸命考えたときに、また新しいものができるんじゃないかと、自分を含めた未来の誰かに期待しています。

――尽きたと思ってからさらに何か生み出せるか否かが、その人の力ということですね。……話を戻しまして、さきほどクラフター専門の担当者がいるとお話されていましたが、製作レシピもその方が考えられているのでしょうか?

林:そうですね。基本的には、彼が100%考えています。

――『FFXIV』に実装されている料理も、かなりの数になってきました。料理のアイコンやハウジングに置いた際の見た目がものすごくおいしそうで、毎度驚いています。これは、特別に監修されている方がいらっしゃるのでしょうか?

林:料理はクラフターが作るものなので、これもクラフターの担当者がアイデアを出します。それをアイコン発注という形で僕がまとめて、アート班に渡す流れですね。なので、特別な監修はいませんが、どちらかと言えばクラフター担当のこだわりが強くて。「皿の上にメインディッシュがあって、付け合せは何で、上にこういうソースをかけてください」というような、詳細な指定をしてきます(笑)。

――それはスゴイ! 料理もこれまで数多く実装されてきているので、ネタに困ったりしませんか?

林:いえ、まだ登場していない料理は世界中にたくさんあるので、レパートリー自体は問題ないと思います。どちらかと言えば、『FFXIV』内に存在している素材の組み合わせで、それっぽいレシピを作ることに苦労しているみたいですね。

――なるほど。ギャザラーの未知・伝説系や釣りのヌシなどの特殊な条件も、その専門の方々が考えているのでしょうか。

林:はい。アイテム側では、“これが未知・ヌシである”というデータは持っておらず、ギャザリング側の情報としてそれぞれの担当たちが管理しています。

試行錯誤から生まれた傘システム(仮)と、
その先にある可能性

――以前のプロデューサーレターLIVE(以下、PLL)で、傘の実装にはけっこうな期間を要したという話が出ておりましたが、あらためまして、実装にいたるまでの経緯をお聞きしたいです。

林:傘実装のきっかけはいくつか複合的な要因があります。もともと傘に限らず、プレイヤーは自分が装備している武器なり道具なりを持っていますよね。メディア用の画像を撮影したりしていると、“自分が装備しているもの以外のモノを持たせたい”と思うようになったりすることがありました。これが、きっかけ・その1です。

 それとは別に、以前ミニオンを担当していたプログラマが、ミニオンの仕組みを流用して、傘ではないのですがそれっぽいものをテストで作ったことがあったんです。それをそのまま実装するのは問題が多かったのでプレイヤーのみなさんに公開することはなかったのですが……そのプログラマはそれを置き土産に別のチームに移っていきました。そのときに、「いつか、これが陽の目を見られるように」という約束をしていたんです。その約束が、自分のなかで……終わっていない夏休みの宿題みたいな感じで心に残っていました。それがきっかけ・その2です。

 そういったきっかけがありつつ、何かのイベントでプレイヤーさんから「傘マウントを実装してほしい」という要望が吉田に伝わり、それが決定打となって傘を真剣に検討することになった感じですね。あと、それとは別のイベントで僕自身も傘の要望をもらったことがあって、あきらめないでなんとか実現しようという気持ちになりました。直接プレイヤーさんの声をいただくと、行動の原動力になります。

――そうやって企画がスタートしたんですね。

林:PLLでは、長い時間がかかったという言い方をしてもらい、実際長いことお待たせしてしまったのですが、「365日×3年間ずっと傘ばかり作っていました」ということではなく、メインの仕事の合間に企画書を書いてプログラマなどに相談して、いろいろな助言をもらいつつ動いていた感じです。

 まず、既存の仕組みを使って、手元に傘を表示するにはどうすればいいだろうと考えました。最初に思いついたのは、PLLで吉田が話していたような“傘がメインウェポン”という新規のジョブを作るやり方です。ですが、これは用意しなければいけないリソースが膨大でコストがかかりすぎるため、現実的ではありませんでした。そもそも、傘はおしゃれのために使うものです。この手法では、一緒に着たい装備も限定されてしまうので、傘ジョブ案はわりと早期に立ち消えました。

 その次に検討したのが、某魔女のような傘を持って飛ぶマウントです。ですが、これも問題があって、マウントに乗った段階でプレイヤーキャラクターは、ほぼ動けなくなります。つまり、“傘を持って空を飛ぶ”ことはできるのですが、“傘を持って歩く”ことができないんですよ。現在の仕組みではこの壁を超えることができないので、傘マウント案もけっこう早い段階で候補から切りました。

――なるほど。言われてみると、たしかにマウント騎乗中は自キャラは動けないですね。

林:レルムリボーン(花火の1種で、使用するとシャンパンシャワーを行う)の形式を使ってどうにかできないか、ということも考えました。じつは、この形式だとやりたいことのほとんどが実現できたんです。ただこれは数を量産するには向かないことがわかりまして……。傘を1つだけ作ることは可能ですが、赤い傘、青い傘、番傘など……さまざまな種類を作ることが難しかったため、この形式も見送りました。

 次に考えたのが、エモート“トームストーンを愛でる”の仕組みの流用です。このエモートで表示されるアラガントームストーンの実態はビジュアルエフェクトなのですが、この形で傘を持てないかと思ったんです。しかし、これはビジュアルエフェクトを出し続けることが負荷の問題で限界があり、断念しました。このように、“傘をずっと表示し続ける”という仕組みがどうしても上手くハマるものがなく、長らく頭を悩ませていましたね。

――試行錯誤の連続ですね。

林:そんな状況のなか、傘とは別の企画としてパッチ4.15で楽器演奏を実装しました。このとき、副産物として“演奏中の楽器が常に表示され、それを他プレイヤーが見ることができる”仕組みを作ったんですね。その後に、この仕組みを傘に流用できることが判明して、一気に現実的になったという感じです。

 しかし、傘の場合はこの仕組みを使っても大きく2つの問題点がありました。1つは、雨が降っているときに差しても雨水が傘を貫通してしまうこと。もう1つは、雨に打たれると服が水濡れ表現になるので、それを回避する必要があること。これらを解消することにも、少し手間取りました。

――遊ぶ側からすると“傘だから当たり前”なポイントですが、それを実際に作るとなると、課題が多かったんですね。

林:僕らの作っているタイトルが『FF』じゃなかったらある程度割り切って実装していたかもしれませんが、そこはプログラマ陣が、すごく頑張ってくれました。……今、「傘を実装するために努力しました」という体で話していますが、実際にがんばったのはプログラマとデザイナーで、僕は「やってください」とお願いしただけで。僕は仕様を考えただけなので、本当にえらいのは僕ではなく彼らです(笑)。

――そういった努力の結果として、いろいろな傘のバリエーションが用意できるとのことですが、今後の傘についての展望はありますか?

林:傘自体がバリエーションを持てるように作れたので、種類を増やしていきたいですね。この仕組みの正式なシステム名称が決まっていないので、仮で“傘システム”と呼んでいますが、じつは傘以外のものも表示できるように作っています。さらに、手じゃない部分にもオブジェクトを表示できるかもしれないので、傘システムを使ってミニオンやエモート、マウントに続く、新たな報酬のバリエーションの一つとしてプレイヤーのみなさんに喜んでもらえるような仕組みに育てていくのが、今後の目標です。

――手に持つ以外の活用法というと、例えば頭の上に何かを表示するといったことも可能なのですか?

林:傘の先は、これからシステムを拡張していく部分です。なので、“何ができて、何ができないか”という部分は、これから線引きしていくことになります。

――もしかしたら、プレイヤーからの要望も多い“帽子とは別にメガネを掛ける”も実現できるかもしれなかったり……?

林:言われると思いました(笑)。今言われただけで、5~6個問題点が思いつきますし、まだ確約はできませんが、僕が今目指しているのはそういうところですね。

――おぉ、それが実現するとなれば、グループポーズの撮影などで大いに盛り上がりそうですね! ……マウントやミニオンとの併用の可能性もあるのでしょうか?

林:傘の表示メモリがミニオンやマウントと同じ枠なので、残念ながら現状では不可能です。

――なるほど、ありがとうございます。続きまして、同じく報酬系アイテムとしての位置づけである、ミニオンについてお聞きします。ミニオンにはさまざまなバリエーションがあり、実装のたびにプレイヤー間でも話題に上りますが、ミニオンのアイデアはどういったところから出てくるのでしょうか?

林:最初は、ミニオン同盟のスタッフが作りたいものを勝手に作って、いろんなコンテンツに仕込んでいく感じでした。ですが、最近はチーム内でも市民権を得てきたのか、「新しいコンテンツを作るから、その報酬としてミニオンを用意してほしい」という要望をもらうことも増えてきました。

 あと、なぜかはわかりませんが、Mちゃん(『FFXIV』プロジェクトマネージャー)がやたらとNPCのミニオンをほしがるんですよ。そんな感じで、「誰それがほしがっていた」という理由でミニオンを作ったりします(笑)。また、若いアーティストたちがたくさん入ったのですが、そういう人たちが「これかわいくないですか?」と提案をくれたりしますね。例えば、パッチ5.2でシマエナガというミニオンを実装しましたが、あれも同じような経緯で用意されたものです。そもそも、僕はシマエナガという鳥の存在を知りませんでした(笑)。

――シマエナガ、Twitterを中心に人気だったので「なぜ唐突にFFXIVに!?」と思っていたのですが、そういうことだったんですね(笑)。アイデアの募集は、かなり間口が広いのでしょうか?

林:「ミニオンを作るから、みんなアイデアください!」と開発全体に向かって発信しているわけではないんです。ただ、開発メンバーだけでなくSNSや公式フォーラムで提案をくれたものは、前向きに受け取ろうと思っています。

――林さん的に、作ってみたいミニオンはありますか?

林:青龍で止まっている蛮神系のミニオンは、続きを作ってあげたいですね。ただ、僕だけでは決められないので、どうなるかはわかりません(笑)。あとは、パッチ5.2で実装したコック帽を被っている“パイッサ・クリナリアン”や、“ロンカの水蛇?”に採掘メットを被せた“ホパルの水蛇?”など、既存のもののバリエーションを作ってみたのですが、もしこれらの評判がよければ、かつて出したミニオンをかわいくリニューアルする案はシリーズ化したいですね。

――キタリ族の集落で、“ホパルの水蛇?”を出しているプレイヤーが多くて楽しかったので、個人的には俄然楽しみです(笑)。

林:アリですか(笑)。例えば、バトル系の格好をさせてみたり、かわいい服装を着せてみたりというのもおもしろいかもですね。今後、そういったミニオンの上手い出しどころ・ハマりどころがあれば、またチャレンジしてみたいです。

――ミニオンに引き続き、報酬系アイテムのマウントについてもお伺いします。極蛮神戦から入手するマウントは、『新生編』では馬、『蒼天編』では鳥など、拡張ごとにコンセプトが決まっていますが、これは拡張のタイミングで決めているのでしょうか?

林:そうですね。「各拡張ごとに、蛮神戦の報酬マウントは同じ生き物のマウントで統一して、全部集めたら何かもらえるようにしよう」というところまでは、最初に決めてしまっています。ただ、じつはパッチ5.Xのドラゴンを全部集めたときにもらえるマウントはまだ決めていなくて……。

 これは、本当にネタに困っていて、何かネタがあったら教えてください。ドラゴンは、これまでもマウントで多く作ってきているので、ドラゴンの王様と言っても……というところがあって。悩ましいところです。まぁ、そのままドラゴンの王様的なものを作るかもしれませんが(笑)。

――みなさんお楽しみにというところですね!

林:もう少ししたら決めなくちゃいけないんで、本当に困ってます(笑)。

――もしかしたらインタビューへの反応で、プレイヤーさんからいろいろなアイデアが出てくれる……かもしれません(笑)。マウントつながりでお聞きしますが、マウントのスレイプニルなど、モグステーションで販売されているオプションアイテムはやはり特別感のあるものが多く感じられます。モグステーションのオプションアイテムにするかどうかの判断は、どういった部分で行っているのでしょうか?

林:マウントを作る側としては、厳密な線引きはしていません。僕も含めてオプションアイテム用のアイデアを出すメンバーが何人かいるのですが、そこで唯一共有している認識として、“ゲーム内で手に入るものとはかぶらないように”としているくらいです。

 なので、ゲーム側だからダメ、オプションアイテムだからOK……と決めているものはありません。ただ、例えばマウントのカーバンクル・アクアマリンやシトリン、スレイプニルなど、ゲーム内ですごく大きな意味合いを持ってしまうものは、プレイヤーさんのニーズもありつつ、世界設定的に整合性が取れないためゲーム内の実装が難しかったりします。そういったものは、モグステーション側で販売したほうが提供しやすいという側面はありますね。

――なるほど。たしかに、大きいサイズのカーバンクルがなぜマウントに……というのはありますね。

林:そう、ゲーム内で実装するとなると“なぜ、それがここで手に入るのか”というところまである程度理由をつける必要があるので。オプションアイテムは、そういったアイテムを追加するための窓口になっている部分もあるかもしれないです。

長く続くタイトルだからこその苦労を乗り越えて最先端を目指す

――アイテム班の仕事のなかで、林さんが苦労した思い出があればぜひお聞きしたいのですが……。

林:さきほども触れましたが、装備品のグラフィックは用意するのに2パッチ分の期間=6カ月ほど必要になります。そうすると、今パッチ5.2を遊んでもらっていますが、我々はパッチ5.4~5.5に向けてリソースの準備をしているんですね。ですが、それぐらい先の企画は、まだまだFIXしていない要素もたくさんありまして。装備グラフィックを作るにしても“どういう見た目にするのか”という取っ掛かりがないことも多くて、そういうところは毎回苦労していますね。

――とはいえ、取っ掛かりはなくても作り始める必要はある、と。

林:そうですね。なので、吉田と相談して多少強引にでも決めてしまいます。例えば、パッチ4.Xの“次元の狭間オメガ”では、4.0/4.2/4.4の偶数パッチにレイドが入ること、最後のボスが「オメガであること」は早い段階でわかっていたので、“最後のパッチ4.4の締めくくりの報酬のデザインはオメガ風装備にする” ということは、4.0で源氏装備を作ることを決めたのとほぼ同じタイミングでは決めてしまっていました。こちらが「報酬のネタがないから、ほかの企画を急げ」というわけにもいかないので、決まってなくてもなんとかなるような工夫はしています。

――“次元の狭間オメガ零式:アルファ編4”の胴装備は、戦う相手の見た目と近しいものになっていましたね。あれはあとから合わせたのでしょうか?

林:モンスター班も僕と同じようにリソースの準備で発注は出しているので、ネタが全て確定しないといっても情報がゼロというわけではありません。
中川(中川誠貴氏。リードバトルコンテンツデザイナー)からは人型に変化するオメガが作られるということは共有してもらっていたので、そこを参考にアート班に装備品を描いてもらいました。

――現在、“アイテム班”として課題にあがっている要素があれば、言える範囲で構いませんので教えていただけますか?

林:プレイヤーのみなさんには見えにくい部分で恐縮なのですが……。『FFXIV』は新生してから6年も続いているタイトルなので、アイテムのデータを作るうえで使っている計算式やアイテムを作るための作業フローが古くなってきているところもあります。アイテムの数も増えていますし、ゲームボリュームも変わってきていますので、現実として今の状況には最適でない部分が内部に存在していて。そういう部分を見直しています。

 僕は、長くチームに属しているので、なにか問題があっても「そういうものだ」と思い込んでスルーしがちなんですね。なので、新鮮な目で見られる若いスタッフに、そういう部分をチェックしつつ修正してもらっていて、それをここ1~2パッチぐらいの間で進めています。ただ、それが変わったところでプレイヤーのみなさんに新しいことが届けられるかというと、そういうわけではないですね。

――システムそのものの基幹部分は、これからも調整できるものなのでしょうか?

林:ゲーム開発者っぽくて、あまりいい言い方ではないかもしれませんが、“何をもってゲームの根幹とするか”という話になりますね。アイテムは、少なくとも『FFXIV』の根っこにあるものなので、本当の意味で根幹を変えるのは難しいと思います。ただ、“アイテムという大枠のなかでのやりくり”において、やり方を今にあったものに変えていこう……という感じですね。

――『FFXIV』は、常に新しいゲーム体験を提供し続けています。正直、6年経っているなんてまったく気にならずに遊べているのですが……それと同時に、どうしても最新タイトルと比べて“以前にリリースされたタイトルである”というイメージを持たれることも、今後避けられない事実だとも思います。この部分に対する葛藤は開発者のみなさんも持っているかと思いますが……林さん的には、そのあたりはいかがですか?

林:先輩や上司から時々、「できないことなんてない」と言われます。これは、必要なコストと時間が用意できるのならば、大抵のことは実現可能ということです。なので、実際に重要なのは、“それに見合うリターンがあるかどうか”というところで、コストとリターンのバランスを見て“やる・やらない”を決めています。

 幸いにして、『FFXIV』チームは“必要ならば、どんどん変えていこう”というポリシーでやっているので、そういう意味では、6年前に出たタイトルですが、時代に付いていけるようにその都度考えていかなければいけないなと思っています。これは、僕たちアイテム班だけでなく、『FFXIV』に関わる多くのスタッフが意識していることだと思います。

――ありがとうございます。林さん的に今後作ってみたい・挑んでみたい野望があればぜひ教えてください。

林:さきほどの話と少しかぶっちゃいますが、直近では傘システムを充実させていきたいですね。また、チャンスがあれば傘やミニオン、マウントのような、エオルゼア生活が豊かになるようなまた別の新しい仕組みを入れたいと思っています。

――では、最後に『FFXIV』を楽しんでいる光の戦士たちに向けてメッセージをお願いします。

林:『FFXIV』というゲームは、シナリオとバトルが大きな柱になっています。ただMMORPGとして僕は、そこに加えて“プレイヤーのみなさんが思い出をたくさん作って「楽しかったね」と言えるエオルゼア生活”も、シナリオやバトルに匹敵する大事なものだと考えています。傘やミニオン、マウント、おしゃれ装備品などで、生活を楽しくするちょっとしたお手伝いをするのが自分の仕事だと思っています。

 僕たちアイテム班が作るものは、すごく感動したとか、すごくがんばってコンテンツを乗り越えたといったものとは違いますが、生活に潤いが生まれるようなものだと自負しています。そういったものを今後もたくさん作り続けていけたらいいなと思っているので、末永くお付き合いしていただけたら幸いです。

――ありがとうございました!

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  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ コレクターズ・エディション(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

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