電撃オンライン

『チェンクロ』松永D×小高和剛氏に影響を与えた作品とは? クリエイター対談 後編【チェンクロ特集#12】

マスクド・イマイチ
公開日時
最終更新

 11月26日より配信がスタートしたスマートフォン用RPG『チェインクロニクル 第4部 -新世界の呼び声-(以下、第4部)』の特別対談企画の後編をお送りします。

 今回は記念企画として、『チェンクロ』松永純総合ディレクターと、松永ディレクターがかねてより対談したかったというシナリオライター・小高和剛氏(Too Kyo Games)との対談後編を掲載。

→前編はコチラ

 スマホとコンシューマ、主戦場は違っていても、どこか似ている2人のシナリオ作りへの想いや、『チェインクロニクル 第4部 -新世界の呼び声-』の狙いなど、盛りだくさんな内容となっているので、ぜひご覧ください!

※対談中は敬称略

  • ▲松永ディレクター(左)と小高和剛氏(右)。

『チェインクロニクル』特別企画一覧

松永純氏×小高和剛氏 対談

ユーザーの反応が想像を超えるとき
『ダンガンロンパ』の場合は……

松永:小高さんの作品はそれぞれの作品で明確に“狙い”を付けて出しているじゃないですか。ユーザーさんの反応が、その想像を超えてきたものってありますか?

小高:それはやっぱり最初の『ダンガンロンパ』のときでした。あのときは、「自分がユーザーだったらおもしろいと思うものを作ろう」と思っていて、それを貫けたかなと思います。「作ったらすぐ会社をやめる、逃げよう!」ぐらいのつもりだったんですが……。

 思ったより、「俺の仲間がいたぞ」と。「同じものをおもしろがってくれる人がいた!」みたいな感じでしたね。そこからある意味暴走しはじめて、俺がおもしろいと思ってればいいやみたいになってしまいました(笑)。

松永:じゃあ、あれだけのものを作って出すときに、「絶対みんなが喜んでくれる!」という確信をもってという感じではなかったんですね。

小高:全然なかったですね。それこそチーム自体が、落ちこぼれスタッフが集まった『エクスペンダブルズ』でした。

松永:そうだったんですか! 『ダンガンロンパ』って、ゲームシステムも秀逸なものばっかりだったなと思っていて。

小高:プランナーも僕とシステムを担当した2人しかいなくて、2人でほとんど作ったんですけど。そいつも……落ちこぼれでしたね(笑)。

松永:作品からは全然感じられないです。

――最初に『ダンガンロンパ』を出す前にいろんな人に見てもらったと思うんですが、評判はどうだったんですか?

小高:雑誌編集部の評判はよかったですね。でも問屋さんや店舗さんはめちゃくちゃ意見が割れました。「これ大丈夫なの出して?」みたいなところもあれば、「これはすごい売れる」というところもあって。

 あの頃って『逆転裁判』(カプコン)とか、DSのアドベンチャーゲーム(ADV)ブームが落ちついて、ADVというジャンル自体が売れていない時代だったんですよ。だから「売れても5万本でしょ」みたいな空気でした。会社からもあまり期待されてなかったです。

――電撃オンラインでは、最初に『ダンガンロンパ』の設定画を見せていただいたときに、見た人間全員が「これは絶対おもしろい!」ってなったんです。実はそれは『チェンクロ』も同じで。『チェンクロ』の資料を最初に見たときも「絶対おもしろい! 間違いない!」となって、それでどちらのタイトルも特集を組んで記事を作りました。

松永:ありがたかったです。ウチも出すときは、ぜんぜん期待されてなくてプロモーションも少なかったので、嬉しかったです。電撃さんのおかげです。

――いやいやいや(笑)。両作品とも世に出る前からオーラが違いましたから!

小高:でも絵に特徴がやっぱりありましたよね。

松永:絵ですか。『ダンガンロンパ』は本当にインパクトありましたよね。『チェンクロ』はむしろ王道を目指していたんですが、特徴も感じてもらえたのだとしたら、やはりメインキャラを手掛けたtoi8さんのおかげですね。当時も、8年経った今も、ずっと色あせないビジュアルを作ってもらえているなと。

――『チェンクロ』のメインキャラクターデザインにtoi8さんを起用したことについては、ユーザーにもウケるだろうという確信があったんですか?

松永:はい。“王道だけどちょっと新しい、リッチ”みたいな絵が描けるのはtoi8さんしかいないなと当時から思っていました。さっきの逆張りの話に近いですが、王道といっても当時流行っていたライト路線ではなく、コンシューマ機みたいな本格RPG! って思ってもらえる絵だなと。

――最初のプレゼンで松永さんが「コンシューマのRPG的なものをスマホでやりたい」と話されていて、「RPGで仲間を増やすなら酒場でしょ!」って酒場ガチャのシステムを聞いたとき、「これは絶対おもしろいな」と思ったんですよ。『ダンガンロンパ』は、「これはADVじゃなくて、ミステリーアクションなんですよ!」って聞いた時に、「ナンダッテー!? おもしろそう!」となりまして。

小高:それはADVっていうと売れないからですね(笑)。ジャンルを変えてしまえばなんとかなるかなと。『チェンクロ』が出たときって、他にどんなスマホゲームがありましたっけ?

松永:『パズル&ドラゴンズ』(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)が出て1年ぐらいでしたよね。『パズドラ』で“ネイティブアプリ”という概念が生まれて。

――それまではブラウザゲームでしたからね。“モバゲー”、“グリー”の時代ですよね。

松永:あとは『拡散性ミリオンアーサー』(スクウェア・エニックス)ですよね。

――“キャラが多くて、ストーリーもしっかりしている”というゲームが出せる土壌ができつつあったタイミングなんですよね。

松永:ですね。とはいえ『チェンクロ』が出た当時は、RPGというとボリュームもありますから、メインストーリーなどは設けつつも、基本の骨子は当時のソーシャルゲームのままで、キャラクターはカード的存在で、バトルは数値を比べて戦う、みたいなものがまだ主流でした。

 酒場は、ソシャゲのガチャという概念を活かしつつも、出てくるのはカードではなくて、この世界で生きるキャラだと感じてもらえることを目指しました。結果、コンシューマRPGのようなんだけど、決してコンシューマRPGでは味わえない体験を作れたのかなと。

小高:あの時代にあれはエポックメイキングだったと思いますよ。

松永:そこから8年目ですからね。あらためて、新しいチャレンジはしていきたいと思いますね。

作品を遊ぶという体験を通して
ユーザーの新しいトビラを開きたい

松永:小高さんは“Apple Arcade”など、さまざまなプラットフォームでゲームを出すといった、新しい市場へのチャレンジをしていてどうですか?

小高:何がどうなるのかわからない世の中ですし、保守的にはなりたくないなと思っていて。ユーザーさんが保守的になるのは構わないんですが。

松永:届ける側がそうなりたくないってことですよね。

小高:おっさんオタクになればなるほど、昔好きだったものから離れられなくなっちゃうじゃないですか。自分でもよくわからないんですよね、音楽とかも昔聴いていた曲ばっか聞いちゃうみたいな(笑)。

 ユーザーさんが「それでいいよ」というのならそれでもいいと思うんですけど、なんかこっそり新しい場所に連れてってあげたいなという思いでやっています。

松永:あ、それはわかります。

小高:「スマホでゲームやるのはゲームじゃない!」みたいな人でも、ちょっとやってみると「意外とおもしろいじゃん」みたいなのは当時もあったと思いますし。もはやスマホゲームを毛嫌いするようなコンシューマユーザーは減っていると思いますし。

松永:すごくいい具合に混ざってきていると思いますね。

小高:Steamとかそういう場でも、AAAという評価じゃなくて、AAとかAぐらいのものの方にも手を出すとおもしろいものがあるよと。もともと僕はミーハーな人間なので、他の人に「こういうのもおもしろいよ」とか、入門編じゃないですけど、そういう存在になりたいなと思っていて。

 例えばアニメをやるにしても、ガチアニメを作るというよりか、僕にとってアニメは本業じゃないので、だからこそゲームファンも見てくれたらいいなという気持ちですね。

松永:ユーザーさんのゲームに対する接し方もどんどん変わってきていますよね。さっき話していた当時って“ネイティブアプリ”が流行り出して、運営がいるサービス型のゲームが強くて、買い切りのゲームとかって弱いイメージだったんですけど、今はまたApple Arcadeで出たりとか、「別にそういうのでもいいじゃん」という空気も出てきていたり。

 『ダンガンロンパ』も買い切りのリメイクで出ていますよね。絵もきれいになってて、めっちゃ楽しかったです。でも昔、大作RPGのリメイクがスマホで出たときって、遊びづらさを感じたり、「なんか違うなぁ」という感じたりがあったんです。それは、そのゲームがダメだったんではなく、当時は“ポケットから出したら5分で遊んで満足感を得て戻せないとダメ”みたいな感覚が強くて。でも、いま『ダンガンロンパ』を遊んでるときは別に感じないんです。

 ゲームの内容が変わったというより、プレイヤー側の感覚も変化し続けているんだろうなと。今って、普通に2時間とかのめり込んでスマホゲームを遊ぶ方も多いですよね。ユーザーさんの遊び方、接し方が変わってきていますよね。

小高:そういう作法がなくなってきたほうが、おっさんオタクたちも楽しいはずだって思いますね。

松永:はい。作る側も、何年ゲーム作っていても、おもしろいのはそういう“変わっていくところ”なのかなって思いますよね。だから、率先して“変わるきっかけ”を作っていくというのはすごく共感します。

離れられることへの不安
いつか届けたい新しい刺激

小高:僕は極論、ユーザーさんにがっかりされてもいいなと思っていて。コンシューマだったらがっかりされても最後まで遊んでくれたらそれでいいなって。それだけで“新しい扉は開いた”と。途中でやめられちゃったら僕の実力不足なんですけど、最後まで遊ばせたらこっちの勝ちだみたいな。あとはあなたの好き嫌いにハマらなかっただけみたいな。

松永:なるほど。基本無料のスマホゲームだと、それ難しいですね。でも長く運営していると、続けてさえもらえればという感覚はあるかもです。続けてもらえていれば、どこかでストーリーを読んでもらえて、いつかいい刺激を与えられる機会は生まれるかもしれないので。

 なので、「今回のイベントも似たような内容でつまらないな」とたまに思われるのはセーフかなと思っていて。毎日触ってさえもらえれば、その次のタイミングではもっと刺激のあるクエストやストーリーを用意できたときに、“あ、いいじゃん”と思ってもらえるかもしれない、そこで思い出になるくらいの感情を持ってもらえるなら、それは毎回じゃなくていいよねっていう。

小高:その点ユーザーさんは、まだまだ甘いかもしれませんね、“つまらないのも1個の味なんだぞ”って(笑)。つまらないものを楽しめるようにならないと、まだまだ甘いなって。

――ネットなどが普及していなかったときって、ゲームを1本買うのもギャンブルみたいなところはありましたからね。

小高:“よくできていないものもいとおしい”、“優れたものが出すぎると、全部同じになってしまう恐れもある”みたいな。コンシューマだったらAAAタイトルが全部似たようなものになってしまったりとか。それはそれでつまらんと。

松永:開発費がかかるとなると、どこも一緒になってしまうのかもしれませんしね。

小高:冒険できないですもんね。

松永:モバイルも基本そこは一緒で。『チェンクロ』がリリースされたときと、今の業界だと開発費も何倍も違っているので。冒険しづらくはなってきていますね。

小高:開発費をすごくかけて、ストーリーもなく、純粋なバトルゲームとか今は作れないですもんね。

松永:“最低限のストーリーはあって、成長要素はこれぐらいあって、だからユーザーさんが安心して遊べます!”みたいなお作法はあると思うんで、仕方ない部分はあります。でもさっき小高さんが言ってくれたことが真理な気がしますね。

 安心して遊べる内容な上で、遊んでくれた人に“変化”を与えるようなものを、どれだけ用意していけるかが大事なんだと思います。

『チェンクロ』4部への想い
もう一度体験してほしい“RPG感”

松永:『チェンクロ』、第4部を制作させてもらって、今回「もう1回RPGしようぜ」ということを言っていて。スマホのRPGって最適化していくと、ストーリーはストーリーで読んで、バトルはバトルであってみたいに……。

小高:ああ、分断されちゃうんですね。

松永:はい。最適化が進むとそうなるんですよね。で、ストーリー読み切ったらあとはイベントやってください、みたいなのがお作法みたいなものになりつつあって。『チェンクロ3』も比較的それに近くて、ストーリー部分はストーリーを読むものとしてあって、あとは毎月のイベントをやってくださいという提供の仕方だったんです。

 でも、もうちょっとメインストーリーの体験に“RPG感”があったほうがいいなと話していて。もちろん今さら全然違うゲームにはできないですけど、4部ではその“RPG感”をあらためて取り戻すみたいな意識をしています。

 さっきも話に挙がったように、ユーザーさんが潜在的に求めているものと、声に出して「こういうものをください」というものはちょっと違うと思っていて。気が付くと“楽で気持ちのいいものが安心感があっていい”という考えに対して、どうやって刺激を入れていくかというのを、ユーザーさんに怒られることもありながらもやっている感じですね。

小高:『チェンクロ』って何周年を目指しているとかいう目標はあるんですか?

松永:オフィシャルでは10年を目指すという宣言がありますね。

小高:でもやれるならその先もという感じですか。

松永:ですね。「やれることは10年以上ある」と改めて最近思うので。いちばん最初は「これは2年ぐらいだろうな」と思って始めたんですけど、いざ2年やってみたタイミングで、「これだけユーザーさんがついてきてくれるなら、5年、6年やれるかもしれない」ってイメージになったんです。そして最近、続けることで、やれることは増えていくんだという発見があって、それからは10年以上やれたらいいなと思うようになりました。

小高:じゃあ20年、30年と半永久的にやれるかもしれないですね。

松永:たしかに……やれるといいですね。でも、実際にその年月を実感として想像すると、あらためて簡単なことではないなと。ここまで、連続ログインが2,000日とか超えている人もたくさんいて。うまく言えないんですが、その数字を見るたびにものすごい感謝と重みを感じます。だって、2000ですよ。

小高:最初からずっと連続ログイン切らしていない人もいるんですか?

松永:はい、いらっしゃるんですよ。

小高:それは表彰したほうがいいんじゃないですか!?

松永:本当にそう思います。

小高:急にぱたりとログインしなくなったら心配しますよね。どうしたのかな!? って。

松永:メンテが長くなって、ログインができなくなってしまったときとか大問題になりましたね。毎日やってくれることにユーザーさんのなかでもきっと意味があるので。

 10年やると3,650日になると思うんですが、少なくとも僕には3650日連続ログインすることってできないですよ。きっと一生できない。だからこそ、そんな途方もないことを望んでもらえるなら、応えたいという想いは強いですね。自分がそうできないからこそ。

2人に影響を与えた作品とは?
意外なタイトルとの出会い

――おふたりに影響を与えた作品を教えていただけますか。ゲームに限らず。

松永:小高さんってそういった場合はゲームになりますか?

小高:「ゲームに限らず」って言ったらそうじゃなくなりますね。ゲームに限って言えば……1個ありますね。ドリームキャストの『ILLBLEED(イルブリード)』という作品です。これをゲームショップでバイトしていたときに見つけて。

 最初は『バイオハザード』(カプコン)みたいなゲームかなと思って遊んでみたら全然違って。これも世の中では若干クソゲー扱いされているんですが(苦笑)。「こんなに自由でいいんだ、ゲームという媒体はすごい!」と思ったんです。その頃からゲームの仕事は少ししていたんですが、それからこっちに本腰入れようと思ったんです。

松永:(検索して)開発は……クレイジーゲームス……。

小高:もうなくなっちゃいましたけどね。これのあとにゲーム業界入ってから『Killer7』(カプコン)とか須田さん(※編注:須田剛一氏)のゲームを遊んで、「こんなに自由でいいんだ!」って改めて思いました。

 僕は最初にゲーム業界入って、1回辞めてフリーターやって、またゲーム業界入ってきたんです。最初に辞めたときは『デビル メイ クライ』(カプコン)とか『バイオハザード』とか、おもしろいんですけどそういう路線のものが多くて、「やっぱゲームってこうなんだな、俺の作りたいものと違うな」と思って、1回辞めたんです。

 それ以降に『ILLBLEED』とか『Killer7』とかやって、こういう世界観もありなんだというのを知って、ゲームを作りたくなったんですよね。

――もともと映像系の学校に通われて、自主製作映画とかも作られていたんですよね?

小高:そうですね。だから僕の作るゲームは自主映画くさいというか、単館系――ハリウッドとかシネコン系じゃなくて。単館系みたいな映画がもともと作りたくて、それがゲームでも可能なんだと知ったのは『ILLBLEED』とかだったんです。

 いつかリメイクしたいと思っているんですが……絶対出ないと思いますけど(笑)。ゲームとしてシステムが間違っていて。お化け屋敷という設定で、トラップに引っかかるとダメージを受けるんですが、そのトラップの出方とかがおもしろいんですよ!

 ただ、罠にひっかかりたいんですけど、そうすると死ぬわけで。一番おもしろいところを避けるようにするゲームシステムで、何にも出会わないとただ歩いて終わりという。素人でもわかる間違い方!

――なるほど(笑)。松永さんは何に影響を受けたんですか?

松永:僕はRPG畑なんで、一番影響受けたのは初代の『女神転生』なんですよ。

小高:スーパーファミコンの頃のですか?

松永:いや、ファミコンのですね。『デジタル・デビル・ストーリー』です。小学生のとき、ラーメン屋の懸賞で偶然当たって。それまではドラクエとか王道RPGしか知らなくて。ラーメン食べてくじ引いたら『メガテン』が当たって、「なんだこれは!?」ってなって。

 「とんでもなくダークな絵のRPGだな」って。それを解いていったんですけど、そのときの衝撃が。ストーリーも当時はあってないようなものなのに、すごい世界観を感じたり。結構“理不尽な死に方”みたいなものとか含めて。そしてなにより仲魔が……敵が仲間になるってあれが初めてだったと思うんですけど、あれで一気に大人の階段のぼらされたみたいな。

 そのあと『ドラゴンクエスト5』をやって、倒したモンスターが仲間になることにみんながキャッキャ喜んでるの見て、「みんなガキだな」って(笑)。俺は倒すんじゃなく交渉して仲間にしてたぞと。

 そういうRPGの体験のなかで“新しいこと”を、先んじて届けるってすごいなって。自分の心の中に残っていますね。だからずっと『メガテン』シリーズは好きですね。

小高:完全につながっていますよね。逆張り精神みたいなのは。

松永:そうかもしれませんね。ラーメン屋で『メガテン』を当てたことからはじまってるかもしれません(笑)。

小高:だから僕がいろんな作品を作りたいと思うのもそうだし、自分が感じた「こんなのもあるの?」というのを人に自分がやりたいというのもあります。

――『ダンガンロンパ』をやったときの衝撃は大きかったです。「こんなに主要人物死んでいいんだ!?」って。

小高:それでデスゲームが流行ったら流行ったで「違うのあるよ」って言いたくなるみたいな。そういう風にやりたくなっちゃうんですよね。

松永:先ほど「少年ジャンプ」がお好きと言っていましたけど、逆張りとは反対に、やっぱ普通に少年マンガのノリのような“王道”に対する愛みたいなものはありますか?

小高:それはありますね。

松永:『ダンガンロンパ』、僕はすごいデスゲームだっていう評判を聞いてからやらせてもらったせいかもしれないですが、クライマックスまでいくと思っていたより生き残るじゃないですか。そこが逆によくて。そこからの少年マンガのノリというか、熱さが自分的にはよくて。逆張りと王道、両方あるのがいいなと思いました。

小高:「ジャンプ」も好きですし、『ベルセルク』も好きみたいな。

――“王道と逆張りのバランス”みたいなものが重要なんでしょうか?

松永:ゲーム作るうえでそれって大事ですよね。

小高:やっぱADVでセリフが多いゲームで説得力を出すには、セリフしかないなと思っていて。たとえば黒幕がいて、他のキャラがいて討論しているときに、いくらでも武力で押さえつけられるんですよね。

 でもそれを言葉だけで見せているときに、「もっとやりようがあるのでは?」とプレイヤーに気付かせないためには、とりあえず“言葉の精度”でのめり込ませるしかないなと。そこでは「ジャンプ」的な熱さって強いなと思います。「ペチャクチャしてないで殴れよ」って思っちゃったりもするじゃないですか。でもそれを感じさせないのがうまいマンガだなって。ADVの最終決戦として、そういうのは参考にしました。

松永:ちなみに“ゲームに限らず”だと影響を受けたものって何がありますか。

小高:やっぱ映画ですかねえ。でもほんとに“逆張り”がスタートしたのはメガドライブでしたね。今、セガに来ているから言うわけではないですけど(笑)。

 従兄が持っていて遊ばせてもらったら『ゴールデンアックス』とか『ゲイングランド』(ともにセガ)とか。ファミコンソフトの世界観と全然違ったじゃないですか。“パンツいっちょで剣を振ってる”みたいな(笑)。

 その従兄が僕が小学生だったころに音楽でも“ユニコーン”とか“ジュンスカ(ジュン・スカイ・ウォーカーズ)”とか、おしゃれでカッコイイものを教えてくれて、すごいと思って。でもそれをクラスの子に話しても誰も知らないわけですよね。

 メガドラもそうだったんですが、知らない子に「すごいんだぜ」って教えてあげるみたいなのが快感になって。それで映画でも単館系とか、音楽でも人が聞かないようなのをむしろ聞くようになるという。

松永:まさかメガドラがスタートとは(笑)。

小高:洗練されきっていない世界観のものを選ぶ感じですね。

松永:やっぱり“逆張り”も大事なんだなと今日改めて思いました。

――シリーズを重ねたり、サービスが長くなっていくと“逆張り”ってしづらくなりますよね。

松永:“今いるユーザーさんに安定してサービスを届けること”が命題になってくるので、難しいですね。

小高:でもちゃんと考えて“逆張り”していれば大丈夫かなと思いますよ。一番よくないのは“適当にやったものを逆張りって言い張る”みたいなことかなと。

松永:肝に銘じます。やっぱり“ユーザーさんが一番欲しいものは外しちゃダメ”というのはありますからね。そこをどう見出すかというのは一番大事だろうなと。

まさかのタイトル新作希望!?
2人の今後の野望に迫る

――おふたりの今後の野望について聞かせてください。

小高:『クレイジータクシー』(セガ)をプレイしたいですね。僕は作れないので(笑)。シナリオないですし、あれは完成されたシステムなので。僕、『クレタク』世界で一番うまいんじゃないですかね! 1時間はプレイし続けられますよ。下手だとすぐ終わっちゃうゲームじゃないですか。

松永:1時間はすごいですね! 『クレタク』、会社を探せば筐体あると思います。

小高:新作を作ってほしいんですよねえ。

松永:やっぱりセガの昔のブランド、おもしろいものたくさんありますよね。宣伝みたいですけど(笑)。

小高:あれもリアルになっちゃったらおもしろくなくて、ゲームならではの車の挙動だからおもしろいんですよね。

松永:製作者の方も、まったく同じことを言っていたので、伝えておきます! 僕はどこかのタイミングで、コンシューマに限らずですけど、“短い時間で完結するゲーム”を作ってみたいなと思います。

 なんだかんだで作ったことないんですよね。アーケードゲームからスタートして、そのままスマホで『チェンクロ』作って……とかなので。小高さんが作っているような、ユーザーさんが40時間ぐらい遊んだらそこに満足度100%があるような作品を作る機会があったら作ってみたいです。

――今はサービスが続く限り、ゴールがない作品ですもんね。

松永:これだけ20年近くゲームを作っていて、そういうもの作れていないんだなということに気付いたので、いつかやってみたいなと思います。小高さんは逆に運営型のゲームはどうですか?

小高:挑戦してみたくはありますね。“シナリオを無料で読んでもらうゲームをやりたい”という意味ですが。だから運営型でなくてもいいのかもしれませんが。

松永:たくさんの人が読めるというところですかね?

小高:テレビみたいに無料なのイイなと思っていて。Apple Arcadeの『ワールズエンドクラブ』も、Apple Arcadeに入る時点で無料ではないですけど、僕はそこがちょっとうれしいところで。ユーザーがどうとかではなくて、僕がそうしたいだけというか。

 「無料なの!?」って驚くじゃないですか、そこが楽しいというだけですが。今は大きい会社じゃないですし、背負う社員も多くなくてみんなフリーでも生きていけるような人ばかりなので。

 まあそればっかりやっていたらダメですけどね(笑)。それがストレスになってしまったら元も子もないので。

松永:“自分の喜び”というところが大きいんですね。

小高:あとはネタになるじゃないですか“ほぼノーギャラ”っていうと。だから会社が儲かったりしたら本当に無料のゲームを作ってみたい。どこで課金とか、どこで収益とかいうのはありません、と自信満々で言うような。街中にROMを置いたりして、“自由に持っていってくださーい”みたいな。

――今ならデータをどこかに置いておいて、ダウンロードしてくださいでもいいかもしれませんね。

小高:いや、でもやっぱりROMにしたいんですよ。それでアニメイトの前に段ボールで置いておきますみたいな(笑)。

松永:秋葉原のダンボールからみんながゲームを手にしていくっていうのは、たしかに見てみたいですね。同じ“基本無料”のはずなのに、すごいインパクト!

小高:それぐらいクリエイターとして余裕ができるといいなと思いますね。でも『チェンクロ』も無料でたくさんシナリオを読めるからすごいですよね。

松永:たぶん世界で一番たくさん読めると思います(笑)。もはや読むのにどれだけ時間かかるかわからないという。でも本当にゲームって、作っていて飽きないですね。他のメディアと比べて“市場が進化するスピード”がとんでもなく早いので。

小高:とくにスマホなんかはこれまでもそうだし、ここからもそうでしょうしね。

松永:いよいよコンシューマとの垣根もなくなりつつあって、どうなっていくんだろうというところですね。

――ユーザーさんの消化するスピードも速くなっているなと思いますね。

松永:でもそこは作る側もたくさんいるので、あまり意識していないですね。自分たちがそれを全部やる必要はないかなと。どんどん消化するぶん、たくさんの人が作る。他のいいものをつまみぐらいしながら付き合っていってもらえればいいなという気持ちが強いですね。それもスマホだと“逆張り”の思想なのかもしれないですけど。

小高:“全部自分たちが持ってくぞ!”ということじゃないというところですかね。

ユーザーの1番のアプリになるには?
いつでも帰ってきてもらえる自信

松永:というのも、スマホの運営型のゲームって、ユーザーさんに可能なかぎり長い時間滞在して触ってもらったほうがいいみたいなご作法があるんです。でもみんな“そんなに暇じゃないよな”って思っていて。

 やりたいときに遊べて、いろんな作品に触れる機会があるなかで、それぞれのゲームを消化してもらえる方がユーザーさんにとっても幸せなんじゃないかなって個人的に思います。

小高:でもそれは、いつでも『チェンクロ』に戻ってきてもらえるから、という自信があるからですよね?

松永:そうだと一番いいなとは思ってはいますね。だから『チェンクロ3』とはだいぶ変わった第4部は「またRPGします」と言ったので、また「ちょっと遊んでみようかな」と思ってもらえたらいいなと思います。拘束時間が長いゲームだとなかなか難しいと思うんですけど、そうでもないので言いやすいなと。

 今日、小高さんの作品の作り方が自分とだいぶ違うのかなと思ってお話させていただいたんですけど、似てるところがすごく多かったのはうれしいですね。

小高:意外と共通するところが多いなって僕も思いました。

松永:作っているタイトル数も違いますし、そもそも作品を出す場所も違うのもあって、いろいろ違う部分が多いのかなと思ったんですけど、“王道と逆張りのバランス”含めてすごく意識されている部分は、自分もそうかもなって思うところがあったので。勝手にうれしくなってしまいました(笑)。

小高:僕も驚きましたね。『チェンクロ』と『ダンガンロンパ』の立ち上がりというか、そこがちょっと似てるからかなと思いました。最初は会社から“愚連隊”扱いされていたりとか。

松永:たしかに“あいつら何やってるんだろう”みたいな(笑)。でも小高さんは『ダンガンロンパ』に限らず、会社が変わって、たくさんの作品を出された今も、一貫して近しいものを作っているなと思います。

小高:それだといいんですけどね。根底に流れる何かみたいなものはあるといいなと。

松永:僕ももしセガを離れたりしても、近しいものを作ろうとするんだろうなあ。

――それがクリエイターさんにとっての“ism(イズム)”みたいなものですからね。本日は長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました! おふたりの新作、これからも楽しみにしています。

©SEGA

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

チェインクロニクル 第4部 ―新世界の呼び声―

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2013年8月1日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

チェインクロニクル 第4部 ―新世界の呼び声―

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2013年7月26日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

関連する記事一覧はこちら