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ビーム中期の作品群、その2!!【O村の漫画野郎#47】

奥村勝彦
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 秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!

ビーム中期の作品群、その2!!

 あー。前回の続きであります。ビーム中期の作品紹介、その2、いってみよー!!

●『パノラマ島綺譚』(丸尾末広/江戸川乱歩)

 副編の岩井から、他誌で連載を予定されてた丸尾さんの原稿が浮いてるって話を聞いた。聞けば乱歩原作であるという。

 江戸川乱歩と丸尾末広……相性が良いなんてどころの話じゃない。“梅にウグイス、松に鶴”ってなもんである。中身を見るまでもなく傑作決定!! 即、連載OKだ!! エロ描写? うるせえ!! そんなもん修正するなんざ、野暮ってもんだ!! そのまんま掲載!! 手塚治虫文化賞まで獲ったどー!!

 んでまあ、イケイケドンドンで乱歩原作で最もヤバイと思われる『芋虫』までやっちゃった!! 結構、ハラハラしてたんだけども、全然問題にならねえでやんの。まあ、作品さえ堂々としてりゃあ、あんま問題にはならねえってことだよなあ。

●『あしたの弱音』(タイム涼介)

 タイム君は講談社でデビュー時、短編ギャグ漫画でヒットを飛ばし、本作も当初は同じ形態だったの。でも担当してみて、何となくストーリー漫画の方が彼の持ち味が出そうな気がしたのね。んで、どんどんページ数を増やしていったら、全然別の漫画になっちゃった。

 主人公が見事に成長していくのが楽しかったなあ。ただのひねくれた弱い不良が、農業に目覚めて学校の屋上で畑を作り、卒業後には農協の害獣駆逐部隊の隊長に就任。その後、『アベックパンチ』『I.C.U. 』と完全に長編漫画家にコンバート。現在は他誌で大活躍しとる。

 去年NHKでドラマ化された『セブンティウイザン』だな。いや、最初テレビの予告編で観て、70歳のバアさんが出産? あれどっかで聞いたような話だなあ……って思ってたが、タイム君に昔、ネタ出しで聞いていた話だったんだ。それが見事にドラマ化されたんだよな。

 彼の漫画は感情表現が非常にしっかりしていて、アイデアも斬新なので、まだまだ大きくなっていくと思うぜ。

●『放浪息子』(志村貴子)

 彼女はビームの新人賞でデビューして、『敷居の住人』で連載開始、その後、この作品でヒットを飛ばしてくれた。

 彼女の作風は透明感が素敵で、ネームは多くはないんだけど、行間を上手に読ませる実に女性漫画家らしい漫画家さんだった。

 昔、彼女は九段付近にある関東大震災直後に建てられた古アパートを、きれいに改装して仕事場にしてた。もう取り壊されちゃったけど、シックないい仕事場だったよなあ。

 非常にシャイな女性で、口数も少なかったので、あまり話したことは無かったけれども………あ、もしかしたら俺、ビビられてた? やたら大声で暴力的な体育教師みたいに思われてた? まあ、みてくれがこんなだもんなあ、なんか悲しくなってきた。

●『エマ』(森薫)

 ある日、担当者が俺にネームを持ってきた。「メイド漫画です」……はあ? メイド漫画あ? ご主人様の命令でスカートめくりあげて……冗談じゃねえや!! と思っていたら、非常に真面目な、時代考証もキッチリしたメイドさんが主人公のイギリスビクトリア朝の漫画であった。

 偏見に毒されていたのは俺の方である。情けねえ話だ。緻密な絵で構成もしっかりした本格派の、この漫画は予想通り見事にヒットを記録した。

 森さんに「現地のイギリスに取材に行ってきなよ」と言ったら、彼女は「ひええ~」と言ってた。俺は確かにあまりゼニは使わなかったけども、バブリーな使い方には虫酸が走っていただけで、必然性があれば全然出すんだけどなあ……。その後、しっかり現地取材には行ったのだが、あの「ひええ~」は何だったんだろう? 謎だ。


 この時期から徐々に編集部の財政状態は上向きになってきて、自転車操業的な日常も改善されてきたね。いろんな漫画賞もコンスタントに受賞し始めたしね。そんな中期のエピソードは……待て!! 次回!!

(次回は5月17日掲載予定です)



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イラスト/桜玉吉

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