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2016年2月24日(水)

【電撃の旅団冒険録】サントラ“HEAVENSWARD”発売記念! 祖堅正慶氏にイシュガルド楽曲にまつわる想いを訊く

文:電撃PlayStation

 『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』を彩る膨大な楽曲……メインストーリーを進める際はもちろん、フィールドやダンジョンを歩むなかで常に冒険者の心に響き渡るメロディーたち。それらを1枚のBlu-ray Discに詰め込んだオリジナルサウンドトラック“HEAVENSWARD”が、本日2月24日、ついに発売となりました。

 今回はそれを記念して、言わずと知れた本作のサウンドディレクター・祖堅正慶さんにインタビュー! 各曲への想いから収録曲の順番へのこだわりまで、赤裸々に語っていただきました。

『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』
『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』
『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』

※本インタビューは2016年2月5日に実施されたものです

『蒼天のイシュガルド』での冒険を追体験できる1枚!

――『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(以下、蒼天のイシュガルド)』は全体的に“ダークファンタジー”を意識した世界観になっていますが、曲作りにおいて注力された部分はどこでしょうか?

 『新生エオルゼア』のときは“テーマパーク感”が強かったので、どちらかというとコンテンツの雰囲気重視で作ったんですけど、『蒼天のイシュガルド』はまたちょっと違う感じで。影があるというか、“重たい宿命を背負った冒険者の物語”みたいな、王道とは違う切り口で作りました。

――『蒼天のイシュガルド』で展開する物語に合わせて制作されたということでしょうか?

 そうですね。それになぞらえて“物語を紡ぐための音楽”を意識しました。例えばですが、当初ダンジョンに関してはバトル曲を1つ用意して、それをすべてのダンジョンで使用する予定だったんです。でも開発が進んでいくうちに、それぞれの場所が物語と強く結びついていることが見えてきて、やはり1曲だけでは説明がつかないなということになりまして。各ダンジョンに専用曲を用意しました。

――開発期間がないなか、いろいろな犠牲を払って……(汗)。

 サウンドスタッフ全員、死にもの狂いで作りました(笑)。ただ僕としては、“新しいコンテンツだから、新曲を!”という考え方は、最良の方法だと思ってないんです。なんでもかんでも新しくすると、幹となる曲のイメージがどんどん薄くなりますから。

 サウンドって目に見えないものだし、感情を揺さぶる場面で効果的に使うのが一番いい……と思いつつも! MMORPGってとんでもなく長い時間遊ぶし、いたるところ全部同じ曲っていうのはさすがに……というのもわかるので、なんとか用意しようとなりまして。

 そこで、時間がないなかいろいろと犠牲を払いまして、フィールド曲の旋律をアレンジしたものをダンジョン曲として使う形をとりました。フィールドとダンジョンが物語として繋がっていることもあって、ゲームプレイの満足度を高める演出ができたと思います。

――物語を進めていくとき、1つのエリアに長くとどまることが多いので、フィールドとダンジョンに親和性が生まれていますよね。

 そうですね。あと、フィールドとの親和性だけでなく、物語全体も大事にしました。最初の“廃砦探索 ダスクヴィジル”ではまだおとなしめですが、クライマックスの“蒼天聖戦 魔科学研究所”では「派手にキメてくれ!」という感じにして、曲調がだんだん盛り上がっていくように意識しました。サントラの収録順もゲーム中の進行とリンクするようになっています。

――たしかに! 曲順がメインクエストに沿って並んでいることもあって、聴いていると記憶がよみがえる感じですごくいいですね。

 さすがに4時間44分もあるので「飽きるんじゃない?」と最初は思っていたんですが、意外と通しで観られちゃうんですよね。『蒼天のイシュガルド』はストーリーラインが強いじゃないですか。だから「あのときキツかったな」みたいな、時系列がはっきりしてるからピンポイントの思い出もすぐ出てきて、ついついふわ~っと気がついたら全部観ていた、みたいな(笑)。ただ、“機工城アレキサンダー:起動編”の曲はどこに入れるかで悩みまして……。

――サントラではトラックリストのいちばん最後になっていますね。

 エンディングを迎えて“Dragonsong”が流れたあとに“機工城アレキサンダー”の曲が始まるという形にしたんですが、この始まりがどうしても急すぎて、違和感がありまして。ここだけ曲間を増やそうということになったんですが……。

 曲のデータをBlu-ray Discに落とし込む際、音質を確保するためにすごく手間をかける工程があって、そこが全部やり直しになっちゃったんですよ。マスタリングのエンジニアさんは半泣きでしたけど、どうしてもここはひと息おかないと成り立たないから、「頼む!」ってお願いして。

――そのこだわり、いいですね。余韻って重要だと思います。

 ほかの曲は割と矢継ぎ早に続くんですけど、“Dragonsong”のあとにだけ空くんですよ。で、しばらくすると、ファウスト先生のテーマでもある“製造者責任 ~機工城アレキサンダー:起動編~”が流れるようになってます(笑)。

『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』

開発陣が一丸となって作りあげる、『蒼天のイシュガルド』のサウンド

――“機工城アレキサンダー”といえば、『蒼天のイシュガルド』の曲の中でもかなり特徴的だと思うのですが、この曲のコンセプトをぜひお聞きかせください。

 そもそも『蒼天のイシュガルド』の曲を作るなかで、新しいトライをしてみようっていうのは、もともと持っていたんですよ、僕のなかでね。

 でもそうは言っても、わりとファンタジー系のRPGでオーケストラ主体だったりとか、管弦楽主体な曲が多い曲調のなかでちょっと違いを出すっていうと、今までの『FFXIV』のなかでそんなに使われていなかったのが、ああいうスチームパンクというか、デジロックというか……なんだろう、表現が難しいんですがガッチャンガッチャンしてるな~、みたいな?(笑)。「今まであまり聴いたことないね」っていう部分にトライしたかったんです。

 あとは同じレイドダンジョンで“大迷宮バハムート”がありましたが、あちらはわりと“死闘を繰り広げる”というイメージで、しかも第七霊災を引きずったストーリーがあって重々しい感じだったんです。で、開発側からも今回のレイドダンジョンは、まったくそれとは色を変えたい、さらに「スチームパンクのイメージでいきたい」っていうオーダーがありまして。僕もそもそも『蒼天のイシュガルド』で新しいチャレンジをしたい考えもあり、このような曲になりました。だから、『蒼天のイシュガルド』本編の曲とは考え方を切り離して作っていますね。

――“ビスマルク討滅戦”も、今までの曲とは違うイメージを受けました。

 ビスマルクは、またちょっと別の理由がありまして。前廣(メインシナリオライターの前廣和豊氏)から、「デカいから、威圧感と、神々しさと、あと空中戦だから気持ちイイやつ!」っていうムチャなオーダーがあって(笑)。

――それはだいぶアバウトですね(笑)。

 イメージがぜんぜん噛み合ってないんですよ(笑)。「意味わかんないよ!」みたいなやりとりをしながら試行錯誤して、ああいう感じに。蛮神のイメージを全面に出すよりも“空中戦での爽快感”を重視しました。

――それとは真逆なのが、“ラーヴァナ討滅戦”の曲ですね。

 ベタベタなワルツと時代劇って感じでしょうか。あそうそう今回、戦闘中に音声つきのセリフを喋らせる演出をしてますが、まぁ手間がかかってしょうがないですね(笑)。『FFXIV』は6言語に対応しているので……。

――同じセリフでも言語によって長さが違いますね。音声の調整についても祖堅さんがすべて担当されているんですよね?

 ボイス自体は専任の担当がいますが、セリフを聞かせるために、タイミングや音量の調整はもちろん、BGMの帯域を削る作業は自分でやってます。声優さんが言語ごとに違って、それが6パターンあるんですもん(笑)。

――“ニーズヘッグ”戦にもセリフが入っていますが、あの“ドラゴン語”を話す声優さんも言語別なんですか?

 あれは全言語共通です。イギリスの方に担当して頂いて、それを加工してドラゴン語にしています。このドラゴン語がですね、うちのマイケル(英語ローカライズリードのマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏)がドラゴン語専用の文法を作ったらしいんですが、彼いわく「Dragonなんで、アゴが長いから、発音はこうして~」とか、いろいろこだわりがあるらしくて。

――マイケルさんがアツく語られている姿が目に浮かびます(笑)。

 「わかったわかった! だから、なんて言ってんだよこれ。英語にカタカナ振れ!」みたいな(笑)。別の意味で苦労しました。

容量との戦いを経て収録されたボーナストラックも超豪華!

――毎回容量については「大変だ」とお話しされていますが、今回はいかがでしたか?

 Blu-ray Discって使える容量がせいぜい46GBなんですね。これ、意外と入んないんですよ(笑)。「46GBあればいっぱい入るじゃん」と思いきや、フルHDのハイレゾ音源を、4時間以上入れようとすると、足りないんですね。

 そもそもBlu-ray Discの規格自体が、2時間の映画をフルHDの5.1chで入れられる容量がもともとのコンセプトの規格だったので、まあ2時間少々っていうのが普通なんですけど。そこに4時間……5時間弱入れて、オマケも入れて高品質のMP3も入れてとなると、まあぜんぜん足りないんですよね(笑)。

『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』

――お話を聞くたびにどんなマジックを使ってるんだろう? と不思議に思います(笑)。そういえばギネスに申請するって話題もありましたよね?

 なんか全然イケるみたいですよ? でもね、お金がかかるんですって!(笑)

――申請にお金がかかるんですよね。

 そうなんですよ、そこがネックでして(笑)。でも全然申請は出せるレベルみたいです。前人未到をいってるみたいなので。まあ、苦労を重ねればいいというものではないと思いますけど、毎回苦労になっちゃっていると。あ、ちなみに今回もオマケがありますので。

――ボーナストラックは気になっているファンの方も多いと思いますので、ぜひその内容ぜひお聞きしたいです。ゲームの開発シーンが入ってるとか?

 (サントラを再生しながら)オマケのページが今こうなっています。高品質のMP3がダウンロード、転送できるのはいつも通りですけど、ボーナストラックとして“Heavensward”のオープニングトレーラーが入っています。じつはゲーム上では圧縮された音声データになっているんですが、サントラでは非圧縮で、めちゃめちゃいい音で5.1chと2chが収録されています。映画館でも聴けるクラスの音質になっているので、ぜひいいスピーカーで聴いてほしいですね。それからこれがなんか謎の……デバッグしてるところ(制作作業中の様子)を撮られているんです(笑)。

――ナレーション入りなんですね。

 ドキュメンタリー風の、“某○○大陸”っぽいイメージです(笑)。これがですね、汚ない机も全部丸出しで、デバッグ画面すらも映っちゃっていて……。ただ、この日はめちゃくちゃ平和だったんですよ。普通に仕事をしていただけという。いつもは人がひっきりなしに来ては、どこかに連れていかれたりとかがあたりまえなんですけどね。

――かなりレアなシーンなのですね、この映像は。

 映像としては12分弱くらいでしょうか。あとはフルオーケストラで演奏した“天より降りし力”“希望の都”も収録しています。

――以前、1回試しで録ってみたとお話しされていましたね。

 それを再収録したバージョンです。あとこの曲はAとBがありまして、5.1chで収録した曲をMIXしているんですけど、Aが普通のバージョンでBがですね……遊んでいます。例えばティンパニーが自分の左前方からうしろを回って右前方に聴こえるような仕掛けとかですね。Aが大人しいバージョンで、Bは暴れてるって表現がいいのかな。

――オーケストラの真ん中に、自分が立って聴いてるような感覚ですか?

 指揮者よりも2~3メートルうしろくらいって感じですかね。客席ではないです。

――ついさっき容量が厳しいっておっしゃってたのに、こんないろいろ仕掛けを……(笑)。

 そうですね、ちょっといろいろと入れてみました(笑)。あと今回、ブリッジって言いまして、各チャプターに飛ぶときに、フライングマウントで飛んでたり(映像が流れる)。

――さっきはチョコボが飛んでましたね。

 そうですね。たしか4種類入ってます。今見ていてあらためて思うのですが、今回はスクリーンショットを撮影していて、イシュガルド地方は本当に画になるなと思いますね。

――たしかにどこ切り取っても様になります。

 イシュガルドの城も街もホントによくできているんですよ。ただ、あまり行かないところが多くてもったいないですよね。上層も普段はそんなに行きませんが、すごく綺麗なんですよ!

――たまに晴れたときの画がステキですね。

 そう。これがまさにそうですね(映像を出しながら)。「あ、晴れた! 撮るぞ!」って。これは多分でも……ズルをしたかな。プレイヤーさん達が映っていないスクリーンショットはだいたいズルをしています(笑)。

――イシュガルドといえば“堅牢 ~イシュガルド下層:昼~”の曲が、いろんな形、場面で使われていますね。これはイメージを統一する曲として意識をされたのでしょうか?

 だいぶしましたね。じつはこの曲を主において、各エリアの曲を作ってるんですけど、この主を作るにあたって、もっと大軸の主があるんです。それがオープニングトレーラーの“Heavensward”で、映像の後半で“僕、戦士やめる”ってところの後で流れている旋律が、大軸の曲になります。

――“ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦”でも使われていました。

 はい。あの旋律がすべての根源みたいな感じです。だからサントラのタイトルも“Heavensward”という。(ディスクを操作中)ここですね、ここのメロディーがドラゴン語なんですよ。

――歌詞自体がドラゴン語なんですか?

 途中まで英語で、ここからドラゴン語なんですよ。一応、英語でどういう意味なのかも解説してあります。あとはタイトル画面曲も新たに雪を降らせました。動画のエディターさんも光の戦士でして、「ここは雪を降らせないと! 僕が降らせます」と降らせてくれました(笑)。

――今回のサントラはパッチ3.0~3.1までの曲が収録されてますけど、作業はいつもの感覚よりも長いスパンでしたよね。あのアドバンテージは3.1の曲作りに余裕ができましたか?

 全然余裕はなかったです。足りないですよ、発注量がおかしいんですもん(笑)。サントラの制作も配信の作業もありましたし。

――そういえばサントラの発売前に、3回に分けて楽曲の先行配信もありました。この配信は初の試みでしたが、こちらの狙いとは?

 サントラはいざ“作ろう!”となっても、発売までどれだけ全力疾走でやっても半年くらいかかっちゃうんですよ。リサンプリングだけして終えてるわけではないので、ハイレゾ音源に起こす作業はイコール、作り直しなんです。

 僕としてもみなさんのゲーム体験がホットなうちにお届けできないかというジレンマもあって。でも、だからといってCDで出すのも違いますし。もうCDで発売というのは時代に反してるんですよね。みなさんも欲しい曲はスマホで聴くか、MP3プレイヤーで聴きますし、CDで出しても取り込まれて終わるから、CDで出す意味がまったくないんですよ。

――たしかに、1回録り込んだらCDでは聴きませんね。

 そうなんですよ。しかも取り込まれた曲の音質は本来の音質と全然違うんです。だからそこにこだわりたいからBlu-ray Discで出しているわけです。けれどもそう考えると、どうしても時間か……。だから、音質は最高品質ではないものの、とにかくいつでもどこでも手軽に聴きたいという声に応えて配信しました。

――曲のラインナップは祖堅さんがお決めになったんですか?

 曲は生放送中にアンケートをとりました。バトルジャンル、フィールドジャンルなどのカテゴリにわけて、「どれを配信して欲しいですか?」ってアンケートを取って。「これ!」とみなさんが選んだ曲をそのまま配信しました。

――サービス2周年記念イベントの生放送などで希望を募っていましたね。本当に曲目が豪華でした。

 主要な曲がすべて配信されましたね。“ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦”も先に出ちゃって。ビジネス面で考えると「サントラが売れなくなる」って声も社内からありましたけど、「知らん!」ってやっちゃいました(笑)。

――そういう意味では、ファンの声をダイレクトに反映した形だったんですね。ちなみに、ダウンロードした方のカスタマーレビューなどはご覧になりましたか?

 はい。やはりみなさん“ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦”がお好きらしく、ダウンロード数も一番多いんですよね。“Dragonsong”とか“Heavensward”とかじゃなくて。

――メインテーマ曲をいろんなところで聴いてきて、最後のラストバトルで“ドン!”っていう感じだったんで、やっぱり印象にすごい残ってます。

 でも最初はあの曲もあの感じでスタートするんじゃなくて、割とジャカジャカと始まる感じだったんです。実際にカットシーンが出来上がってバトルが組み上がってという段階になると、最初からジャカジャカすると“違うな”ってなりまして。

――それで最初荘厳な感じで始まるんですね。

 そうです。あの部分はカットシーンが出来てから作りなおしたんですよ。

『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』

――ちなみにいわゆる“極”版では別の曲が使われていますが、新たに作ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

 “アルティメットエンド”でフェーズが変化する感じを出すために、曲の使い方を考えました。前廣のオーダーは、通常のナイツ戦の曲を前半にもってきて、アルティメットエンド以降は派手なロックの曲になるといういつものパターンでしたが、どうしても違和感があって、後半ロックになる形はやめようと伝えて。ナイツ戦は通常戦の曲のイメージで完成しているから、それを後半に持ってきて、前半を新たに作ることにしました。

――周りのプレイヤーにも、この曲が好きと挙げる人が多いです。

 喫煙室で吉田(プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏)に会った時、ぼそっと「今回もラスボスの曲、やばいな…」って言われて。超照れくさかったから、応えもしなかったんですけど(笑)。運転中にガンガン流してるみたいで、吉田もお気に入りみたいです。

――祖堅さん的には、完成したときに、一番手応えを感じた曲はなんでしょうか?

 やっぱり“ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦”の曲が一番バシッと決まったかなと思うんですけど、それ以外で言うと“アバラシア雲海”の曲かな。これがね、さじ加減がめちゃくちゃ難しくて。

――ここほんとに明るい感じで、ほかのエリアとは雰囲気が違いますね。

 ここだけ前廣のオーダーがね「ポップ!」って内容で。ポップって……千年も戦争してる地域に来てるのに、ポップって…どういうことだよ!? って、いろいろ話し合いながら作りました。できあがったときは、「めちゃめちゃハマったなー」って感じがしましたね。

――エリアの雰囲気にバリエーションを感じさせられました。

 “暗いなかにも残された明るさ”みたいなのを、うまく演出できたと思います。

――MMORPGはバージョンアップで形が変化していくじゃないですか。この場所もバヌバヌ族の蛮族クエストが追加されて、またここに来て聞くと、また意味合いもだいぶ変わってきます。しかも蛮族クエストの追加後、冷酷なブンド族と大らかなズンド族とブンド族のテリトリーが切り替わると、曲調が変わるようになってるじゃないですか。

 そうですそうです。最初は前廣から“バヌバヌ族、善/悪”って発注が来て「なんのこっちゃ?」と(笑)。善はズンド族の集落で流れて、悪はブンド族の縄張りで流すと言われまして。あと「曲を反映させる範囲はすごい狭いから」と言われていて、だからそんなに曲尺も用意してなかったんですよ。

 で、蓋を開けたら広範囲で流れるじゃないですか。悪をイメージした曲はピンポイントで鳴るんだろうなと思ってたら逆で、善のほうが狭くて悪はエリアの中心地一帯みたいな……。締め切り前だったけど、「尺が足りないだろ、これじゃ!」って慌てて足して、今1分くらいになっています。だから当初はもっと短かったんですよ。「あぶない、あぶない!」って。

――あとは“魔航船ヴォイドアーク”の曲も収録されていますが、今回のアライアンスレイドダンジョンとしての曲のテーマとはどんな感じでしたか?

 あれはですね“ヴォイドアーク”として軸になる曲ではなく、今回の雰囲気はこれです。という意味で作っていってる感じなんですよ。だから1回目の“ヴォイドアーク”に関して言うと、テーマは“棺桶”。

――Twitterでもつぶやかれていましたね。「棺桶感が出ないからやり直し」って。ちなみにこの“棺桶感”が気になります(笑)。

 コメントにも“棺桶臭を増すために”って書きましたね。最初は全編の旋律をピアノで弾いて、合間にハープシコードを入れるみたいな感じにしてたんですけど、なんかね、優しくなっちゃって。

――ちょっと荘厳な感じですか?

 荘厳というよりも棺桶臭です。“ドラキュラ感”みたいな?(笑)

――なるほど。なにかがよみがえってきそうな雰囲気ですね。

 それを出すためにはピアノじゃないなと思って。途中からはピアノにバトンタッチしますけど、当初は最初からずっとピアノだったんです。冒頭からハープシコードに変えたんですけど、そうするとピアノにバトンタッチする場所とかも、全部変わってきちゃうので。結局「ダメだ、やり直そう!」と。その結果こうなりました。ただ、SOKEN’sCOMMENTは文字がいっぱい書いてありますけど“ヴォイドアーク”に関していうと、筋トレのことばっか書いてあるんです。

――なぜに?(笑)

 どうも開発末期になると、健康状態が悪くなるので、サウンドチームみんなで筋トレをして乗り切ろうとしたんです。ちょうどそのタイミングで、締め切り前の最後に作っていたのが“ヴォイドアーク”だったんですよ。だからこの曲を作っていた頃の思い出って、サウンドチームがまっさきに思い浮かぶのが筋トレなんですね(笑)。ということで“ヴォイドアーク”で通常、戦闘、ボス戦の3曲が入っているんですけど、全部筋トレのコメントです。

――祖堅さんらしいコメントが読めるのも、このサントラの楽しみの1つですし。

 筋肉の話ばかり書いてありますね……。ムキムキマッチョとか書いてあるし。

――最後の2行しか曲のコメントを書いていないですね(笑)。

 すっかり書いてなくて、「しまった、どうしようかな」と思って。文字数制限ギリギリで、慌てて書きました。

――先ほど棺桶をイメージとお話しされていましたが、“ヴォイドアーク”はあのエリアは完結で、また次はまったく違うものになっていくと吉田さんが以前お話されていましたが、曲も次のアライアンスレイドダンジョンになるとまたガラッと変わったものに?

 変わるんではないでしょうか。棺桶なのかどうなのかわかりませんけど。でも、ディアボロスがいますからね。全部棺桶じゃなくなるとは言い切れないです。ただ、まだ作っていないのでわかりませんけど(笑)。

『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』

パッチ3.2の注目曲“死闘”の使い方に四苦八苦

――先日のパッチ3.2で実装された“魔神セフィロト討滅戦”では、『FFVI』の名曲“死闘”をアレンジしたものが使われていますね。

 これがですね、このゲームの開発にたずさわって、初めてあんなに悩んだのかな。楽曲自体のアレンジ作業はすぐ終わったんですが、それをセフィロト戦のどのタイミングで使うかで1か月半も悩みました。『FF』を代表する曲の1つだから、やっぱり後半に持ってくるべきだと僕は思っていたんで、当初は最後のフェーズに死闘を入れていたんですよ。

 そしたら、吉田が来まして。「後半は『FFXIV』らしいバトルに切り替わるから、”死闘”を流すのは前半のほうがいいんじゃないか?」と。でも僕は「あの“死闘”でしょ!? なんで後半に使わないの?」と思ったんですね。

――熱心なファンほどそう思ってしまいますよね。

 ただ、セフィロト戦が完成してから確認してみると、後半じゃダメだったんです。あれだけ吉田の意見を否定して、「吉田さんは”死闘”の重みをわかってない。あれは後半なんだ!」って説得してたのに。それでまた吉田のところに行きまして。「すんません、一回説得しましたけど、あれナシで」って(笑)。そんなやり取りがあったほどとにかくこだわり抜いて作ったので、これからバトルに挑戦される方は楽しみにしていてください。

――では最後にサントラ発売を心待ちにしていたファンへ向けて、メッセージをお願いします。

 大変申し訳ございません、本当にお待たせしました。僕としてもプレイヤーのみなさまとまったく同じ心境でして、やっと出せたなという感じです。かなり観ごたえ・聴きごたえのある作品になっています! 初回特典もありますので、なるべく早めにご購入ください!

――今回も、全国で発売イベントを行われるそうですね。

 各地で違うことをやろうと思ってるんで、ぜひ来てください。今回ボツになった曲がけっこう多いんで、会場で流しちゃおうかな? 

――では最後に、今年の豊富などをお聞きできれば。

 筋トレしつつ、開発にいそしもうかなと。あと、年末にファンフェスがあるんで、それに向けて準備もしています。先日“THE PRIMALS”のメンバーとひさびさに連絡とってみたら、元気そうでした。ひょっとしたら、何かあるかもしれないですね(笑)。

『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』

【『ファイナルファンタジーXIV』電撃の旅団冒険録 連載 】

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