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『マブラヴ:ディメンションズ』1周年記念インタビュー。クローンが戦場に赴く設定の成り立ちから、人気の“甲21号作戦”が題材の最新シナリオまですべて聞きました【マブD】

文:カワチ

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 NextNinjaとaNCHORのスマートフォン向けアクションRPG『マブラヴ:ディメンションズ(マブD)』が本日(7月11日)1周年を迎えました。

 電撃オンラインでは、本作の1周年を記念してシナリオディレクターのタシロハヤトさんとシナリオチームの山崎彬さんにインタビューを実施。

 企画の成り立ちから最新の1周年記念イベントまで、気になることをいろいろお聞きしたのでぜひチェックしてみてください。

[IMAGE]※本記事はNextNinjaの提供でお送りします。

ソーシャルゲームでもキャラクターの“死”を重く描くために【マブラヴ:ディメンションズ】

――『マブラヴ:ディメンションズ』1周年おめでとうございます! 今の率直な感想をお聞かせください。

山崎
1年続けられたのはお客様のお陰だと思っています! この先、何年も楽しんでいただければ嬉しいですね。

タシロ
『マブラヴ』発売から20年経過してなお多くの方に受け入れていただけていることが本当に幸せです。ありがとうございます!

――『マブラヴ:ディメンションズ』の世界観について。西暦2023年にBETAが侵攻してくるという設定や、それを迎え撃つ民間軍事会社・イモータルズという設定はどのように生まれたのでしょうか。新たな確率時空を題材にした理由や、初期から企画の変移などありましたら教えてください。

山崎
『マブラヴ オルタネイティヴ』が約20年前を扱ったタイトルになりますので、時代ギャップを埋めるために、新たなタイトルは現代を舞台にしたいというアイデアがありました。

 するとタシロハヤトが、現代を舞台にするなら『聖戦士ダンバイン』のエピソードにある、異世界の存在が東京上空に出現するシチュエーションをやりたいと熱望したので、その案を採用して現代日本にBETAが出現するという話になりました。

 またゲーム的な都合として、リリース当初から各国の戦術機や多くの兵士たちが登場できなければならなかったのですが、最初から各国軍が戦術機を防衛戦力として準備しているとは考えにくかったのと、衛士登場の問題は現代世界だけでは解決できなかったので、謎の多い民間軍事会社・イモータルズという存在を設定しました。

 この会社の設立・運営資金は、並行世界から供与された技術のパテントなどで得ています。例えば戦術機生産のノウハウであったり、重症を負った兵士を一刻も早く戦場に送り返すための疑似生体医療技術であったりです。どちらも現代世界にはないもので、その分野に革命をもたらしているという設定ですね。

 ではなぜそれをイモータルズが握っているのかと言えば、それには当然、香月夕呼が絡んでいる……ということで、この辺の設定に関しては物語が進んでいくに連れて秘密が明かされていくと思います。

――ゲームをプレイしてユーザーが驚いたことのひとつに、本作に登場するイモータルズ所属の衛士たちが戦死をしても新しい体で復活して戦い続ける点があると思います。この設定は基本的にキャラクターが死ぬことがないスマホゲームへのアンチテーゼを感じたのですが、どのように生まれたのでしょうか? ゲーム的な設定から生まれたのか、SF的な設定から生まれたのか、もしくは『マブラヴ』らしさから生まれたものなのか、など根幹となる部分をお聞かせください。

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タシロ
さまざまな観点から複合的に考えた結果、生まれた設定です。まず登場するキャラクターは、全員が同じ時代を生きているわけではありません。『マブラヴ オルタネイティヴ』や『トータル・イクリプス』は2001年、『シュヴァルツェスマーケン』は1980年代です。そして本作は2023年~となると、キャラクターたちが原作中のビジュアルを保ちつつ一堂に会する方法を考える必要があります。他にも“並行世界を移動できる”のは、特殊な事情を持った存在に限られなければなりません。

 これらを解決する手段として目を付けたのが、『マブラヴ オルタネイティヴ』本編で描かれた“擬似生体という人体再生技術”と、“量子電導脳への人格移植”というSF設定です。ここから技術発展があれば“本人の記憶を持ったクローン体”が作れると思いました。

 しかし、同時にここでネックになったのが、“スマホゲームのキャラは死なない”問題です。スマホゲームではユーザーが手に入れたキャラクターは財産であり、それを設定や物語の都合で無価値にしてしまうことは事実上不可能です。ユーザーはこの不文律を理解しているので、これだと命についてどうやって描いたとしても軽く受け取られてしまう可能性があると考えていました。

 そこで実は企画当初、キャラをロストさせても大丈夫な方法を真剣に考えたこともあったのですが、結果としては、死なないことが悲哀になるような描き方をする方向にまとまりました。

――そうですね。おっしゃる通りその不文律はユーザーに根強くあるものだと思います。では、どのような方向にもっていったのでしょうか?

タシロ
具体的には、クローンであるキャラクターが、本人でありながら本人ではないということを自覚している設定にし、かつ、この世界には“現在の本人”が実在するために公的に名乗ることもできず、外部からは“クローンで事実上の不死身”であることを理由に人権を認めてもらえない。

 それどころか、気味悪がられたり道具扱いされたりしているという存在になっているのです。それでも人類のために戦うという覚悟を持って厳しい戦いに臨んでいる……といった具合です。

 さらには、「死んでも『総体』としての自分は何度でも復活できる。だが復活するのは今このことを考えている『個』としての自分ではない。あくまでもセーブポイントで保存された自分だ」という死生観を抱きながら、「何度再生されてもBETAを倒したい」と考えるキャラクターもいれば、「死んだら二度と再生してほしくない」と考えるキャラクターもいるなどの個性を表現するようにしています。

――そうした考えの差があるというのはうなずけますし、より掘り下げたものが見てみたくもなります。とても気になるポイントですね。

タシロ
はい。現在、物語は並行世界を放浪していますが、いずれ元の世界にたどり着いた場合、その辺りが問題となる話が展開できると考えています。

――第1章で篁唯依が戦死し、第2章でクローンとして復活する展開に驚いたユーザーは多いと思います。初期からこの構想は決まっていたのでしょうか。『マブラヴオルタネイティヴ トータル・イクリプス』の唯依がこの役回りになった理由なども教えてください。

山崎
唯依が最初に死亡するキャラとして選定された理由はいくつかありますが、ひとつには原作の中で生存して終わったヒロインであることがあげられます。またディメンションズでも唯依と対比になるポジションのキャラとして山城上総が設定されています。


 彼女は唯依とは異なり「再生されたくない」という考えを持っているのですが、この違いに焦点を当てた物語を将来的に語りたいと考えての配置ということも理由のひとつです。どのぐらいサービスが続けばそれが描けるようになるかは、ちょっと予想できませんが(笑)、そこまで物語が進められるように、ぜひ応援をお願いします!

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――描かれる時を楽しみに待っています! 続いて、長年のファンが多い『マブラヴ』の新規ストーリーを作るなかで、心がけていることや注意していることなどあれば教えてください。神宮司まりもや御剣冥夜など、既存キャラクターを取り扱うなかでルールを課していることなどはありますか?

タシロ
矛盾することですが、既存キャラクターのキャラ性を損なわないようにすることと、あまり気にせず自由にやることです。さまざまな思惑があってクローン設定になっていますが、クローンだからといってオリジナルとまったく同じ言動をするわけではありません。置かれる立場も生活も違います。メタな話をすれば、ゲームとしての性質や求められるものも異なります。

 そういうときに「設定がこうだから……」ということに固執しすぎると、せっかく新しい媒体で新しい物語を展開できるのにシュリンクしてしまうばかりか、相変わらずやってることが同じだなと言われてしまいます。確かに『マブラヴ』に期待されているものがあって、それを裏切ることは避けなければなりませんが、何事も程度問題だと考え、山崎彬と相談しながら加減を探りつつ制作しています。

――原作のシリーズで登場するキャラクターは本作でも数多く登場しますが、登場するキャラクターの基準や順番などはどのように決めているのでしょうか?

山崎
基本的には開発・運営元であるNextNinjaさんがさまざまな条件を加味して決めており、それを生かすようなストーリー作りをする形です。ただ、完全にお任せということではなく、事前にすり合わせをして希望があればお伝えした上で、最終判断をしていただくというやり方です。

――『マブラヴ:ディメンションズ』はオリジナルキャラクターたちも人気です。彼女たちがどのような役回りで生まれたキャラクターなのか教えてください。またゲーム内で明かされていない意外な素顔などがあればぜひ教えてください。

山崎
千木良世紫宵は「冥夜に酷似しているが冥夜ではない」というキャラクターです。彼女はこの物語の根幹に深く関与しているキャラクターであり、今後徐々に彼女の出自や経験したことが明かされていくことになると思います。


 朱土岐真白は企画初期の段階では管理官の秘書という立場で設定されていましたが事情によって、設定が大幅に変更されたキャラクターになっています。彼女も大きな秘密を抱える存在ですが、現段階ではただのヤンキー漫画好きだと思っていただければと思います。


 東雲祉乃は物語構成上、イモータルズの外の視点が必要だと考え、設定されたキャラクターです。まだ本編では顔見せ程度にしか登場していませんが、やがて大きな役割を果たすことになります。特撮好き一家の生まれであり、家族もそれぞれが人を助ける仕事に従事しています。

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――現状までのメインストーリーについて、特に読んでいただきたい部分がありましたら、教えていただけますでしょうか?

山崎
序章から参章まではキャラクターと世界観の紹介を意識していました。現代の日本に戦術機が存在している状況、再生衛士たちの扱い、国防隊との関係値など今後の物語の根底になるポイントを描きました。そういう意味では本編開始といえるのは並行世界へ転移してしまった肆(よん)章からになるかと思います。

 並行世界へ移動し、自分たちが所属していた社会とは違う社会や歴史、そして自分とは異なる自分と邂逅していく。個人的には珠瀬壬姫と鎧衣美琴が大人になった自分自身と対面するあたりですね。

 また厳密には本編ではないかもしれませんが、唯依が死亡したあとの再生を描いた“帝都燃ゆ”イベントは読んで欲しいですね。あのような形で設定を物語に落としこんで表現するのが好きなので、本編のどこかでも似たシチュエーションは描くことになると思います。

 ただ、それが同じような描き方になるとは限りませんが……。ただし現状では過去のイベントはクリアしていないと再読できないので、ここはNextNinjaさんに“帝都燃ゆ”イベントの復刻をお願いしたいですね!

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1周年の新シナリオは伊隅みちるを中心としたヴァルキリーズの生き様に注目【マブラヴ:ディメンションズ】

――1周年の新シナリオについて、"甲21号作戦"を題材にした理由や経緯を聞かせてください。

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タシロ
さまざまな検討をする中で、NextNinjaさんからの強い要望があって実現したものになります。ユーザーのみなさんにとって大きなインパクトになるだろうし、これまで本作を遊んだことがない方への訴求効果もあるというのが決め手になりました。一方で、甲21号作戦はそれだけ有名です。テレビアニメでもしっかり描かれていました。そのため、どういう物語にするかについてはかなり悩みました。

 そこで出たのが、メインシナリオ第肆章(だいよんしょう)世界……つまり『マブラヴ オルタネイティヴ』とは別の確率時空で行われた内容を扱うというアイデアでした。これならば、メインシナリオを読んでいただくきっかけ作りにもなります。メインシナリオはおかげさまで好評をいただいているので、これを機にもっと多くの方に読んでいただきたいと思っています。もちろん既に読まれた方も、読み直してみると新しい気付きがあるかもしれません。

――タシロさんからも有名という言葉がありましたが、BETAとの激戦を描いた"甲21号作戦"は原作やアニメでも人気の高いエピソードのひとつだと思います。このエピソードを改めて掘り下げるうえで注意したポイント、今回のシナリオで「ここが魅力だ」というポイントがありましたら教えてください。

山崎
凄乃皇・弐型が地下茎に突入するという『マブラヴ オルタネイティヴ』ではなかったシチュエーションが展開します。そんな中での伊隅みちるを中心としたヴァルキリーズの生き様には注目していただけるとありがたいと思っています。

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――涼宮茜は『マブラヴ』シリーズはもちろん、『君が望む永遠』のときから登場する人気キャラクターのひとりです。今回、彼女にスポットを当てた理由や、どういったところを魅力に感じているのか教えてください。

山崎
涼宮茜は生き残って物語を語り継ぐポジションのキャラクターだと認識しています。メインヒロインとして本編に登場したわけではありませんが、そんな彼女にも本編では描かれなかった物語が存在し、その上でのキャラクター性ですので、そこを別の形で描きたかったという感じです。

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――茜以外にも、今回は登場しております柏木晴子、宗像美冴、伊隅みちるが登場しています。彼女たちについてもその魅力に感じるポイントを教えていただいてもよろしいでしょうか?

山崎
柏木晴子は人気の高いキャラクターで、その魅力のひとつは達観した様子を見せつつも相手を思いやっているというバランス感覚なのだと考えています。とは言え、部隊の仲間に対してそれが描かれることはあまりありませんでした。今回は茜が逸(はや)っていることもあり、かなり心配した様子が描かれているので注目していただければと思います。

 宗像美冴は縁の下の力持ち的なポジションになっていますが、今回は彼女が部隊のNo.3であることに、どのような意味があるのかを描いたつもりです。

タシロ
伊隅みちるも甲21号作戦には欠かせない人物ですが、並行世界の本作戦では何を考え、どのように指揮したのか、注目していただきたいところです。PVで公開された迫力のあるイラストや、美しいキャラクターイラストなど、ある意味今回の主役ですね(笑)。

――7月1日には新たに白銀武も登場しました。武は『マブラヴ』という作品において特にキーとなるキャラクターです。シナリオで彼を扱う際に心がけていることなどがありましたら教えていただけますでしょうか。

山崎
白銀武についてはディメンションズにおいても重要な秘密を持つキャラであることは間違いないのですが、それが語られるのはまだ先の話になると思っています。本当に人気のあるキャラなので大事に扱っていきたいですね。

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――1周年の新シナリオは茜が生死不明の状態で終わるのに驚きました。この続きの第2弾はどのような内容になるのでしょうか。見どころ、注目のキャラクター、内容のヒントなどがありましたら教えてください。

山崎
個人的には言いたくてたまらないのですが、こちらも全力投球に近いシナリオになっているのでお楽しみになってお待ち下さい(笑)。

――その他についてもお聞かせください。期間限定シナリオは本編とは異なるギャグテイストが魅力だと思いますが、とくに思い入れのあるシナリオはありますか?

山崎
どのシナリオも狂気に満ちていてマブラヴらしいなと思います。過去作のファンディスクに収録された外伝などのエピソードは、これは本当に公開しても大丈夫なのかなと思ったタイトルが多かったですし、その空気が、よく再現されているなと思っています(笑)

タシロ
現在同時開催中の“イモータルズ衛士達南へ”でしょうか。これは初めて前後編に分けてシナリオが作られたイベントで、前編と後編でテイストを変えています。前編は従来通りのギャグテイスト、後編はシリアスとはいかないまでも抑えめにした内容でコントラストが気に入っています。また前編は久しぶりに東雲祉乃が登場したにもかかわらず、もう滅茶苦茶なキャラクターになっている点、後編は『マブラヴ オルタネイティヴ クロニクルズ 贖罪』を思わせるシチュエーションを表現できた点がお気に入りです。

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――期間限定シナリオではオルソン大尉が美味しい役回りであることが多いように思えますが、スタッフにも愛されているキャラクターなのでしょうか?

山崎
ああいう突き抜けたキャラクターは面白いですね。勝手に動いてくれるので書いていて楽しいキャラだと思います。

タシロ
都合のいい男ですね(笑)。ヨゴレには最適です。他にもそういうキャラクターはいるのですが、重宝されているあたり愛されていますねぇ……。

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――サービス開始から1周年を迎える本作ですが、今だから話せるウラ話などがありましたら、ぜひ教えてください。

山崎
今でも話せません。殺される(笑)……というのは冗談ですが、うっかり溢してしまうと、ユーザーのお楽しみを奪いかねないので、言えないことは多いです。実はNextNinjaさんにも『マブラヴ』の関係者が複数人在籍しているので、制作の空気自体は昔とあまり変わらないんです(笑)。いい大人が真剣になって、「そのギャグはつまらない、オレならこうする」とか、「いや、◯◯はそこでそうは反応しないですって!」みたいな感じで夜中まで角突き合わせて作っています。

――制作風景がうかがえただけでもありがたいです(笑)。本作のファンや、これからゲームをプレイしてみようと思っている人にひとことお願いします。

山崎
『マブラヴ:ディメンションズ』は皆様の応援で1周年を迎えることができました。本当にありがとうございます。この1年でさまざまな遊びも追加されており、やり応えのあるゲームになっています。また「確率時空」という機能があり、現在でも販売されている『マブラヴ』『マブラヴ オルタネイティヴ』や『帝都燃ゆ』をスマホでプレイすることができてしまいます!

タシロ
「マブラヴは聞いたことがあるけど買ってまではちょっと……」と思っている方! 「友人に勧めたいが、プレイは時間がかかるし」と思っている方! これをスマホにインストールしておけば解決です。今後もいろいろな施策が予定されているので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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