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『魔法少女ノ魔女裁判』レビュー。魔女処刑の“共犯者”になってみませんか? 疑心暗鬼、嫉妬、極限状態で魔法少女たちの闇を暴く

文:長雨

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 Re,AERのブランド・Acaciaの1作目で、発売前からSNSでも話題の注目作『魔法少女ノ魔女裁判』が、Steamで7月18日に配信されました(Nintendo Switch版は発売日未定)。

 本作は牢屋敷に閉じ込められた美しい魔法少女たちが、裏切り、殺し合い、犯人である“魔女”を“魔女裁判”で探し出す魔法議論ミステリーADVです。

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 今回は、ミステリ小説&ゲーム好きのライターによるプレイレポートをお届けします。筆者は、魔女を処刑する共犯者(プレイヤー)として、一度物語の結末を見ております。

 これから共犯者になる皆さんの牢屋敷ライフや、“魔女裁判”の楽しみを奪うようなことがないように、真相にはもちろん触れておりませんが、予備知識なしで楽しみたいという方はご注意ください。

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▲画像は開発中のもので、製品版とは異なる場合があります。

魔法少女たちを待つ、残酷な運命


 本作の舞台は、絶海の孤島にある牢屋敷。

 人間のなかには国に災厄をもたらす“魔女”になる可能性を持つ者がおり、全国検査でその因子が大きく見つかった者は、この屋敷に収容される決まりになっています。

 “魔女”の因子を持つ者は、みんな何らかの“魔法”が使える世に言う魔法少女です。

 物語は、魔法少女の1人・桜羽エマ(声優:三木谷奈々)が夢から覚める場面から始まります。彼女が見ていたのは、虐めにあっている夢で……。

 開幕早々に感情を揺さぶられるシーンを見せられ、「ちゃんと、共犯になる覚悟を決めてプレイしなければいけない作品だ」と、プレイ直後から思い知らされました。

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 その後、獄長である謎のフクロウ・ゴクチョー(声優:中尾隆聖)の呼び出しで、魔法少女たちはラウンジに集められ、牢屋敷に収容された理由を聞きます。

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 牢屋敷に収容されるのは、13人の少女たち。みんな個性豊かで、かわいくキレイな子ばかりですが、全員トラウマを抱えていることが公式サイトで明かされています。

 エマの過去を思うと、かなりつらい過去を持っていそうだと想像がつきます。
 
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 しかし、それを感じさせず、積極的にコミュニケーションを取ってくれる魔法少女たちも!

 偶然出会った同じ年ごろの魔法少女同士、仲よくなれたら確かにステキですよね。当然、その願いは叶わないんですけど……。

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 かりそめの和やかな時間は、ある少女の死で終わりを迎えます。

 さらにゴクチョーいわく、因子を持つ者はストレスによって魔女化が進み、やがて殺意や妄想につかれ、必ず囚人間の殺人事件が起こるとのこと。

 そして殺人事件が起こったら、“魔女裁判”で魔法少女たちが話し合い、裁かれる“魔女”を必ず決めなければいけないというのです。

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 知り合ったばかりで、お互いを信じ切れない魔法少女たち。物語を進めると、魔法少女のなかに“黒幕”がいる可能性も示唆され……。

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 また牢屋敷の規則は厳しく、本来は安らぎの時間である食事も酷いもので、環境的な面からも彼女たちにストレスを与えていきます。

 それならば逃げればいいと考えるところですが、囚人である魔法少女たちは、規則で逃亡を禁じられています。島内は看守という異形の存在が見回っており、見つかれば殺されてしまうことも……。

 つまり牢屋敷に閉じ込められた時点で、魔法少女たちの運命はBAD END行きが、ほぼ決まっている状態。

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 そんな過酷な環境でも、ほかの魔法少女を信じて、協力して島から脱出しようと奮闘するエマ。その想いは、ほかの少女たちの心をさまざまな形で動かしていきます。

 魔法少女同士の友情、絆、そして裏切り、ジェットコースターのように気持ちが動かされ、先を読み進めたくなる引き込まれる物語展開になっています。

 ぜひ、魔法少女たちの運命を最後まで見届けていただきたいです。

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 また牢屋敷自体にも多くの謎があり、ミステリ好きの好奇心を刺激されます。なぜ牢屋敷は作られたのか、“魔女”や因子とは何なのか、“黒幕”は何者なのか……。

 物語全体に散りばめられた伏線を集め、世界観全体の謎に迫っていくのも楽しいです。

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犯人の嘘を見抜き、処刑対象となる魔女を見つけ出せ


 本作は大きくわけて“導入”、“殺人”、“魔女裁判”、“結末”という4つのステップに分かれています。

 “導入”は、世に言う日常パート。牢屋敷内を探索して、魔法少女たちと交流したり、世界観に触れるヒントを集めたりできます。

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 ときには、選択肢が発生することも! 極限状態の様子を描いた作品なので、選択を誤れば、BAD END一直線です。

 本作にはヒント機能(オン・オフ可能)がついており、BAD ENDの選択肢を、視覚的に知ることができます。そのため、危険を避けて安全にプレイすることが可能です。

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▲ヒント機能がオンなら、BAD ENDの選択肢にドクロマークが付きます。
 逆に言えば、意図的にBAD ENDを回収することができるということ。

 BAD ENDの選択肢を選ぶことで、見えてくる魔法少女たちの一面もあります。BAD END後はすぐに直前の選択肢に戻ることができるので、ぜひ悪意のある選択もしてみてください。

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 “殺人”では、悲劇が起こります。命が奪われるのですから血の描写もありますが、グロテスクさはなく、美しささえ感じるような表現になっているので苦手な方もご安心ください。

 事件発生後は、手がかりがないか牢屋敷内を捜査します。時間や回数の制限はないので、隅々まで見てまわれるのが助かりました。

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 “魔女裁判”では、集めた証拠をもとに、魔法少女たちと議論を交わします。

 議論パートでは、魔法少女たちの言葉のなかに、赤いキーワードが登場します。このキーワードを選び、掘り下げることで議論が進んでいきます。

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 赤いキーワードは複数登場し、なかには正しい情報もあります。的外れな指摘をしても、ペナルティはないので安心してください。

 ただし議論には時間制限があり、タイムオーバーになるとゲーム終了です。やみくもにキーワードを指摘すると、時間が足りなくなる絶妙な時間配分で、筆者は何回か痛い目にあいました。皆さんは、ご注意ください。

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 また赤いキーワードを指摘するだけでなく、証拠の提出や証言できる魔法少女の指名が必要になる場合もあります。

 証拠や魔法少女の情報は、魔女図鑑(画面左上のルーペのアイコン)で確認できるので、しっかり目を通しておきましょう。

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 ここでポイントになるのが、魔法少女たちは捜査のくわしい知識がない、普通の女の子であるということ。そのため、正確な死亡推定時刻などを調べることができません。

 またプレイヤーが持っている証拠、確認した情報を、ほかの魔法少女たちが知らない場合もあります。

 相手を疑うだけでなく、同意したり、詳しい情報を聴いたりすることも重要になります。

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 さらに注意すべきなのが、本作はミステリ小説なら禁じ手とされることも多い“魔法”が使える世界だということ。“魔法”がどのように事件に関わっているのかも、ぜひ注目して楽しんでいただきたいです。

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 “結末”では、投票で選ばれた魔法少女が処刑されます。処刑方法はとても残酷ですが、それぞれの犯人らしいフィナーレなんですよ。

 犯人確定後の処刑ボタンは、プレイヤーが押すことに……。“最悪”を追求する開発チームが、さまざまな場所で張り巡らせる悪意(仕掛け)に、心をザワザワさせられっぱなしです。

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 処刑では、犯人に選ばれてしまった魔法少女のトラウマが判明し、それを刺激されて魔女に変わっていく様子が描かれます。

 そこで明かされる殺人の動機は、悪だと一方的に非難できるようなものではなく……。真相を知って何回か泣きましたし、生きていてほしかったと何度も思いました。

 そんな悲劇を繰り返しながら、物語は進んでいきます。

 事件ごとに、チャプターに区切られていません。現実に戻ることなく、魔法少女たちの生活に没入したままプレイできるのはうれしいです。

 ただ、どこで終わらせるか迷うんですよ。特に物語が加速する中盤以降は、やめるタイミングがなくて、筆者は最後まで一気にプレイしました。皆さんも、できるだけ心と時間に余裕がある状態で進めることをオススメします。

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魔法少女たちの友情と絆が尊く、そのぶん心がえぐられます


 過酷な生活を送る魔法少女たちですが、平和な日常生活を送っている場面もあり、友情もしっかり芽生えます。

 どの魔法少女も物語を進めると、第一印象とは違う顔を見せてくれるようになって、「みんな、いい子じゃん」という気持ちになるのです。

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 ただ公式が、“全員死ぬ”と明言しています。プレイ途中までは「そうはいっても、メインキャラは生き残るんでしょ?」と思っていましたが、嘘偽りはありませんでした。

 こんなお別れになるなら、魔法少女たちのステキな部分や穏やかな日常なんて、知らない方がよかったと思ったことも……。

 幸せな時間があると、それを失ったときの悲しみも大きいですよね。本当に、最悪な悪意ばかりが散りばめられておりました(褒めています)。

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 デスゲームものは、序盤に退場するキャラの掘り下げ不足を感じたり、参加メンバーによって事件数が推測できる場合もありますよね。

 本作では、その問題が解決されております。お気に入りの魔法少女のいろいろな姿、表情を見られるので、期待していただきたいです。

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 牢屋敷を訪れたせいで、いろいろ心に重いものを背負いましたが、1周クリアした感想はとても晴れやかです。

 ただ、まだ見ることができていないBAD ENDもたくさんありますし、真相を知ったうえでもう1回魔法少女たちの行動を見直したいという想いがあり、牢屋敷からしばらく出られそうにありません。

 Steam版が3,500円(税込)と手に取りやすい価格なのに、初週はなんと20%OFFで購入することができます。

 皆さんもこの機会に、『魔法少女ノ魔女裁判』の共犯者になってみませんか?

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