電撃オンライン

ドキっ! ポエマーだらけの田舎町。コンビニは人生だってハッキリわかんだね。まあ正味4人しか客いないけれども⋯。『inKONBINI』クリア済レビュー【ほぼ週刊電撃スタッフコラム:オッシー】

文:電撃オンライン

公開日時:

最終更新:

※この記事には『inKONBINI』の重大なネタバレがありますので、ご注意ください。

 みなさんこんにちは。ゴールデンウィークが体感秒で終わった。何もしてない。ゲームしたりマリオの映画観に行ったりゲームしたりしてたら終わってた。つらい。そして前回のコラムで高らかに宣言していたコラムの書き溜めは全くしておりませんでした。

 何故連休が始まる前には全能感があるのだろうか。そして終わる時は無能感に苛まれるのだろうか。迷える哲学者オッシーがコラム44回目をお送りします。


 このコラムでは、狂ったようにプレイしている日々のゲーム体験や、ゲーム以外の趣味である映画鑑賞などで摂取したエンタメコンテンツを、短文レビュー形式でお送りしています。今回もクリア後レビューなのでネタバレ注意

非実在疑惑の叔母のコンビニでアルバイト【inKONBINI】


タイトル:『inKONBINI』
プレイ状況:PS5版 クリア済み

 日本のコンビニを舞台にしたゲームということで注目していた『inKONBINI』がついに発売!


 田舎町でコンビニバイト(夜勤)といえば、映画化もされた『夜勤事件』があるので、てっきりホラーゲームだと思ってたのよね。

 なんか発売前に公開されてた写真も暗めの多かったし、プレイを始めてみても主人公の女の子もなんかトッポイ感じで、電話でしか出てこない叔母もちょっと怪しいし、何か秘密があるんじゃないかと思うのも無理はない。

 てっきり叔母はもう殺されていて、叔母になりかわった殺人鬼が主人公を追い詰めるサイコサスペンスだと思ってた。

 が、全然違いました! コンビニを舞台に繰り広げられるドラマチック群像劇でした。

 これがめっちゃエモくて面白い。

 コンビニにお客さんは色々な悩みや課題を抱えているのよ。それを買い物中にほのめかしたりする。


 でもコンビニアルバイターである主人公にできることはあんまりない。精々、欲しい商品をバックヤードから探してきたり、オススメの缶詰を提案したりするくらい。特に悩みをズバッと解決したりはしないのだ。

 ただ、そこで勧めたコンビニ商品が、本当にちょっとだけお客さんの人生に関わってきたりする。迷っているお客さんの背中を、ちょっとだけ押したりできるのだ。

 主人公は学生で、叔母さんの住む田舎町で休暇を過ごすことに。その期間に、叔母さんが店長を務めるコンビニで一週間だけアルバイトをすることになる。


 その叔母さんは主に昼番で、主人公は夜勤(しかもワンオペ)なので、作中で一度も叔母さんに会うことはない。電話をすると出てアドバイスをくれたりはするけど、顔を見せたりはしない。

 いくら親戚とはいえ、短期アルバイトの女の子を深夜勤のワンオペはヒドすぎない⋯⋯? と思わなくはない。

 ただ、夜勤中はほぼ客がいないのと、ファミチキ的なやつを揚げたりといった難易度高め業務は最初から諦めているので、意外と何とかなる。

 やってることはほぼ品出しだけ。楽なバイトやで、ありがと叔母さん!

客が四人しかいないっぽいけどだいじょぶそ⋯⋯? ⇒大丈夫じゃないやないかい!【inKONBINI】


 たまにくるお客さんがいるんだけど、全部で4人しかいない。この4人がローテーションで深夜のコンビニにくるわけ。

 大体一夜につき2名くらい。そして1,000円くらいの買い物をしていく。これ絶対主人公のバイト代の方が高くつくやつだろ⋯⋯経営大丈夫? セブンイレブンで11時にお店閉めたほうが良くない?

 ただまあ短期アルバイターの主人公にはそんなこと関係ないので、品出しをしながら、やることなくなったらトイレでサボったりしながら時間を潰すまったりスローライフ。

 いやでもちゃんと仕事はしてるのよ? 昼勤の無能バイトカスがテキトーに品出ししやがるせいで、毎日ぐっちゃぐちゃなのよ。弁当棚にペットフード置いたりとか、冷凍食品を常温棚に置いたりとかやりたい放題。

 しかも、そんな戦犯バイトは時間がきたらそそくさ帰ってるのか、付箋メモだけ残しやがる。「あれを間違えて置いちゃったから直しといてね!」みたいなやつ。殺意しか湧かんわこんなん。これでバイト代もらえるとか昼勤様はいいご身分だな!

 さらに、田舎町だから物流が弱いのか、大抵品切れしてたりする。それの発注も主人公の仕事。業者さんにお電話して追加発注の依頼する。そんな深夜に電話されても困るだろ。昼間にしとけよ。

 そんな無茶振りを毎度されて慣れているのか、業者さんは深夜だろうが早朝だろうが当日即納してくれる始末。いや優秀なんだけど、その品が納品されたら品出しせなアカンやんけ⋯⋯。そこは昼間のカスバイトにやらせとけよ。

 あとは販促ポスター貼ったりとか、売れ残った品をセール棚に持っていったりとか、マジで結構忙しい。まあ時間制限あるわけじゃないからゆっくりやれば良いんだけどね。


 たまにきたお客さんも、暇なのか頻繁に話しかけてきたりして品出しの手を止めやがる。挙句、こんな狭い店なのに「この商品はないのか?」みたいにリクエストしてくるのよ。

 いまこそこの言葉を叫びたい。「そこにないなら、ないですね!」

 いやー、シミュレーターとまでは行かないけど、コンビニバイトを延々させられるのってマジで大変だわ。絶対やりたくないバイトの一つ。

 そして、これだけしか客が来ないコンビニの経営は大丈夫なのか⋯⋯? と素人の筆者でも思うくらいになってきた辺りで衝撃の事実が叔母さんから告げられる!

 「このコンビニをやめようと思ってるの」

 でしょうね!!! しってた!!!

貴重なお客様(4人)との触れ合いが素晴らしい。田舎のコンビニ(深夜)に行きたくなる【inKONBINI】


 そんなこんなで、客の4人との交流エピソードがありつつ、コンビニアルバイトをしていくゲームなわけだけど、基本的にお客さんは単品でしかこないのよ。つまり店内にはMAXでも2人(客と主人公)。気まずいってレベルじゃない。

 でも、それぞれのエピソードが密接に絡み合っていて、なんとなくコンビニの外での風景が浮かんでくるのが素晴らしい。

 それぞれに、背景があって、悩みがあって、想いがあって⋯⋯それをみんないい感じのポエム風に語るのがめっちゃ滲み入るんだよね。これを作ったのが日本人じゃないというのが驚き。ローカライズも素晴らしい。

 それじゃあイカれたメンバー(客)を紹介するぜ!

サトシ

 齢12歳にして、町内で高齢者向けの宅配サービスを始めたビジネスマン。12歳なのに原付で宅配している。逞しすぎる。

 サービス向上と販路拡大に余念がなく、自作ポスターを作ってコンビニに貼ったり、新聞社の取材を受けて知名度を上げたりする豪腕ビジネスマン。

 12歳やぞ。ポケモンゲットしたりする年齢やんけ。


 でもそんなビジネスにご執心な彼の原動力は、ガチャガチャをコンプしたいからだそう。かわいい。

親分

 いきなり出てきて親分とか言うから、田舎町によくいる地元密着型のヤー公かと思ったら、そんなことはなかったぜ。骨董品店の店主で、猫を飼っているただのオジサンだったぜ。

 そんな見た目に反し、スピリチュアル大好きマンで、日常の中で“サイン”を見つけては一喜一憂する。占い大好き女子高生か。

 主人公の叔母さんとは古い知り合いで、なにやらトラブルがあって最近は疎遠らしい⋯⋯。

 一番いかつい見た目なのに内面女子高生だし、すぐにウジウジしちゃうしで、最初はメンドクセー頑固オヤジ客かなと思ったけど、そんなことはまったくなかった。段々とコンビニ飯にハマっていくのがいい。

 最後はスピリチュアルを捨ててみんなでパーティーをすることに。主人公との出会いで一番変化した人かもね。

直美

 バリキャリ新聞記者。コーヒードランカーで蚊に刺されやすい女。

 最初はやさぐれているが、自分の仕事について語る時は饒舌になる辺り、自分の仕事に誇りを持っている感じがしていい。

 コンビニに通って主人公と交流する中で、本当に自分がやりたいことに気づき、仕事を辞める決意をする。

 ちなみに新聞記者としての最後の仕事は、サトシの独占取材。子供新聞かよ。

謎の男

 本作におけるホラー担当。一切、喋らない上に、壊れた自動ドアを開ける超能力の持ち主。バックヤードに立ち入る不審者。『inKONBINI』界のMr.マリック。コンビニ寿司ラバー。


 一応、人語は解しており、こちらからイエス・ノーで答えられる問いかけをすると首を振ってコミュニケーションしてくれる。

 途中までは謎の存在として暗躍していたが、終盤で店内の水たまりを踏んじゃって思わず声を上げて、主人公に喋れることがバレることに。

 その正体は、インスピレーションを求めて寂れた田舎町にきていた、そこそこ有名なスランプのミュージシャンだった。喋ったら身バレすると思って無言キャラを貫いていたらしい。逆に怪しいだろそれ。むしろ顔隠せや。

 あるあるで、主人公はあんまり芸能に興味ないので顔を知らなかった設定。そして舞台のコンビニも、基本的に複数人の客がいることがないのでバレなかったのだ。

 これは上手い設定だと思った。身バレした後に、サトシが来店して「ファンです!」とか言い出すから、他の客がいたら即バレしていた可能性あったわけで。

 生まれてこの方、食べたことがなかったコンビニ寿司を主人公に勧められて食べたことで開眼。最終的にはコンビニのテーマ曲を作曲して歌い出す。これがめっちゃ良い曲でエモいのよ。謎男ぐっじょぶ。

総評:良質な映画を見た後のような気持ちになれる、エモエモな良作【inKONBINI】


 特に何か事件が起こるわけでもなく(まあコンビニ閉店は事件っちゃ事件だけど)、ただただ一週間アルバイトして旅立つだけのゲームなのよ。

 ただ、端々の演出が神がかっていて、最後はちょっとウルッときた。


 だって、上に書いたように、基本的にお客さんは常時1名なわけ。それが普通だったから、特に気にもしてなかった。

 ところがさ、主人公がアルバイトを終えて家に帰る最終日、なんと4人のお客さんが全員集合するのよ。特に主人公との別れを惜しんで、とかではなく、それぞれが、それぞれのエピソードを経て、ちょっとだけ前向きになってコンビニにくるんだよね。そんでたまたま、4人の客がコンビニに集うの。

 でも別に集ったからって何かするわけではない。


 謎男が歌うコンビニのテーマ曲をバックに窓の外をみんなで眺めるだけ。それで終わり。それだけなんだけど、とにかくエモくて最高の締め方だと思った。

 コンビニはどこにでもあるし、いつでも開いている、取るに足らない存在かもしれないけど、それぞれの人生の交差点にもなり得るんだなって。

 この、ちょっと昔の日本の田舎町のコンビニを舞台にした作品を、ロシア出身の外国人クリエイターが作ったというのが驚き。

 だって本当に日本の田舎の解像度が高いのよ。親分がスピリチュアルにハマって顧客とギスギスするところとか、サトシが足腰の悪い高齢者向けの買い物代行サービスやったりするところとか、日本に住んでないと、この微妙な地方の感覚を表現できないよ、ホント。

 完成度の高い作品だけど、一つだけ難点を挙げるとすれば、品出しを美しく完璧にしようとすると結構難しいし手間なところかな。

 全部、昼勤の無能バイト、テメーのせいやで!

 まあ完璧にしてもスコアが出るとかじゃないから、無理してやらなくてもいいんだけどね。

 あ、でも確かにコンビニバイト作業部分も楽しいは楽しいので、本編とは別にスコアアタックモードとかあったら良いかも!

 ぜひ追加DLCか続編でコンビニバイト選手権モード実装よろしくお願いします!

Xbox版をプレイする

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この記事を共有

公式SNS