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コロナ禍のインディー革命と巨大プロジェクト! 日本企業も熱視線を送るインドゲームの未来【バフィー吉川のインドゲーム通信#3】

文:バフィー吉川

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 インドゲーム市場の歴史と直面してきた流通課題について解説した。第3回では、インドゲーム界の「今」と「未来」に焦点を当てる。

コロナ禍が生んだインディーゲーム開発ブーム


 ハードルの高いコンシューマー市場が存在する一方で、急激な経済成長、ITブーム、雇用システムの改善など、さまざまな要因でゲームを趣味とする中間層が増加傾向にあり、ムンバイのインフィニティ・モールに実店舗があるゲーム・ザ・ショップでは、『Marvel's Spider-Man 2』や『サイバーパンク2077』の発売日ともなれば、ネットで購入するタイムラグを我慢できず、いち早くプレイしたいというゲームファンによって、行列ができるほどだ。

 そして新型コロナのロックダウンによる巣ごもり需要でゲームを趣味とする人が圧倒的に増加したのは、市場規模は違っても日本と少し似ている。コロナ禍で解雇されたり、時間があり余ってしまったIT系学生たちが、自らインディーゲーム開発に乗り出すきっかけになったのもコロナ禍が大きくしている。

 例えば『Fishbowl』を開発した、リア・グプタ(Rhea Gupte)とプラティーク・サクセナ(Prateek Saxena)は、コロナ禍で家族や友人と会えなかった環境をゲームとして投影していると、各インタビューで語っている。

 ベジタリアン・ゲームズと名乗るクリエイターがひとりで制作した、音声インタラクティブ心理ホラー『Vocal Horror Stories – Gaja』もロックダウン中のチェンナイが舞台となっている。これは音楽アーティストなどでも同じことが起きていて、コロナパンデミックによる経済的被害の一方で、皮肉なことにクリエイターたちが多く誕生するきっかけとなったのだ。

 優れたソフト開発者には、スポンサーも付きやすくなった。ゲーム市場に消極的な企業が多く、さらに2010年代の失敗もあったりで、エンタメ市場から無視され続けた時期と比べれば考えられない環境だ。

 インドのゲーム開発会社、もしくは公表されているクリエイターチームは、2010年の時点で約30社しかないとされていたが、2024年の時点で、それが2,600社を越えているとされている。それ以外にも知られていないだけで、個人クリエイターやインディーズ開発チームを含むと、とてつもない数になるだろう。

世界を驚かせる超大型プロジェクトが続々始動


 そして企業も再びゲーム開発に乗り気になっている。……というか、世界市場を驚かそうと本気になっている!!

 2021~24年前後は、やっとスタートラインに立ったといえるだろう。古代インド神話を題材とした『ラジィ 古の伝説』は、キャラクターが小さすぎるし、南インド料理を作っていくパズルゲーム『Venba』も何がおもしろいのかわからない。課題が多いとしても可能性は確かに感じられる。

 インドゲームで注目すべきは、これからの動きだ。早ければ今年、少なくとも2~3年もあれば、大きく飛躍する光景を目の当たりにする瞬間が訪れるだろう。

 現在開発中の古代インド・ヒンドゥー神話をベースとしたアクションRPG『The Age of Bhaarat』は、その象徴的なタイトルといえるだろう。同作は、インド映画の金字塔といわれる『炎』(1975)で主演を務めたほか、200本以上の映画に出演し、レオナルド・ディカプリオ主演作『華麗なるギャッツビー』(2013)ではハリウッドデビューも果たした、インドでは知らない人を見つける方が難しいレジェンド、アミターブ・バッチャン(Amitabh Bachchan)が、ベストセラー作家アーミッシュ・トリパティ(Amish Tripathi)、『ゴーストリコン』シリーズのプロデューサー、ヌールディン・アブード(Nouredine Abboud)と共同設立されたゲーム会社タラ・ゲーミングによる第1弾プロジェクト。

 それだけではなく、アカデミー賞にもノミネートされた映画『ザ・ホワイトタイガー』(2021)のプロデューサーのムクール・デオーラ(Mukul Deora)が取締役兼トランスメディア・プロデューサーとしても参加している超ビッグプロジェクトだ。

 ほかにも注目作がいくつかある。2023年に『Unsung Empires: The Cholas』をリリースしたことでも知られるチェンナイを拠点とする、アイェレット・スタジオによる『Son of Thanjai』もそのひとつだ。

 実在した、南インドのタミル系王朝チョーラ朝の全盛期を築いた王ラージェンドラ1世を主人公としており、ストーリー重視のシネマティックゲームで、ストーリー構築には、『RRR』(2022)や『バーフバリ』2部作、『プシュパ 覚醒』(2021)など、大ヒット映画のタミル語吹替え版におけるセリフの再構築を行ったことでも知られるマダン・カルキー(Madhan Karky)がメインとサイドストーリー、タミル語と英語のセリフ、さらには作中曲まで手掛けている。

 2026年5月に体験版が配信されたばかりの横スクロールの音楽アクションゲーム『Suri: The Seventh Note』では、ロックバンド“マッシュルーム・レイク(Mushroom Lake)”のメンバーとして知られるジティン・デイヴィッド(Jitin Paul David)とマラヤーラム語映画『Aaha』(2021)などの楽曲にも参加経験のあるフィニー・クリアン(Finny Kurian)を起用し、音楽のクオリティを追求し、ゲームメディアに限らず、ローリングストーン・インディアなどの音楽メディアからも注目を集めている。

 映画やドラマ業界も外資系企業が続々と制作に参加し、コンテンツを強化しているし、2025年に本格進出したK-POPレーベルのHYBEは、インドを拠点としたグローバル・ガールズグループを誕生させるために大規模オーディションを行っているなど、インドエンタメ業界は、世界で注目の的となっているが、ゲームも勿論例外ではなく、国内外のエンタメ企業が今後インドのゲーム開発事業、市場拡大に積極的になっていくことは目に見えている。

熱視線を送る日本企業と『ポケモン』の挑戦


 当然というべきか、日本企業も続々とインド市場を視野に入れ始めている。インドでは2~3年前から日本カルチャーブームが起きており、とくにアニメや漫画市場は爆発的に拡大しているのだから、極端なことを言うと、今インドでは日本のコンテンツを何でも流行らせられる確変状態といえるだろう。

 2026年4月に『モンスターストライク』のグローバル版『STRIKE WORLD』がインドで本格運用を開始したことも記憶に新しいが、ポケモンも2023年にインドマーケティング室を発足し、ゲームに限らずキャラクターグッズや大型タイアップを企画してきた。

 ポケモン自体は2014年からアニメシリーズがケーブルテレビや配信を通して放送されたことで、キャラクターとして知名度はあったのだが、肝心なゲームとしての認知度は低かったことから、本格的な市場強化に乗り出したのだ。

 インドの民族衣装であるクルタやサリーを着たピカチュウが出現する『ポケモンGO』のイベントも話題になったし、2025年1月には、インド・ヒップホップ界の帝王バードシャー(Badshah)によるキックオフソング『Imma Be Your Pokemon』がリリースされ話題となったし、マクドナルドやヤクルトなどの企業タイアップも好評だったようで、『ポケモンユナイト』のアジア頂上決戦“Pokemon UNITE Asia Champions League 2026 FINALS”にも複数のインドチームが参加していた。

 ただ、ポケモンカードに関してはかなり苦戦しているようだ。そもそもカードゲーム自体が普及しておらず、『遊☆戯☆王』や『マジック:ザ・ギャザリング』といった世界的に知られているカードゲームもほとんど認知されていない。

 それでもPSA鑑定にかける投資対象として少しだけ知られていたりもして、富裕層で集めている人が少数派でいるぐらいではないだろうか。買おうと思えば買えないわけでもないが、中国から安価な偽物が普通にAmazonなどで出回っていて、日本もそうかもしれないが路面店で販売されているようなものは、偽物ばかりだ。

 少し話がゲームからズレてしまったが、ゲーム市場としても大きな問題がある。

次世代機普及の課題と、ゲーム大国への確実な歩み


 Switchもそうだったが、Nintendo Switch 2の正規ルートが存在していないのだ。Amazonやゲームショップで購入することはできるが、その場合、輸入税なども加わり、10万円近くになっている。

 PlayStation 5も同じような価格帯ではあるが、インドのユーザーの好奇心を刺激し、購入の起爆剤となるようなタイトルがリリースされていない。ポケモンもそうだが、『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』といった、任天堂を代表するタイトルが安定株として機能しない環境であることは、厳しい事実で、そこの土壌をポケモンで耕そうとしているのだろうか。

 ただ一回ヒットすれば、急速に普及する可能性はあるといえるだろう。さすがに偶然だと思うが……気づいただろうか。新作の『ポケットモンスター ウインド/ウェーブ』のウを消すと“インドウェーブ”になる。インドでムーブメントを起こそうという意識の表れかもしれない……。

 これまでの記事で触れたとおり、今後映画やドラマ、コミックと連動したゲームや関係者が積極的に参加した大規模プロジェクトのゲームが続々と開発されていくだろうし、その逆としてゲームが映画やコミックになるパターンも大いに考えられる。

 『The Age of Bhaarat』や『Son of Thanjai』などのように、神話や歴史活劇のような、いわゆる“インドらしい”ものを題材とした作品もあれば、廃墟化した宮殿で凶悪なクリーチャーと遭遇する『OOTY : Silence Remains』や、社会問題の人身売買カルテルを捜査する『Mukti』といった、ホラージャンルにも積極的。交通系シムもグラフィックの精度が年々上がっている。

 インド本国における流通市場問題は、今後も課題が山積みではあるものの、確実に、そして急速に、ゲーム大国への道を歩み始めている。まさに過渡期ともいえる、今のフェーズから、インドゲームに注目しておいても損はないはずだ。

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