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ラハイロイの未来を懸けた激論が展開――スタートーチ学園・ラベル学部、廃止一転“存続”の裏には

文:ことめぐ

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 先日行われた“第2次特別審問会”にて、ラハイロイ・スタートーチ学園の出資者によるラベル学部への出資再開、天空海突破実験を再始動させることが決定した。


 ラハイロイの人々を長年脅かしていた鳴式“アレフ1”を“エクソストライダー”が宇宙へ追放し、ラハイロイに平穏が訪れて久しい。

 しかし、その裏ではスタートーチ学園“ラベル学部”の存続を懸けた熾烈な政治的攻防が繰り広げられていた。

 そこで当メディアでは、スタートーチ学園や学園長・ルシラー氏に密着取材を実施。取材で見えた、ラハイロイの“再出発”の様子を記していく。

▲スタートーチ学園長・ルシラー氏。
※本記事はKURO GAMESの提供でお送りします。

ラハイロイの脅威であった鳴式“アレフ1”と、“エクソストライダー”の戦い


 本題に入る前に、ラハイロイで起きていた出来事についておおまかに振り返っておきたい。

 ラハイロイは、スペーストレック・コレクティブ(深宇宙連合)がスタートーチ学園を設立した地で、雪に覆われたロイ氷原の地下にある。

 今回の取材先となるこの学園は
“探求心を火種とし、文明を照らすトーチを高く掲げる”を理念としており、多くの生徒たちが未知への探求を胸に学ぶ場所となっている。

 そんなラハイロイを長きにわたり脅かしていたのが、海蝕現象である“ヴォイドストーム”。ラハイロイ特有の、ヴォイドマター濃度が臨界値に達することで発生するこの災害を引き起こしていたのが、ソラリスの外から来たとされている鳴式“アレフ1”だ。

 第二次悲鳴の記録で、滅亡に瀕したロイ人を救ったと記されている巨大な機体“エクソストライダー”は、“アレフ1”と同時に出現したとされている。“エクソストライダー”は“アレフ1”との戦いの中で崩壊しかけた氷原を支え、長らく休眠状態となっていた。

 適格者学部とも呼ばれる、スタートーチ学園内の“ラベル学部”は、この“エクソストライダー”の起動を目標として活動。一般的な教育だけでなく学部専用のカリキュラムが用意されており、漂泊者氏が所属した学部もこの学部となる。

 なお、“エクソストライダー”は此度の戦いの中で適格者を伴うことなく自ら起動し、“アレフ1”と交戦。激戦の末、“アレフ1”とともに、ストライダーゲートの向こうへと消えていった――というものが、事態の顛末となる。

 こうしてラハイロイ自体の危機は去ったこととなったが、すべてが解決したわけではなかった。

ラベル学部存続の危機に、審査官・アールト氏現る


 先述した通り、鳴式が去ったラハイロイには新たな問題が発生していた。スタートーチ学園内にある
“ラベル学部の存続”である。

 エクソストライダーがラハイロイを離脱したことにより、適格者の育成が不要と結論づけられたからだ。

 そのため、学園の出資者は学園への出資を断ち切ろうとしていた。


 そこで第三機関を介し独立調査を実施。

 その審査官として派遣されたのが、“ブラックショア”のアールト氏だった。

▲スタートーチ学園に来訪した、ブラックショア所属のアールト氏。なぜかバイクで来訪し、漂泊者氏とルシラー学園長を驚かせていた。

 アールト氏に対する生徒たちの歓迎っぷりは、見ていて大変微笑ましいものだった。

▲アールト氏の来訪は内密だったが、どこからか情報が漏れ出てしまっていたらしい。そのおかげでたくさんの生徒が集まって来ていた。
▲中には、歓迎のダンスや歌、食事を振る舞おうとする生徒の姿も。アールト氏は少々困惑気味の様子だった。
▲スタートーチ学園の生徒は皆が素直でとても愛らしく感じる。

 その場の生徒たちにインタビューをしたところ、コレクティブが適格者を全員退学させようと準備していること、ラベル学部は予算の3分の2を使用しており、コレクティブが激怒していること、学園の主な出資者は“ネオユニオン”である――といった内情を聞きだすことができた。

▲ネオユニオンのやり方には、生徒たちも憤っているようだった。

元学園出身者からの信頼も厚い指導者・ルシラー


 スタートーチ学園に来訪したアールト氏に、ルシラー学園長について尋ねた。

 彼は学園長に対し、不審な点が多くブラックショアとしても信頼ができない、そして出資者“ネオユニオン”との繫りがあるのではないかと疑っていたという。

 しかし、学園出身の花持ちたちに今の学園の状況を伝えるやいなや、ショアキーパー氏の元へ行き
「ルシラー学園長のことは自分たちが保証する」と告げた。

 そしてショアキーパー氏は彼らの行動を見て、考えを変えたのだそうだ。

 
 元学生からさえも信頼されている学園長に羨望の眼差しを向けながら、アールト氏はそのように語ってくれた。

深い絆で結ばれたルシラー学園長と生徒たち。ラベル学部の存続の意義とは

 
 漂泊者氏とアールト氏は、ルシラー学園長に内密で深夜の学園内の調査を開始。

 そこでは、授業中に居眠りをしていた生徒が徹夜で同級生に授業を教えていたほか、自作品を販売する等して資金集めをしていたのである。

▲このことに気づいていたのか、屋台を開く必要はない、と生徒たちに優しく言葉をかける学園長。そのあたたかい言葉に涙を流す生徒もいた。

 授業の欠席者たちは、別の場所で適格者のみが操縦できる戦車を開発していた。

▲生徒のライニー氏の意思は非常に固いものだった。

 しかし、戦車は学園長らの前で暴走し大破してしまい、生徒たちはひどく落ち込んでしまう。


 そんな中、生徒のライニー氏がルシラー学園長にこう伝えた。

 
「我々がここに来たのは、文明の進む方向を見出すため」、「スタートーチ学園は適格者の揺り籠となり、我々の希望の担い手になる」という想いを胸に、学園に来たことを後悔していない、と。

 そう言って涙を流すライニー氏を、ルシラー学園長は優しく抱きしめる。

▲ライニー氏を抱きしめるルシラー学園長の姿は、まるで母親のようだった。

 生徒たちの多くが、ラベル学部の継続を望んでいる。それは過剰なほどのアールト氏への歓迎や、強引にでも成果を出そうとしたライニー氏らの姿から痛いほどに伝わってきた。

 対して、ラベル学部の解散は、ライニー氏のように高い志を抱いて適格者となった生徒たちが積み上げてきた努力を、無意味なものだったと結論づけてしまうことに等しい。

 そしてその生徒たちの姿を、ずっと近くで見守ってきたのがルシラー学園長なのだ。

 おそらくルシラー学園長は、現在の“ラベル学部”という形を存続させることに固執しているわけではない。

 適格者として、世界のために尽くし、必死に前に進もうとしてきた生徒たちの想いをないがしろにするわけにはいかない――。

 そんな想いが、ルシラー学園長を突き動かしているのではないだろうか。

 きっとその想いは、この場に居合わせていたアールト氏にも伝わったことだろう。

ルシラー学園長、ラベル学部存続を訴えカメレル氏と激論


 ここから事態は急変する。

 審査会は、元々は来週中の開催が見込まれていたが、アールト氏が到着した日の翌朝に、急きょ前倒しとなったのだ。


 審査会当日には、
スタートーチ学園ラベル学部所属の適格者の生徒ら、スペーストレック・コレクティブ取締役会・常任事務総長カメレル氏(※)審査団10名(特別審査員のアールト氏含む)、臨時代表の漂泊者氏、そしてスタートーチ学園長・ルシラー氏が参加。

※カメレル氏は取締役会の指名を受け、出資者代表として参加。

 審査団10名の内、ネオユニオンの特別代表5名とアールト氏を除くと、2名が棄権、別の2名は臨時代表権をネオユニオンに移譲する形となり、全員がネオユニオンの出身者となっていた。

 開催日が大幅に早められた内情は不明だが、結果的にネオユニオン側に優位な状況が作られており、ネオユニオン側の意向が関与していたのではないかと推測できる。


 前回の決議内容は、
エクソストライダーを失った今、「適格者計画」は事実上の失敗である、最優先事項は計画に関わる学生及びリソースに対し、事後処理を実行する、というものだ。

 それを前提にカメレル氏はこう答えた。

 
「取締役会の総意に基づき、再度述べます。“適格者計画”はただちに終了、または一時凍結すべきです」


 それに対し、ルシラー学園長の意見は変わらず、継続を望むと返答。

 漂泊者氏は、適格者計画は文明の活路を切り拓くための計画で、エクソストライダーが去った今こそ、必要なのは
“新たな活路”を見出す者――それが「真の適格者」であると発言した。


 ルシラー学園長は適格者計画の“費用対効果”という観点に対し、出資者には当該計画の評価基準について慎重に再考してもらいたいと異議を申し立てた。

 
 議論は続いていたが、一度ここで休憩が挟まれた。

続く激論。カメレル氏の提案に対し、ルシラー学園長が示した道


 審議が再開されるなり、カメレル氏の口から、再度議論した結果、適格者が独立した学科として存続する“潜在的価値”、及び“模範的役割”を認める旨の発言が飛び出す。

 同時に、漂泊者氏が語ったように、エクソストライダーなき今、“新たな活路を見出す重責を担える者”だけが、“適格者”と呼ばれる資格を持つべきだという見解も示した。 


 その上で審査会は、ラベル学部は存続させるが、今後の適格者育成計画は審査団による“直接指導と審査”を受ける、“妥協案”を提示した。

 しかし、ルシラー学園長はその必要はないと反論。

 
「こうしている今も、彼ら“適格者“たちは、この世界で最も“文明の活路”に近い場所にいるのです」と、答えたのだ。


 ルシラー学園長はその証拠として、アレフ1との戦いで得た探査機“スターゲイザー”の音声記録を提示した。

▲カセットテープには、ザーザーというホワイトノイズが記録されていた。

 「ただのノイズではないのか」と問われた学園長は、この音声記録こそがソラリスの先駆者たちが残してくれた“希望”そのものであり、未来に向かってもう一度踏み出さなければならない、と反論。

 だがカメレル氏は、精神論と適格者たちの間に、何の関係があるのか理解できないとの見解を示す。

 対するルシラー学園長は、“ラベル学部の研究成果を集約し外因性共鳴による制御を用いた、周波数干渉を徹底的に遮断する宇宙船“を建造可能だ、とラベル学部の可能性を示した。

 同時に適格者たちには、その翼を操るだけの教育を充分過ぎるほど施してきたと、これまで行ってきた教育への自信もあらわにする。


 一方、カメレル氏は“ストライダーゲート”は既に閉ざされており、その向こうには道すら存在しないと断言。

 それに対し、ルシラー学園長は以下のように訴えた。

 
「……文明の活路が、この“下”にしかないなんて、誰が決めたのですか?」


 この学園長の一言が、会場の雰囲気を一変させた。

 適格者たちの多くが心を動かされ、ある生徒は「星空……」と口にし、天井に煌めく星空を見つめていた。

 だが、カメレル氏も譲らない。


 あの天空海に近づけばどうなるのか? と、危険性を指摘。

 対するルシラー学園長は、“外因性共鳴”を使える今のスタートーチ学園なら、“あの壁”を乗り越える力がある、との考えを示した。

 その堂々とした発言をへし折るかのように、「失敗すれば、宇宙船は棺桶になる」と力強く言い放つカメレル氏。

 その言葉にはルシラー氏にも思うところがあったのか、徐々に表情が険しくなり、とうとう俯いてしまう。


 その瞬間だった。

 これまで沈黙していた適格者たちが、その場で一斉に立ち上がったのだ。

 何か言葉を発したわけではない。

 それでも、彼らが浮かべた毅然とした表情から、危険は承知の上で、人類の未来を切り開くために進み続けようとする、ルシラー学園長を支持する強い意思が伝わってくるかのようだった。

▲立ち上がった生徒たちの表情からは、ルシラー氏への強い信頼と意思を感じ取ることができた。

 愛する教え子たちからの後押しを受けたルシラー学園長は、一瞬で自信を取り戻したようだった。


 そして、声を高らかに宣言する。

「もし答えが『死』の向こう側にあるのなら――」

「辿り着いてみせましょう!」
「私の最高の教え子たちが……あの空に風穴を開けてみます!」

 生徒たちの勇気ある行動、ルシラー学園長の希望に満ちた宣言に、会場は熱気に包まれていた。


 あまりにも強い彼らの想いに出資者たちも押されたのか、結果としてラベル学部は存続が決定。

 こうして“スタートーチ学園・ラベル学部適格者の処遇案”に関する、“第2次特別審問会”は幕を閉じた。

編集後記


 筆者は外部の人間であり、今回は取材のためにスタートーチ学園を訪れたに過ぎない。

 それでも、取材を通してルシラー学園長や生徒たちと接していく内に、何度も心を動かされていた。

 かつてこれほどまで、互いを想いあっている指導者と生徒たちの関係性を見たことがなかったからだ。


 特に審議会において、心が折れそうになっていた学園長の背中を押すかのように生徒たちが立ち上がった瞬間は、思わず涙が出そうになったほどだ(これは、本来公平な立場に立つべきマスメディアの人間としては、失格なのかもしれない)。

 文明の進化とは、厳しい道のりであり、失うものも大きい。しかし、適格者たちはそれを知った上でこの学園に入学し、強い意思を持っている。スタートーチ学園は、学園長も、生徒たちも本気なのだ。

 審議会後も、取締役会では“適格者計画”が極めて高コストかつ高リスクであり、実現が困難であることへの懸念が依然として残っているという噂話をアールト氏から耳にした。

 しかし、筆者は何も心配はいらないと感じている。生徒のことを誰よりも思っているルシラー氏、誰よりも意思が強いスタートーチ学園の生徒との絆があれば、きっと良い方向へ向かっていけるだろう。

 “スタートーチ学園”の未来、“ラハイロイ”の未来は、明るい。

 最後に、今回の取材で入手したルシラー学園長の写真の中から、とっておきの1枚を紹介する。

 それはこちらだ。


 いつも美しい彼女だが、この時だけは鬼のようだった。

 睡眠不足で相当なストレスを抱えていたのだろうか。学園長にはゆっくり休んでほしいものだ。

▲なぜこのような表情をしていたのか聞かれたところ、爽やかに「厄介なパートナーと『些細な』意見の食い違いがあった」との返答があった。

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