三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。
英傑群像出張版では、わたしが中国各地で集めた三国志武将の民間伝承の古書から、日本で知られていないものを厳選して文章をまとめて紹介しております。
さて約3年間に渡って続けてきたこの「三国志民間伝承のご紹介」コラムは今月の3回で最後となります。
たくさんの知られていないお話を皆様にご紹介できてたいへん光栄でした。有名な人からマニアックな人まで面白い話はかなり紹介できたかと思います。
さて、英傑群像出張版ではだいたい民間伝承の紹介はテーマを決めて選んでいました。
最後3回は、それらテーマから漏れた有名武将の民間伝承を紹介していきたいと思います。
今月1回目は“劉備・張飛・趙雲”の逸話から紹介していきます。
劉備の魔術
劉備が公安に駐屯していた年、軍隊は兵糧不足に陥り、張飛はとても心配して兄に解決策を訪ねた。
劉備は微笑んで「慌てるな、策はある。私は百席の宴会を開く準備をしている。地元の長老を呼び接待する。」と言った
張飛は不満そうに「兄者、本当に軍の食糧不足時に地元の長老を招待する必要があるのか? 苦くないか?」と聞いた。
劉備はまた笑って「食料が不足しても、贈り物を不足するわけにはいかない! それに食べ物がなくてもお客を招待することはできる。城外には山があり城の横には川があるから、山に行って狩りをしたり、川に行って釣りをしたりすることもできる。」と言う。
張飛はどんな理由があるのか知らなかったので、命令されたとおりに世話の準備を行った。
宴会は開かれ、人々は劉備が自分たちの顔を立ててくれたと感じ、皆とても喜んだ。
宴会が始まると最初の料理は野生の鶏肉、二番目の料理は野生の鴨肉、それからイノシシ、野ウサギ、蒸し魚、揚げ魚、焼き魚、そして最後はやはり魚だった。料理はとても豪華で、酒も美味しかった。
この時、劉備は個人的に酒を皆に注ぎながら「今日、皆さんはみたとおり我が軍の味を味わったが、“塩があればしょっぱく、塩がなければ薄味”(ことわざ:大衆と苦楽を分かち合うこと)。私たちは米の代わりに酒を飲み、食べるより飲みましょう。」と皆に言った。みんなは心を聞いて、幸せに酒杯を上げた。
翌日、人々は絶えず劉備に食料を送ってきた。半日足らずの時間で、穀倉庫は満たん、練兵場も小さな山の食料を積み上げ。張飛は劉備の意図を理解した。
客を招き、贈り物を送り、行ったり来たりしている。宴会は魚や肉でいっぱいだったが、米食はなかった。彼は兄の高い考えに感心した。
●岡本コメント
劉備の人徳の片鱗を見たような気がします。ゲームであれば無理やり住民から徴収するところです。実際もそうかもしれません。
民忠が下がるのは避けられない。逆に信頼度をあげてしまう劉備ってすごいです。それも計算されていますから。
そこまでいかなくても“与えることで与えられる”というのは参考になるかもしれません。
容疑者 趙雲
趙雲は江州を視察後、臨江門に行くと、川に飛び込んで自死しようとする人を見かけた。
聞くと“趙雲”に父親を殺されたので役所へ訴えに行ったが認められず、どうしていいかわからず川に飛び込んだという。
趙雲は驚いて「私が趙雲だ。あなたの父を殺してはいない。個人的にこの事件を調査する事を約束しよう」と言った。
その男の名前は黒子といい、趙雲が詳しく調べると父親を殺したのは趙雲の馬の世話人・趙彪だった。
趙彪は趙雲の同郷人で、馬を養う仕事もまともにせず、しばしば悪事を働いていた。
その夜、趙彪は馬に餌をやらずに奔走し妓楼に遊びに行った。朝になって戻ってくると、馬はいなくなっていた。
彼は慌てて辺りを見回すと、臨江門の川を見つけ、老人が馬を叩いているのを見た。
馬は逃げだし空腹で臨江門まで走り、“豆もやし”を見ると食べていたことがわかった。
黒子の父は夜中に起きて川辺にもやしを作りに行き、背の高い馬がもやしを食べているのを見たので、竹竿を手にして馬を追い立てたが、ちょうどそれを趙彪が見たのだ。
趙彪は「老いぼれ、趙将軍の馬を打つとは大した度胸だ」彼に駆け寄って言った。
そこで趙彪はすかさず拳を数回振り下ろし老人をひどく殴りつけると、老人はもやしの生えている池に落ちて溺死した。
黒子は死んだ父親を見て、殴ったのは趙将軍だと聞き告発したのだった。しかし趙雲は江州の最高職であり裁判所は相手にしなかった。
趙雲は状況を把握し、趙彪を呼び出して尋問した。趙彪は最初は否認したが、その後、事件を目撃した庶民が証言に訪れ自白した。
趙彪は趙雲に情状酌量を懇願したが、趙雲は趙彪の首を刎ね老人を埋葬するために銀貨を黒子に賠償した。
●岡本コメント
趙雲が殺人事件の容疑者になるお話。
自分で調べ上げて自分の容疑を晴らすのが映画『逃亡者』のようではありますが追われていない分、調査は簡単だったかもしれませんね。
史実で趙雲が捕まえた同郷の魏の将・夏侯蘭とは付き合わないようにしたという彼が同郷同姓の趙彪を甘やかせてしまった事が原因だったといえるかもしれません。
友人関係においての教訓となりそうです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
私が三国志の民間伝承を集めようとしたのは、現地遺跡を回っていると武将と遺跡にまつわる「そんな話、聞いたことないぞ!」という逸話を聞く事が多く、そこで興味をもったのがきっかけです。
とはいえ、最初は「三国志演義や正史三国志にあるような遺跡にだけ行きたいんだ! こんな現地しかない逸話のマニアックな遺跡に別に来たかったわけじゃない」と思っていたのですけども(笑)。
最終回まであと2回です。来週、再来週もよろしければご覧ください。
三国志イベント紹介
平山郁夫美術館「三国志と中国」展 開催決定
シルクロード作品などで有名な画家・平山先生が三国志作品も描かれていたことから実施決定しました。
NHK『人形劇三国志』の川本人形も展示されていますので、ぜひ期間中に広島にお越しの際は訪れてみてください。
後援をさせていただき、三国志ギャラリーとのコラボ企画も実施しています!
開催期間:9/21~11/24
場所:広島県尾道市瀬戸田町沢200-2
後援:KOBE鉄人三国志ギャラリー
詳細は公式HPでご確認ください。
第18回三国志祭の開催決定!
秋の恒行事、第18回三国志祭の開催も決定しました。
漫画家横山光輝氏の故郷神戸で、18年目の三国志祭開催! 講演・講座・展示・ステージ・中国武術大会などなど例年通りいろいろな出し物が目白押し。
ぜひいらしてみてくださいね!
日時:2024年11月2日(土)11時~17時 観覧無料
(当夜祭:18時~20時頃:有料)
場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー周辺
こちらも詳細は公式HPでご確認ください。
三国志カードゲーム『トリプル三国志』新発売予定
昨年『三国志ドラフト会議』というオリジナル三国志ボードゲームを作りました。今年も「三国志祭」「ゲームマーケット2024秋」に合わせて新作を販売予定です。是非チェックしてくださいね。
『トリプル三国志』
人数:2~6人
時間:20分
内容
三国志知識不要の駆け引きバッティングゲーム!
全員同じカードセットを持ちプレイ!
毎回開かれる土地を争って1枚同時に出しあいその強さで勝敗決定!
土地に応じた得点があり、得点をたくさん取った人が勝者の簡単ゲーム
新しいのは【重複倍増システム、同盟システム、カード返却システム】
岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!