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本日発売『アウターワールド2』レビュー:アクが強いのが逆にイイ! ブラックユーモア満載のRPG【The Outer Worlds 2】

文:hororo

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 10月30日にXbox Series X|S、PC Xbox、PlayStation5、Battle.net、Steamで発売された『The Outer Worlds 2』。本作は、Obsidian Entertainmentが手がけるSFRPGで、企業や宗教といった組織が権力を持ったディストピア世界を描いているのが特徴です。

 今回は発売に先駆けてプレイした感想をお届けしていきます。なお、15時間ほどプレイした時点のものとなっており、クリアまでは達していない点はご了承ください。

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全体主義、資本主義、宗教社会主義の悪いところを煮詰めた蟲毒のような世界で生きる【The Outer Worlds 2 レビュー】


 本作の舞台となるのは、アルカディアコロニーと呼ばれる星系。前作の舞台となったハルシオン星系とは別の領域であるため、同じ用語などは登場しますが、物語としては本作から始めても楽しむことができます。

 アルカディアでは、護国帝政府と呼ばれる勢力が独裁政治を敷いており、プレイヤーは任務でこのコロニーへと派遣された地球議会のエージェントです。もちろんキャラクターメイクもあり、顔の詳細から来歴、初期スキルなどさまざまな項目を設定可能!

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 本シリーズの特徴といえば、どこに行ってもろくでもない環境のディストピアであること。そして、それをブラックユーモアで包むことで、コミカルな世界として描いていることです。このアクの強さが独特の味わいとなり、本作ならではの魅力となっています。

 例えば、オープニングで地球議会のプロモーションムービーが流れるのですが、「困ったらすぐに救難信号を発信して! すぐに駆け付けるから」という内容なのに、直後に「状況により6カ月から10年程度の期間を要する場合があります」という但し書きが入るといった感じ。

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 このムービー自体も地球議会のプロパガンダ映像である、というのが丸わかりな演出で、あらゆる面への風刺的な味付けがされているのが、最高に『The Outer Worlds』だなと思います。

 そしてもう1つの特徴が、プレイヤーの選択で展開が大きく変化するということです。

 前作では、プレイヤーを冷凍睡眠から解放させた科学者、フィニアスに付くか、さまざまな企業の連合体である“評議会”に付くかで大きくルートが分かれました。

 ストーリーに大きく関わる変化以外にも、登場するさまざまな勢力ごとに評判が設定されており、それに応じて協力的になったり敵対的になったりするため、プレイに応じて状況が変化していきます。もらえる報酬が変わったりもしますし、何よりそれ以降のNPCの対応なども変化するので、「今回はどの勢力に味方しようかな」と考えるのが楽しいです。

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 なお本作では、主に3つの勢力がアルカディア星系で争っています。1つは先に述べた護国帝政府。皇帝によって安寧は守られており、市民が割り当てられた個々人の責務を果たすことを義務とされる全体主義勢力です。規定に違反した者は、メンタル・リフレッシュと呼ばれる洗脳のようなものをされるらしく、政府の監視や隣人の密告なども日常茶飯事。リアルでは所属したくない勢力ナンバーワンですね。

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 2つ目が、護国帝政府から独立した昇華律団。こちらは宇宙のすべての出来事は数式によって計算できるとしている、ある種の宗教団体です。護国帝政府ほど悲惨な内部環境ではないものの、こちらはこちらで信仰に準じた目的のために無茶を通すような思考をしているので、あんまり話が通じないときがあるというか……。

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 最後は、別の星系から進出してきた企業“おばさんのお墨付き(こういう名前の企業)”です。市場の需要の対応と、資本主義の力を通じたアルカディアの解放を名目にアルカディア星系へとやってきて、独自の軍隊で解放(という名の侵攻)を行っています。

 前作のプレイヤーはこの名前にピンと来るかもしれません。それもそのはず、おばさんのお墨付きは、前作で登場した企業“クレオおばさん”が元となった会社なのです。前作に登場した別の企業、スペーサーズチョイスと合併してできたのが、おばさんのお墨付きとのこと。

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 本作は時系列的に前作の少しあとに当たるようなので、おそらく前作で力が弱まったスペーサーズチョイスを吸収したのだと思われます。スペーサーズチョイスのマスコットキャラクターだったムーンマンが本作にも登場するのは、この権利をおばさんのお墨付きが得たからのようです。

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 ほか2勢力よりも個々人の自由が約束されてはいるものの、資本主義だけに成果の比重が重く、利己的な人物が多いというのも特徴です。

 ほかにも、プレイヤーが所属している地球議会も含めると多種多様な勢力が存在していますが、大筋としてはこの3勢力の派閥戦争が物語の主軸となります。

 この中に自分が関わることで、どのように物語が展開していくのか、プレイしていて楽しみで仕方ありませんでした。

キャラクターの成長方針によって、大きく変化する攻略法【The Outer Worlds 2 レビュー】


 キャラクターの成長要素の幅広さも魅力の1つ。本作における成長要素は、“スキル”と“特殊技能”の2つ。スキルはいわゆるどの分野に秀でているのかを決定するステータスで、特殊技能は習得することで特定の効果を発揮する追加能力のようなものです。

 スキルは、銃、近接武器、スニーキング、錠ピッキング、エンジニアリング、爆薬、ハッキング、医療、科学!(※!を含めて1つの名称)、観察、スピーチ、リーダーシップの12種類。

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 名前でおおよその効果は把握できると思いますが、戦闘だけでなく、錠ピッキングや観察といった探索に役立つもの、スピーチのようにNPCとの会話で効果を発揮するものなどさまざま。

 レベルアップ時に2ポイントが与えられ、それを割り振ることでキャラクターを成長させていきます。原則として自分のレベルを超えるような割り振りはできませんが、キャラクター作成時に2つのスキルを専門化することができ、そこで選んだスキルは自分のレベルを越えて割り振ることが可能です。

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 前作では大まかなカテゴリーの中で……例えば銃であれば、ピストル、ライフル、ショットガンのように細分化していましたが、本作では細分化は行われておらず、かなりスッキリとした印象です。

 正直なところ、前作では細分化されていたために、育成カテゴリーとミスマッチしていた装備が使いにくかったので、個人的にはこのくらいざっくりとしていたほうがありがたく感じます。

 ともあれ本作では、一度のレベルアップで振り分けられるのは2ポイントのみ。1つのスキルを2レベル上げるか、1つずつ別のスキルに振り分けるか、非常に悩ましい……!

 それに加え、プレイしていると、それぞれのスキルの使いどころがけっこう多いことに気付きます。例えば医療などは怪我人の対応だけでなく、死体から情報などを得ようとするときに役だったり、爆薬であれば扉を爆破する選択肢が出たりと、取れる選択肢が広がるのです。

 プレイを振り返ってみると、ほとんどのスキルが特定の会話・行動において選択肢を増やしている場面を見たことある気が……。

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 本作では、特化型にすると割とそのほかがポンコツになりがちというか、「見えてる選択肢が(スキルが足りなくて)選べない!」という悔しい思いをする機会が増えるのです。だから余計にスキルの振り分けに悩むという……。いや、スキル振りに本気で悩むのは良いゲームの証拠ですよ!

 そして特殊技能はというと、こちらは2レベルあがるごとに1ポイントもらえる特殊技能ポイントで習得できる特殊能力です。特定の状況や、特定の装備品を使ったときに効果を発揮するボーナスが多いですね。

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 これの数がめちゃくちゃ多い! 前作ではスキルで個性を出す形でしたが、本作ではどちらかといえば特殊技能こそが個性の核。スキルにももちろんボーナスはありますが、特殊技能を習得するための前提条件という意味合いが強いと感じました。

 わかりやすいのは“スリ”などですね。こちらは錠ピッキングのスキルが1あれば習得可能な特殊技能。これを獲得すれば、NPCからスリを行うことができます。逆にいえば、錠ピッキングにまったくポイント振らなければ、一生習得できません。

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 また、特定の装備品に対するボーナスもこちらで強化できます。“狙撃手”の特殊技能を得れば、マークスマンライフル、アサルト、スナイパーライフルを使用した際のダメージが増加します。ただし、近距離の敵に対しては逆にダメージが減ってしまうというデメリットも付いています。

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 このように、特殊技能ごとにユニークな効果が付与される仕組みとなっているため、キャラクターのレベルが上がるほど個性や立ち回りも大きく変化していくことでしょう。いわゆるビルドなどと呼ばれるキャラクター設計図の中心となる要素といえます。

 個性といえば、プレイをしているとまれに生じる“欠点”という要素も、大きな影響を与えます。その名の通り基本的にはデメリットなのですが、それを受け入れる代わりにスキルポイントを多く得られるなどのメリットもあります。

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 私のようにキャラクター設定を脳内で作ってプレイする人間にとっては、欠点もかなりおいしい要素なのですが、デメリットがプレイとして重いものも少なくないので、とくに初プレイのときは本当に取得して大丈夫なのか熟考することをおすすめします(笑)。

前作からの改善点も盛りだくさん! 全体的によりプレイしやすく【The Outer Worlds 2 レビュー】


 ここからは少し細かい話になりますが、前作と比較して改良されている点がいくつかあるので、そのなかから印象的なものをピックアップして紹介します。

 まずは3人称視点でのプレイが可能になったこと。ビジュアルが個性的なゲームなので、自キャラの姿を見ながらプレイしたいと思っていた人も多いはず!

 とはいえ、細かいアイテムを探したり拾ったりする探索中は、まだまだ1人称視点のほうがやりやすく感じます。戦闘も1人称のほうが狙いやすいと感じましたが、これは慣れもあるかも。頭を狙いたい銃ではなく、近接武器主体で戦うなら、3人称でも戦いやすいかもしれません。

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 近接武器といえば、片手武器に奇襲攻撃……俗にスニークアタックと呼ばれるような、背後からの攻撃にボーナスダメージが付くようになったことも大きな変化。

 前作では両手持ち武器に比べると攻撃速度が速いくらいの印象しかなかったのですが、本作で得た奇襲攻撃ボーナスによって、片手武器の特徴付けが強くなっています。ナイフのような武器を使った暗殺者のようなロールプレイもしやすいですね。

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 食料アイテムにも変更が入っています。前作では、食料は体力を微量回復、アルコール系はデメリットもあるバフアイテムといった感じでしたが、本作では揃って回復アイテムとなり、単純化されました。

 前作ではアルコールを必要とする機会がそこまで多くなかったのと、「この酒の効果はなんだっけ……?」と確認しながら取得&使用していたので、今回の変更によって「とりあえず回収しておこう」くらいの温度感になりました。まあ、お酒を飲んで酔っ払いながら戦うプレイをしていた人は悲しいかもしれませんが……。

 加えて、食料は戦闘中には使用できないように。戦闘中にむしゃむしゃと食事で回復しながら戦う絵は不自然ではあったので、これも良い変更だと思います。しかも、非戦闘中はインベントリから食料アイテムを使って全回復をボタン1つでできるようになり、とても快適になっています。

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 また、仲間周りのシステムにも少し変更が。本作では前作同様、冒険の途中で出会った仲間を連れて歩けるのですが、今回は仲間の装備を自由に付け替えるのではなく、もとから装備しているものを強化していく仕組みに。

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 着せ替えは楽しめなくなりましたが、仲間の装備にあまり意識を割かなくてもよくなったため、プレイ感は軽めに。これは好みが分かれる変更かなと思いましたが、個人的にはそこまでマイナスには感じませんでした。

 ちなみに、一定のレベルごとに習得する特殊能力を選択したり、装備強化にも選択肢があったりするので、仲間のカスタマイズ要素がまるっきりなくなったわけではありません。

 最後に大きめの変更点として、ガジェットの追加があります。一応前作でも、DLCで捜査用のスキャン機能が付いた銃をもらうことができましたが、あれに近いものを独自の要素として付け加えた感じです。

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 例えば壁を透過して電力が通ってる配線を見極めて、正しいスイッチを入れるパズル的な仕組みがあったり、ステルス(厳密には位相がズレて見えないらしい)状態の敵を看破できるようにしたりと、さまざまな効果があります。

 このあたりは前作にはなかった要素なので、純粋な新要素として楽しむことができました。

 全体的な印象としては、シリーズとしてのアクの強さはそのままに、操作回りを改善した、まさに正統進化版という感想です。

 この味の濃さに面食らう人もいるとは思うのですが、ブラックジョークや、皮肉のきいたブリティッシュジョークまみれの世界観が本当におもしろいので、ぜひ遊んでみてください!

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