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『鋼の戦騎ARMIS』レビュー。これは“ドラマ”だ! 90年代ロボアニメの熱量をローグライトに叩き込んだ、硝煙と愛憎の群像劇

文:sexy隊長

公開日時:

 日本のインディーゲーム開発スタジオであるIzanami Game Lab(IGL)が贈る、ドラマティックローグライトシューティング『鋼の戦騎ARMIS』のストーリー解説を中心としたプレイレポをお届けします!

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 近年、“ヴァンサバライク”と呼ばれるローグライト・アクションがブームですが、その中でもひときわ異彩を放つ意欲作が、本作『鋼の戦騎ARMIS(アーミス)』です。

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 本作のジャンルは、単なるローグライト・アクションではありません。開発元が“ドラマチックローグライトシューティング”と銘打つ通り、「ドラマ」こそが本作の核となっています。

 「往年の熱いロボットアニメのような展開」「重厚な人間ドラマ」「信念のために戦う者たちの物語」。そうです、90年代ロボットアニメを彷彿とさせる、硝煙と愛憎渦巻く群像劇が楽しめる作品なのです。

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 本記事では、その期待の“ドラマ”がどのような体験をもたらしてくれるのか。ストーリー体験を中心に、本作の魅力を深く掘り下げていきます。

 なお、本作がどんなプレイスタイルの作品なのか、基本的なゲームシステムについては、体験版の先行プレイ記事をぜひご覧ください!

 まず注目したいのが、誰もが胸を高鳴らせる“王道”の舞台設定です。

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 地球を圧政下に置く“ザンド帝国”と、それに抗う地下組織“反乱軍(ホワイトファング)”。プレイヤーは反乱軍の一員として戦います。

 帝国には“帝国四天王”と呼ばれるエースパイロットたちが存在。貴族出身の名将“ゼファー・ラン”をはじめ、好敵手と呼ぶにふさわしい個性豊かな強敵たちが待ち受けます。

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 対する反乱軍には、傷だらけのベテラン兵“ゲオルク”が登場。彼が駆るのは最新鋭機ではなく量産機。性能差を“腕と経験”で覆す……。この設定だけでもグッとくるものがあります。

 さらに物語を複雑にするのが、“地球連合軍”という第三勢力の存在です。反乱軍の母体は元地球連合軍の兵士や科学者たちであるにも関わらず、地球連合軍は帝国と並ぶ“敵”として登場します。

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 帝国軍の侵略で荒廃した地球を解放するために蜂起した彼らに対し、地球連合軍までもが敵対する。この単純な善悪では割り切れない三つ巴の政治的な構図が、物語に重層性をもたらしています。

 反乱軍は単なるテロ組織ではなく、「かつての秩序を守ろうとする者たちの最後の砦」でもある。この設定が彼らの戦いに「正当性」と「悲壮感」を与えており、物語の基礎を固めていると感じました。

5つのチャプターと5人の主人公が織りなす群像劇

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 本作の物語は全5章で構成され、各章で「主人公が異なる」群像劇の形式をとっています。本項では各章で展開される主なストーリーを解説しますが、物語の核心に触れる大きなネタバレが含まれますのでご注意ください。

第一章 ゲオルクの意思を受け継ぐ“はじまりの日”

 上記でも紹介した、傷だらけのベテラン兵“ゲオルク・カーディナル”は、第一章のチュートリアルステージに登場します。プレイヤーはゲオルクを操り、本作のヴァンサバライクシューティングや縦シューティングステージといった基本操作を学んでいきます。

 ただ、本作は“ドラマチックローグライトシューティング”と謳うだけあり、チュートリアルから衝撃的な展開を見せてくれます。

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 第一章のストーリーは、帝国の支配の象徴“スカイロック”をゲオルクが単身で破壊へ向かう、というもの。

 ゲオルクはスカイロックの破壊に成功します。成功しますが、四天王“シャドウハート”に撃破され命を落とす……。本作は、まさかの衝撃的な幕開けで始まります。

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 体験版でもプレイ可能なステージなので、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。英雄ゲオルクのこの勇気こそが反乱軍の大きな希望となり、プレイヤーにとっても、ゲオルクの意思を受け継ぐ“はじまりの日”となるのです。

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 一方で、この出来事はのちに登場するゲオルクの息子“リンド”に複雑な感情を抱かせ、“復讐と信念”というもう一つのテーマを物語に加えていきます。

第二章 若きリーダーの覚悟と帝国の影

 実質的な本編とも言える第二章は、ゲオルクのスカイロック破壊から十数年後が舞台。

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 主人公は“アリーダ・ロイエンザンド”。好戦的な反乱軍のパイロットですが、帝国軍の情報に妙に詳しく、素性が謎に包まれています。

 アリーダの情報をもとに反乱軍は帝国軍へ攻勢をかけますが、絶対的なリーダーである“ローガン”を失ってしまいます。

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 ここで新たにリーダーとなるのが、ローガンの娘である“アメリア・ウィン”です。

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 ゲオルクの特攻に心を動かされ、父と共に蜂起の時を待っていた彼女が若きリーダーになる展開は、非常に胸が熱くなります。彼女の指揮で、劣勢だった戦況を立て直し、帝国軍に一矢報いる展開もまた見事でした。

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 しかし、撤退しようとしたところを四天王の名将“ゼファー・ラン”、そして“シャドウハート”が襲撃。第二章とは思えないほどの怒涛の展開が続きます。

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第三章 ARMISの秘密と交錯する因縁

 第三章の主人公は、“エレナ・バレロ”。優秀なパイロットであり、夫である“デリコ”の護衛役でもあります。本章では、主人公の“エレナ”以上に、夫の“デリコ・バレロ”が重要な鍵を握ります。

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 デリコは元々ザンド帝国軍でARMISの開発に携わっていた、いわばARMISの生みの親とも言える存在。彼の口から、帝国軍内部の非人道的な研究機関や、それを取りまとめる狂科学者“ナイン博士”の存在が語られます。

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 このデリコが、本作における“癒やし”担当です。可愛らしいクマのような風貌で、妻エレナとの仲睦まじい掛け合いにはほっこりさせられます。しかし、ARMISに関する話になると真剣な表情を見せるギャップも魅力的な人物で……しかもバカ強いらしいです。筆者一番のお気に入り!

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 第三章で特に注目したいのが、帝国軍の墜落したARMISを回収しに向かうエピソード。実は、そのARMISに乗っていたのが“リンド”であり、この出来事をきっかけにリンドが仲間へと加わります。

 リンドは帝国軍に拾われて兵士として育てられた過去があり、かつての同僚と戦う展開になります。敵味方それぞれの想いがぶつかり合う、胸を打つやり取りが描かれているので必見です。

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 章の終盤では、とある“探し物”を探しに四天王“ノクシア・ドーマ”が登場。ノクシアの猛攻に耐えながらホワイトファングとの合流を目指します。

第四章 明かされる謎、受け継がれる覚悟

 第四章の主人公は、“ミラ・イラレラ”と“エラ・イラレラ”の姉妹。帝国軍によって滅ぼされた星の元騎士です。

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 ここで、行方不明だった反乱軍のリーダー“ローガン”が、帝国軍の捕虜となっていた姿で再登場します。無事だったことには安堵させられました。

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 そして、ミラエラ姉妹の口から衝撃の事実が語られます。彼女たちが処刑寸前だったところを助けたのが、“帝国のアリーダ王女”……そう、第二章の主人公“アリーダ”こそが帝国の王女だったのです。これにはローガンも驚きを隠せません。

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 帝国の王女がなぜ反乱軍にいたのか? アリーダの謎が明かされると同時に、さらなる謎が深まります。3人は反乱軍への合流を目指しますが、今度は地球連合軍が行く手を阻みます。

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 反乱軍と合流してからも、物語は息つく暇もなく、“ディメンショナル専用アーミス”である「クレイモア」の奪取作戦が遂行されます。

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 作戦は成功しますが、再び四天王“シャドウハート”が襲来。反乱軍は圧倒的な戦力差の前に“クレイモア”と“アリーダ”を奪われてしまいますが、この戦闘で、ミラエラ姉妹が“ディメンショナル”であったことも明らかになり、物語は一気に終盤へと加速します。

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 ミラエラ姉妹が立て直すも帝国軍の猛攻を受け、再度追い詰められる反乱軍。打開するにはリンドの力が必要だが、彼は父ゲオルクへの複雑な想いから戦うことを恐れていました。父の行動が戦争を引き起こし、母を失ったとさえ思い、父を恨んですらいました。

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 反乱軍の仲間たちは、ゲオルクの行動は希望だったと説得します。その中で、老兵“サイラス”は「あの時ゲオルクではなく、自分が行くべきだった」と後悔を口にします。

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 そしてサイラスは反乱軍ため、自爆特攻で帝国軍の猛攻を一人で受け止めるのです……。ゲオルクを除けば、本編で描かれる唯一の、あまりにも重い犠牲でした。

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 サイラスの覚悟を受け取り、リンドもまた覚悟を決め、覚醒します。物語は最終章へ――。

第五章 覚醒、そして総力戦

 第五章の主人公は、ついに覚醒した“リンド・カーディナル”。

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 最終章にして、英雄ゲオルクの息子“リンド”が主人公として登場する……。これ以上ないほど王道で、熱い展開です。登場するボスたちも、第一章から因縁のある敵が立ちはだかる総力戦となり、90年代ロボットアニメ成分、王道成分をこれでもかと味わえます!

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 謎に包まれていた“アリーダ”や、序盤から反乱軍を苦しめ続けた“シャドウハート”の物語も、エンディングに向けて畳まれていきます。

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 第四章までと同様に第五章も詳細に解説したいところですが……ぜひ、この最終章はご自身の目で確かめてみてください。

 すべてのカタルシスが一気に解放され、まるでプレイヤー自身が長い戦いに参加していたかのような没入感が得られるはずです。まさに「戦闘と物語の融合」を体感できる作りになっています。

『鋼の戦騎ARMIS』が現代に蘇らせる「熱さ」

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 『鋼の戦騎ARMIS』の物語構造を分析すると、そこには明確な設計思想が浮かび上がります。帝国、反乱軍、そして連合軍が織りなす複雑な世界観が“舞台”を用意し、章ごとに主人公が変わる全五章の群像劇が“ドラマ”を紡ぎ、そして戦闘と一体化したリアルタイムで進む会話や通信が“臨場感”を生み出す。

 これら三つの要素が有機的に連携することで、本作は単なるロボットアニメの模倣に終わらない、独自の物語体験を創造していると思います。

 本作は、ロボットアニメというジャンルが持つ、戦争の過酷さの中で信念を貫こうとする人々の「熱さ」を、現代のゲームプレイヤーに届けるための、巧みに設計された作品。

 ゲームというメディアが持つインタラクティブ性という強みを最大限に活かし、古典的な物語への深い敬意と現代的な革新性を両立させています。

 システムとパワーアップが重視されがちなローグライトというジャンルにおいて、重厚なキャラクター主導の物語が、いかにして作品の主役となり得るか。『鋼の戦騎ARMIS』は、その見事な答えを示した作品になっています。


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