KADOKAWAが主催した小説コンテスト“カクヨムコンテスト10”。そのライト文芸部門大賞を『異能の姫は後宮の妖を祓う 平安陰陽奇譚』で受賞し、本日12月25日に角川キャラクター文芸から書籍版が発売(同じく本日よりマグカンでコミック連載も開始)された藤夜先生のインタビューをお届けします。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/dengeki/61334/a4e47cf3c61c47808f9c45b0d1a01fd0d.jpg?x=1280)
虐げられた姫を攫ったのは、美しい一人の陰陽師だった。
母を亡くし、中納言である父からは冷遇される姫・楓子(かえこ)。
彼女には不思議な癒しの力があった。
ある夜、邸内に突然あやかしが現れる。救ってくれたのは、美しい陰陽師・賀茂利憲(かものとしのり)だった。
そして、入内した楓子の妹姫・桜子(さくらこ)が誰かの呪詛を受けていると告げられる。
自分の力で桜子を救いたい。
そう願った楓子は、利憲に攫(さら)われるようにして邸を出る。
そして利憲の命令で男装の陰陽生に扮し、彼の弟子として宮中で呪詛の謎に迫り……!?
母を亡くし、中納言である父からは冷遇される姫・楓子(かえこ)。
彼女には不思議な癒しの力があった。
ある夜、邸内に突然あやかしが現れる。救ってくれたのは、美しい陰陽師・賀茂利憲(かものとしのり)だった。
そして、入内した楓子の妹姫・桜子(さくらこ)が誰かの呪詛を受けていると告げられる。
自分の力で桜子を救いたい。
そう願った楓子は、利憲に攫(さら)われるようにして邸を出る。
そして利憲の命令で男装の陰陽生に扮し、彼の弟子として宮中で呪詛の謎に迫り……!?
カクヨムコンテスト10大賞受賞者インタビュー:藤夜先生【ライト文芸部門】
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/dengeki/61334/af207e0f825122792d94e6c53d5cdfcb3.jpg?x=1280)
──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。
もともと本が好きで、中学校の文集に書いた将来の夢は『小説家』でした。遥か昔の学生時代に一度だけ公募に出したことがあったのですが、就職してからはまったく書いていませんでした。
そしてコロナで外出できなくなって暇になったころ、家族が癌の手術で死にかけたんですね。その時に、もし自分が死んでもネットのどこかに作品が残るって素敵だなと思ったのがWeb投稿のきっかけです。
影響を受けたといえば田中芳樹先生や小野不由美先生など、たくさんの作家さんのお名前が出てきます。
この作品で言えば、氷室冴子先生と田辺聖子先生の本ですね。平安ものと言えば、このお二方が一番に頭に浮かびます。『なんて素敵にジャパネスク』や『舞え舞え蝸牛』には、かなり影響を受けています。
物語を書くときに参考にするのは、ちょっと軽めの専門書系が多いです。
普段はせいぜい一・二冊しか使わないのですが、さすがに今回の作品は時代物だったので、昔買い込んでいた本を何冊も実家から持って帰ってきました。『日本呪術全書』や『平安時代の絵辞典』などは、この作品を書くにあたって非常に役に立ちました。
──今回受賞した作品の最大の特徴をお教えください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?
この作品は古典の落窪物語がモデルになっていまして、主人公の楓は中納言の姫である落窪の君と同じ境遇となっています。落窪物語は右近少将にみそめられた落窪の君が、継母によって縫い物ばかりさせられた上にオジサンと結婚させられそうになるところを屋敷から救い出されるシンデレラ物語です。そして平安時代にしては珍しく一夫一婦主義の作者が書いたらしく、右近少将は一途に姫を大切にします。
とまあ、そのままではおもしろくないので、少将の他にも陰陽師をヒーローに据えて、主人公を活躍させるべく男装させて妖退治をさせようと思い立ち、そこにまた古事記に出てくる有名な女神さま達を絡めてみたのがこの物語です。
支持された点は自分ではよくわからないのですが、やはりキャラクターかなあと思います。キャラの作りこみは毎回頑張っています。
まず主人公の楓の影は薄いです(笑)。女性が自分自身を重ねられるように、個性をあえて目立たなくして大人しい子になっています。反対にお相手のヒーロー達は個性を強くして愛嬌を感じられるように考えました。
陰陽師・利憲が『頭脳明晰コミュ障童貞』、少将・斉彬が『文武両道女好きプレボーイ』というのがそれです。どちらも完璧ではなく、ちょっと抜けたところがある可愛さを心がけて書きました。
彼らの三角関係が女性読者さまにはどっちとくっつくか気になったのではと思うのと、後はやはり式神同士のバトルかなあと。
これまで和風作品は書いたことがなく、今回がまったくの初めてだったのですが、異世界ファンタジーのような戦闘描写を入れ込んでいるのが女性向け恋愛小説にしては珍しかったかもしれません。そのせいで男性読者さまにもウケが良かった気がします。
──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。
最後までどっちのヒーローがヒロインとくっつくかわからなかったところでしょうか。プロットは作っていたのですが、実は最後まで決めかねていたところでもあります。
自分で作っていてなんですが、トラウマで人に接するのが怖い利憲があまりにヒロイン・楓への押しが弱く、反対に本当の恋を知った斉彬が暴走して押しまくるという……。
しまいにはメインヒーローを交代させてやろうかと考えたりもして、プロット通りに終われるかドキドキしながら書いたので、苦労した分気に入っています。
ちなみに私のお気に入りは斉彬です。有能なのに騙されやすくてお人好しなところが可愛いですね。奥手主人公二人の分まで一人で恋愛ものらしく盛り上げてくれました。従者の高也とのやりとりは書いていて楽しかったです。
──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんな中で、ご自身の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行ったか教えてください。
読んでもらうための努力、というのはあんまりしてない方だなと思います。SNSもほとんど見るだけだったので宣伝もしていません。
ただ、作品の一話あたりの文字数はWebで読みやすいと言われる二千から三千文字にして、各話にヒキを入れられるようにと心がけてはいます。
改行して見やすくしたり、細かいことですが漢字で書くかひらがなで書くかも考えています。
あとは題名・あらすじ・キャッチコピーは、読んでもらうきっかけを作るのに非常に大事だと思っています。なかなかうまく作るのは難しいのですが、私は他の作家さんの作品のレビューを書かせていただいて練習しました。
読者様の目に留まるようなレビューが書けるということは、自分の作品にも目を留めてもらえるあらすじやキャッチコピーが作れるということなので、ぜひおすすめしたいです。
──受賞作の書籍化作業で印象に残っていることを教えてください。
これはやはり、初めて仕事として物語をつくる作業をするにあたって見ることができた、編集部の方々のお仕事内容です。
一部分だけのお話になりますが、まず編集長さんが改稿の方針をたて、それをもとに担当編集さんが助言をしながら改稿を進めます。出来上がった原稿を印刷所さんがゲラにして、校正さんが語彙の間違いなどの細かいチェックを入れます。それを直している間にイラストレーターさんがキャラクターデザインをし、表紙のデザインを決め、あらすじと帯を編集さんが考え、やっと一冊の本ができるのです。
私は何も知らなくて担当編集さんには終始お世話になりっぱなしでしたが、『本って、こんなふうに作っていくんだ』と非常に楽しかったです。
自分の改稿作業の中だけでいうと、最初に編集長さんから物語のラストを変えようと提案されたことは印象に残っています
もともと主人公たちが恋人同士に至るまでの過程を物語にしようと思って書いていたので、別のテーマをつくらないといけない。となると、一番影の薄い(笑)主人公が何を望むのかを考えるのに悩みました。
あとは、これは技術的な部分なのですが視点変更にはだいぶん苦労しました。どれだけ要望通りに改稿できるか、自分の文章力との戦いでした。
──書籍版の見どころや、Web版との違いについて教えてください。
Web版ではテンポをよくして重い話は避けるようにしていたのですが、書籍版では姉妹の愛憎と救済がメインテーマになりました。
プロの導きによりかなり深みを増した物語へと変化しております。
存在感を増した主人公・楓の葛藤が伝わるような文章が書けていたらいいなと思っています。
そして上でお話しした通り、物語のラストが書籍版では変わっています。恋愛の行く末もわからなくなっているので、斉彬推しの方には朗報ですね。
──これからカクヨムコンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。
私の今年のお正月に立てた目標が、『締め切りと文字数との戦いに勝つ』でした。
はい、とりあえずコンテストの最低条件をクリア出来たらいいな、くらいですね。
カクヨムコンテストも先着15000作品にトリさんキーホルダーがあたるというのにつられてえいっと参加したものの、ランキングも読者選考も考えずに『10万字締め切り守ろうチャレンジ』と銘打って、お祭りを楽しんでおりました。
なので、中間選考を通った時は締め切りを守れたご褒美をもらえたと、すっかり終わった気でいたのです。
実際コンテスト締め切り時点でこの作品の星は二桁でしたので、こんなすごい賞をいただけるなど夢にも思っていませんでした。
こんな私からのメッセージは、書くことを楽しみましょうということです。コンテストでも創作でも、大事なことは自分が楽しいと思えること。楽しく書き続けられる人が一番才能のある人だと私は思っています。
そして、次はあなたがここに立つ番です!
『カクヨム』とは
「カクヨム」は物語を愛する全ての人たちへ、誰でも自由なスタイルで物語を書ける、読める、お気に入りの物語を他の人に伝えられる、Web小説サイトです。大賞受賞者が書籍化の権利を手にできる「カクヨムWeb小説コンテスト(第10回より「カクヨムコンテスト」と改称)」をはじめとした数々のコンテストの実施や、KADOKAWA内外の人気作品について二次創作の投稿を認めるなど、様々な形での創作活動を支援しています。
■関連記事
■関連記事