スクウェア・エニックスが運営するオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)』。本企画では、ヒカセン兼ライターが膨大なプレイ時間をかけて旅する中で出会った、『FF14』の“好きなクエスト”や“好きな台詞”を振り返りつつ紹介していきます。
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第3回の『FF14』振り返り記事では、『漆黒のヴィランズ』メインクエスト“舞台上で最も哀れな役者”を紹介します。
ゼロに戻るどころかマイナスへ……闇を取り戻す戦いの中、自身が第一世界の敵となる絶望
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“舞台上で最も哀れな役者”は、パッチ5.0『漆黒のヴィランズ』メインクエストの一つで、ストーリーがクライマックスへ向かうための入口的なクエストです。
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『漆黒のヴィランズ』は、光の戦士が冒険する“原初世界”とは別に存在する、13の鏡像世界の一つ"第一世界"での物語です。
強すぎる光がすべてを呑み込む"光の氾濫"に襲われて、夜の闇が訪れなくなった第一世界。迫りくる滅びを食い止めるには“大罪喰い”と呼ばれる怪物を倒し、夜の闇を取り戻す必要があります。
元の世界で“光の戦士”と呼ばれた主人公が、人知れず夜の闇を取り戻す“闇の戦士”として戦うのが、『漆黒のヴィランズ』の大まかな流れです。
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最後の大罪喰いと戦うクエスト“光をもたらす者”で事態は急転します。
すべての大罪喰いを倒し、その力を一身に受けてきた闇の戦士が、膨大な光に蝕まれてしまうのです。それは、罪喰いと戦ってきたがゆえに、自身が罪喰いになってしまうことを意味していました。
溢れんばかりの光を放出しながら気を失う闇の戦士。数日後、拠点のクリスタリウムで目覚めると……。
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空に闇夜はなく、第一世界の滅びを象徴する“無尽光”が広がっていました。
そして、ただ振り出しに戻っただけではありません。大罪喰いの光をすべて取り込んだ闇の戦士の体は、第一世界に仇なす“最強の罪喰い”になろうとしていたのでした。
彼(彼女)に待っている未来は、世界を滅ぼす化物となるか、その前に自分に始末をつけるかの二択だけ。ゼロに戻ったどころか、大きなマイナスへと転がり落ちたのです。
救いたい一心で懸命にがんばった世界を、自分自身が滅ぼそうとしている……唐突に突き付けられた深い絶望をかみしめながら、“舞台上で最も哀れな役者”は幕を開けます。優しく接してくれるクリスタリウムの人々の“善意”が逆に辛い……。
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“舞台上で最も哀れな役者”では戦闘がなく、NPCと会話しながらクリスタリウムを巡っていきます。
比較的平和なクエストですが、プレイヤーの心境はまるで平和とはいきません。個人的には『FF14』で一番の大荒れでした。
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クリスタリウムの住民に話しかけると、夜の闇が失われた現実に誰もが落胆しています。彼らにとって夜の闇とは、滅びゆく第一世界が救われるかもしれない希望の象徴でした。
主人公が“闇の戦士”として戦ってきた事情を知らない彼らからすれば、地獄に垂れた蜘蛛の糸が突然切れたようなもので、落ち込むのは当然です。
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一方で、クリスタリウムの人たちは喜ぶ様子も垣間見せます。何日も気を失っていた闇の戦士が目覚めたからです。
「あなたがお目覚めになったことは、久々の朗報ですよ」
「本当に、心配していたんだ」
「あんたを心配する声を聞かなかった日はなかったんだよ……?」
誰もが優しい言葉をかけてくれます。
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中には、光が戻った現実に立ち向かおうと奮起する人たちもいました。
ここまで『漆黒のヴィランズ』をプレイしているとわかりますが、クリスタリウムの住民は強くて善い人ばかりです。滅びが差し迫る状況でも日常を精一杯生きようと努力していましたし、タロースを起動させる計画では、一丸となって一行に協力してくれました。
闇の戦士は、そんな善良な人たちを、世界ごと殺す存在にはなろうとしています。重ねて言いますが、クリスタリウムの住民は詳しい事情を知りません。彼らが無事を祈った人物こそが夜の闇を再び奪った張本人である事実も知らず、知らないからこそ、彼らの純粋な善意が心に刺さります。
彼らに蜘蛛の糸を垂らしたのも蜘蛛の糸を奪ったのもほかならぬ闇の戦士であり、プレイヤー自身なのです。
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「今までの冒険は全部間違いだった」「なにもかも自分のせい」そう言えたらどんなに楽だったか……。
こちらを傷つける気なんてまったくない“善意”という名のナイフに心をズタズタにされたのが、筆者にとっての“舞台上で最も哀れな役者”の思い出です。
舞台上で最も哀れな役者、とは誰のことなのか
舞台上で最も哀れな役者とは誰のことだろう? ノルヴラントでの善意に打ちのめされた当時、ふと思ったことです。
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最初は、誰でもない闇の戦士を指しているように感じられました。
『漆黒のヴィランズ』を舞台劇に例えるなら、自分の役を“世界を救う英雄”だと思い込んでいたら実際は“世界を滅ぼす化物”の役だった主人公は役割すら知らずに舞台に上がっていた役者です。この上なく哀れで滑稽といえるでしょう。
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ですが、筆者は『漆黒のヴィランズ』において決して忘れられないキーキャラクター、“アシエン・エメトセルク”も、そのひとりなのではないかと感じます。
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世界に仇名す“アシエン”の一員であるエメトセルクは、『漆黒のヴィランズ』の序盤でなぜか闇の戦士たちに協力関係を持ちかけてきます。
最初はまったく信用できないキャラでしたが、彼が「世界をあるべき姿に戻したい」という真意を明かしたり、遠い昔の思い出を懐かしんだりするたびに、理解不能な敵から共感できる相手へと印象が変わっていきました。
「もしかして本当に協力したいのか?」と思わせる人間臭さがありましたよね、エメトセルクって。
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“光をもたらす者”では、光に呑まれる闇の戦士をエメトセルクが何度も侮辱します。ただのヴィランであればムカつくだけですが、それまでの言動を振り返ると、「彼(彼女)なら乗り越えられるかも」と期待していたように思えます。
その気持ちを裏切られたからこその罵倒だったのではないでしょうか。普段は飄々としていて胡散臭いのに、この時はひどくテンションが低いまじめな口調だったのも印象深いです。
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「なりそこない」と見下している相手に期待し、一方的に裏切られたと感じ、侮蔑の言葉を投げかける……こう書くと、エメトセルクも随分滑稽な役回りを演じさせられたキャラクターに見えてきます。
“舞台上で最も哀れな役者”とは、闇の戦士とエメトセルクの両方にかかっているクエスト名なのかもしれません。(なぜエメトセルクが闇の戦士に強く期待したのかについては、のちのクエストで示唆されるのでここでは伏せておきます)
徹底的に打ちのめされるからこそ再起に燃えた。やっぱり善意はありがたいものだ
以上、“舞台上で最も哀れな役者”振り返りでした。
これまでの冒険を全否定されるような皮肉すぎるクエストで、劇中の闇の戦士も、その外のプレイヤーもこの上なく打ちのめしてきます。
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だからこそ、その後に闇の戦士が再起する展開に震えました。
直後のメインクエスト“最果てに並ぶ”で、アルバートと水晶公の気持ちを受け取った主人公が再び戦いを決意するシーンのアツさときたら!
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続く“消えることなき希望の唄”では、出発する闇の戦士たちをクリスタリウムのみんなが見送ってくれます。
さっきは彼らの善良さが逆につらい、と書きましたが、それで終わらないのが『漆黒のヴィランズ』です。
善意は辛いものではなく心を救ってくれるものだとアルバートや水晶公、そしてクリスタリウムの住民を通して示してくれた一連の流れがとにかく嬉しくて、心が暖かくなりました。
この感動を強く味わうために、“舞台上で最も哀れな役者”の深い絶望が必要だったのかもしれません。いろいろな意味で、絶対に忘れられないクエストです。
電撃オンラインでは、好きなクエストや名言などにフォーカスした『FF14』に関する企画記事をこれからも不定期で展開していく予定です。次回もお楽しみに!