三つ子の魂百までと言われますが、幼少期に限らず、ゲームを遊んだ思い出は脳に深く刻まれるもの。
何年、何十年たっても、「なんでオレ、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。
そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は2007年にPSPで発売された、ダンジョン・マネージメントの名作『勇者のくせになまいきだ。』を語ります。
何年、何十年たっても、「なんでオレ、こんなこと覚えてるんだろ…」と愕然とするような記憶が残りがちでして。
そんな脳のメモリ(記憶・容量)を無駄づかいしている例を語ります! 今回は2007年にPSPで発売された、ダンジョン・マネージメントの名作『勇者のくせになまいきだ。』を語ります。
思い出コラムを読む破壊神となって、生意気な勇者を返り討ちにする日々
本作品は、ダンジョンマスターとなり、ツルハシ一本で土を掘り、魔物を生み出し、食物連鎖(生態系)を創り上げるゲームになります。
目的は、自分では何もできない最弱の魔王を守り、侵入してくる生意気な勇者を撃退すること。ニジリゴケが養分を吸い、ガジガジムシがそれを捕食し、トカゲ男が生まれる……。そんなダンジョンの営みを、父親のような気持ちで見守るのがこのゲームの醍醐味です。
しかし、やってくる勇者も一筋縄ではいきません。必死に育てたドラゴンがあっさり倒され、防衛ラインが決壊した時の絶望感は、何度味わっても胃が痛くなります。
魔王捕縛。あぁ、終わった…
そして訪れる最悪の瞬間。勇者が魔王の部屋に到達し、魔王が縄でぐるぐる巻きにされて連れていかれます。
情けない悲鳴とともに、勇者に担がれて連行されていく魔王。ここから、勇者は来た道を引き返して、地上の入り口を目指します。完全に地上に出られたらゲームオーバー。
プレイヤーにできることはもうほとんどありません。ツルハシで土をつつきながら魔物を刺激することくらい。手塩にかけて育てた強力な魔物はすでに全滅。勇者のHPはまだ半分以上。
危機感のあるBGMを聞き、地上へ向かう勇者の背中を見ながら、”今回はダメだったか…”とPSPを置こうとするが、ドラマはここから。
これぞ食物連鎖!スルーされた雑魚たちが生んだ奇跡
魔王の部屋に来るまで、勇者は目の前に現れる邪魔な魔物だけを倒して進んできます。つまり、ダンジョン内にいる全ての魔物が殲滅されたわけではありません。
勇者が魔王の部屋に行くまでにダンジョンの時間は止まっているわけではありません。無視されたコケたちは養分を吸い、繁殖、ムシたちはサナギから成虫へ羽化していたのです。
地上を目指す勇者に群がるおびただしい数のコケとムシ。1匹1匹のダメージは微々たるものですが、それが10匹、20匹となれば話は別。さらに、ダンジョン入り口付近で食物連鎖が起こり、強力な魔物が生まれていることもあります。
魔王を守ったのは強力なドラゴンだけではありません。勇者が取るに足らないと見逃した小さな命たちが、ダンジョンの生態系そのものが、牙をむいて襲い掛かってくるのです。
地上の光が見える瞬間に聞こえる勇者が倒れる声
出口はもう目の前。地上の光が差し込んでいる。勇者の残りHPは数ミリ。魔物の数も減り、万事休すかと思ったその瞬間。最後の魔物が勇者にかみつく。
断末魔と共に、勇者は力尽き、担がれていた魔王がドサッと地面に落ちる。BGMが緊迫した曲から、いつもの間の抜けた曲に戻った時の、あの脳汁が出るような安堵感といったらありません。
このゲームでは、魔王と魔物、間違いなくプレイヤーは悪役です。しかし、あの時あの瞬間に勇者の帰り道に遅れて登場した魔物たちは、当時の私にはヒーローそのものに見えました。
圧倒的な戦力で勝つよりも、こうして「首の皮一枚」で繋がった勝利の方が、何倍も記憶に残っているのはなぜでしょう。それはきっと、自分が作ったダンジョンの生態系が、最後の最後で破壊神(プレイヤー)の期待に応えてくれたような気がするからかもしれません。
現在、シリーズはVR版なども出ていますが、あのドット絵の中で起きた「小さな奇跡」の興奮は、今も色褪せることはありません。久しぶりにあのツルハシの音、聞きたくなりませんか?