電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はBeethoven and Dinosaurが開発、Annapurna Interactiveがパブリッシャーを務め、2026年5月7日に発売された青春ナラティブアドベンチャーゲーム『Mixtape』のレビューをお届けします。

なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
【Mixtape】往年の名曲にのせて辿る、親友3人で過ごした“ハイスクール最後の一日”【おすすめ度:8点】
本作の舞台はアメリカの郊外です。ステイシー、スレーター、カサンドラ(キャス)という三人組の“ハイスクール最後の一日”を描いたゲームとなります。
3人は夜に行われるパーティに持っていく“お酒”を探すために様々なスポットを巡り、そこで見つけた品から連想される思い出を辿っていきます。その思い出は最初のキスだったりとんでもない悪戯(と言っていいのか悩むレベルで凶悪)だったり、友人に対する独占欲だったりと、既にティーンを卒業して久しい筆者にとっては胸をかきむしりたくなるような青さと気恥ずかしさに溢れています。
ゲームは基本、ステイシー主観で進んでいきます。
ステイシーとスレーターは昔からの仲良しで、いたずらも遊びも楽しめる悪友のような存在な一方、キャスは警察官を父に持つ優等生です。一見凸凹な3人ですが、クールなステイシー、お調子者だけど穏やかなスレーター、家庭のことを思い悩みつつも2人のことをリスペクトするキャスという良いバランスで友情が成り立っています。
ステイシーはミュージックスーパーバイザー(音楽監督)を目指しており、この日を最後に街を離れてNYに行くことが決まっています。しかもNYへ行くのは急な予定変更だったらしく、もともと3人で計画していた卒業旅行は中止に。だから仲良し3人組のはずなのに、どこか漂うぎくしゃくとした雰囲気……。
3人にとっては“ハイスクール最後の一日”であると同時に、“3人で過ごす最後の日”となるわけです。
“アメリカのハイスクールドラマ”がそのままゲームになったようなADV【Mixtape】
『Mixtape』は往年の青春映画に強い影響を受けているらしく、そういった“いかにも”な要素が至る所に見受けられます。日本じゃまずコンプライアンスに引っかかって放送できないようなアメリカの古き良きハイスクールドラマ(そしておそらくどちらかというとナード・ギーク側)を、そのままキャラクターとして動かせるようなゲームです。
そのためプレイヤーは何かをクリアしてゲームを進めていくというよりも、映画の“名場面集”を自分で編集していくような感覚に近い体験を味わうことになります。大人にとっては少し気恥ずかしくなるような会話や誇張された感情表現もこの作品には重要な要素で、それがキャラクターたちの不器用さや未成熟さをより際立たせています。プレイ中にギャー! 恥ずかしい! となるのは、むしろ自然なことかもしれません。
音楽が感情を揺さぶってくる
本作には80年代~90年代の名曲が使われています。ミュージックスーパーバイザーを目指すステイシーが、“3人で過ごす最後の日というシチュエーションに合わせて作ったサウンドトラック”がBGMです。

正直、自分は60年代ぐらいの音楽の方が得意なので全ての曲を知っているわけではありませんでしたが、それでもステイシーが「説明しよう!」みたいなテンションで曲の背景を教えてくれるのですんなりと受け入れられました。
日本のドラマは基本的に主題歌やドラマ専用の新規曲が使われることが多いのですが、海外のドラマでは既存曲が割と多く使われます。
なので本作でも、選曲そのものがシーンの空気感やキャラクターの心情を補強する要素として機能しています。音楽を知っている人はもちろん、詳しくない人でも自然と作品世界に入り込める作りになっていました。ちなみに楽曲のライセンスは適切に管理されているとのことです。
苛烈すぎる10代の感情にくらう
学校に行けば当たり前のように顔を合わせていた人たちが、気づけば“理由がなければ会えない関係”になっている。そんなどうしようもない寂しさを覚えた経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
作中、ステイシーとキャスがちょっとした行き違いから衝突してしまいます。独占欲や寂しさ、これまでに積み重なった不満、そしてこれからへの不安――さまざまな感情が絡み合い、もはや当人たちですら止められない。そんなやるせなさが、どこか懐かしい痛みとともにひしひしと伝わってきます。
二人が感情をぶつけ合う一方で、スレーターは終始変わらない姿勢を保っています。いつもと同じ温度で静かに寄り添い、言葉少なに関係をつなぎ止めようとする。こういう感情の起伏が少ない人が居てくれると、人間関係って良い感じで保てるよな……と思わせてくれる味のあるキャラクターです。
この三人は対照的な感情表現をしているように見えましたが、ゲームを進めていくうちに「ハイティーンの頃は、どの側面も持ち合わせていたよな」という感想を抱きました。子どもっぽさと大人びた部分が同居し、感情の制御が難しくなる時期。それが10代後半という時期特有の青さやイタさに繋がっているんじゃないかな、と。
ステイシーのように尖った言葉を放つ衝動も、キャスのように期待と反抗の狭間で揺れる葛藤も、そしてスレーターのように冷静に受け止めようとする優しさもあって、その切り替えと鮮烈さに苦しんでいたよな~と、大人になった今は思うわけです。そういった思春期の二面性が、この3人のキャラクターを通して描かれていると感じました。
ゲームというよりはビジュアルノベルに近いという印象【Mixtape】
『Mixtape』において、プレイヤーが3人のストーリーに干渉できる場面は多くありません。プレイによって内容や結末が変わらないため、ステイシー、スレーター、キャスの3人の物語を“観る”という感覚に近く、ゲームをプレイしているというよりは、短編映画を観ているようでした。
そんな本作の楽しみ方として見出したのは、「この短編映画をよりかっこよく仕上げてやろう」と、映画監督になったつもりでプレイするスタイルです。
たとえば「ここでステイシーがキックフリップ決めたら締まるな」、「このアイテムとこのアイテムの間に話しかけたらよりエモいな……」など、この物語を自分なりに仕上げるつもりで臨みました。
テクニカルなゲームプレイよりも作中の演出や空気感にかなり比重を置いたゲームだったので、個人的にはこのプレイスタイルは大正解だったと思います。
また、アメリカのドラマカルチャーに親しみがある方であれば、作中に散りばめられた“青春的な記号”をメタ的に楽しむこともできると思います。こういった“青春映画”というナラティブが重視されている一方で、本作にゲーム性を求める方にとっては、やはり物足りなさを感じるかもしれません。そうした点を踏まえ、本作のおすすめ度は8点といたします!

電撃インディーのSteamキュレーターページが開設!
電撃オンラインのインディーゲーム応援企画“電撃インディー”では、Steamのキュレーターページを公開しています。
本ページでは、電撃インディーで紹介したインディーゲームを中心に、さまざまなゲームを紹介しています。
最新タイトルや電撃インディーがおすすめするインディーゲームを紹介しているので、ぜひフォローしてチェックしてみてください。



