コーエーテクモゲームスより『信長の野望』シリーズの最新作発売の発表が行われた。前作『信長の野望・新生』発売から4年の月日を経て、シリーズ第17作目にして最新作『信長の野望・飛翔』がついに発表されたのだ。
今回プロデューサーを務めるのは、前作で開発現場を取りまとめた劉迪氏。『新生』はシリーズの中でも歯応えとテンポの良さを両立した近年の傑作で、劉氏が今度はどんな作品を生みだすのかファンの注目も集まっている。
今回プロデューサーを務めるのは、前作で開発現場を取りまとめた劉迪氏。『新生』はシリーズの中でも歯応えとテンポの良さを両立した近年の傑作で、劉氏が今度はどんな作品を生みだすのかファンの注目も集まっている。

今作が掲げる3つの注目要素は、「大義名分」「町づくり内政」「ストーリーモード」。いずれも、これまでのシリーズへの課題意識と、ユーザーへの向き合いから生まれたものだという。初報の解禁にあわせて行われた本インタビューでは、タイトルに込めた意味から、ゲームシステムの具体的な設計思想、そして開発にかける思いまで、 プロデューサーが大いに語ってくれた。
索引
閉じる- その名は『飛翔』――"世の中にリンクする言葉"を探して【信長の野望 飛翔 インタビュー】
- コアコンセプトは「大義名分」! なぜ戦うのかを掘り下げた新たな戦国体験へ【信長の野望・飛翔 インタビュー】
- 約20年ぶりの町づくり内政――そのまま攻城の舞台にもなる都市開発シミュレーション【信長の野望・飛翔 インタビュー】
- シリーズ初のストーリーモード――SLG初心者、戦国時代初心者でも入りやすい新しい『信長の野望』の形【信長の野望・飛翔 インタビュー】
- 『新生』から『飛翔』へ――ゲームテンポと難易度設計、変わったものと引き継いだもの【信長の野望・飛翔 インタビュー】
- 発売後の展開と継続的なアップデートへの姿勢【信長の野望・飛翔 インタビュー】
その名は『飛翔』――"世の中にリンクする言葉"を探して【信長の野望 飛翔 インタビュー】
―― まずは今回の開発体制を教えてください。
前作『新生』では小笠原(賢一氏)がプロジェクトのプロデューサー、僕が開発プロデューサー兼ディレクターという立場でした。『飛翔』では、僕がプロデューサーとしてイチから担当しています。小笠原はシブサワ・コウが担当していたゼネラルプロデューサーの役割を引き継いで、シブサワ・コウはさらに1つ上の立場、エグゼクティブプロデューサーという形になりました。
――引き続き、小笠原さんと劉さんのコンビということですね。過去のインタビューから小笠原さんは歴史の再現へのこだわりが強く、劉さんはゲームバランスへのこだわりが強く、それぞれ『創造』と『新生』という作風に現れている印象があります。
小笠原はたぶん、社内でも戦国時代の表現に対して一、二を争うくらいこだわりが強い人です。一方僕は、シリーズをちゃんと踏襲しつつもゲーム的なアレンジも必要だという考えを持っています。その意味では歴史要素が小笠原、ストラテジー要素が僕という棲み分けがあったかもしれません。もちろん小笠原はゲームデザイナーとしても非常に優秀な人なので、明確に区別できるものではありませんけどね。
今回は僕がプロデューサーとしてイチから担当していますが、ゲーム的なストラテジー要素にこだわるだけでなく、戦国ファンのみなさんが今作で表現する新しい戦国体験に納得していただけることも重視して、歴史とゲームを両立していきたいと思っています。
――今回のタイトル『飛翔』はどういう経緯で名づけられたんでしょうか?
最初は僕と小笠原でいろいろアイデアを出してタイトルの候補を考えていたのですが、シブサワ・コウには「今の世の中が求めていることや、今という時代にリンクしていることをワードにしたい」という気持ちがありました。さらに「信長らしく、能動的なイメージの言葉にしたい」というオーダーもあったので、そこからもう少し考えて、最終的に「信長のように新しい時代を切り拓いていこう」という思いを込めた”飛翔”に落ち着きました。前作『新生』のときも、当時コロナ禍という状況の中で「世のなかを新しくしよう」という意味を込めていたので、それに近いイメージの言葉になったのかなとは思っています。
コアコンセプトは「大義名分」! なぜ戦うのかを掘り下げた新たな戦国体験へ【信長の野望・飛翔 インタビュー】
――本作のコンセプト「大義名分」はどういう意図で生まれたものでしょうか?
ゲームを開始すると、基本的には全国の大名が一斉に戦いを始めて、弱い国を次々に潰していく世界ですよね。ゲームを進めると、史実通りの盤面にはならない。でも、実際の戦国時代ってすべての大名がずっと戦っていたわけではないですし、弱小であっても戦国時代の最後まで残っている大名もいます。
例えば信長であっても、天下統一とはいうものの、すぐ横の簡単に取れる城をなんでもかんでも取ろうとしていたわけではないですよね。ゲーム的に言うと『新生』の信長は尾張の隣の長島城をすぐに攻めようとしますが、史実では(本願寺の蜂起まで)攻めようとはしていませんでした。『新生』の開発がひと段落したころ、そういうところはどうやって生き残っていたのだろう、どうすれば再現できるのだろうというのを次の課題として感じていました。
――そうですね、ゲームはどうしてもシンプルな弱肉強食になりがちですよね。
はい、それで思い至ったのが戦う理由、つまり大義名分でした。どんな戦いも大義名分はあるわけで、それがない合戦は起こしにくかった。歴史をシミュレーションするシリーズであるならば、これは大きなテーマにするべきだと考えて今回の主軸としたわけです。
――大義名分を掲げるというのは、過去の作品で言う政策を入れるようなものでしょうか。それとも宣戦布告に近いものでしょうか。
意味合いとしては宣戦布告が近いですね。例えば織田家が斎藤家に攻めるときに大義名分を掲げる、という形です。戦う理由だけでなく、統治する理由としての大義名分の意味合いもあるので、自分の領地にはすべて掲げておくほうが良いです。また、大義名分がなくても今まで通り戦うことはできますが、大義名分がないということは周りから反感を買ってしまうことになり、不利な状況に陥ってしまいます。大義名分を掲げずに全国統一することも可能でしょうが、一番難しいやり込み要素になるかもしれません。
――大義名分を掲げることで、具体的にどのようなメリット・デメリットが生まれるのでしょうか。
まず、すべての武将は「革新」「保守」「信義」「実利」という4種類の「気質」のいずれかを持ち、大名の気質は勢力の「家風」となります。家風は勢力の方針として機能するもので、掲げた大義名分が家風に合致すると勢力のモチベーションが上がるわけです。
例えば「守護職に従え」というのは保守の、「仇を討つ」というのは信義の大義名分になるわけです。合致した場合に多くのメリットがありますが、一番わかりやすいのは部隊能力が上がることですね。家中が戦う理由に納得して、士気が上がる表現というわけです。ほかにも大義名分自体にそれぞれ特殊効果もあり、例えば国衆の従属度が上がる、兵力が上がる、相手の商業を妨害する、敵からの調略の成功確率を下げる、相手勢力全体の忠誠を下げるといった効果を、それぞれの大義名分らしい形で与えようと考えています。
――大義名分を掲げられた相手側にも影響はあるのでしょうか?
逆の効果、デバフですね。例えば権威を大切にする保守の家風であれば、相手がより大きな権威を掲げると萎縮してしまいます。こうしたバフ・デバフのやり取りが大義名分による駆け引きの基本になります。
――弱小勢力が大義名分を使ってサバイバルすることは可能になるのでしょうか。
そういう形にしたいと考えています。大義名分を採用したそもそもの発端が、先ほど話した通り史実で小さな勢力が生き残った理由、大国に攻めさせる大義を与えない……というプレイができればというところから始まりました。敵が攻め入るための大義名分を掲げても、統治する側がそれ以上に影響のある大義名分をしっかり掲げることができれば対抗できる、という形にしたいです。ただ、ゲームに落とし込むにあたっては難しいところも正直あります。例えば小国で立ち回るのは楽しくても、逆に大国側になったときにもどかしさが出てしまうかもしれないですよね。
――確かに大国になったときに、大義名分がなくてなかなか小国を潰せないのはストレスになるかもしれないです。
なので、そこは現在慎重に調整しているところですね。
――家風に合わないような大義を掲げた場合、自家の家臣にデバフが発生するのでしょうか?
例えば無理のある大義を掲げたとしても、実利系の家臣だったら「まあいいか」となりますが、その反対の気質に当たる信義の家臣はちょっと微妙な顔をする。そんな仕様にできればと調整中なのですが、家臣が多いので1人1人が全員そういう反応をしていたら管理しきれないという問題もじつはありまして……どういう落としどころにするか今模索しているところです。無理のない範囲で、そういう人材管理も楽しめるようにはしたいと思っています。
――勢力内で反対派閥のようなものができるとおもしろいかもしれませんね。
まさに派閥はずっと実現したいと言い続けてきているのですが、やって楽しいのかという問題がまずあるんですよね……。『信長の野望』は基本的には天下統一を目指すゲームなので、派閥はそれに対するストレス要素です。海外のSLGだとクリア目標がそうじゃない(天下統一ではない)ゲームがあったりして、そういうところでは有効ですよね。『信長の野望』へ落とし込むなら、いずれはもっとちゃんと検討したいところですが。
――大義名分に関わる話として、本作も天下統一が目標なのでしょうか。最終的にはどの大名も天下統一の大義を掲げることに……?
まだこれは詳しくは説明できないですが、選んだ大名によって異なるクリア条件を用意しています。そこを中間エンディング的に考えていて、そこでクリアを選んでもいいし、そのまま天下統一まで遊んでもいいという形です。詳しくは今後の続報をお待ちください。
――ちなみに大義名分には強弱があるようですが、最も強い大義名分は何なんでしょうか。
わかりやすい例でいうと征夷大将軍の位ですね。
――ということは、織田信長が足利義昭を擁して上洛の大義名分を得た、といった歴史的な出来事も再現される感じでしょうか。
そのとおりです。上洛を目指している義昭が勢力にいれば、上洛の大義名分が得られます。まさにそのあたりは「ストーリーモード」で信長の一生を追いながら、このときはこういう大義名分で戦っていたということを丁寧に描こうとしています。詳しくない方でもまずストーリーモードをプレイすれば、よりメインモードを楽しめるようになるので安心してください。
ほかにも、たとえば関東管領の役職を持つ上杉憲政を登用できれば、関東を統治する大義名分を得られるように、今作では役職や官職の価値が大きく上がっていると言えます。また、武将たちには叶えようとしていることがあり、それが大義名分になるケースがいろいろあります。仇討ちがわかりやすいですが、親族が討ち死にした場合に得られるため、その武将を登用できれば仇となる勢力に攻めやすくなり、プレイするたびに違った歴史体験を楽しめます。
――話が前後してしまいますが、家風となる4つの気質についてもう少し詳しく教えてください。
まず「保守」はその名の通り、守護や官職といった幕府朝廷の権威を重んじる気質です。大名家で言えば今川で、身を守るのには向いているのですが、のちのち拡大しようとすると大変になってくるように設定しています。次に「革新」は本シリーズの織田信長に代表される実力主義的な思考ですね。こちらは保守と逆に、小さな勢力だとなかなか力を発揮しにくくて、大きくなるとどんどんペースアップできる特徴があります。「実利」は現実的な損得を重んじる信玄、「信義」はその逆の謙信のイメージで義を重んじるものとし、それぞれに得意不得意の傾向を用意しています。


▲全国マップのグラフィックは、コーエーテクモゲームス独自の「KATANA ENGINE」の使用により『新生』から数段向上している。画面各種に、織田信長の気質、各種の資源(?)、国衆など気になる要素がいろいろと……。
約20年ぶりの町づくり内政――そのまま攻城の舞台にもなる都市開発シミュレーション【信長の野望・飛翔 インタビュー】
――次に「町づくり内政」についてお聞きします。これは、かつての「箱庭内政」の復活ですよね!?
そうですね、今回は「箱庭内政」という呼び方ではなく「町づくり内政」という呼び方に変わっています。箱庭内政はわかりやすい呼び方ですが、弊社のゲームくらいにしか使わない一般的な用語ではないので……。「町づくり内政」あるいは「シティービルド」「都市開発シミュレーション」という一般にわかりやすい言い方にしています。
――シティービルドというと、相当細かいマネジメントを要するような作品もあります。『飛翔』では、どんな仕組みになるんでしょうか。
基本の仕組みとしては、城下町の空いたスペースに施設を建築していく形になります。施設にはさまざまな効果がありますが、基礎となるのは「商業」「農業」「兵備」の3つのステータスです。商業を上げることで人口が増え、人口が増えるとそれを賄う食料生産の農業が必要になり、人口が増えれば兵を増やせるようになる。また、城レベルという概念があって、人口を上げると城レベルを上げられるようになり、城レベルが上がると開拓できる場所が増えて城の範囲を広げられる、という循環になっています。
――システム自体は今までの概念に近いものを感じました。近年のシティービルドだと流通要素が流行っていますが、そういったものは……?
流通は僕も入れたかった要素なんですが、どうしても複雑になってしまうため、ゲームテンポも加味して断念しました。あくまで“簡易的な町づくり”です。ただ、基礎の3つのパラメータを上げる以外にもさまざまな施設や防衛施設があるほか、土地ごとに商業や農業などの適性が異なる「土地適性」を導入するなど、いろいろな大名、本拠地でプレイしたくなるようなプレイ感の違いを出す工夫をしています。
例えば武田家の領地は山間部で、農業適性が全体的に低く、その代わりの金山で金銭を活用した町づくりができます。一方、関東平野の北条家では土地が広い代わりに最初の適性が低めに設定されており、整備することで各適性を大きく伸ばすことが可能です。とくにこの関東平野に関しては、戦国後期になって灌漑(かんがい)が整備されてようやく出力が上がり、人が住みやすくなったという史実の背景を落とし込めたのではないかと思っています。
――城それぞれに毎回いろいろな内政を楽しめそうですね。城下に施設を作ったり、土地適性を考えたりというと『天下創世』も思い出します。
そうですね、「約20年ぶりの町づくり内政」という言い方をしているのはそれが理由です(※『天下創世』は2003年作品)。
――町づくりの委任機能はありますか?
基本的には家臣の城は『新生』と同様に任せる形になります。あくまで本拠地の城を自分でやるということですね。本拠も全部自分でやるとさすがに、という意見も上がっているので、簡単なお任せ機能もあったほうがいいかなと検討しているところです。もちろん家臣の城でも、例えばここに防衛施設を建ててほしい場合は自分で介入して建てる、ということもできます。
――ちなみに今回の城数はどうなっているでしょう? 築城はありますか?
今作は『新生』よりも城の総数は増やしています。多かった地方では整理した城もありますが、少なかった地方を中心に増やしています。築城については、いずれ何かしらの形では導入したいとは考えていますが、どういった形なら実現可能かなど、方法は随時検討しています。

シリーズ初のストーリーモード――SLG初心者、戦国時代初心者でも入りやすい新しい『信長の野望』の形【信長の野望・飛翔 インタビュー】
――3つ目のテーマ、ストーリーモードについて教えてください。SLGでストーリー重視というと『ファイアーエムブレム』や『三國志英傑伝』のような形なんでしょうか?
それらのステージクリア型とはまったく違うもので、あくまでグランドストラテジーとしての『信長の野望』というジャンルの上で、RPGっぽい遊び方をするイメージで、僕は“ストーリードリブンのSLG”と位置づけています。例えばRPGでは、次はこの町に行って、この洞窟でボスを倒して、とフラグが満たされていくことで話が展開しますよね。今回はそういったミッションクリア型と言うか、目標を達成すると次のストーリーが始まって、また次の目標が出てくる、という形です。近いものは『創造』の「戦国伝」で、イベントの発生条件を満たすと次に進んでいくものになります。
――信長の一生を描くとのことですが、どれくらいのボリュームになりますか。
最初は15時間くらいで設計したのですが、だいぶボリュームが増えてしまって20時間から25時間くらいを想定しています。小笠原からは「こんなに細かい話までやらなくていいんじゃない?」と言われているんですが(笑)、細かいことをやらないと過去の『信長の野望』で経験済みのイベントばかりになってしまうんですよね。
――イベント数はかなり多い……?
歴史イベント換算で言うとメインモードには現在400個ほど歴史イベントがありますが、ストーリーモードはそれと同等か、あるいはそれを上回る400〜500のイベント数になっています。ガッツリ読み応えのあるものになってますし、シリーズで初めて描く出来事や近年の研究も反映しているので、シリーズファンの方でも楽しめるようにしたいと思っています。
――チュートリアル的な要素にもなりそうですね。
そうですね、それこそRPGのように少しずつシステムが解放されていきますので、わかりにくいと言われるSLGのシステムを少しずつ学べるように作っています。そもそも単純なストーリーモードを作りたかったというわけではなくて、『信長の野望』というIPをどう成長させるかというところを考えました。
戦国時代にあまり詳しくない方には知っている前提のことが多くて入りにくいと思われてしまいますし、SLGというジャンル自体も複雑で、メインモードをいきなりプレイすると最初はわからないという状態が起こりがちです。それを払拭するために入りやすいモードを用意して、戦国時代に興味があるけどあまり詳しくないという方や、SLG自体が初めてという方でも、まずこれをプレイすれば戦国時代の流れとSLGの遊び方がわかって、そのあとメインモードに入っていける、というところを目指しました。
――現状は織田信長の物語ですが、今後武田信玄や上杉謙信を主役としたストーリーを追加する予定はありますか?
先ほど言ったようにイベントの作り込みがすごい量になったので、同程度のボリュームと考えるとそう簡単には……といったところです。ただ、発売後のみなさんの反応次第で検討したいと思っています。

『新生』から『飛翔』へ――ゲームテンポと難易度設計、変わったものと引き継いだもの【信長の野望・飛翔 インタビュー】
――これまでのお話を聞くに、大義名分も町づくりも『新生』に比べてどっしりした印象を受けます。
町づくり内政があるので、多少どっしりとしたプレイになる予定です。『新生』は内政をするよりも攻めたほうがいいタイミングが多かったですが、仮にその状況でシティービルド要素を入れたとしても、やっている暇がないとなると本末転倒です。これは個人的な感覚ですが、『信長の野望』は『革新』以降、戦闘に比重を寄せたタイトルが続いていたかなという印象がありました。
でも一方で、ユーザーのみなさんからは「もっと内政をやりたい」「また箱庭内政がしたい」という意見がすごく多く寄せられています。20年くらい戦闘に寄せた状態が続いているので、戦闘が好きな人たちもそろそろ味変を望んでいるんじゃないかなという期待もあって、今回は内政主導という形にしました。
――確かにしっかりした内政は遊びたいです。でも『新生』のテンポ感の心地良さが失われるのではないかという不安はあります。
じつは社内からも内政に比重が置かれることのテンポ感の懸念は強く上がっています。プロデューサーとして言うとヒットしている『創造』や『新生』といったテンポ感重視の作品を倣うべきかもしれないのですが、しっかりした内政を求めている方々の長年の声に応えたい気持ちも強くあります。ですから内政の比重は高くなりますが、テンポ感を重視する方も安心して楽しめるように、バランスは日々慎重に議論を続けています。
また、戦略で言うと大義名分が勢力拡大の掛け算要素になっていまして、大義名分があるからこそ内政をする時間が取れるという設計になっていますし、内政をすることでも大義名分が得られます。
――ペース的に言うとずっと合戦を続けながら合間に内政をしていた『創造』や『新生』よりも、宣戦布告と内政を交互に行う『大志』の方が近いのでしょうか?
どちらかといえばそうかもしれません。しかし、攻めるために掲げる場合もあれば、攻めるつもりがなくても相手の領地に掲げておくことで圧をかけることができます。自分の領地を統治するために大義名分を掲げることで内政の促進にもなるので、必ずしも戦闘のためだけのシステムではありません。
――『新生』のテンポの根幹になっていたのが“威風”システムでしたが、『飛翔』では採用されているんでしょうか?
威風は引き続き採用しようと思っています。せっかく評判が良かったので1作で終わらせるのはもったいないかなと。さらに大義名分というのも、最初は小さな大義から始まることが多いですが、あとあとになってくると例えば「天下布武」のような全国統一を宣言する大きな大義も存在します。最初はちまちまと始まって、だんだんその大義も大きくなって侵攻しやすくなっていく、というテンポ感は考えています。
――兵糧管理や政策の取捨選択など、『新生』は過去のシリーズで最も厳しい判断を迫られた作品だったと思います。『飛翔』の難易度のバランスはいかがでしょうか?
これはプロデューサーというよりもゲームデザイナーとしての考え方ですが、SLGはジレンマの連続のゲームで、選択に意味をきちんと持たせないといけないジャンルだと感じています。なので、ある程度"厳しい"と言われそうなバランスには仕上げたいと思っています。SLGは繰り返し遊び、100時間遊んだというのが自慢になるゲームですよね。初見で誰でも簡単にクリアできてしまうと試行錯誤の余地がなくなって、浅いゲームになってしまう。とはいえ『信長の野望』はガチガチのSLGファンではない方も非常に多い。そのバランス感覚が大事で、『飛翔』でもそういうところを目指していきたいです。
――合戦システムについてはまだ詳細が発表されていませんが、ヒントだけでも聞かせてもらえますか。
まだ詳しくは話せませんが、『新生』からの「正当進化」と言うのが近いですが、何が進化しているかはぜひ続報にご期待ください。
――意外といっては失礼かもしれませんが、『新生』のシステムをある程度残されているんですね。
そうですね、『新生』の要素の何割かはブラッシュアップしつつ残しています。でも、『飛翔』は『新生』の拡張という位置づけでは決してなく、かなりプレイ感が異なる作品になりますのでそこはご安心ください。これに関しては、海外のSLGって前作のシステムを引き継いでブラッシュアップして、さらに要素を変えて進化するというのが普通ですよね。そういう面は見習うところもあって、いいところは残しつつ、ちゃんと新しいコンセプトでまとめ直していく形が開発として望ましいのではないかと思っています。
――『信長の野望』と『三國志』はナンバリングでガッツリ作り替えるスクラップ&ビルドを繰り返しているイメージがありました。
もちろん、そうやってきたからこそ、これまでファンのみなさんが支えてくださったという認識もあります。とはいえ、最近は開発費もすごく上がってきて、1つのタイトルを作る規模感が数年前と比べてもとんでもない違いになっていたりという現実もあります。今と比べて開発予算の規模が小さい時代であったからこそ、完全なスクラップ&ビルドができたとも言えます。
『新生』のときも、まったく新しい体験を作るというところに対してなかなか答えが出ないまま難航してしまったという経緯もあって。完全なスクラップではなく、いいところは残しつつも今回の『信長の野望』はこういうプレイ感だよね、というふうに切り替えていく判断もプロデューサーとして現場を仕切るなかで考えています。
発売後の展開と継続的なアップデートへの姿勢【信長の野望・飛翔 インタビュー】
――発売後のアップデートや拡張展開について、今の段階で考えていることを聞かせてください。
こういうタイミングのインタビューだと、いわゆるパワーアップキットのことは全然考えていません、というのが今までの事例だったじゃないですか。だけど、もうそういう時代じゃないと僕は思っています。アップデートも含め、パワーアップキットという名前になるかわかりませんが、大型拡張と言えるものも考えてはいます。発売後もいろいろな遊び方を増やしていければと思っています。
――そうですね、今時のストラテジーは実際に遊んでもらって、その届いた声でアップデートを繰り返して仕上がっていくものだと認識しています。
ただ、本編が売れないことには拡張もできないです。プロデューサーとしてはちゃんといいものを作って、いいプロモーションをして、しっかりヒットして、拡張コンテンツを作る予算を確保することが目標です。そのうえで発売後のみなさんの意見を聞きながら、『飛翔』をどう展開していくか決めていきたいと思っています。
――最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。
「新作はまだか」という声が非常に多く届いていることは把握しており、まずはお待たせしました、ということでようやく情報解禁をすることができました。『飛翔』のメインテーマは現代でもじつは身近にある“大義名分”で、1人1人の武将たちが当時何を考えて戦っていたのかを描きます。この“大義名分”を掲げ、どう家臣を導いて、どう敵勢力に抵抗していくのか、よりリアルな戦国戦乱の駆け引きが楽しめる作品になります。
さらに、久しぶりの町づくり内政も導入するので、お待ちいただいたファンのみなさんにはぜひ遊んでいただきたいですし、ストーリーモードをきっかけにして『信長の野望』を初めて手に取っていただける方が1人でも多く増えてくれることを願っています。
キービジュアルや音楽も含めて挑戦的な内容になっていますので、どういった反応が出てくるか正直不安もあります。しかし、チーム一丸となって必ずおもしろいものに仕上げていきますし、まだまだ公開していない要素もたくさんありますので、引き続き続報を楽しみに待っていただければと思います。
――ありがとうございました。





